ナチュラルボーンライター

職業:書き手、特技:企画考案…そんな私、夏目幸明がゆるく更新。mixi:ナチヲ twitter:natsumedayo 

「文具王」に聞いた、ものを「見る」こと

2006-09-26 21:40:38 | 出版人の日常
久しぶりになってしまいました。
書くことを仕事にしているだけに、
何だか、綴る一方の毎日に
疲れることがあるんですね。

こういう状態になると、
メールに返事もできなくなってしまう。
でも、やっと脱したみたいです。
だから、久しぶりに書きます(笑)。

というのも、今日はまた格別、
書きたくなることがあったんですよ。
文具王」と呼ばれる方の取材に行ってきたのですが
さすがは文具界のカリスマ、
話が超絶、おもしろい。

その方は「サンスター文具」という会社に
お勤めの方で、TVチャンピオンの
「文具王決定戦」で優勝し、
今の会社にスカウトされた、という
経歴をお持ちです。そして今までに
「シュレッダーはさみ」など、数多くの
アイデア文具を手がけてこられました。

たとえば、コンパスってほとんどの場面で
定規と一緒に使いますよね。
しかも、半径●センチの円を描こうとして定規を当てると
コンパスを開くとき、定規を軽く押してしまったりして
どうしても、うまくいかなかったりする。

そこで、彼はコンパスの入れ物に
5㎜きざみのくぼみを作り
円の中心に来る針の先と
円を描く鉛筆の先をここに刺せば
簡単に決まった大きさの円が描ける、という
仕組みを作りました。

そんな彼は言います。
「ものの成り立ちを見るんです。
なぜこうなっているかがわかると、カイカンなんです」と。

たとえば、空を見上げて歩くと
「消火栓」とか書いてある看板を見ますよね。
これ、2箇所で吊されているわけですが…

その1箇所は、チェーンで吊されている。
もう1箇所は、金属の棒で吊されている。

そして、これには理由があるんです。
たとえば何かの力がかかり、金属の棒が折れても
もう片方がチェーンだから、看板が落ちることはない。
だが、両方チェーンだと、ふだん
風が吹いただけでブラブラしてしまうから
片方は堅い金属の棒で吊してある。

たとえば、ファブリーズとか、消しゴムとか
手で持つものって、必ず、右手で持ったとき
ロゴが読めるようになっている。

こんな風に、彼はいろんなものが
どのような来歴でできているのかを
ものすごく考えるわけです。そして…

「その”もの”がなぜこういう形になっているか
理解できたとき『じゃあ、こうすればいいじゃん』という
アイデアが沸いてくる」と言うんですね。

ぼくは、周りにあるものをどれだけ真剣に見つめていただろう?
歯ブラシの取っ手の一番下にある穴はなに?
皿の下にある円形の支えみたいなのはなぜついている?
ものだけじゃない。人間のかたちを、ぼくは
どれだけ真剣に考えていただろう?

今日は、そんな発見があった一日でした。

柿は熟せば勝手に落ちる

2006-09-04 21:15:13 | 文章と取材の技術
最近、出版どうこうのブログでなく
自分が感じたことをただ書いてるだけなわけですが…。

近頃感じたことのなかで
一番大きいのがこれです。
「柿は熟せば勝手に落ちる」

大河ドラマも佳境で
もうすぐ、秀吉が死んで
家康の天下取りが始まるわけです。

そんななか、家康に扮する
僕が大好きな西田敏行さんが
上のような台詞を言ったわけです。
(かなりあいまいな記憶で書いているので定かではないのですが)
「人の世は自分が、自分が、と
あまり押し出しすぎても上手くいかない。
柿は熟せば勝手に落ちる」みたいな。

これは強く感じますね。

僕はこの前、人と一緒に仕事をすることになりました。
いえ「雇った」というと、まるで
自分と仲間のあいだに
上下の関係があるような感じがするので
「雇った」とは書きたくないのですが
まぁ、お仕事を任せられる方ができたわけです。

実は、ずっと、ずっと、もう5年くらい昔から
人を雇って、たとえば、ムック1冊引き受けるとか
1人じゃできない大きな仕事を
どんどん引き受けられるようになりたいと思っていたんです。

しかし、雇ってしまった限りは
「1人じゃできない大きな仕事」を
どこかから見つけてこなければならない。

しかも、雇う限りは、相手にも
「この人と一緒にいれば!」と
納得してもらえるだけのものを身につけていなければならない。

これは、今になって初めて思うことで
当時は、まだわかってなかったんですね。
で、人を雇おうとしても、上手くいかない。

しかし、目の前の仕事を必死でこなすうち
こういう経緯で人がきてくれたんです。

まず、その人は会社員で、
文章を書いたり、編集したりする仕事がしたかった。
その友人に、ちょうど、この怠け者のブログを見てくれた人がいて
ある日、メールが舞い込んできたんです。

しかも、ずっと昔のブログに
僕が「人と一緒にやりたい」と
書いたのにもワケがある。

今度、週刊現代で連載をすることになり
(ちょっと、遅れてますが10月にはスタート予定!)
週刊ベースで仕事をしていく限り
たとえば、アポイントの電話を入れ
企画書を送り、企画の内容を説明し
取材OKが出たら日時を決め…といった
文章を書く以外の仕事は、もう自分だけではこなせない。
しかし、なにしろ週刊ベースで仕事をするわけで
「仲間」に支払うお金の心配はない。

要するに、無理して人を雇おうとして
動いていたときは上手くいかなかったけど
人を雇わないと仕事が回らない!という
状況がやってきたら、そのとき、ちょうど
大事な大事な仲間が、目の前に現れてくれたわけです。

柿は熟せば勝手に落ちる。
自分はどうも「攻め」の仕事、「攻め」の人生を送ってきたけど
ときに、待つことは、攻めるより合理的だ。

ちょっと、オトナになった気分です。

あと、前回の駄文にコメントを頂いた方、ありがとうございました。
僕の夢は、本を出すことでなく
見知らぬ誰かに、こう言ってもらうことだったのかな、と思います。
死ぬとき、もう一度読み返してみたいと思うくらい嬉しいです。