真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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松代大本営 田中憲兵隊長の証言と朝鮮人労務者

2008年08月29日 | 国際・政治
 今度は長野憲兵隊長の証言の一部を「松代地下大本営-証言が明かす朝鮮人強制労働の記録」林えいだい(明石書店)から抜粋する。抵抗運動が起こらないように、徹底した調査を行い、様々な取り組みをしていたことが分かる。 
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             田中宗久元長野憲兵隊長の証言

秘密防衛

 昭和20年3月30日でした。長野憲兵隊長といえば相当の権限があるわけで、普通なら中佐級なんです。それを少佐の私に行けというし、私の使命は大本営工事の秘密防衛の任務だと直観しました。隊長の副官は中尉がつき、本隊は長野市で管轄下の憲兵は、300人から400人、松本、諏訪、上田、軽井沢に分隊と分遣隊がありました。松本だけでも憲兵が40人いましたから。
 長野県下で朝鮮人は26042人いて、戸数としては2624戸です。御嶽山の発電所工事に8000人でしたから。
 私が長野に赴任してきた時は、もう工事をどんどんやっていました。私どもはいわば警備専門の憲兵でした。
 流言飛語が飛び交いましてね。それを防止するために「特殊秘密兵器の基地をつくるんだ」と逆宣伝をしました。


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 私たちの任務は、警備している軍隊の動向とか状況は一応見ましたが、重点は朝鮮人対策ですよ。それと重要なのは、天皇のご動座を考えて、精神病患者と思想関係を徹底的に調査しました。

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 共産主義者とか、思想関係についてはこんなことがあります。共産主義者で厳重注意は「共甲」です次が「共乙」、思想注意者は「思注」というのです朝鮮人で一番恐いのが「鮮甲」次に「鮮乙」ですね。何かあると憲兵と警察が、「鮮甲」「鮮乙」を直ちに検挙する手はずになっていました。
 松代を中心として、「鮮甲」はいませんでした。


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 長野県全体で見ると、「共甲」と「鮮甲」はかなりいました。その人物の親とか兄弟、さらに親戚友人まで徹底的にその動向を調べます。長野県というところは教育県だし、主義者が非常に多かった。思想的団体が120団体、非合法だから決して表面には出てきません。
 「共甲」とか「共乙」のような青年が入隊すると、憲兵隊長が共産党の連中だから子どもでも注意しろと、連隊長に一筆書いてよこす。そういう意味では、憲兵は横暴なところがあった。
 それで、共産党関係のリストは、憲兵隊にはすごい量のリストがありました。それも明治時代からのものが、家系図のように整理してありました。

 特高資料だけでなく、憲兵隊独自の調査網を持っていましたから。憲兵は民間の思想的取り締まりも法的にできた。
 憲兵隊長になると「共甲」、「鮮甲」の名前は暗記している。いざという時に検挙しなければならない。予備検挙といって、予防検束もしましたから。
 松代周辺の共産主義者、かつて思想犯だった者、農民運動をした経歴のある者、現在はどういう思想的傾向にあるとか、それは綿密に調べてある。
 名古屋合同労組で逮捕された趙仁済くらいの人物であれば、それは「鮮甲」に該当するでしょう。
 私が調査した範囲では、どうしたわけか松代警察署の特高リストには上がっていませんでした。それが労務者として工事に入り、しかも西松組の労務係をしていたとは驚きです。
 趙仁済自身が、表だった工作をしていなかったんだと思います。工作で動き出したらわかりますからね。だが、公平に見ましたら、長野憲兵隊長として最大のミスでございます。
 大本営のおひざもとの心臓部に、そんな大物が潜入していたとは知らずに、違った方向で松代周辺には、そうした危険人物はおりませんと、私が報告していたわけですからね。



民族のこわさ

 憲兵としては、朝鮮独立運動とか、朝鮮人の思想問題を重視していました。特に日本に対する反国家的な言動ですね。第一、北朝鮮のダム工事関係の労務者も相当きていましたから、抗日パルチザンの分子を送り込もうとすれば容易ですからね。日本に対する抵抗運動には、本当に手を焼いていましたからね。
 民族が違ったら駄目ですね。表面は日本的で、愛国心があるように見せても、内心では何を思っているか全然わかりません。
 日本人に親しく見せても内心はね。そこに民族の恐ろしさがあるんです。それは世界のどの民族だって同じように、民族意識は根強くて、それは朝鮮人だけに限りませんから。
 考えてみると、見本が朝鮮をあれだけ痛めつけているんですからね。日韓併合以来の植民地支配を見ればわかります。

 六奪といって、土地、生命、金銭、言葉、名前、資源などありとあらゆるものを収奪しつくしたから、心の底から支配者の日本を怨むのは当たり前のことですね。……(以下略)


補助憲兵

 松代大本営の地下工事では、憲兵の正装をして、穴の中に入って直接労務者を監視したりすることは一切ありません。長野県下360人の憲兵のうち 、大体、40人が松代大本営工事担当で、わざと松代には憲兵分隊を置かなかったのです。ほとんどが私服で、隠れてこっそり情報を収集しましたから、手のうちは絶対に見せません。
 私が長野憲兵隊長になってから後2人の朝鮮人の補助憲兵を大本営工事に潜入させました。……

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 憲兵補という身分で、2人とも東京の私立大学出身で22~23才の上等兵、日本語はペラペラでした。あくまで秘密に運び、憲兵隊の中でも一切知らせませんでした。工事が進むにつれて、確かに宮中がご動座するとか、大本営移転の噂があって、結局は隠せないからわかることなんだけど、そうした噂の出所はどこかを調べさせるためです。
 労務者の主体は朝鮮人で、サボタージュしたり、反国家的な言動があって動揺すると、期日までに完工できなくなる。そうした朝鮮人の日頃の会話を注意する。
 朝鮮語で話すから、どんな朝鮮語でもわからないと、重要な情報をつかむことはできない。2人の補助憲兵には、特捜義務を持たせました。


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 補助憲兵が潜入に成功すると、今度は私が労務者に変装して穴に入り、彼らとの間で暗号で情報を受けとった。朝鮮飯場から町の銭湯に行く場合も、そこで誰に接触するのか、道中とか風呂の中でどういう会話をしているかをチェックさせた。暴動のような状況が出ると、早速手を打たなければならないからね。

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 あれだけ大勢の朝鮮人が暴動を起こして、工事現場のダイナマイトを使って破壊されると、本土決戦はおろか大本営移転計画は吹き飛んでしまいますからね。……(以下略)


女の情報

 私が情報収集で使った女はたくさんいます。


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 松代にしても、朝鮮人の補助憲兵を潜入させていたから、朝鮮人の動向がすべて把握できたわけです。憲兵としてもう一つ、女をどのように利用して情報をつかむかにかかっている。芸者とかカフェの女給、仲居、女子挺身隊、一般の主婦、売春婦ですね。そういう女性たちをうまく使った憲兵ほど情報戦には勝つんです。

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 私は長野憲兵隊長になると、部下を集めて慰安婦をまずつかめと訓示しました。松代担当の憲兵に、西条にある西松組の慰安所に網を張らせて、逐一報告させましたから。


朝鮮人抹殺

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 ある日、朝鮮人の脱走兵を警備兵が追って、数人を射殺してしまった。軍隊の脱走は重罪で、軍法会議によって陸軍刑務所に入れられる。警備兵が勝手に射殺したからややこしくなった。 
 憲兵の場合は射殺することは認められていた。射殺しても軍隊内では、書類上は病死したと処理すればいいわけですからね。
 朝鮮人の5人や10人殺したって、何ということはない雰囲気がありましたから。殺しておいて後はどうにでも処理はできる。そんな立場にあったことは申し上げられると思います。


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 大体、秘密工事をやった人間を、秘密がバレるという理由で消してしまうのは、徳川時代からありましたからね。築城すると、本丸とか地下室、逃げ口など秘密があるので、その工事をした職人を皆殺しにした。内部構造そのものを敵に知られると困るわけで、満州(中国東北部)では関東軍が平気で殺した。
 ロ地区の天皇の御座所の工事をした朝鮮人を虐殺した話は、私の知る限りではそういう事実はございません。殺したとすれば、戦時中といえども大問題になりますからね。


・・・ 

 もしそこから消えたということは、他の地区に配転したとしか考えられません。鹿島組にしても今まで他でやっていた工事を中止して、トンネル工事の技術者をロ地区の工事に投入したのですから、工事がすむともとの場所へ返す必要がありますからね。高級な技術者を、しかも労働力が少ない時に鹿島組とか軍が殺すわけがありません。しかし、そういう朝鮮人が虐殺された噂が、今日まで根強く残っているとすれば、それは鹿島組自体で真相を世間に発表するしか、これらの疑問に答えることはできないでしょう。
 
 
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