中年オヤジNY留学!

NYでの就職、永住権取得いずれも不成功、しかし、しかし意味ある自分探しに。

くたびれサラリーマン上海へ行く その(2)上海への機上にて

2018-02-16 10:19:06 | 小説
現在2000年頃に小説形式で書かれたものを、連載しています。
今回で2回目ですので、話の内容が大きく動くのは先ですが、何の小説でも後半に”ドドット”展開します。 どうかシビレを切らさずお付き合いください。





その 2)
( 上海への機上にて
 )

いよいよ、ボーディング(搭乗)である。 失礼だが、中国人が搭乗する際の状況はけたたましい、というのが次郎(松尾)の印象だ。
彼は何年か前、中国の地方空港で搭乗の際、先を争う中国人の乗客が、タラップに殺到し、そして中程でダンゴ状になり、落ちそうになったのを目撃している。
不思議だった、もう登場する前に自分の座席は決まっているのに、なんで多くの人がタラップめがけて、そして座席に急ぐのかと。
ともあれ、この上海行きは、無事に収まった。

いつも、次郎にとって中国への飛行機で、多少気になるのは、隣の席は誰が来るか?
日本人の癖のあるオヤジか、はたまた無骨な中国男子か、あるいは美しい中国女性(小姐)か?
次郎にとって、できることなら、上海までの2,3時間、となりの席はきれいな女性にこしたことは無い。
しかし、今回、次郎のとなりは日本人の母娘づれ、しかも娘のほうは社会人らしい。
次郎にはなんでこういった組み合わせの二人が、わざわざ中国へ旅行に行くのか不思議だった。
(2000年前後、中国への飛行機に乗るの常連は、経済の夜明けを狙って一発当てようとする中小企業のオヤジ連中、はたまた主人公の次郎を含む日本女性に相手にされない“婚活やりなおし組”が相場だった)
以前、後ろの席の日本人の会社出張グループの会話に耳を立てれば、”何か後から来た劉さんの行動、何かおかしいよな?”。
ようするに中国でのビジネス構築過程で、何か府に落ちない点があっても、引くに引けない、もう中国を外すことは出来ない時代へ入っている。
ただ中国へ踏み入れるということは、トランプの”ババ抜きの婆”をつかまされる事もあるということだ。 

上海行の飛行機はあたかも”アトランティック・シティー(米国の有名なギャンブル都市)行きのバスと同じなのだ。次郎にしてみたら、それらと無縁な無垢な感じの女性旅行者二人、選りにもよって何で中国への感がある。
幸か不幸か、お互いに話し掛ける必要はなさそうだ。
(そして、飛行機は離陸)




次郎は、今回のこの上海行きを決めたことを座席に着いて、再び後悔しはじめた。
正直いって、次郎は余り飛行機が好きでなかった.
飛行機は天候の具合で揺れる、時には激しく、あの揺れはどうにも好かなかった、どう見ても次郎にとって、飛行機が墜落する前兆にしか思えない。
出来るものなら、飛行機に乗りたくない、でも乗らなければ、世界のどこへも行けない。
行かなければ、飛行機に乗らなければ、何も新しい世界を見ることができない、すなわち自分を変えることが出来ないかもしれない。
ここが、次郎のジレンマ。
次郎は皮肉にも外国論者。
賭けごとの好きな人だったら、いつか大きく勝負し、大金を得て、一気に人生を変える。
そういう人達にとって、いつか大きく勝負に勝つことが夢かも。

その点、次郎の場合は異国を訪ねる事であった。
時には、外国を見て、日本の良さを知る場合もある。
日本だけ、見ていてはダメ、新しい発見があれば、どこでも行くべきと、彼のこじつけだが、中国の嫁さん捜しも、その延長かとも思われる。
“怖い飛行機に乗らなきゃ、中国の嫁サンは手に入らないか…・”とただ、飛行機が今回は、揺れないで飛んでくれと祈る次郎。
さらに、“とんでもない(中国女性)のを、今回紹介されたとしたら、オレの今回の上海行きはムダになるが、…・・しかし逆に良い人だとしても、問題だな、”と。
なぜなら、イタコ商会の山下の言うことには、中国人と結婚するには例え、相手を気に入っても少なくとも手続に3,4回行ったり来たりしなければとのこと。
“それも、参るな、(会社の)自分の廻りの人間が休ませてくれるか…・(ハーと、そこでため息)…・・また、怖い飛行機に何回も、この件で乗る羽目にもなる。”
 
窓越しから外に、目をやると空は完全に夕闇。
“出来ることなら、飛行機は明るいうちの昼便に乗りたい。 明るいうちなら、落ちても乗客の中いくらか助かるかもしれないが、暗くちゃ全員ダメだもんな。”と次郎の飛行機嫌いが、また始まった.
同じ夜間飛行でも、天候の違いで飛行はまるっきり違う。
まるっきり揺れないでおとなしく目的地へ着いてくれるときもあれば、そうそう、一度、出張で北京へ行ったときは、最高に揺れた、機体がグシャグシャと揺れた。思い出しても怖い。

しかし今日は、幸運か今のところ揺れも無い、おまけに下の街の明かりが、高度一万メートル前後から見ているとは思えないくらい手に取るようにわかる。
ふと次郎は、昔、第二次世界大戦中に日本に空襲にきたアメリカのパイロットには、投下管制下で電気を全て消し真っ暗な中でも高度から日本人の吸う煙草のわずかな火も見逃さなかったとかいう。 これは次郎の父親の時代の人間の作り話だか、ほんとだかの話しを思い出した。
闇の夜だが未だ日本上空のせいか、明るく光る街や道路が見える.
日本には、山や川もあるはずなのに、なんでこうも夜なのに明るいところばかりなのか、次郎には不思議だった、というか、これでいいのかという感じが強い。
ちょっと文明が発展し過ぎるのではないだろうか。

7年前、中国の紅西省に行ったとき(今では変わったと思うが)夜、空港から市街地へ出る道中、街路灯は殆どなかった。
タクシーが旧い車はともかく、道に頼りになる街路灯はほとんど無い、タクシーは自分の前哨灯だけがたより。
闇夜に次郎の乗ったタクシーのライト前方に突然と映し出される自転車の二人乗り、日本と違って自転車の後輪に反射鏡がない、更に前照灯らしきライトもない。
しかも、自転車に乗る人間のほとんどが、闇に消えるグレーか,地味な作業着だか人民服だかで、闇と人間の区別が出来ないあたかも、闇夜で視界に急に現れる人の乗る自転車には、突然コウモリに鼻をかすめられるように、ビックリさせられる。
それも、突然、出没する自転車数え切れない。

工場か何かの退社時であったかもしれない。
次郎は、“オレが車を運転したら、必ず人をひき殺してる”と。
さらに、“自転車のライトは高価としても、なんで、それほどすると思えない反射鏡を中国の自転車は付けないのか、”と頭をかしげた。

日本上空を飛行する一時間余、下界に光りの絶えない日本がある。
美しくもある。
衛星から観測すると、この地球上で一際一番、明るく、あたかも指輪の宝石のように輝く島、それが日本だそうだ。
機内食を出されて、気分転換をしても、時間的にまだまだ怖い飛行機から降りれないのが、海外旅行だ、まだまだ着かないのだ。
“さて、今度は、雑誌を読むか、ヘッドホーンをして自分を紛らわすか”と次郎。
しばらくして、機内灯は消されて、必然的にそこかしこ静寂の時を迎えた。
上海は近いといっても、やはり外国である。 飛行機の座席にすわり“タイクツ”な時間を過ごさないと着かない。
次郎は飛行機で寝れる人は、羨ましいと思う。 寝れれば遠い外国も、アッという間だろうにと。
日本の領域からはなれた飛行機は完全に闇夜になった空を、今回の飛行はベタ凪を航行する船のように静かにすべるように飛ぶ。

30分も、寝ただろうか。
次郎はそのまま目を閉じてはいるが、機内灯が引き続き消されているにもかかわらず、人の動きがあわただしくなってきた。
上海が、それほど遠くないことを、誰もが感じ始めた。
承知の通り、飛行機は着陸の約30分前から、高度を下げ始める。
不思議と、次郎は飛行機が嫌いなくせに、下降体制に入ると、恐怖心がいっ気に無くなる。
実際は、パイロットにとって、着陸が一番難しく、危険だということだが、次郎の飛行機に対する恐怖心は逆なのだ。

そこで、“来て良かった”、“無理してよかった”と、
次郎の心の中で、あたかも、眠っていた闘争心が爆発したかのように、すこし前までの、飛行機への恐怖心はかけらもなかった。
“やっぱり、何かしなければ始まらないのだ”
“もちろん、これから会う二人の女性はとんでもない悪(ワル)の可能性もある、しかし、今の自分の生活に長く満足していなかったのも事実”
“ただ女がほしいのとも違う”
“仮に、今回お互いに気に入って、一緒になって、その中国の女性に、家の事や、オレの面倒を全て見てほしいのとも違う”
“オレは、長く独りもんをやってきて、料理も出来るし、洗濯も苦にならない”
“そんな、セコイことを望んでいるのでもない”
最初は当然、日本語もろくに話せない中国の女性が、次郎の都合の好いように家のことが出来る訳がない。
むしろ、最初はゼロどころか、マイナスから、つまりスタート・ラインの手前から始まるに決まっている.
仮に、結婚することがあっても、あたかも一から育てる覚悟でなければ。

そこで次郎は自分自身に問う、“何なんだ、オレは何がほしいのだ…・・何を望んでいるんだ……”しかし、この答えは、容易に出るべくも無い。
心のモヤモヤが、次郎には何であるか、なかなか絞りきれない
しかし、このとき、次郎には答えが思いつかなかったが“(次郎が)何かを捜している”状態にいることだけは、わかった。
飛行機は、徐々に高度を下げる。
街の灯り、車のライトに照らされている市街地の、人々の生活が感じられるような、ところまで降りていく。
上海へ来るたびに、灯りが増え街全体が明るくなって来ているように見える、すこし前まで、ハイウエイもなかった、そして上海が以前にも増して国際都市としてのプライドを持ち始めつつあるように見える
そうこうしているうち、機体の油圧系統が作動して、車輪が出始める、その振動が乗客にも伝わる、飛行はランディングのための最終局面へ。
飛行機は、幹線道路をまたぎ、上海の市街地をなめるように高度を下げる。
ついに、飛行場の施設と見られる建物を、窓の外にみる。
そして、乗客の地上を見る目線が水平になったところで、車輪がかすかに大地と接触し、しずかに滑走路へ滑り込み、そして、その直後に急激なブレーキの負荷がかかった。
機体は急激に減速。
笑うかもしれないが、次郎はこれ以上、墜落が起り得ないことに安心し、飛行機の外を大きく見入る。
前方斜めターミナルの上に、赤く大きい漢字二文字のネオン
“上海”と夜空に浮かびあがっている。

次郎には来たぞという感じである。
“この上海にいる、数日間が俺にとって、会社で遠慮しながらも、皆に調子を合わせてうまくやっていることに対する、ご褒美なんだ、怖い飛行機にも乗ってきたことだし”
“別に、必ず紹介されている、女性をものにするという意味ではない”
“とりわけ、今、大事なのはどうのこうのと自分が、ここしばらく考えていた、自分のシナリオがこの上海で、その通りになるかどうかが問題なんだ。”
“そして、いかに上海にいる短い時間を有効に使えるかが問題だ”
“なぜなら、日本に帰れば、また、自己の感情を押し殺したサラリーマンに戻らなければならない
“上海で時間を有効に使ったか、否かが、日本に帰った後の、しばらくの間の自分に影響してくる”

そうもこうもするうち、乗客は各自の手荷物をもち、ターミナルのなかへと先を急いだ。 夜も9時前後とおそく、出発便を待つ客もなく、旧い閑散としたターミナルの中の廊下を、イミグレーションへと誰もが急ぐ。
イミグレーションのカウンターの窓口の先にある前方の窓ガラスには、出迎えの人々がたくさん、自分の待ち人はどこといわんばかり、へばりついている。
今日の次郎には、誰も迎えが無い。
もちろん次郎には、上海の土地感があり、ホテル捜しにウロウロすることはないが、それは、寂しくもある。
もちろん、男性にとって、外国からわざわざ飛行機に乗りよその国におもむき、飛行場で女性が待っているなんて、こんなにロマンティクなことはない。
しかし、今回は紹介された二人の女性ともに、これでよしと思えるまで、次郎は距離を置きたかった。
なぜなら、男女の関係は動き出すと、時として容易にとめることが難しい場合がある。
これから会う二人に、なぜ飛行場に迎えに来させないか不信がられても、最初のうちは公平に二人を見たかった。
あるいは次郎が自分自身に性急に答えを出させないためにも。
ラゲッジ・クレームで自分の旅行カバンを手にいれ、次郎一人、約二十メートル離れたガラス張りの出口へと向かう。
先ほどらいの、出迎えの人が鈴なりになり、次郎が来る方向を注視している。
出迎えのいない次郎でさえも、一種の興奮状態に。

“サア、これからだな”と次郎はつぶやいた。

(続く)


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