真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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霧社敵蕃討伐、「科学的攻撃法を顧慮せられたし!」

2011年02月11日 | 国際・政治
1、霧社事件で毒ガス弾が使われたという確証を求めて、様々な文書に当たり、現地に入って被害関係者に取材し、毒ガス弾の製造に当たったという工員をつぶさに訪ねて歩き、台湾飛行第八連隊第一中隊に配属されて霧社事件の鎮圧に出動したという軍関係者にまで話しを聞いて書かれた本がある。それは「悪夢の遺産 毒ガス戦の果てに ヒロシマ~台湾~中国」尾崎祈美子著 常石敬一解説(学陽書房)である。読み終えたとき”「敵」も「味方」も傷つけて”という言葉に深く同感せざるを得なかった。まさにその通りであると思う。その中から、台湾軍司令官と陸軍大臣(副官)のやりとりの部分を抜粋する。

2、また、「現代史資料(22)台湾2」編者山辺健太郎(みすす書房)から「台湾秘話 霧社の反乱・民衆側の証言」林えいだい(新評論)で取り上げられている”毒ガスを使用した「敵蕃(山地原住民)」討伐に関わる文書”を抜粋する。文書の中の敵兜(鉄兜)は防毒マスクのことであろうという。効果のなかった爆撃に関して「外部に対する発表は禁ずるものとす」などという文書や「敵蕃人」に取られた機関銃や小銃にかんする文書なども、当時の状況をよく物語るものとして、追加抜粋した。

3、さらに、下段は毒ガス使用を非難追求する台湾民衆党の動きに関する警務局の文書(「霧社蕃人騒擾事件経過」)の中の一部である。同じく「現代史資料22 台湾2」からの抜粋であるが、毒ガスの使用が、かなり広く話題になっていたことが分かる。

1「悪夢の遺産」から-------------------------
                第一章 毒ガス戦の幕開け

 (1) 台湾・霧社事件

 「暗号ヲ以テセラレ度」


 ・・・
 そういって、彼は(春山明哲-国会図書館勤務)ガリ版刷りの紙を出した。
「これが研究会で発表したレジュメです。霧社事件の陣中日誌や憲兵隊の電文などから、毒ガス使用に関係した記述を抜き出したものがこちらです」
 そこには毒ガスをめぐる当時のやりとりが、A4用紙4,5枚にわたって、細かい字でびっしりと書き込まれていた。
 こうした記録から、催涙ガスと青酸ガスが使われたことまでは確認できるという。
「ただ致死性の糜爛ガスが使われたかどうかは不明なのです。ちょっとここの所を見てください」

「申請
 反徒ノ退避地区ハ断崖ヲ有スル森林地帯ナルニ鑑ミ、
糜爛性投下弾及山砲弾ヲ使シ(ママ)度至急其交付ヲ希望ス」<昭和5年11月3日陸軍大臣宛 台湾軍司令官発>(「霧社事件関係書類綴」)

 台湾軍司令官から東京の陸軍大臣へあてられたその電文の内容は、糜爛性投下弾、つまりマスタードガスを至急送れというものだった。
「この申請にたいする返事が、これなんですが、……」
春山さんの指先を目で追いながら、私はハッとした。


 「糜爛性弾薬ノ使用ハ対外的其他ノ関係上詮議セラレス将来瓦斯弾ニ関スル事項ハ暗号ヲ以テセラレ度」(昭和5年11月5日台湾軍参謀長宛 副官発)(同前)

「つまり糜爛性ガスについては国際問題になるから、この先は暗号でやりとりしようといっているわけですね」
春山さんは大きくうなずいた。


「現代史資料(22)台湾2」から---------------------
                 23 反乱の状態

 ・・・
 第175号 
  昭和5年11月2日午後2時20分受
                               台中州知事
総督宛  
      軍隊よりの報告左の通御参考迄
一、戦闘に依る死傷者は悉くそれを運び去るを蕃人の風習とするを以て一日迄の   托送及彼我射撃による敵の損害は詳細不明なるも目撃するもののみにても
   尠くも70~80名を下らざるが如し。
二、2日敵蕃に対し焼討を行ふ企図を有するも焼討攻撃爆撃等を以てしては地形
   上不徹底の虞れあるを以て 
エーテエテリツホスゲン等を以てする科学的攻
   撃法をも顧慮せられたし。

三、
敵兜(鉄兜)500、擲弾筒、甲手榴弾又は其の代用品800、照明弾至急送られ
   たし、為し得れば歩兵約一大隊(鉄兜共)増員望む。
四、司令部主計の配慮を乞ふ


第482号
    11月18日午後6時25分受
                               桂警部
総務局長宛
 川西部隊は「タウツア」及「トロック」蕃人を率ゐ18日午前9時10分霧社を出発、
 正午石井部隊に到着せり。午後3時軍隊の攻撃終りたる以て同部隊は隊を二に
 分ち一隊は巡査5、警手9,公医1、「タウツア」蕃159名を部隊長これを率ゐ、石
 田部隊の前方森林地帯内の偵察に向ひ、他の一隊は巡査部長1,巡査5、警手
 16、「トロック」蕃人136名を香坂巡査部長引率、「マヘボ社」安達大隊占領地を
 出発し敵蕃の岩窟付近に接近し、催涙弾の効果を確かむべく同方面に向へり。
                                           以上


第486号(11月18日午後11時50分受)、
                              台中州知事 
総督宛  
       軍隊の情報
一、飛行隊は午前8時飛行を開始し、マヘボ渓の敵蕃に対し低空冒険飛行を敢行
  し多数の爆弾をマヘボ渓敵の根拠地に対し投下せり。
  午後は緑弾(甲一弾)の射撃効力を減殺するを虞れ飛行を禁止せしむ。
二、砲兵隊は早朝よりマヘボ渓谷岩窟に対し榴弾を猛射し、渓谷為に濛々たり。
  正午より約1時間
緑弾(甲一弾)百発を渓谷に向ひ集中し、其の威力を渓谷内
  に充満せしめたるに、第4岩窟付近に泣声を聞きたるのみにて現在地より之を
  探知し得ざるを以て蕃人を使用し之を偵察せしむ。右偵察の為タウツア、トロッ
  ク蕃約300名を午後2時頃マヘボ渓に進入せしめたるに、其の状況左の如し。

(1)其の蕃人は安達大隊占領地前方稜線より敵の根拠地たる岩窟(第4岩窟なら
  ん)に近付きたるに、岩窟前にある敵の歩哨発砲と共に敵蕃数名(人員明瞭な  らず)設備せる掩堡に拠り交戦せり。
(2)両蕃中勇敢なる者更に近付きたるに、臭気甚しく且涙を催したるにより渓水を飲
  みたるに其の効力を失ひたるにより更に猛烈なるものに非ざれば効力無しとい
  ふ。如此敵は歩哨を配置し直ちに応戦するを以て、蕃人のみにては攻撃不可
  能なれば軍隊を更に前方に進められたしといふ。(軍隊を進めることは殊に引
  継当時なる関係上不可能にして、又山砲射撃に両岸に妨げられ命中せず、依
  て歩兵を使用することとせり、又旧松井大隊より接近不可能なるものの如し。)
三、午後2時頃緑弾射撃終了後、焼夷弾約10発を森林に向け射撃せるも全く其
  の効無きを以て、将来に於て之が使用を中止することとせり。
四、飛行隊は21日頃計画により撤退する如く命令せり。



第675号(11月26日午後6時40分受)
                              台中州知事
総督宛
     軍隊の情報
  本日午前9時半より同11時迄の間に於てマヘボ渓左岸及元安達大隊占領地
 上方密林に対し飛行機より焼夷弾12発を投下せり。其の状況左の如し。
                       記
 投下と同時に白煙300程上り約30分発火し居るも延焼せず。効果大ならず。
外部に対する発表は禁ずるものとす。


11月24日午前11時24分受
                              坂口警視
警務局長宛
  軍隊に於ては撤退をひかへ曩に
敵蕃人に取られたる機関銃並に小銃の奪還
 に焦慮し
、憲兵分隊長自ら最前線にて警察に対して内密に捕虜蕃人を操縦し居
 るも到底見込なき模様。


号外(昭和5年11月27日午後9時受)
                              坂口警視
警務局長宛
  予て陸軍より依頼を受けたる機関銃発見に出て向へたる石田部隊の捕虜蕃丁
 4名蕃婦1名は27日午後4時該銃1挺を蕃称リヒンカヲタツセル(岩窟の淵)より
 拾得、石田部隊に帰来せり。


号外昭和5年11月27日午後10時20分受
                              台中州知事
総督宛
               機関銃に関する件
  11月27日石田部隊所在地滞留し居る憲兵は捕虜蕃人アウイパワン、同ワビ
 コワン、同タダオパワン、同タワンキグイ、同マヘンモーナ及憲兵隊通訳ワイスバ
 タン、同パラハカコンの7名をして午前6時出発せしめ、蕃称リジンガオタツセル
 岩窟の淵にモーナの長男のタダオモーナが投入せる機関銃1台を拾得、午後4
 時石田部隊に着するや
人目を避けて憲兵隊の小屋に該銃を納めたり


11月28日午前1時40分受
                              坂口警視
警務局長宛
  27日マヘボ岩窟の淵より捕虜蕃人の持帰りたる機関銃は11年式1418号な
 り


号外(11月30日午前9時受)
                            霧社森田理蕃課長
警務局長殿
  軍隊に於て敵に奪われたる残一挺の機関銃捜査の為石田部隊にある憲兵3
 人は司令官の命令なりとて之が捜索、提供の
懸賞金的金数を捕虜蕃人に示し、
 或は蕃人蕃婦を集めて夜半迄飲酒する等今後警察に於ける捕虜の収容上支障
 なきやを保せず、注意を与え居れり。御参考迄。


3「現代史資料(22)台湾2」から--------------------
                 霧社蕃人騒擾事件経過
                                          警務局
5 原因に対する憶説、風評の
第2 左傾分子の策動
(ハ)台湾民衆党の策動
  台湾民衆党は、11月5日内閣総理大臣、拓務大臣、陸軍大臣宛左の如き無
 根の電報を発送せり(本電報は通信部に於て、公安に害あるものとして差し止め
 たりと)。
  「今回蕃人に対し
国際間に使用禁止せる毒瓦斯を以て攻撃せり、非人道の行
 為なり
、    台湾民衆党」
 本件は一時新聞紙に誤報せられたるを根拠として軽率にも此の挙に出てたるも
 のなり。


 ・・・

第3 流言蜚語

 (ハ)民衆党幹部蒋渭水の常備車夫林宝財は11月4日午前10時30分蒋渭水
   宅前掲示場に霧社事件に関する新聞記事を訳載したる掲示を見るべく蝟集し
   たる群衆に対し
「飛行機より毒瓦斯を投下するは不都合なり、新聞紙に発表
   を禁ずるも己に我が中国人も知り諸外国人も知悉せり、何れ国際問題となる
   べし」
と無根の流言を放ち検束せらる。

 ・・・

http://www15.ocn.ne.jp/~hide20/ に投稿記事一覧表および一覧表とリンクさせた記事全文があります。一部漢数字をアラビア数字に換えたり、読点を省略または追加したりしています。また、ところどころに空行を挿入しています。青字が書名や抜粋部分です。赤字は特に記憶したい部分です。「・・・」は段落全体の省略を「……」は、文の一部省略を示します。  

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2 コメント

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霧社事件を調べているうちに、ここにたどり着きま... (また来ます)
2011-02-16 03:48:12
霧社事件を調べているうちに、ここにたどり着きましたが、非常に参考になりました。ありがとうございます。
参考になったとのこと、うれしく思います。知って... (syasya61)
2011-02-17 21:35:21
参考になったとのこと、うれしく思います。知っていなければならない事実、忘れてはならない事実をこれからもアップしていきたいと思っています。

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