yukaの読書・音楽・旅行日記

好きな本や曲、旅先での出来事などを、マイペースで綴っていきます。

セミの鳴き声が響く場面

2017-07-13 | 読書

 最近はこちらも暑い日々が続いています。

 お隣は山形県の観光名所・山寺(立石寺)で詠まれた芭蕉の俳句は、今更ここでの解説などいりませんが……。夏になるとよく思い出す小説の場面のひとつが、三島由紀夫の大作・豊饒の海より、“天人五衰”の最後の場面です。この“天人五衰”自体が、連作の最後を占めているので、まさしく大作のラストシーンです。なぜ芭蕉の有名作品を引っ張り出したかといいますと、この場面での音がセミの鳴き声だからです。

 映画にもなった“春の雪”では、二十歳前後だった登場人物の一人・本多繁邦(ほんだしげくに)も、さすがに“天人五衰”では老人となっています。“春の雪”で夭逝した友人・松枝清顕(まつがえきよあき)と、その生まれ変わりである飯沼勲(いいぬまいさお)、ジャントラパー姫(タイの王族の一人)との関わりが、この“天人五衰”では、偽物(?)の転生者・安永透に取って代わられてしまいます。透との暗闘を経て自分の死期を悟った本多繁邦は、清顕の恋人・綾倉聡子が出家し、今も住む月修寺(奈良の門跡寺院・円照寺がモデル)を訪問しますが……。

「え???」

これが、初めて読んだ時の感想でした。記憶も何もない、烈しい夏の日差しとセミの声しかない場所へ、繁邦は来てしまったと感じます。この静謐さは、私の乏しい語彙では何とも表現しようがありません。

 三島由紀夫は、私の周囲の年長者の間で、かの自決(まだ私は生まれていません)が強烈なインパクトになっています。

「あさま山荘の時もだけど、みんな用事を放り出して、テレビを見ていた」

だそうです。この静かな場面と、盾の会での活動や壮絶な自決が、私の中でもなかなか結び付きませんでした。豊饒の海の第2作“奔馬”は、いかにも三島らしいと、すっと受け止められましたね。

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