長崎大学教育学部教育心理学教室 前原由喜夫研究室の記録

教育心理学とその周辺分野の研究や情報の覚え書きです。心理学の知見を教育実践に活用する方法を考えていきます。

新生児は母親の匂いも大好き

2016年01月28日 | 教育心理学
新生児の認知能力の続きです。生まれて間もない赤ちゃんはお母さんの声が大好きであるとともに,お母さんの匂いも大好きです。新生児はお腹の中で記憶した母親の声や羊水の化学成分にもとづいた匂いを手がかりに母親を探します。新生児が備えている認知能力の最たる役割は,母親の探索だと言ってもいいかもしれません。

Cernoch & Porter (1985) は生後15日ぐらいの新生児がどれだけ自分の母親の匂いを識別しているかを実験的に調べました。母親(他にも,父親,出産経験のない女性,新生児を持つ他の女性)に就寝時に約8時間わきの下に挟んでもらったガーゼを匂い刺激として使いました。新生児は頭の側の左右に大人の匂いをしみこませたガーゼを取りつけるホースの先端が付いたベビーベッドに寝かされました。そして,左右に別々のガーゼを取り付けて1分間の後,2分間の休憩(この間にガーゼの位置を交換)を置いて,さらに1分間新生児がどちらに頭を向けるかを録画しました。5つの実験の結果,新生児が頭を向けていた時間は以下のようになりました。

実験1:母乳育児  母親>出産経験のない女性
実験2:母乳育児  母親>授乳中の他の女性
実験3:母乳育児  父親=無関係の男性
実験4:ミルク育児 母親=ミルク育児中の他の女性
実験5:ミルク育児 母親=出産経験のない女性

母乳育児を受けている新生児は母親の匂いに対する選好がありましたが,ミルク育児を受けている新生児にはそのような選好が見られませんでした。母乳育児によって新生児は母親の匂いに対する親近性を急速に形成するのかもしれません。また,当然と言えば当然ですが,父親の匂いに対する選好はありませんでした。

新生児は生まれて間もなくは羊水の匂いが好きですが(Varendi et al., 1996),生後2~5日にもなると逆に羊水の匂いを避け,母乳育児を受けている新生児は母親の乳首/乳輪の匂いを強く好むようになります(Varendi et al., 1997)。羊水と母乳の化学的成分は似ていると言われますが,新生児は慣れ親しんだ羊水の匂いを離れてすぐさま母乳の匂いを好むようになるというのは,外界の環境にものすごいスピードで適応してる証拠だとも考えられます。

<参考文献>
Cernoch, J. M., & Porter, R. H. (1985). Recognition of maternal axillary odors by infants. Child Development, 56, 1593-1598.
Varendi, H., Porter, R. H., & Winberg, J. (1996). Attractiveness of amniotic fluid odor: Evidence of prenatal olfactory learning? Acta Paediatrica, 85, 1223-1227.
Varendi, H., Porter, R. H., & Winberg, J. (1997). Natural odor preferences of newborns change over time. Acta Paediatrica, 86, 985-990.
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