本と映画と雑談室

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「恋女房」-2-

2017-05-17 13:57:37 | 自作の小説
仙石屋(せんごくや)亀三は新吉に新しい女房を迎えて商売の験直しをはかろうとする
だが・・・ケチのついた店 しかも悪い名が売れている新吉に娘を嫁にやろうという人間はいない

それが・・・捨てる神あれば拾う神ありーなのかどうか思いもかけぬ縁談(はなし)がまとまった

呉服を扱う大店・香野屋(かのや) その店の器量自慢の娘おみつを大層な額の持参金付きで 嫁にくれると言う
亀三にしてみれば願ってもない



「ああ いやだ いやだ 大店のわがまま娘なんざ けったくそ悪い 一緒に暮らしたくありませんよ
顔は綺麗でも性格がさぞ悪いんでしょうよ 
さもなきゃ もう傷モノか でもなけりゃー」
と好き勝手にお才が言いつのるのをさすがに亀三も叱った
「いい加減にしねェか!」



亀三は香野屋の娘おみつに会って これが心底おみつの望んだ事と聞いてきた
昔・・・新吉が親切にしてくれて その面影がずっと忘れられなかった
嫁に行くならこのお方・・・そういじらしくも心に決めていたと言う


おみつは・・・可憐な花のような娘だった
お嬢様と威張る事なく
「うまくこのお話がまとまりましたなら どうぞよろしくお願い致します」
畳に両手をついて亀三に挨拶をした

香野屋の娘おみつには13歳になった頃から困るほどに縁談(はなし)は方々(ほうぼう)から来ていた
そのどんな縁談にも首を縦に振らなかったおみつがー
新吉の女房が死んで仙石屋が嫁捜しをしていると知りー
父親の佐市が折れるまで・・・食事をとらなかったと言う
おみつの母のお駒は佐市に縋った
「このままではあの子が死んでしまいます」

一途なおみつ

これほど慕ってくれる娘と一緒になれば さすがの新吉もーと亀三は望みをかけた

嫁ぎ先での娘おみつを案じる香野屋佐市は小さな頃からおみつの世話をするお春をつけて嫁に出す

祝言の席で花嫁らしく装ったおみつを見た新吉は終始無言だった
更にはその愛らしい人形のような嫁と 新吉は一つ床で過ごそうとはしなかった

娘時代と変わらぬ稽古事は続けさせ その立ち居振る舞いには厳しい叱責と小言
本当の意味の夫婦にはなろうとしない

おみつは一所懸命だった
庇ってくれるのは亀三だけ
お才はかなり底意地が悪い

おゆきばかりは「新さんは弟みたいなものだもの 困ったことがあったら何でも相談してね」と言ってくれたが


辛いとは一言もおみつは言わなかった
実家の香野屋にも言わないようにとおみつはお春に口止めをした
「あたしがいけないんです 気がきかないから
気にいってもらえないんです」




おみつの持参金で仙石屋は持ち直し逃げていた客も戻ってきた

自分の事は棚に上げて 新吉が細々と注意したおみつは十五で嫁いでから三年
その瑞々しい美しさが花開こうとしている

「おみつさんが使っているなら あたしも欲しい」
その美しさに憧れる女客も出てきた

相変わらず新吉には商売にやる気があるのかないのか分からないけれど

おみつという嫁さん繁盛となってきた仙石屋


ところがお才が言い出した
「子無きは去ると言いますよ 縁切りしちゃどうです あの娘」

おみつの人気が高まることが お才には我慢ならないのだった
考えの浅いお才は おみつにもずけずけ言う
「女房は跡取りを産んでこそ
子供も産めない嫁などごく潰しです
目障りったらありゃあしない」

「すみません」としか言いようのないおみつ

「ふん 新吉は散々遊んだ男だ
お前のそんな乳臭いところが気にいらないのだろうよ」



新吉がおみつを本当の嫁にしていないことは店の者も知っていて「いつまでたってもお客さん」などと
おみつを邪険にする者もいる

留守がちな新吉は そうした事には気付いていなかった
気に入らぬ嫁だから新吉は家に居付かず お才の扱いもあり おみつをいじめてもいい人間と思う者もいた

品のある女雛のように抜けるように色が白く美しいおみつ
そんなおみつに岡惚れ懸想する者も出てくる

陰でその男をけしかける人間も
「いただいちゃいなさいよ 
それで離縁となれば あんたの嬶になるかもよ」
意地悪い囁き


女を自分のモノにしたい男はそれに乗り身勝手な夢を見る
ーそうだ 俺に気があるに違いない なら手を出してやらなければー
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