長崎大学教育学部教育心理学教室 前原由喜夫研究室の記録

教育心理学とその周辺分野の研究や情報の覚え書きです。心理学の知見を教育実践に活用する方法を考えていきます。

敬老の日には運動を

2016年09月19日 | 教育心理学
九州に非常に強い台風16号が近づいており,長崎も昨日から雨が降ったり止んだりのおかしな天気になっています。今日は敬老の日です。社会を支えてきた高齢者に感謝の意を込めて,お爺ちゃんやお婆ちゃんに何か贈り物をする子どもも多いと思います。ただ,お爺ちゃんやお婆ちゃんに健康で元気に過ごしてほしいのであれば,日ごろから無理のない運動を勧め,気が向かないようであれば一緒に運動に付き合ってあげるというのも大切かもしれません。


スタンフォード長寿研究センター(Stanford Center on Longevity)は,2014年10月20日に多数の著名な脳科学者や心理学者の連名で「脳トレ産業に関する科学コミュニティの合意(A consensus on the brain training industry from the scientific community)」という声明を発表しました。その要点は以下の5つにまとめられます。

1.脳トレゲームに時間とお金を費やすよりは,運動したり対人社会的な活動に従事したほうがいい。
2.有酸素運動は身体と脳の健康,ひいては認知機能に良い影響があることが科学的に証明されている。
3.何らかの経済的利益の絡んだ研究だけでは,脳トレゲームの効果が厳密に検証されたとは言えない。
4.脳トレゲームのアルツハイマー病・その他認知症に対する治癒・予防効果を示した研究は(2014年時点では)存在しない。
5.認知的にチャレンジングな活動に一度取り組んだからと言って,加齢による認知能力低下を長期的に防止できると考えてはいけない。

つまり,高齢者は脳トレゲームのような認知トレーニングよりも有酸素運動をしたほうが認知的健康に良い(ということが現時点で科学的にわかっている),ということです。しかし,ここで注意したいのは,認知トレーニングの研究が全くの無駄だと言っているわけではありません。確かに,今までの認知トレーニング研究ではその効果がトレーニングした認知能力以外の他の認知能力に転移しなかったり,たとえ認知能力が向上しても長期的に持続しなかったりという問題点があります。しかしながら,それは単に現時点では,科学者たちが効果的な認知トレーニングの方法を見つけられていないだけかもしれないのです。もしかしたら,どこかに従来の認知トレーニングよりも効果的な認知トレーニングの課題と最適な実施方法があるのかもしれません。したがって,認知トレーニングの研究自体が無駄だということにはならないのです。また,もうひとつ注意したいのは,有酸素運動をしたからといって,そのまま頭がよくなるわけではないということです。運動は脳を健康な状態に保つために大切なのであって,そこで一生懸命何かを勉強しないと知識や考える力は身につきません。当たり前と言えば当たり前ですが。

しかし今日は外で運動というわけにはいきませんね。台風が接近する前に早く買い物に行って備えたいと思います。
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