1、近時イギリス映画の最高作品
この映画の原作「The remains of the Day」は、日本人名のイギリス人作家カズオ・イシグロ(石黒一雄 1954年生まれ 5歳で渡英)が、イギリスの芥川賞ともいうべきブッカー賞を受けた名作。
舞台は1930年代、イギリス貴族の郊外邸宅(いわゆるカントリー・ハウス)。そこでの様々な人の生き様、特にbutlerと呼ばれる執事の公私生活、その信条を完璧なまで . . . 本文を読む
真面目なアーサー王物語
西欧社会の中でアーサー王は「国際アーサー王学会」まであるという人気者だが、このヒーローが歴史上実在の人物なのかどうか、まだ定説がない。世にアーサー王物語は今まで40本以上の映画があるといわれるが、今回のキングアーサーはやや「真面目に」歴史物として取り組んだ物といえるのだろう。
アーサー王とはこの映画の冒頭に述べられるように、仮に実在の人物とすれば、5、6世紀の人物で . . . 本文を読む
最近著作権の切れた映画がどんどんDVD化され一本500円で買えるところまで来た。そんな中で、「映画で楽しむ世界史」を書くとき苦労した「無敵艦隊」を見つけた。
この映画は1937年のイギリスもの。ローレンス・オリヴィェとヴィヴィアン・リーが競演し、後に結婚に至るあるいはアメリカに渡る、ヴィヴィアンは「風とともに去りぬ」の主役の座を得るといった飛躍のきっかけになった曰くつきの映画。
私 . . . 本文を読む
1935年フランス・シネマ大賞の名作の題名は・・・
ギリシャ悲劇を映画にしたものは「アポロンの地獄」「王女メディア」を始め「エレクトラ」「トロイアの女」「イフゲニア」等数多くある。しかし喜劇を映画にしたものが見当たらない。終戦直後フランス映画で「女の平和」があったが、もはやビデオショップでもお目にかかれない。
と思っていると、昔朝日新聞社が出した「世界シネマの . . . 本文を読む
映像化しにくい仏教「リツル・ブッダ」(5月27日NHK衛星放送)
ラスト・エンペラを作ったベルナルド・ベルトリッチ監督のオリエント3部作の一つ(ラスト・エンペラともう一つは「シェルタリング・スカイ」)。
世界3大宗教の始祖は、キリスト教のイエスはいろいろに映画化され、イスラムのムハンマドも「ザ・メッセージ」という映画になっているから(イスラムの教義に従いムハンマドは顔を出さないが)、
西洋人 . . . 本文を読む
現在上映中の「硫黄島からの手紙」。アカデミー賞の話題になっているとの噂(作り話?)もありやで、観客動員好調のようだ。
太平洋戦争末期の「硫黄島の戦い」については様々な角度から調査研究論評など数多くあり、この映画はそれらの幾つかを読んで出かけると、それらの記事を追体験するような感情移入の気持ちも沸くのではなかろうか。
アメリカ人監督クリント・イーストウッドとそのスタッフにより製作された映画の中で . . . 本文を読む
現在上映中の「敬愛なるベートーヴェン」
第九交響曲が出来上がる裏には、聴覚を失い、満足な家族も持たない、あの気難しい作曲家に仕え、彼のなぐり書きの楽譜を清書した女性「写譜師」がいたという話。
当時のウイーンの情景をよく映し出してはいるし、ベートーヴェンの人柄とそれを理解しようとする写譜師のスト-リーはよく分かるが、映画全体としては単純、起伏に欠けいまひとつ物足りない。
ところでこの第九は . . . 本文を読む
「ベートーベン演奏会デヴュー200年記念作品」と銘うった「ベートーベン 不滅の恋」( 1994年のアメリカ映画)
1、ベートーベンの恋人探し
べトーベン映画は何本かあるが、この映画はべトーベンの遺書に中に紛れ込んでいた宛先不明の恋文について、何時、誰宛てにかかれたものかという事実探しを主軸にすえるもの。このテーマは、恋文の中に出てくる一文から「不滅の恋」探しと呼ばれ、永年に亘り多く . . . 本文を読む
12月5日はモーツアルトの命日。NHKはBSで「アマデウス」放映。
この映画の中に出てくるVIP2人
一人はザルツブルグの「大司教」・・・当時の大司教の名は、ヒエルニュムス・コロデド。そもそもザルツブルグはローマ時代からの歴史ある街、カソリック教会の中でも地位が高い大司教を擁き、他の領主諸侯から独立したいわばミニ国家(日本流に言えば門前町 . . . 本文を読む
「ベニスに死す」は、1912年ドイツの作家トーマス・マンが発表した同名の短編小説を映画化したもの。原作の主人公は小説家であるが、映画では音楽家に変えられていて、マーラーの交響曲など音楽がふんだんに使われ音楽好きの人にはこたえられない作品。
トーマス・マンの特徴は、ドイツ人らしい理屈っぽさ、芸術や精神がもたらす仕事の意味を常に問いただし、それと現実的な生き方との相関関係を確かめ、い . . . 本文を読む
11/27日放送の「若者のすべて」(原題「ロッコとその兄弟たち」)
この映画の背景は1955年頃のミラノとされている。ストーリーを単純化して言えば、イタリア南部の農村から大都会ミラノに移住してきた一家、男兄弟5人の青春物語なのだが、ヴィスコンティの描きたかったのはそれだけではあるまい。
彼は、戦後イタリアの苦悩する姿を見るにつけ、ヴィスコンティ家とイタリア史に思いを致さざるをえない、彼はこの . . . 本文を読む
11/23日、NHKのBS映画劇情は「ルードヴィヒ」
ヴィスコンティ監督が渾身の力を込めた4時間の大作だが、監督は単純に耽美主義的に「狂王ルードヴィヒ」を描いているだけではない。この一作に4時間という時間をかけたのは、ドイツを始めとするヨーロッパ人の自らの歴史に関する深い愛憎、怨念のようなものを塗りこめたかったからに違いない。
ともあれこの映画の主たるストーリー・・・バイエルン王 . . . 本文を読む
11月22日NHKBS放映のヴィスコンティ監督の「白夜」は、ドストエフスキーの1848年の同名の小説を、1957年に映画化したもの。
ドストエフスキーの原作は、彼が社会主義に没入していた時代の作品。(彼は社会主義団体に首を突っこんだため当時のロシアの思想取締りに引っかかり、シベリア送りの憂き目にあう)
小説としての評価は高くはないが、男女のこころの揺れを劇的に凝縮し . . . 本文を読む
イタリアの貴族監督ヴィスコンティ生誕100周年
今週から、NHKのBSでヴィスコンティ100周年記念のシリーズ放映。
初回の「夏の嵐」、イタリアの作家の「官能」という小説を題材にしたもの。
しかし巨匠ヴィスコンティが描きたかったのは「官能」自体というよりも、長い苦難の末にやっと統一に向かうイタリアの歴史、それを特にヴェネツィアの最期に凝縮したかったのではなかろうか。要するに古い . . . 本文を読む