como siempre 遊人庵的日常

見たもの聞いたもの、日常の道楽などなどについて、思いつくままつらつら書いていくblogです。

真田丸 第49回

2016-12-15 21:47:49 | 過去作倉庫15~
 プレ最終回です。
 毎年言ってますが、最終回の1話前の回は、そのドラマ全体の出来を明確に反映していると思います。だめなドラマのプレ最終回は、やっぱり退屈だったり、へんなつじつま合わせに終始してつまらない。全体が素晴らしい出来のドラマのプレ最終回は、いわゆるところの「神回」になる確率が高いです。
 その点にかんがみて今年のプレ最終回を見ると、やっぱり全体の出来を良くも悪くも反映していますね。「盛りだくさんで面白いけど、特にこれといって印象に残らない」
 というわけで、真田丸も、もうすぐ面白くなる、もうすぐ、もうすぐきっと……と思い続けてプレ最終回まで来てしまいました。この祈りが天に通じて最終回がひっくり返るほど面白くなるかっていったら、そこまで期待するほどノー天気でもありません。まあ、結局こんな感じで、さいごまでイマイチかゆいところに手が届かない感を残したまま、今年も暮れていくのでしょう。
ということで、第49回「前夜」です。


今週のざっくりしたあらすじ

 源次郎は死ぬ気だ、俺が行ってとめてくる! と固い決意に力こぶつくって支度をはじめた伊豆守信之(大泉洋)。当然ですが、稲夫人(吉田羊)はすごい形相で止めます。源次郎殿は敵軍の将、敵将と内通したことがわかったら真田の家が危ういじゃないですか。家を危険にさらしてやることですか。と、あきらかに夫の身の安全より家の安全の方を案じています。まあ、一家の主婦というのはこういうものかもしれませんね。おこう(長野里美)のほうはまだ、これからはやりたいことをやってください、いままでご苦労様されたんだから的な、退職後の亭主の道楽を放任するような優しさがただよっていますが。
 しかも稲ちゃんったらひどくて、「どーしても行くというなら真田の者だとわからないようにして行ってください。途中でドジ踏んで家に迷惑もちこまれたらかなわない」だと。そしておこうが手渡した「お守り」が、かの上田合戦が縁起の真田家必須アイテム・六文銭。おお…。と、感動するところなんでしょうか、これは。こんなんジャラジャラさせて歩いたら、真田の者だバレバレだと思うんですが。
 こんな具合で、信之ひとりで行くのもまったく無鉄砲なのですが、そんなとき信尹叔父様(栗原英雄)が真田左衛門佐調略の密命をおびて大坂に潜入する、という情報を耳にします。そこで渡りに船と叔父さんにくっついていくことに。
 そして大坂城では、「無条件降伏なら助けてやってもいいよ」的な家康(内野聖陽)の書状に、秀頼王子が徳川との手切れを宣言し、幸村(堺雅人)中心の軍議がひらかれます。冬の陣の軍議でボツになったのとほぼ変わらない作戦(広域にゲリラ的に展開して家康の首を狙います作戦)を献策してどや顔の幸村に、秀頼様を大坂城から出すとはとんでもないこと!と非難の嵐。結局、ヤンキーお兄さんたちが献策した、秀頼様はお城に飾っておいて、みんなで打って出て大坂城周りで迎え撃つ。あとは流れで。というアバウトな作戦が採用されます。
 そして、こまかい打ち合わせは社食で行われ、陣割りやなんかまでそこで決めちゃうんだけど、いいのかね、そんなんで。居酒屋に社外秘のトップシークレットを持ち出して話すみたいなことで、けっこうヤバいんじゃないだろうか。
 こんな適当な大坂城とちがって、家康軍のほうは緻密です。全国から大名が続々と集結し、それを指揮する体系も整いつつある。んでも総大将の秀忠(星野源)が、穏便な解決を模索しているおやじの家康に「豊臣の血はひとりのこらず根絶やしにするのですっっ!!」などといってかみついてますが、うーん、なんで秀忠がここまで過激なジェノサイドを主張するようになったのか、いまいち唐突だし流れが謎だよな。この人、毎回のようにキャラが違うので、面白いけど、なんか情緒不安定の心病む人みたいだよ(そういう設定かもしれないけど)。
 若い世代のキレ体質に不安をおぼえた家康は、久しぶりに上杉景勝(遠藤憲一)と飲みます。お互い生き残ったのう…と一方的にシミジミする家康ですが、景勝のほうは今や財産不動産をうしない、米沢に飛ばされて貧乏暮らしで、シミジミするどころじゃない。「そーいえば夏の陣で真田左衛門佐を見ましたけど、あいつ私がこーありたいと思ったような生き方をしてますわ」と、渾身の嫌味をかまします。「私なんかにシミジミ打ち明け話をするのは、なんかやましいからじゃないですか」と。ま、家康には通じてませんがね。このくらい鈍感じゃないと天下なんて取れませんよ。
 さて、信尹叔父さんと一緒に幸村に密会を果たした信之。家康が、信濃一国くれてやるから寝返れといっても、幸村はぜんぜん動きません。信尹叔父さんは最初から調略する気なんかなく、ただオファーを伝えるだけで任務完了なので断られても平気ですが、信之はいちいち動揺します。いやならオファーを受けなくてもいい、家康に楯突くのもかまわん、だが死んではいかん。おれはぜったいお前のことを助ける、この前みたいに。信じてくれ。っつったってなー、どの口がそういうかって感じですよね。弟の復権活動をダシにゲス不倫してやがったくせに。あ、ついでに、ここに来るまでに家康軍で事務方やってた室賀正武の息子と偶然会い、身バレしそうになったとき「黙れ小童ァ!!」と怒鳴りつけて相手を圧倒してましたけど、あれで圧倒される相手も相手だよね。何だろう、この人の、急に湧いて出た根拠のない自信。
 そして幸村は「で、また十四年ですか?」とキョーレツな嫌味をかまして兄貴を黙らせます。犬伏の陣で、父上と、いつか必ず再会して酌み交わそうと誓った盃を、せっかくだから今酌み交わしましょうよ。どうすか一杯。という幸村に頑なに背を向けて、「これが今生のわかれじゃないからな!」といって信之はさっさと帰ってしまいます。なんか、ほとんどガキですね。
 そんなこんなで、大坂夏の陣はいよいよ開幕。こんどは前回の冬の陣とちがって、堀も真田丸もありませんから、進軍してくる敵軍を城の外で迎え撃つしか方法がないわけです。家康の本陣がどの道を通ってくるか、まるで日本海海戦みたいな二択で張って、緻密な陣割りも決めるのですが、この策がことごとく敵に読まれてしまい、手薄なところを本陣の大軍勢に正面から襲い掛かられて緒戦は無残な敗北。名刺配りまくって就活一直線だった塙団衛門が、真っ先にあの世に就活一直線とあいなり、大坂城に死体第一号となって運ばれてきます。
 これを茶々(竹内結子)が見て、「あんたたちみんなこの男の横に並んで死体になるの?」などと、うつろな目をしていうのですが、きりちゃん(長澤まさみ)「おかみ様にウロウロされると士気が下がりますから」と、普通の人は主人筋にとても言えないようなことをサラッと言って、茶々を現場から遠ざけてくれます。前からそうでしたが、非常時にはすごいパワーを発揮する人ですね。
 おかしい、敵に動きが読まれている気がする。スパイの有楽斎は追放したのに何故?ほかにも間者がいるということか、と真顔でつぶやく幸村でしたが、あのよー、大坂城みたいなでっかい、それも有象無象でイモ洗いみたいになってるところに、間者が一匹しかいないと思うほうがおかしいんじゃないの。しかも、居酒屋に極秘案件を持ち出して大声でしゃべってたじゃないですか。危機管理能力ゼロだよ、こいつら。
 というわけで、はい、まえまえからわかりやすいフラグが立ってましたとおり、間者はその、居酒屋兼社食の大将だったのですが、この大将、家康軍との連絡役に、日光江戸村のアトラクションみたいな黒装束のニンジャつかってやんの。なにこれ(失笑)。笑っていいところなのかしら。こんなもんが前からうろうろしてたとしたら、「ほかにも間者がいるのか」もあったもんじゃないよね。
 さらに、後藤又兵衛には二重の罠がかけられてました。適当な調略をかけ、播磨35万石でヘッドハンティングされたと噂を流したのですね。仕掛けたのは老獪な本多佐渡(近藤正臣)です。敵陣から誘いがかかったことで疑いの目を向けられ、平気そうな顔してても内心では動揺して、力みから戦場で拙策に走る又兵衛。っつってもこの人、前には大坂城での扱いが気に入らなくて「徳川につこうぜ」とか平気で言ってましたけどねえ。こんなふうに、もともといい加減な連中の寄り合い所帯的な豊臣軍は、翻弄されてボロボロ。華麗な死亡フラグをお互いに立てあって出撃していった後藤又兵衛と木村重成が討ち死にしますが、これがまったくの犬死になんだよね。まあ、犬死が悪いわけでもなく、犬死っぷりで逆に盛り上がる場合もありますが、そんなカッコいいノリでもない。単に消去って感じ。
 幸村の迎え撃つ先には、家康の本陣ではなく伊達政宗の軍が。幸村は「これで終いかー!」「徳川に男はいねーのかー!!」とか言って挑発し、伊達政宗と、なんか目と目で語り合ったりしたようす……なんですが、よくわかりませんね、ここは。目と目で語り合えて台詞がいらないくらいに基盤がしっかりできているドラマでもないから、いきなりアイコンタクトで複雑な意思疎通をされても、みてる方はポカーンですよ。
 幸村と政宗が電話やメールじゃなくアイコンタクトで打ち合わせたのは、「大坂城にいる幸村の妻と娘を政宗が預かって保護する」というものでした。政宗は快諾し、かくして春ちゃん(松岡茉優)とむすめの阿梅は大坂城を脱出し、政宗の陣に。きりちゃんは「悪いが大事な仕事を頼みたいから残ってくれ」と言われます。
 その頼みというのは、戦になったら千姫をひそかに連れ出して徳川の本陣に送り届ける、という大仕事です。千姫から離婚したい、実家帰りたい、と打ち明けられてたこともあるけど、実家に熨斗つけて送り返すのは、もう完全に退路を断って死ぬ覚悟ですよね。豊臣家もろとも。そういうのは、べつにあえて言わなくても腐れ縁の長いきりちゃんにはわかって、ミッション済んだら沼田なり上田なりに帰りなさい、というのを拒否します。「源次郎様のいなくなった世の中で生きててもつまんないから」と。
 そんなきりちゃんを、源次郎はガツッと抱きしめて熱いキッスに及ぶのですが、抱きしめられてきりちゃんは、
「わたくしのおなごは今宵が限りでございます…」
じゃないや、「…遅いっ!」とうめくのですね。「せめて10年前に。あのころが私いちばんキレイだったのに
と、やまない憎まれ口をチューで封印されて、それでも悪態つき続けるきりちゃん。なんか……言っていいかな、この子最高だ。
 真田丸に関しては、全出演者を並べてもガッカリが80パーセント以上だったけど、文句なしのオスカーを上げるとしたら、男は真田昌幸、女はきりちゃんですね。最終回を待たずして今年の天晴れ主演女優賞決定、というところで、最終回に続く。


 今週のざっくりした感想

 このプレ最終回が放送された週に、脚本家の三谷幸喜さんが「あさイチ」にご出演になり、真田丸についていろいろ語っておられたということですが、しがない勤め人のワタクシは見ておりません。でも、氏が「真田丸を支えてくれるファンのために1年間頑張ろうと思った」という趣旨のことを言っておられたときき、ちょっと、それどういう脈絡で言ったのか見たかったな、と思いました。
 というのは、この真田丸に関しては、「ファンの皆様の期待に応える」ということが完全に悪く作用して、もっとおもろくなっていいはずのドラマをだめにしたとしか、私には思えないからです。その辺のことをどう考えてるのかな、この人は。大河ドラマが今後、視聴者の期待に応えてネタを提供するコンテンツとして存続する道を開いたという意味では、大河ドラマ史上ひとつのマイルストーンとはなると思いますが、それが果たして三谷幸喜さんの本意だったんでしょうか。
 今年は世界的にも、英国のEU離脱やアメリカ大統領選挙の大番狂わせで、ポピュリズム=大衆迎合という言葉がたくさん語られました。そういう歴史的風潮にも寄り添っている、ある意味深い考察の余地がある大河ドラマかもしれません。これからの世界に、あまり明るい希望をもてないのと同じように、こーゆーネタドラマの道を選んだ大河ドラマにもあまり明るい未来を思い描けませんが、まあ、わたしにはもうそんなに関係ないことです。2016年の大河ドラマが駄作だったらこういう道楽は今生最後にすると念頭に決めましたとおり、大河ドラマのレビュー活動は今年をもって終了といたしたいと存じます。
 最終回を待たずにこんなこと言ってるのは、実は来週予定があって最終回をリアタイで見られないからで、録画はしておくつもりですが、それを見てなにか語りたいという意欲があまり沸いてこないのですよね。これが最後になっちゃったらすみません。できるだけ頑張って、最終回を見て年内に総括をして、10年つづけたレビュー活動の最終回としたいと思ってます。お約束はできませんが。
 それでは。