なんてこったい、やられてもうた。契約させられてもうた、まんまと。お家に来
た新聞勧誘マンの話である。
暮れなずむ夕方の時分である。時間的に珍しいピンポンであることよと、不審が
りつつドアを半開きにした。そこに、なんともにこやか然とした男が立っていた。
きゃつである。
ワタシは、一応、厳し目の男である、この手のアプローチには。要件を聴き、即
座に断り、お帰り願っている。が、この時は、何故か、たじろいだ。そこへ、な
んとかかんとか言われ、いつのまにか、新聞の話になり。流れるように景品(液
体洗剤2ケとゴミ袋パック)を持たされて、いやいますごい大変なんで、かなん
か言われ、1年で、いやそれはちょっと、じゃ半年で、かなんか詰め寄られ、結
局、どうにもハンコを付いてしまった。
正直、いま考えると、何故、取る気持ちになったのか、その過程をしっかりと覚
えていない。それくらい、あっちゅう間の出来事だった。スルスルとこう持って
いかれたみたいな、ハンコ付きまで。
言論の公器、新聞である。社の姿勢に賛同し、記事を信頼してこそ、その根本を
大事にしたいと、常々肝に銘じてきたつもりであった。まして、景品などもって
の外、しゃらくさい所業と突っぱね、謹厳実直を任じてきた・・・のか、ホント
に? 今回、見事な陥落ぶりでありました。
この期に及んで、あえて釈明すれば。とにかく人当たりのよい感じであったこと。
小綺麗なファッションと、適度なこなれ感のあるトーク力につい引き込まれたこ
と、さらに新聞自体が、いま取ってる新聞と同様路線であったこともあり、いわ
ゆるこちらにも付け入る隙を持っていたこともあります。
まぁ、いずれにしても、それなりに気に入っている新聞社からの半年間の鞍替え
だが。勧誘マンには、なんの遺恨もない。むしろ、すがすがしい販売テクに一本
取られた思い。問題は、現在、契約中の、愛嬌ある販売所のおっさんに、どう、
このことを切り出そうか、妙な憂欝を抱えた思い。