YU@Kの不定期村

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「カーズ2」が壊したピクサーの嘘

2015-05-29 16:03:54 | 映画



こんにちは、YU@K(@slinky_dog_s11)です。

先に述べておきたいのだが、「カーズ2」が好きな方は、この記事を読むことをオススメしない。私にとって、この「カーズ2」ほど映画館で“がっかり”を覚えた作品もないからだ。前作「カーズ」が大好きで大好きで、今でも頻繁に観返すほどのオールタイムベストな1本ということもあってか、自分の中の期待値が高すぎたのも否めない。とはいえ、やはり何度考え直しても前作が積み上げたものを綺麗に壊してしまったような、そんな印象が強い。「カーズ2」で “がっかり”を覚えた点はいくつかあるのだけど、その最たる「ピクサーの嘘を破壊した点」について、書いていきたいと思う。


ピクサーの強さは、嘘をゴリ押しできる腕力だと感じている。
元も子もないツッコミだが、オモチャはどう考えても動かない。虫たちが人語を操って会話する世界もないし、スーパーヒーローが引退した社会もそうそう訪れない。ネズミが人間の髪を引っ張って四肢を操縦するなんてもっての他だ。しかし、ピクサーにはこれらの「嘘」をしっかり観客に納得させられるだけの「腕力」がある。それは言い換えれば、圧倒的なまでの映像技術を下敷きにした、ハイクオリティな「ストーリー」だ。これはもう単純明快で、キャラクターが画面の中で生き生きと動き、悩み、それにより物語が積み上がっていく。あの見事なまでの物語の完成度が、観客に「嘘」を(自然と)無理やり信じ込ませているのだ

「フィクションにおけるリアリティ」というのは、我々が生きる実社会に“それ”があったらどうなるか、という意味で捉えられがちだ。もちろん、そこを突き詰めて成功している作品は無数にある(例えば平成ガメラシリーズは、実社会に怪獣が出現した場合のリアルを追求している)。しかし、ピクサーのようなアニメーション作品においては少し意味が異なると思っている。つまり、「“そのフィクションの世界”におけるリアルさ」が、求められるのだ。





例えば「トイ・ストーリー3」で、少女に忘れられ結果的に捨てられてしまった熊のぬいぐるみが、命からがら家に戻ると、そこには同じ型の別の熊のぬいぐるみを抱く少女の姿があった、というくだりがある。そもそも、捨てられてしまった熊のぬいぐるみが自力で家に戻るのは、どう考えても「リアル」じゃない。しかし、そういうことではなく、オモチャの世界において“自分と全く同じだけど自分ではない存在が無数に存在する”こと、そして、持ち主である少女にとって大事だったのは“自分”ではなく“その存在”であったことが、この上なく「リアル」なのだ。これがつまるところの、「フィクションにおけるリアリティ」だと考えている。

話を「カーズ2」に戻すが、この作品は「フィクションにおけるリアリティ」の構築に失敗していると言わざるを得ない。大前提として、車だけの社会というのは、あり得るはずがないのだ。あの建物は誰が作ったのか、そもそも車だけが生きる社会でどう種が続いてきたのか、矛盾に満ち溢れている。車だけが生きる社会というのは、ある意味オモチャが動くよりもモンスターだけの社会よりも、「嘘」の濃度が高い。しかし、1作目「カーズ」はこの「嘘」を正面からねじ伏せた。それは前述したような確かなストーリー構成に他ならないが、何より、登場する舞台が閉じていることが大きい

1作目「カーズ」には、大きく2ヶ所しか舞台がない。主人公ライトニング・マックィーンが活躍するレース会場(これは厳密には2ヶ所だが、ジャンルとしての舞台は1つ)、そして、田舎町ラジエーター・スプリングスだ。どちらも、実はかなりクローズな環境になっている。レース会場はその名の通りで、基本的に走車と観客と関係者しか存在しない。そもそも、「車のレース」は我々の実社会でも当たり前の概念なので、これに違和感を覚える方が難しい。そして、ラジエーター・スプリングスは世間に忘れられたオールドタウンだ。ここには文明の機器があまり存在せず、“発展”や“進化”というイメージからはかけ離れている。高いビルも無ければ、道路の照明ですらまともに機能していなかったほどだ。





対して「カーズ2」では、舞台が世界中に展開している。マックィーンが参加するワールド・グランプリでは、日本をはじめイタリア、フランス、イギリスなど多くの国が登場する。その多くが、“発展”や“進化”の象徴のような街並みだ。そして、007さながらのスパイアクションも繰り広げられ(目を疑うハイテク技術まで登場し)、前作に比べて“なんでもあり”が頻出する。ここで、観ている側はうっすらと違和感を覚える。「これは本当に車だけの社会なのか?」「彼らだけでここまで発展できたの?」「ちょっといくらなんでもあり得なくないか?」、と。

閉じた舞台の上にストーリーの力で「嘘」をねじ伏せていた前作と違って、今回はそれが足りていない。肝心のストーリーも前作に比べ劣っているのが正直なところ。この映画に対する「なんだか散漫としているなあ」という感情は、前作で積み上げられた「嘘」が、物の見事に破壊され、つまるところ観客にバレてしまったからではないだろうか

意地悪な言い方をしてしまえば、「誤魔化し切れていない」ということだ。車だけの社会という「嘘」が、腕力をすり抜け、観ている側に透けて見えてしまう。「カーズ2」には他にも個人的に気になる点がいくつもあるのだけど(メーターの度を越した言動など)、私はこの「ピクサーの嘘をカーズ自身が壊した」という点が、飛び抜けて“不味かった”と考えている。最もどっしりしているべき世界観が、完全にグラついてしまった。いや、正確には、それにこちら側が気付いてしまった。前作で綺麗に観客を騙していたピクサーの嘘が、さながら露呈してしまったのだ。だから、前作と比べて「あれ?」という違和感を抱いてしまうのではないだろうか。




▲「カーズ2」鑑賞直後の私


「カーズ2」が好きな方、すみません。とはいえ、私はこの作品のBlu-rayは持っているし、実は今でもよく観返す(その何倍も前作を観ているけど…)。世界観はグラグラだしメーターの行動にイライラしてしまうのだけど、映像は申し分ないし、なんだかんだ好きなシーンは多い。吹替えだと、フィン・マックミサイルの大塚芳忠とホリー・シフトウェル朴璐美はあり得ないくらいにバッチリはまっているし、全体的に芸達者な部分は多い。ドック・ハドソンが存命ならストーリーにも一本筋が通ったのかもしれないが、ポール・ニューマンが亡くなった以上、これは致し方ない…。

個人的には、“ピクサーは何をやっても最高のクオリティ”という神話が断たれたのはこの「カーズ2」だと感じていて、でも後年の「モンスターズ・ユニバーシティ」は素晴らしいクオリティだったし、新作の「インサイド・ヘッド」もとても楽しみにしている。「カーズ2」のクオリティは夢か何かだったのだ…、いつかの未来、そう笑い飛ばせることを期待したい。


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12 コメント

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んー (じす)
2016-05-05 23:44:23
それを言ったら一作目も大概ですが。カーズ2も十分楽しめましたけどね。
Unknown (Unknown)
2016-07-07 20:37:29
普段あり得ないような事も楽しめるのが、映画の醍醐味であり、良いところなのでは?
Unknown (Unknown)
2016-07-15 11:28:13
そんなこと言ったらアニメなんてありえないことだらけのストーリーの物がほとんど。そこまで深読みして見たところで何が楽しいんだか。
Unknown (Unknown)
2016-07-17 02:32:11
カーズ2のキャラクターは良かったです。
嘘というよりメーターが気になりました。私もメーターのイライラする行動が中心になっていてマックイーンは?と思いました。
Unknown (Unknown)
2017-04-30 07:04:30
まぁ確かに大人からみてストーリーは深く考えたら微妙な点はあるかもしれないけど、
子供たちはウチの子含めカーズ2が一番好きで、おもちゃで何度もシーンの再現をしてます。鼻歌bgmつきでw
子供がハラハラドキドキして楽しいっていうなら別にいいと思います。そんな彼らはストーリー構成がどうとか気にもしてない。
カーズ3も単純に楽しめる作品であるといいなと思います^_^
Unknown (Unknown)
2017-07-16 19:15:11
カーズ1、2に関してほとんど同感です。本日、カーズ3をみてきました。感想を楽しみにしています。
ほんとに映画が好きなのか疑問 (なぜ)
2017-07-17 20:11:12
アニメや映画のストーリーを嘘と言う時点で映画が好きなのかと疑問に思う。その「嘘」を楽しむのが映画なり、アニメじゃないのかこんな記事にコメント打つのは初めてだけどあまりに理不尽で、自己中心的な記事に怒りさえ覚えました…
そんなん批判?
心の中だけで思えばいいのに

そしてこれからは ノンフィクションとドキュメントだけをみておくと良いと思います。
Unknown (Unknown)
2017-07-18 19:46:15
上の人。個人のブログのレビューにイチャモン付けるほうがどうかと思いますよ…。

自分も2は面白かったものの、残念だなぁと思う点が多かったので概ね同意です。
特に、空を飛んだりロケットエンジン使ったりでマックイーンの魅力の一つである「速さ」が無下に扱われてると感じてしまったことが残念です。
Unknown (Unknown)
2017-07-18 21:29:53
カーズ2は良いと思いますよ。あれはあれで、あのアクションが良いと思います。貴方は批判主義者ですか?
Unknown (6044)
2017-07-20 21:09:44
まず基本的にディズニー映画は現実的でないものを現実っぽく見せるのが魅力なのでこうなるのも仕方がないのでは?
カーズにしてもトイストーリーにしても主人公は人間ではないので人は出なくてもどうにかなると思います。人間が出てしまうとマックイーン達はあんな自由に動き回れない気もしますが…
ただ、主人公がマックイーンからメーターになってしまったことには少し違和感は覚えますね。

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