長崎大学教育学部教育心理学教室 前原由喜夫研究室の記録

教育心理学とその周辺分野の研究や情報の覚え書きです。心理学の知見を教育実践に活用する方法を考えていきます。

今日は平成28年度卒業式

2017年03月24日 | 研究室雑記

今日は長崎大学の平成28年度卒業式でした。卒業式は長崎大学文教キャンパスから少し離れた長崎ブリックホールという所で行われました。私は仕事で見に行けなかったのですが,夕方からの謝恩会に行かせてもらいます(^^)みなさん,ご卒業おめでとうございます!


送ってもらった写真をアップしますv(^^)
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

感謝をすると健康になる

2017年03月17日 | 教育心理学
先日は卒業生からの思いがけないプレゼントに感謝が溢れ出し,思わずむせび泣いていた私ですが(心の中で),感謝(gratitude)をする人は精神的に健康だということがわかっています。

McCullough et al. (2002) は,その人が普段どれだけ他者や周囲の環境に感謝しているかを測定する質問尺度GQ-6を作成しました。この尺度は例えば,
「私には生活の中で感謝したいことがたくさんある」
「もし私が感謝を感じていることをすべてリストアップしたら,それはものすごく長いリストになるだろう」
といった日頃の感謝を評定する6つの質問に7段階(1=全然あてはまらない~7=とてもよくあてはまる)で回答を求めます。GD-6で測定された感謝特性の高い人,すなわち日頃からよく感謝をする人は,ポジティブ感情,人生に対する満足度,主観的幸福感,楽観性,あるいは共感性などが高く,逆にネガティブ感情や抑うつ傾向は低いことが,大学生(研究1)およびウェブサイトで募集した一般のボランティア回答者(研究2)で示されました。また,感謝特性の高い人は,妬み特性や物質主義傾向(物の所有を人生の成功や幸せだと考える)が低いことも示唆されました(研究3)。しかしながら,ポジティブな心理特性の高い人がもともと感謝しやすいのか,それとも感謝をする人がポジティブになっていくのか,因果関係の方向性はどちらなのでしょうか。

Emmons & McCullough (2003) は感謝を思い起こして書き記すことが,心身の健康に良い影響を及ぼすかどうかを実験的に調べました。研究1では大学生を対象に,毎週末にその週に「感謝したこと」,「イライラしたこと」,あるいは「印象に残ったこと」のどれかを5つ書いてもらうという課題を10週間にわたって行いました。それと同時に,その1週間のポジティブ感情,ネガティブ感情,頭痛などの身体症状,運動に費やした時間,自分が援助を受けたときの感謝感情,生活は全般的にどうだったか,そして次の週はどんな感じになると思うかが尋ねられました。その結果,感謝記述条件はイライラ記述条件よりも平均して他者に対する感謝感情が強くなっていましたが,ポジティブ感情とネガティブ感情は3つの条件間に統計的有意差は見られませんでした。ところが,感謝記述条件は,生活全般の評価,次の週への期待,身体症状が他の2条件よりも有意に良好で,運動に費やした時間はイライラ記述群よりも平均して1.5時間近く長くなっていました。


Emmons & McCullough (2003) 研究1の結果

研究2では大学生参加者に,2週間毎日「感謝したこと」,「イライラしたこと」,あるいは「他人よりもよかったこと」を5つ書いてもらいました。そして同時に,その日のポジティブ感情,ネガティブ感情,自分が援助を受けたときの感謝感情,健康行動(運動時間,カフェイン飲料,アルコール飲料,頭痛薬の摂取),そして向社会的行動(他者を助けたか,情動的サポートを与えたか)が尋ねられました。その結果,研究1とは違い,健康行動に条件間の差は見られなかったのですが,感謝条件はイライラ記述条件よりもポジティブ感情が増大しており,他者への情動的サポートが他の2条件よりも多い傾向にありました。自分の感謝に注意を払っていると,他人にも親切にしたくなるようです。

大学生だけでなく,もともとポジティブ感情の低い青少年(8~19歳)に対しても,日々の感謝を記述することがポジティブ感情に良い影響を与え,その効果が少なくとも2か月程度持続することが確認されています(Froh et al., 2009)。親切にされたときは素直に感謝しないといけません。そうでないと,精神的健康に対する良い影響を逃してしまうことになるかもしれないのです。

<参考文献>
Emmons, R. A., & McCullough, M. E. (2003). Counting blessings versus burdens: An empirical investigation of gratitude and subjective well-being in daily life. Journal of Personality and Social Psychology, 84, 377-389.
Froh, J. J., Kashdan, T. B., Ozimkowski, K. M., & Miller, N. M. (2009). Who benefits the most from a gratitude intervention in children and adolescents? Examining positive affect as a moderator. Journal of Positive Psychology, 4, 408–422.
McCullough, M. E., Emmons, R. A., & Tsang, J. (2002). The grateful disposition: A conceptual and empirical topography. Journal of Personality and Social Psychology, 82, 112–127.
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

卒業生からのプレゼント

2017年03月14日 | 研究室雑記


平成28年度卒業感想文集?

昨日は前原研卒業生歓送会(追コン)でした。卒業式は3月24日ですが,研究室の卒業生と3年生が交流するイベントはこれが最後だと思います。3年生が卒業生にプレゼントを用意してくれて,私もささやかながら彼らの門出を祝ってプレゼントを渡しました。ここまではしかし,卒業生も私に卒業論文集というか,教員や研究室に対する感想文集?を作ってくれていました。すごく嬉しいと同時に,非常に気恥ずかしかったので,その場ではあまり嬉しさを表現できなかったのですが,本当にありがとうございました!あと,鉢植え植物栽培キットと眼鏡拭きも,いろいろ考えてくれたんだなということが感じられて,とても嬉しかったです。

それにしても,卒業生は今から社会に出るので,何が起こるか楽しみで,夢や希望がいっぱいで素晴らしいです。私も何か新たな夢や目標を持ちたいものだと思いました。


飲み会後の店の外の廊下にて
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

経験しておくと意図がわかりやすい

2017年03月10日 | 教育心理学
生後6か月になると赤ちゃんは自分の意図する物に手を伸ばしてそれをつかみ取ることが容易にできるようになるとともに,他者が物をつかんでいる動作の中に意図や目標を見出すことができるようになります。もしかしたら,自分ができる行動と他者の似たような行動の中に意図や目標を読み取る能力は関連して発達するのかもしれません。実際に,10か月児は手元の布を引っ張れば布の上にのっている玩具が近づいてきて取れるようになるという状況において,他者が布を引っ張っているのは玩具を取りたいからだという意図に敏感な子ほど,自分が同じ状況に置かれたときには玩具を手にするために計画的な行動を取ることがわかっています(Sommerville & Woodward, 2005)。それでは,自分が行動することは,他者の同じような行動の意図や目標の理解を促すのでしょうか。

Sommerville et al. (2005) は3か月児を対象に,自分の行動が他者の行動の理解を促すのかを調べました。3か月児には自分の意図する物にまっすぐに手を伸ばしてそれをつかむというスムーズな動作は難しいです。実験では参加児を行動先行条件と観察先行条件に分けました。行動先行条件の赤ちゃんには最初の3分間に,後の馴化―脱馴化課題で用いる小さなテディベアとボールで遊んでもらいました。続いての3分20秒間には赤ちゃんは白いミットを手に付けたうえで,それらの玩具で遊びました。このミットは玩具がくっつくようにできており,玩具をうまくつかめない赤ちゃんでも玩具を手に取ることができるようになっていました。その後,赤ちゃんは馴化―脱馴化課題に取り組みました。馴化―脱馴化課題では,手が2つの玩具のうち1つをつかむ馴化場面を繰り返し見たあとで,玩具の位置が入れ替わって,手が同じ玩具あるいは違う玩具をつかむ2つのテスト場面を交互に3回ずつ見ました。違う玩具をつかむテスト場面での注視時間が,同じ玩具をつかむテスト場面の注視時間よりも長くなれば,3か月児はその手の動きの意図を理解しているということになります。一方,観察先行条件の赤ちゃんは,玩具で遊ぶ前に馴化―脱馴化課題に取り組みました。


テスト場面3回の平均合計注視時間

その結果,最初から馴化―脱馴化課題に取り組んだ観察先行条件では,手が馴化場面と同じ玩具をつかんでも,違う玩具をつかんでも注視時間に差は生じませんでした。ところが,最初に玩具で遊んだ行動先行条件では,手が馴化場面とは違う玩具をつかんだときの注視時間が有意に長くなりました。これは3か月児であっても,事前に同じようなこと(玩具に触れる・つかむ)を経験していれば,動作する相手の意図や目標を感じ取れるようになることを示唆しています。

たとえ3か月の小さな赤ちゃんであっても,自ら行動すれば同じような行動をする人の気持ちがわかるようになるのかもしれません。私たち大人も「経験しておいたほうが,その状況に置かれた人の気持ちがよくわかるようになる」と言われます。妊婦体験や高齢者体験,障害者体験といった当事者シミュレーション型の体験教育には確かにそのような効果が期待されるのでしょう。

<参考文献>
Sommerville, J. A., & Woodward, A. L. (2005). Pulling out the intentional structure of action: The relation between action processing and action production in infancy. Cognition, 95, 1-30.
Sommerville, J. A., Woodward, A. L., & Needham, A. (2005). Action experience alters 3-month-old infants' perception of others' actions. Cognition, 96, B1-B11.
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

赤ちゃんは意図と偶然を区別する

2017年03月06日 | 教育心理学
赤ちゃんは物をつかもうとする手腕の動きから,その人の意図(例えば,あのおもちゃが欲しい)を読み取ることができます。赤ちゃんは手の動きの“軌道”が変化したときではなく,手がつかもうとする対象の“物”が変化したときにより大きな興味を示して注視時間が長くなります。赤ちゃんは「この人は今度は違う物が欲しいんだ」と理解するのでしょう。しかし,赤ちゃんは手と特定の物が接近している場面を記憶しているだけで,手の持ち主がその物を取りたいと意図していることを本当に理解しているのでしょうか。

このことを調べるために,Woodward (1999) は手がおもちゃをつかむ動画あるいは手の甲が偶然おもちゃに当たる動画を赤ちゃんに繰り返し見せて馴化するという実験を行いました。もし本当に赤ちゃんが“つかむ”ことの意図を理解しているのであれば,手の甲が偶然おもちゃに当たる動画で馴化したときには,手の甲が同じ軌道で異なるおもちゃに触れる動画を見ても,異なる軌道で同じおもちゃに触れる動画を見ても,注視時間に差は生じないはずです。


手でつかむ


手の甲が当たる


Woodward (1999) 研究1結果:3回のテスト動画の合計注視時間

その結果,9か月児(研究1)は手がおもちゃをつかむ動画を繰り返し見た後には,手が同じ軌道で動いても異なるおもちゃをつかむ動画のほうを,異なる軌道で同じおもちゃをつかむ動画よりも有意に長く注視しました。これは先行研究と同じ結果です。しかし,手の甲が偶然おもちゃの上に落ちる動画を繰り返し見た後には,そのような注視時間の差は見られませんでした。5か月児を対象に同じ実験を行っても(研究2),結果は有意差こそ見られなかったものの同じような傾向となりました。したがって,赤ちゃんは単に手とおもちゃが接近することを記憶していただけではなく,「手がつかむ」ということに「この人はこのおもちゃが欲しいんだ」という意図をしっかりと読み取っていたのだと考えられます。

<参考文献>
Woodward, A. L. (1999). Infants' ability to distinguish between purposeful and non-purposeful behaviors. Infant Behavior and Development, 22, 145-160.
コメント
この記事をはてなブックマークに追加