ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

人材難で絵に描いた餅に

2017-03-03 08:02:38 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「人的資源確保」2月24日
 『商業高の全学科「ビジネス科」に 都教委18年度から』という見出しの記事が掲載されました。その記事の最後に付け足しのように『小中学校で仕事が集中しがちな副校長を支える非常勤職員を採用する事業も17年度から始める』という記述がありました。
 私がこのブログで再三指摘してきたことが実現するようです。私は、学校への支援は、教員の専門性を尊重して行うべきである、という主張をしてきました。教員は授業のプロ、教えることの専門家であり、授業に補助員を配置したり、外部の社会人経験者を講師として採用したりする支援策ではなく、文書作成や教委への報告などの「雑務」を軽減し、その分の時間と労力を授業の準備や評価に費やすことができるようにすることの必要性を強調してきたのです。
 今回の副校長への支援も、そのことによって副校長が教員の指導や相談、授業の観察や評価といった「部下を育てる」という、管理職本来の役割に傾注できる時間を増やすという意味で肯定的なのです。
 しかし、施策の趣旨は良くても、実際の運用に際しては、留意すべきことがあります。それは、相応しい人材を確保できるのか、ということです。非常勤職員の配置ということは、それ自体は、副校長の仕事を増やすという側面をもっているのです。不慣れな職員の指導と管理、出勤簿の作成管理に代表される事務、新施策実施に伴う教委への成果報告の作成、他の職員との人間関係の調整などが新たに加わるからです。学校事務の未経験者をアルバイトで採用、というのでは少なくとも初年度は負担軽減を実感することはできないでしょう。かといって、退職した副校長経験者や学校事務職経験者を採用するのでは、年長者や先輩への気遣いで、副校長の精神的負担が増すのは必至です。
 つまり、副校長がこなす事務について経験があり、なおかつ部下として使いやすい人物で、学校という組織のついても理解している者でなければ役には立たないのです。私自身は副校長の経験はありませんが、つれあいは副校長を2校、6年間経験しています。彼女も同じ意見でした。こんな人材は、都内全体を見通しても、数十人もいないでしょう。
 学校教育においては、制度だけは設けておいて、実際には人材確保が難しいことを理由に制度を形骸化させてきた歴史があります。私が生まれる前に施行された学校図書館法で司書教諭の配置を義務づけながら、50年にわたって、附則で配置を免除してきたように、です。
 今回の施策が本当に副校長の負担軽減につながり、学校の活性化をもたらすものにするためには、人材の確保、育成についての具体策が伴わなくてはなりません。

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