結禾の散歩道 ~Yufunogi-no-Sanpomichi~

自然の「めぐみ」、「つながり」に「ありがとう」を伝えたい。自然、風景、日常の事など自由気ままに掲載させていただきます。

嚴嶋神社(鹿毛馬) 【筑前國嘉麻郡】

2010年02月15日 00時11分55秒 | 神々&祭り

 豐前國と筑前國の境に位置する烏尾峠(からすをとうげ)と日思山(ひおふやま)。その西の嘉麻郡鹿毛馬村(かまのこほりかけのまのむら)に、嚴嶋神社(いつくしまじんじゃ)は『當村産神』【鹿毛馬の産土神】、牧野神社(まきのじんじゃ)は『嘉麻鎮守』【嘉麻郡の鎮守神】として鎮座しています。

 

[所在地] 福岡県飯塚市鹿毛馬1083番地(地図
[経緯度] 北緯:33度40分22秒/東経:130度44分6秒
[御祭神]
 【嚴嶋神社】
  市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)
  田心姫命(たごりひめのみこと)
  湍津姫命(たぎつひめのみこと)

 【牧野神社】(相殿合祀)
  狹野尊(さぬのみこと)
  大山積命(おほやまつみのみこと)
  保食命(うけもちのみこと)
  倉稻魂命(うかのみたまのみこと)

 

さて、『日本書紀』に…。

即以日神所生三女神者。使隆居于葦原中國之宇佐嶋矣。今在海北道中。
【即(すなは)ち日神(ひのかみ)の生(あ)れませる三女神(みはしらのかみ)を以(もち)ては。葦原中國之宇佐嶋(あしはらなかつくにのうさしま)に使隆居(つかひくだりゐ)さしむ。今(いま)、海(うみ)の北(きた)の道(みち)の中(なか)に在(いま)す。】~『日本書紀 卷第一神代上』~

とあり、『葦原中國之宇佐嶋』【豐前國宇佐郡】に天降られた三女神【市杵島姫命、田心姫命、湍津姫命】は、『海北道中』【筑前國宗像郡】に向かわれました。

 その途中の道に迷われた時、烏に先導されて豐前國と筑前國の境に位置する山にお立ち寄りになり、山頂の「方丈の瑞石」に「日神(ひのかみ)」を思われて天照皇大神(あまてらすすめおほかみ)を祀り、宗像までの行幸の平安を祈られたと伝えられています。

 それで、その峠を『烏尾峠』、その山を『日思山』とよばれるようになりました。また『日思山』は『日王山』(ひのうさん)とも記され、昔はこの山の一帯を、「日王縣」(ひのうのあがた)とよんでいたそうです。

 以来、景行天皇(けいこうてんのう)【大帶日子淤斯呂和氣天皇(おほたらしひこおしろわけのすめらみこと)】の御宇(71~190年)、天皇がこの地を訪れた時【景行天皇12~18年(82~88年)?】、日思山に社殿を建立し、日王縣主(ひのうのあがたぬし)を齋主に定められ、聖武天皇(しょうむてんのう)【天璽國押開豐櫻彦天皇(あめしるしくにおしひらきとよさくらひこのすめらみこと)】の御宇の神龜年間(724~729年)に、嚴嶋神社の東方に宮司の坊にあたる神宮院淨福寺が建立されました。

 さらに、仁明天皇(にんみょうてんのう)【日本根子天璽豐聰慧天皇(やまとねこあまつみしるしとよさとのすめらみこと)】の御宇に、勅僧の傳燈大師【道詮律師】と一如法師が『日思山嚴嶌大明神』に杖を留めて三七日間(21日)の経三昧を勤められたともいわれています。

 こうして、南北朝時代の延文元年(1356年)【正平11年】まで、筑前國と豊前國の両国の衆民によって日思山の頂に祀られていましたが、山頂までの参詣は不便であることから神託によって「本宮の三女神を筑前國鹿毛馬村」【現在の飯塚市鹿毛馬】に、相殿の天照大神宮【天照皇大神】と神宮院淨福寺を豊前國神崎村【現在の田川郡福智町神崎】」に遷座されました。


嚴嶋神社の拝殿と本殿


 後世、日思山の旧社地の社殿は野火によって焼失しましたが、礎石は今も現存しているそうです。

 永正元年(1504年)と昭和7年(1932年)には神殿・幣殿、拝殿などが再建造営され現在に至っています。

 
拝殿前の注連縄

 相殿の牧野神社は、その昔、神社近くの鹿毛馬神籠石の中にあった「牧野神社」で、神武天皇が「狭野命」と申されていた時に、豊前國を経由して鹿毛馬村を訪れ、山麓の野に馬が群れていたので、足毛の馬の牧を開かれました。以来、五月朔日から同月七日の7日間、馬を使うことを禁止し、その間に大祭が執り行われていたそうです。

 文暦元年(1234年)に牧が廃され、神社が荒廃するに従い元龜年間(1570~1572年)に嚴嶋神社の相殿に合祀されました。【現在も小さな祠が残っています。】鹿毛馬の地名は、鹿毛馬神籠石の周辺にあった牧にいた「鹿毛馬」に由来しています。

小堤山、古家山とて、いにしへ馬牧ありし所あり。四方に石垣を築廻(きずきめぐら)はせり。めぐり二十町許(あまり)あり。此れ牧より鹿毛の良馬出す事ありて、村の名とせしにや。~『筑前國續風土記』 ~

 境内の御神木も高くやさしく立っています。

 
境内の御神木

境内社として猿田彦大神、徳満宮・稲荷宮・須賀宮などがあります。


徳満宮・稲荷宮・須賀宮

 徳満宮【大己貴命】、稲荷宮【宇迦之御魂神】、須賀宮【素盞嗚命】は写真の拝殿裏の石祠に鎮座しています。写真の左側には猿田彦大神などが祀られています。

 宗像三女神、宇佐の比賣大神のゆかりの神社がここにも静かにそして清らかに鎮座しています。



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