貸金業債権の債権譲渡、行政監督機関の法執行権限

独り言日記...貸金債権譲渡して業務撤退だ。どうしたら貸金業から過払いリスクなく廃業できるか

マドフ ポンジ・スキーム 詐害行為で、償還を受けた投資家は返還請求を求められる

2009-01-12 16:54:51 | 債権譲渡


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マドフの証券詐欺と詐害行為 詐害行為でclawbackは6年遡る?

(理解すると今後の行方が見えてくるためのキーワード) 連邦破産法・否認権・詐害行為、州法・詐害行為、 有償、善意、州訴訟法の時効

 

 

12月11日、連邦捜査局(FBI)は、 Bernard Madoffを詐欺の疑いで逮捕した。NASDAQ stock marketの元会長という社会的信用により、世界中の金融機関を含むヘッジ・ファンド、大学、慈善団体などから集められた証券詐欺。被害を受ける顧客数は数千に上り、MadoffのFBIに対する自供によれば、支払不能は数年間続き、損失総額見込みは最低500億ドルに達し、史上最大と言われる。今後手続きの進むなかで少ないながら原状回復の財産もあり、損失は数百億ドルとみられている。 

詐欺の舞台となったのは、1960年にMadoffにより設立され、現在まで自身により経営されてきた証券会社(broker-dealer)Barnard Madoff Investment Securities LLC(BMIS)で、Madoff自らが投資アドバイザリと財務部門の責任者として業務執行していた。裁判所は、Madoffが事実をすでに認めていることから、本件が、新たな投資家の資金により既存投資家への配当や償還が支払われるPonziスキーム詐欺[1]と判断すると予想される。

12月11日、SECは、その規制監督下にあるBMISを放任し続ければ、詐欺が続けられ、犠牲者が増え、不正な分配によりさらに資産が散逸してしまうことから、その緊急防止のため、ニューヨーク南部連邦地区裁判所に、BMIS財産を承継する仮管財人の任命、同社及び関係会社に対する強制及び任意の破産申立の禁止、簡易ディスカバリの許可と、Madoff とBMISについて、資産凍結、サイエンターある虚偽表示、詐欺による架空証券と偽計に関する証券法違反禁止と原状の保全、文書廃棄防止、証明ある資産リスト作成要請の仮差止めなど仮救済の命令を求めた[2]。翌12日、裁判所は、SECの資産を凍結を含む仮救済申立を認めた[3]。証券会社倒産のさいに投資家保護を目的に議会が設けた機構Securities Investor
Protection Corp.(「SIPC」)は、SECと協議の上、顧客にとって清算が最善と判断し、裁判所は、15日、SIPCに対し、SIPC法にもとづきBMISの清算手続き開始の許可を承認し、手続きを監視するSIPC管財人とそのカウンセルとして法律事務所を任命した。SIPCは、BMISの直接の顧客が被る損失についてSIPCの規則にしたがい証券価値50万ドル(内現金は10万ドル)を上限に補償すると発表した[4]。23日、裁判所は、Madoff逮捕日から過去1年の間にMadoffと取引のあり、管財人が補償適格と信じられる顧客に債権請求届出の様式を送付することを承認すると命じた。

十億ドル以上を拠出したファンドや金融機関にとって、補償の額は微々たるもので、すでに起されたクラスアクションに参加するか、独自の訴を起すことになる。しかし訴えて判決を得たところでPonziスキームは一般的特徴は、引当となる財産などほぼ残っていないし、他のファンドを通じて間接的に投資した顧客は保護の対象にならない。SECの申立事実によれば、BMISは投資助言サービスを通じて少なくとも2005年からPonziスキームをしており、12月に70億ドルの償還要請があったとき、80~150億ドルの運用資産があると理解されていたが、残っていた金額は2~3億ドルだけで、財産はすでにどこにいったか消えていた。

SIPCの下での証券会社業務の清算手続きは、証券投資家保護法の特定な制限を受けるが、通常の破産法Chapter 7が適用され、連邦地区裁判所により処理される。破産法は、保全手続きのもとで、スワップやレポ取引などのカウンターパーティが契約を手続き外で強制終了する権利を認め[5]、自動停止条項適用から例外的に除外するのに対して、SIPCの下での清算では、財産を取り戻そうとする投資家のすべての訴えは停止される[6]。Madoff個人やその他の第三者に対する請求は保全の対象とはならないが、手続き進行しだいで、裁判所が手続きの併合することもありうる。また実務上、債権者あるいは投資家が自らの声を公式にするため裁判所に委員会設置を願い出られる点でChapter 7とは異なる。しかしながらChapter 7では、債権者委員会委任の弁護士報酬に明確な定めのないことから、1月初め、まだ債権者/投資家委員会は設けられていない。12月23日の裁判所命令で債権者会議は2月20日に予定された。

金融市場を震撼させているのは、損害の規模でも投資した名だたる巨大金融機関でもオーストリアのBank Mediciなど投資失敗による連鎖破綻で銀行監督下に置かれた[7]というだけではない。Madoffスキームの特徴が、直接に投資するだけでなく、いくつかの巨額のヘッジ・ファンドが間接的に資金の導入役を果たし、リミティド・パートナーシップを通じてなされ、投資する機関は数千にのぼると見られ、導入ファンドやその会計士を含めた賠償請求責任をめぐる訴訟合戦が展開すると予想される。12月、すでにいくつもの訴訟が起されている。2400万ドルの損失を受けたニューク大学[8]やニューヨーク・ロースクール[9]など投資家は、運用額のほぼ全額の18億ドルをMadoffスキームに投資したfeederファンドのAscot Partnersに対して、33年証券法、34年取引所法、ルール10(b)5など証券関連法の不正虚偽表示、RICO法の郵便通信詐欺やフィデューシャリ違反、コモンローの詐欺を請求原因とする損害賠償を求めるクラス・アクションを起している。直接投資でなければ、SIPCの保護も受けられない。Ascotに拠出して2000万ドル損失が生じたTufts大学は、Madoffスキーム以外に引当財産もない媒介的役割のファンドを訴えても意味がないと、今のところ訴えを提起していない。Madoffに対するのとfeeder fundに対するのでは、賠償の請求原因が異なるが、請求原因が15にも及ぶケースもある[10]。

Madoff・スキームは、金融機関や投資を専門とするヘッジファンドが資金の出し手となり、従来のいわゆるPonziスキームとは質が異なり、より複雑という見解が多くみられる[11]。投資家が収益を引き出して元本繰り入れしておれば、利益を食んだと責めを負わせられないケースもあり、追跡困難ともみられる。Ascotを迂回してMadoffに投資したYeshiva大学の場合は、投資元本は1400万ドルだったが、損失は1.1億ドルに膨れ上がっていた。そうした場合、計算しようにも、一体いくらの架空利益が実現されたかも不透明な状況だ。

12月18日、裁判所は、MadoffとBMISに対して、SECに12月31日までに、直接あるいは間接に保有する全ての資産、負債の証明付リストとその所在について提出するよう命令した。SECはMadoffの代理人から財産調査書を入手したが、裁判所から許可がでないので公表はされていない。民事だけでなく、連邦検察官は、証券詐欺容疑で刑事上の捜査を並行して進めている。SIPCによれば、会社の財務記録が全く信じるに足らず、手の届かないところにある財産を探し当て、投資家に損失を振り分けるまでには、数百人の会計士をつぎ込んでも、数年を要するという。

 

詐害行為の州法の適用

殆ど財産は残っていないといわれるPonziスキーム。債権者に公平・平等に分配するため[12]、どのようにして財団資産に現状に復帰させるか、選択肢の行使は管財人の手腕にかかっている。その唯一の残された方法が管財人がclawbackだ。それが、わが国投資関係者を含め、証券投資業界にとって最大の法律上の不安となって、金融機関を含め証券投資業界関係者に激震を走らせる。Clawbackとは、すでに償還を受けた投資家から償還金の返還を受け、財団資産を復元しようというもので、詐害行為によるか否認権にもとづく権利行使である。2000年以降、Ponziスキームで償還金の返還請求が認められた事例として、その額4.5億ドルのBayou Fund[13]などすでにいくつか出ており、今回の処理の参考になる。

今後の増え続けるだろうファンド破綻を考えれば、本件での管財人の権利行使の行方は、投資業界に法的な不安を掻き立てる。取引全体がPonziスキームと認められれば、既に後の投資家の資金で償還を受けた投資家は、架空利益の受益者とみなされ、利益あるいは元本の返還が求められる。

 

<破産法と州法のの否認、詐害行為の理解に関しての説明を省略。必要な方は、申込み下されば、メールにて返信します。>

 

詐欺時効について詐欺認識時点から6年と定める。Bayouでは、2006年、管財人は債務者の悪意に基づく元本及び虚偽利益の返還を求めたが、裁判所は、2008年10月、州法適用により6年遡る返還請求に対する受益者の申立却下を認めなかったため、Madoff事件発覚直前だけに、市場不安は激震となった。

 

<省略> AscotなどNY大学などいくつかのfeeder fundに対する訴訟の説明

 

結論

33年証券法は開示を目的に、Ponziスキームからも防御するよう制定された。34年証券取引所法はSECを市場警察として設け、権限を与えた。制定から80年、いくつかのPonziスキーム事例は出たが、これほど巨額な詐欺にもかかわらず、法は防止することができず、SECは大過してしまった。33年上院銀行委員会、通称ペコラ調査の1400ページの大恐慌対策モデルとして構築された旧来型の証券金融制度が、Madoffスキームの前になすすべなく機能不全を露呈した。証券化では資産の中身のdue diligence責任が法の陥穽をついて証券2法上、合法的に潜脱され、ファンドは注意義務とfiduciaryを欠いた運用を防止できず、詐害行為による救済が求められる。

 

 









[1] Madoff 証券詐欺に関する下院Committee on Financial
Services(2009年1月5日)でのTamar Frankel教授の証言の前半でPonzi Schemeの性格が説明される。Ponziスキームの由来は、1920年Charles Ponziの郵便詐欺罪に溯り、Mitchell Zuckoff, Ponzi's
Scheme: The True Story of a Financial Legend (2005))が詳しい。





[2]
 SEC v. Madoff, BMIS( S.D.N.Y.
12.11.2008)





[3]
Order, SEC v. Madoff, et al., No. 08-cv-10791
(S.D.N.Y. Dec. 15, 2008). 





[4] SIPC Press Release, 12.15.2008;  15
U.S.C. § 78fff(a)(1)(B).  





[5]
 11 U.S.C. § 362(b)





[6]
 11 U.S.C. § 362(a)





[7]  Christian Gutlederer (Reuters),
Madoff-exposed Medici under state supervision, Jan 2, 2009





[8]  New York Univ. v. Ariel Fund, 08-08603803 (Supr. N.Y. Dec.
24,2008)





[9]  New York Law Sch. v.
Ascot Part., 08CV10922 (S.D.N.Y.
Dec. 16,2008)





[10]
 Kellner v. Madoff et al, 08CV5026
(E.D.N.Y., Dec. 12, 2008);  Chaleff, v.
Madoff, BMIS, Morgan Stanely, et al, CV08-8260 (C.D.CA)





[11]
 Gary Becker and Richard Posner判事のブログ;
Bernard Madoff and Ponzi Schemes--Posner's Comment(12.18.2008)





[12]  11 USC § 551





[13]
 In re Bayou, 362 B.R. 624 (Bankr. S.D.N.Y. Feb.23,2007); 372 B.R.
661 (Bankr. S.D.N.Y. Aug. 9, 2007)は、110の償還を受けた投資家に対する詐害行為(破産法§544,
548, DCL§273-276)の対審手続きで償還投資家の申立却下を退け、未償還の投資家は契約上償還請求権者であり、§510にもとづく不法行為債権者としての劣後化法理適用を容認しなかった。In
re Bayou, 396 B.R. 810 (Bankr. S.D.N.Y. Oct.16,2008)






譲渡された貸金債権にかかる過払い金、金利ひきなおし計算の相手先

2008-06-27 23:59:59 | 債権譲渡

続・債権譲渡と保証をめぐる疑いある法律関係

 

債権譲渡と譲渡された債権の保証の関係をめぐる法律構成について、債務整理の現場から、疑問の声が聞かれる。特に、譲渡債権にかかり、債務整理しようとするとき、譲渡者、譲受者双方に取引履歴の開示請求しても、いずれからも対応されなくなった(放置される)現状が散見されると聞く。結果的に、譲渡者が意図したかどうかは別にして、債権譲渡は、過払い金、金利引きなおしに関する債務者の権利を侵害することを目的になされてしまう結果を生んでいる。

金融庁は、債権譲渡にともなう取引履歴開示の義務については、私人間の民事紛争に委ねており、監督機関として、なんら監督指針あるいは検査による監督をしたとは聞いていない。

 

さらに、保証会社が保証したあるいは弁済したと主張して、突然、債務者に直接取立てに行くようになってきた。そもそも債務は、任意弁済を認めなければ、一部あるいは全部の債務が消滅していて、不存在の債務を弁済する義務はない。そうした債務を弁済したと主張して、消滅していた債務を復活させ、求償権を行使するのは、架空請求となるのか。 

 

前編に続き、さらなる疑問点について再考し、確認すべき点を検討します。

事実関係

①Xは貸金業Sからグレーゾーン金利で貸金債権を借りていた。

②Sは、Xに対するローン債権をBに譲渡した。

③SとBとの連名によるXへの譲渡通知には、譲渡にともないGが連帯保証人になるので、保証委託の申込みをするようにとの説明書きがあった。Gについて、Xは知る由もない会社で、保証委託せず放置、保証契約の関係は成立していない。

④GがBに対して保証履行するため、主債務を弁済したので、求償権が行使され、GがXに対して弁済費用の償還を求めてきた。主債務は、金利引きなおし計算前の金額で弁済されたという。

⑤Xは、S及び/あるいはBに対して任意弁済を認めず、金利ひきなおし計算をして元本金額を算出しようと債務整理をしようとして、延滞していたところ、GがXのBに対する債務の弁済により、Xに求償権を行使してきた。

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1. 全情連情報の扱い

 

① 債権譲渡された時点で、全情連加盟員Sは、全情連に対して、譲渡があったことを通知する。

② Xは、譲渡債権が、譲渡後のローン取引について、全情連に登録を継続されるか否か、銀行に確認をする。債権譲受人Bが全情連の加盟員で、情報登録が義務付けられているかどうかについては、確認を要する。また当該譲渡債権について、登録義務はないが、全情連に自主的に情報提供しているか、しようとしているどうか、確認を要する。登録が継続されなければ、譲渡債権は全情連で追跡することはできなくなる。

③ Gの保証履行による弁済で、債務は消滅したと推定される。したがって、かりに全情連に登録が継続されていれば、債務が残っている状況であれば、Xは全情連に修正請求する。

④ Gが仮に全情連加盟員で、保証の履行よって、保証人に主債務の消滅と同時に生じる求償権は、譲渡された債権との同一性がないので、それを同一債権として、Gが全情連に登録を継続することは、虚偽、不正の申告になるので、Xは全情連にに対して、削除請求する。


2. 保証履行の結果の求償権の発生、第三者弁済の効果に関する疑問点

 

⑤ GのXのSに対する債務の弁済が、GとXとの間にいかなる契約関係もないとし、GのBに対する第三者弁済と性格付けした場合、Gは、Xに対して、弁済にかかる事務管理費用を償還請求する権利を主張する。本件債権が貸金業法の適用を受ける債権であるので、その性格と特別法適用をを封じるため、債権を消滅させて別の求償権に衣替えさせることは、許されない。譲り受けによっても、保証によろうとも、貸金業法24条の適用を受けるので、求償権といっても、Gが貸金業非登録業者を理由にも、貸金業法の適用を免れられない。
また譲受人が、貸金業登録のない業者であるとき、営業として、大量に本件業務を営む場合には、貸金業法の適用を免れうるとは考えられない。

⑥ SのBへの債権譲渡後、GがBに第三者弁済した場合、Xが、Gの弁済履行による事務管理費のXに対する求償権の発生を嫌い、事後的な第三者弁済拒絶の主張は認められうるか。貸金債権の性格と貸金業法の立法趣旨を慮れば、Gが非登録業者であれば、第三者弁済が貸金業法の目的を潜脱するために利用されかねないので、そうした違法を目的とする求償権の発生を禁じるため、拒むことを正当化できるのではないかと考える。なお無担保債権ゆえ、債権者に代わって代位できる権利はないと考える。

⑦ Gが保証履行ではないと主張し、Bから転譲渡を受け、Gが債権者としてXに支払いを求めている場合の問題は、以下の通り。
  債権の転譲渡について債務者には通知がないので、BからGへの譲渡についてXは対抗することができる。債権譲渡24条2項通知も送付されていないので、譲渡があったということであれば、そもそも貸金業法違反となるので、権利を害された債務者Xは、金融庁に通告し、調査を求める。

 

3. 保証履行(第三者弁済)と架空請求

 

Xが、S及び/あるいはBに対して任意弁済を認めないと主張するのであれば、保証履行あるいは第三者弁済された債務の一部あるいは全部がすでに消滅しており、保証は免責され、あるいは弁済義務も消滅していた状態であったことは、合理的に推定できる。
貸金債権の性格を考慮し、そうした状況での主債務の債権額についてXに確認なく履行されたGの保証あるいは第三者弁済の効果から、当初からみなし弁済の事実の確定を目論んだ悪意が存在したのかと疑念が生じる。しかもBはそうした事情を認識した上で、保証による支払いあるいは第三者弁済を受領しており(Bには受領遅滞がないことの事実から)、本件は、Gの単独の営業行為というよりは、Bとの共同、共謀した意図があると推測される。
Xが金利ひきなおし計算をして元本金額を算出しようと債務整理をしようとしていたとき、その意思を表示しているところ、すでに消滅した債務について、それを認識した上で保証履行あるいは第三者弁済をして、求償権を行使する行為は、不存在債務につき、架空請求であり、違法な請求である。
したがって、Gからのいかなる請求に対しては、Gが債務が存在したことを証明しない限りは、債務不存在と請求原因がないことを主張し、支払いを拒絶する。 
簡単に言えば、金利ひきなおし計算のための取引履歴を開示し、残債務が確認できるまで、あるいは残債務の確認ができない限りは、支払いを拒絶する。GはXが支払いを拒絶し、回収ができないのであればあれば、提訴するほかないから、保証した債務あるいは第三者弁済した債務の存在を主張するものが、取引履歴を開示することになる。


債権譲渡と保証をめぐる疑いある法律関係

2008-06-06 11:49:30 | 債権譲渡

債権譲渡と譲渡された債権の保証の関係をめぐり、疑問ある陳述が他ブログに紹介されています。

取引を概要しますと、
債務者XのSに対する貸金債権は、SからBに譲渡され、その後、保証会社Gによって代弁された。引き直し計算の結果、過払い金が発生していた。その後、Xは、Gと不当利得返還の和解成立。
--------
法的な事実として、何が起こっているか理解できません。以下の状況を想定します。
1. 債権がSから銀行Bに譲渡された。
2. 債権の連帯保証を、債務者Xは、Gに委託し、Gにより受託された。
3. Gは、保証を履行した。(そのまま引用すれば、代弁したとされる。)
4. 過払い金が発生していた。
5. Xは、Gに対して不当利得返還請求をしたと見られる。
--------

さてここで法的状況を考えてみます。

4から債権は、Xの弁済により、消滅していたことになります。
したがって、3については、不存在の債権について、事前の調査なく、存在すると誤認してGが支払い、債務を消滅させたと信じた。
ということは、保証する前に債権が遡及的に消滅していたのですから、弁済により代位するものは何もありません。結果、保証の免責行為は、無効となるか、それともGがBに対して不当利得を返還請求することになります。
GのBに対する不当利得返還請求権は放棄することもできます。そうしますと保証する理由もない、支払い原因がない支払いということになり、そうした弁済は、税務上費用として認められるでしょうか。それは別問題ですが。

6. もうひとつは、GのXに対する責任は何か発生するか。
債権の権利者でも、帰属があるわけでもないので、Xに対する返還義務など生じません。保証人は債務を負うものと連帯して保証しているのであって、利得がある利益状況にはない。当然、裁判所でも、そうした請求が容認されることは、この法律構造ではないのではないでしょうか。
とすれば、想定2と3、それに5が誤りという答えが導かれます。

7. 考えられる法構造としては、
(a)債権がBからGに譲渡され、Gに帰属があるので、Gが過払い金返還義務に応じる。
(b) B->Gに対する保証委託で成立するBに対するGの「保証人」というのではなく、GはBに対して何かを補償している状況になっていることから、Bは、自ら保有する債権について生じるいかなる原因による損失に対しても、全額あるいは一部につき、Gに対して損害保険を有していることになる。
ここで7(b)の想定も保険の法構造上、無理がある。Gは、Bに対してだけ契約上の責任を負い、契約上の第三者のXに対しては、なんら責任を負担しない。したがって、この構成をとるのであれば、GがBに対して補償を行い。BがXに対して、過払い金返還請求に応じる立場にある。XのGに対する不当利得返還請求は、法律原因が存在しないので却下されるか、Gは当事者適格を有しないということになる。
とすれば、7(a)の状況がつくられていたと推し量られる。

しかし、法律構造としては、やはり何か穏やかではありません。債権はSからBに譲渡されたと同時に、あるいはほぼ時期を同じくして、Gに譲渡されたか、それとも所定の延滞日数経過後、債務不履行債権として、Gに譲渡された。Gは債権を譲り受けたのであって、不当利得返還請求する法的義務なり立場を引き受けたわけではないでしょう。すると、Gが債権譲渡を受けた時点では、すでにXに対して不当利得が発生していて、債権自体は不存在だったということの事前調査ができていなかったとその状況が推定されます。

ここで、債権は存在していれば譲渡できます。不存在であれば、譲渡する権利もありませんから、譲渡時、すでに債権消滅により、債権譲渡はその効力を失うことになります。しかしながら、債権消滅の原因があっただけで、BがXから返還請求を受けていなかったらどうか。否。Bは自己が保有する債権について、金利ひきなおし計算をすれば、債権が消滅していることを知ることができる立場にありますので、Gに対して債権譲渡をした時点で、すでにGを錯誤に陥らせているか、詐欺があったと推認されることになる。いずれにしろ、銀行業務を営み、債権の残高確認程度のの注意は求められる立場にあるBに、債権が不存在の認識が推認されると考えれば、BからGに対する債権譲渡は、無効、それとも成立しなかったということになると解する。

そうすると、どういう法的状況が作り出されているのでしょうか。事実を認識できません。

 


クレディア再生計画案-- 収益見通しと事項可能性

2008-05-24 22:02:23 | 債権譲渡

5月22日、クレディア再生計画案提出が通知された。

以下の想定の上、48ヶ月の収益見通しをしてみる。

買収価格は、360億円と憶測される。そこで、かざかファイナンス(アドバンティッジ・パートナーズ)は、60億円の株式出資、300億円の貸付をして、買い取ると想定する。
債権カット率を提案どおりに、手続きの今後の予定にあわせて、予測してみる。

想定条件は、表に記載の通りで、概説する。
 - 2007年9月末の貸付残高を940億円
 - ネット月次元本返済率(既存客への途上のリボなどの再貸付額を差し引いた元本支払い率)を2008年末まで貸付総額x2.5%、2009年を2%、それ以降1%(新規客への貸付もあるので)とする。
 - 金利収入は、当初、貸付金の2/3が100万円以内のローンとして、年15%、それ以外は18%とする。2010年以降、15%金利ローンは、15%を占めるとし、85%が100万円以下ローンとする。
 - 正常債権比率を93%
 - 金利、貸倒費用を除く販売管理費を2008年まで貸付増額x年6%、それ以降、5.5%
 - 過払い金は、30万円まで全額、それ以上は4割払われるとし、30万円以内が全体の2/3を占めることから、過払い金請求に対する返済率を、80%とする。そこで、2009年までは、貸付総額x年2.4%、それ以降1.6%とする。
 - 貸倒率を、2008年年12%、2009年10%、それ以降8%とする。
 - 証券化の費用を年率4.25%x負債額とし、2007年9月以降、全部がターボ早期償還により担保回収金全額で返済されているとする。担保債権額は、パススルーによる減額がなく、一定額が維持されるとする。担保設定額は、表の通り。
 - 当初借入れ300億円の金利を年4%とする。ネットCFにより、毎月償還するが、CFは黒字でも、貸倒償却すると赤字になっているので、元本返済開始するかは、経営判断。
 - 表で、収益は貸倒償却前、所得は、貸倒償却後の利益
 - 所得÷2をIRR10%で割り引いたのが、CFPV
 - 上記想定では、経過48月で、借入れ残高は40億円まで減少し、58ヶ月でゼロになり、そのとき、貸付残高は180億円存在する。

 

収益見通しの結論

貸倒率が経営のキーポイントになる。販売管理費は、経営指標として変動しないで固定できるが、貸倒率、過払い金返還率は、将来予想に頼ることになり、どうなるか客観的合理性のある見込みが立てられない賭博的投資となる。そのため、買取額は、借入額を決定し、費用を確定することもあり、慎重を要す。
上記条件であれば、過払い金料率が貸付額x2%とすれば、貸倒が9.4%以内でない限り、利益がでることはない。永遠に赤字ということになる。

現状が大きく変らないとすれば、2009年の損失は、12億円を超えることが予想されるので、利益を上げるには、4年に上る長期戦となると見られる。

詳細は、以下に。

クレディア再生計画案-- 収益見通しと実行可能性


 


アエル 証券化の債権譲渡と債務者への譲渡通知をめぐり予知される紛争

2008-05-18 11:21:03 | 債権譲渡

証券化資産の債務者への譲渡通知と信託財産に含まれる過払い金返金請求権をめぐる扱い

アエル、民事再生会社と証券化財産に関する資産と信用状況 から続く。 

 

所収先:

http://consumerloan.blog.shinobi.jp/Entry/95/

以下は、目次と冒頭部分にすぎません。 全文は、上記URLに所収されています。

 


(a) 譲渡時、金利引きなおし計算前残高があるケース
債権譲渡は、債権が存在する債権についてしか、譲渡することができない。信託にかつて譲渡されてしまったけれども、そのまま金利引きなおしすることなく、完済された債権は、譲渡の要件を満たさない。(「貸金業債権の債権譲渡をめぐる債権の法的性質、要件事実と譲受人の帳簿保存、取引履歴開示義務」参考)
金利引きなおし前に、1円でも債権が残存すれば、債権譲渡の対象になるので、譲渡通知が出される可能性がある。譲渡通知の判断は、当事者がするので、通知されるかどうかは不明だ。しかし、引き直し計算したら、すでに過払い金が発生しているから、この債権の譲渡は、実質的に、信託による債務引受を承認する行為になってしまう。過払い金請求は、譲受人=信託財産に対してすることになる。信託財産が債務超過になれば、旧信託法に従って、.....

 

(b)譲渡時、債務が消滅しているケース
信託に債権が移転されていたが、譲渡通知を送付する時点で、債務が消滅しているときには、譲渡があったことを通知する必要はない。譲渡通知は、債権譲渡により、債権の請求権を有する者を通知することから必要であり、すでに債務が消滅しておれば、その必要がない。
そうすると、1円でも債務があるケースでは、譲渡通知がだされ、権利移転の事実関係を知ることになるが、完済している場合には、譲渡契約が効力を生じ、実際に移転されており、超過金を信託が受領していた事実を知ることができない。

債権譲渡登記を調査すれば、あるいは貸金業法にもとづき、譲渡者の譲渡に関する帳簿閲覧を請求して、譲渡の事実を知ることができる。(注) この場合...........

 

II. 信用情報の共有の問題

譲渡を受けるのが、信託銀行である場合、全情連加盟していない場合には、履歴情報の共有はできなくなる。BUSが貸金業者となって、受託者から回収事務を受任される場合に、信用情報機関に取引履歴を登録をしようとすれば、債務者の同意が必要なことは、すでに論じた。(「増補版  貸金債権の債権譲渡にかかる信用情報の共有に関する利用権の扱い」参照) 

他方、債権の帰属は、BUSではなく、受託者にある。受託者が信用情報機関の加盟員でない場合、信用情報機関は、登録をうける資産について、サービサーの保有資産として扱うことになるのか、どのように識別されるかは、不明である。・・・・

 

 


貸金債権の債権譲渡にかかる信用情報の共有に関する利用権の扱い

2008-05-17 22:09:32 | 債権譲渡

貸金債権の債権譲渡にかかる信用情報利用に関する違法性

信用情報機関を通じた加盟員との情報共有の利用権は、債権譲渡により、権利移転されうるか。

 

所収先:

http://consumerloan.blog.shinobi.jp/Entry/96/ 

以下は目次と冒頭部分です。全文は、上記URLに飛んで閲覧ください。 

 

概略 

取引履歴情報に関して、信用情報機関を通じて、貸し手以外の外部の貸金業者の加盟員との間で、情報共有されることができるとする債務者に帰属する信用情報の利用に関する権限、権能は、元のローン契約で、別途同意されている。貸し手の外部者との情報共有は、ローン契約あるいは付随の債務者同意にしたがい、契約上の地位に基づき、認められる。

債権譲渡に伴い、譲渡者の信用情報の利用権限は、債務者の別途の同意なく、譲受人に随伴するものではないので、譲受人が外部者との情報利用、共有することは、違法な不正利用となる。債権譲渡によって、債務者が経済的不利益を被ることは許されない。 

債務者は、債権譲渡にともない、譲受人が自己の信用情報の利用の同意を求めてきたとき、同意を法律的に義務付けられるような強制力がないので、同意するに及ばない。したがって、意図的、目的的ではないにしろ、延滞しようとも、その情報を信用情報機関を通じて、譲受人以外と共有することができない。債務者は、無断の情報利用をされた事実を知った場合、違法利用につき、信用情報機関に登録削除請求をすることができる。また登録されて、経済的不利益を被ったのだから、それにともない他で借入れに障害が発生したなどの損失、損害が発生していれば、金銭賠償あるいは代替的な代償(貸付)を求めることができると考える。

譲り受けた銀行が、信用情報機関を通じた情報共有をするのであれば、債務者によるオプト・アウト形式の推定同意だけでは、同意があったとは法的に擬制することができないと考える。具体的利用方法についての明記は不要であるが、情報共有され、2次利用される信用情報の範囲を明確にした上で、オプトインによる同意を要する。債務者が、無断利用による権利侵害により、結果的に被る不利益を考量すれば、衡平バランスがオプトアウトに傾くとは考えられない。

債権譲渡により、借入れ情報は、どのように扱われるだろうか。最新情報に随時更新されず返済があっても、それが反映されなければ、場合によっては完済しても、残高が残ったままでは、債務者は、債権譲渡により重大な不利益を被る恐れが生じる。経済的不利益は、誰の不注意により、被ることになるのか。債権譲渡後の借入れ情報の扱いについて、さらに検討しなければならない。

 

1.ローン借入れ時の信用情報利用の同意

 貸金業者から借入れをするとき、信用枠内のリボ借入れ付き借入れも証書借入れにおいても、通常、金銭消費貸借契約には、ローン情報の貸金業加盟員間の共有について、債務者の同意条項が含まれている。信用情報の共同利用に関する債務者同意は、ローンの性格あるいは要素を決定するための、ローン契約に必要な合意事項ではなく、ローン契約とは別に同意を取得される性格の法律関係である。ローン契約に組み込まれるのは、ただ便宜的に、ローン契約書において、貸付条件のひとつとして、同意が取得されるにすぎない..................

 

2. 債権譲渡で譲受人に同時に譲渡されない契約上の権利

 ローン情報は、その性格から、ローンの性質を決定する条件など契約上の情報と取引情報(延滞、債務整理、破産法適用に従うなどを含む)にわけられる。前者には、金利、月の返済期日、返済金額(ミニマム・ペイメントなど)支払条件、保証・担保設定の有無、与信枠(借入れ上限額)、与信枠変更裁量権、債務不履行事由などが含まれる。後者には、延滞の原因に関する情報の一部が含まれるが、それは信用情報機関を通じて共有されることを目的とされるため、分類上、情報機関を通じて共有される情報については、目的的に、取引情報に区分する。貸し手業者が、長期延滞債権をどのように処理するか、貸倒償却にする基準や貸倒償却したかどうかの内部管理上の処理や会計上の扱い、その原因については、.....................

 

ローン情報、取引履歴情報は、誰に帰属するか

ローン情報は、借入れ、貸付というように、相対する当事者に契約上発生し、保持される情報である。情報主体は、両者にそれぞれにあるように解すことができる。他方、貸し手は、................

 

3. 信用情報機関を通じて加盟員間で共有される信用情報の違反共有

 ローン契約において、取引履歴に関して、譲渡者以外の外部の加盟員で情報共有することが同意されている。その情報利用は、契約当事者である譲渡者の契約上の身分的地位に基づき発生する利用権であり、債権譲渡にともない、譲受人に随伴して移転することが認められない権利である。譲受人は、譲受後、取引履歴情報を保管するが、別途債務者と情報利用に関する契約をしない限り、許可のない不正な、あるいは目的外の違法利用ということになる。許可なき利用を知らないで、利用された債務者の利益が害される恐れがある。..............

 

4. 譲渡債権の共有信用情報の更新、削除請求と債務整理代理人の確認事項
  

債権譲渡により、債権が存在する借入れ情報は、どのように扱われるだろうか。最新情報に随時更新されず返済があっても、それが反映されなければ、場合によっては完済しても、残高が残ったままでは、債務者は、債権譲渡により重大な不利益を被る恐れが生じる。経済的不利益は、誰の不注意により、被ることになるのか。債権譲渡後の借入れ情報の扱いについて、さらに検討しなければならない。.....

 

(a) 債権譲渡により、共有できなくなる信用情報

すでに説明したように、債権譲渡により、譲受人は、信用情報機関の加盟員であっても、債務者同意がえられなければ、2次利用、共有による利用が禁じられる。債務整理にはいり、金利ひきなおし請求して、一部元本が消滅させたり、過払い返金請求しても、そうした履歴が信用情報機関には、登録することができなくなる。
他方、信用情報共有は、....................

 

(b) 共有されなくなった信用情報の削除請求

債務者が外部機関を通じた情報利用を同意しない場合に、どうなるだろうか。債権譲渡後、ローン契約の明示の終了合意がなければ、リボ貸付合意の効力は消滅していない状況におかれるかもしれない。また信用情報利用については、ローン契約が効力を終了しない限り、譲渡人の情報機関加盟員として、情報の正確性を維持し、更新する義務は..................

 

 

 


アエル、民事再生会社と証券化財産に関する資産と信用状況

2008-05-15 22:44:31 | 債権譲渡

アエル、民事再生会社と証券化財産に関する資産と信用状況

 

民事再生手続き中のアエルに、証券化され信託譲渡された信託財産について、債務者に譲渡通知が送付されたと聞く。民事再生手続きでは、譲渡担保を含め、別除権行使が認められる。証券化では、債権譲渡時、信託受託者に対する債権譲渡の登記はなされている。譲渡債権について、債務者に譲渡通知がなされたことで、債務者対抗要件を具備したうえで、担保権行使がなされたと考えられる。

ここでは、過払い債権者が、どのような不利益を被るかについて検討するが、まずアエルの信用状況について俯瞰してみる。


アエルの財務・信用状況

管理している債権全体では、890億円の貸付金があるが、アエルの公式の会計帳簿では、営業貸付資産は390億円しかない。アエルの固有資産んと証券化された簿外に管理する別のふたつの会計帳簿があると考えるとわかりやすい。帳簿上の貸付金のほかに、帳簿に認識しないで管理している貸金額を加えた全体の貸付金がある。真正売買されて、簿外に外され、登記も権利移転された500億円の証券化のための貸付金がある。証券化では、サービサーをしているが、報酬は年数百万円にすぎないとみられる。

 

 証券化劣後持分出資の価値
 帳簿上、資産に、証券化の劣後出資持分250億円が認識されており、証券化の優先出資持分残高は、民事再生手続き開始時には、約250億円と推定される。劣後持分とは、証券化の超過担保譲渡による超過担保債権額と証券化(借入)額の差額の元本債権額に相当する。借入額を返済できたら、超過譲渡担保設定部分が劣後して返済される約束に類似する。おおざっぱにいえば、現在のところでは、500億円について証券化設定譲渡されているが、証券化金額は、250億円となる。証券化の投資家は、信託契約上、500億円の債権額全額から、完済を受けられるまで、優先弁済を受ける権利をもっており、投資家への返済が終わったところで、劣後持分権への分配が許される。
 投資家は、信託の受託者を通じて登記上も権利者ゆえ、回収の恐れがあれば、劣後受益者の保護を考慮することなく、500億円全額を手続き外で、任意処分して、250億円を回収する権利行使が認められる。したがって、劣後持分権に、どの程度の資産価値があるかないかの評価は、不透明となる。

 アエルが証券化のサービサーしており、信託の受託者からサービシング料を受けているが、実際にはサービシングにかかる経費さえ、補填できるに十分な額ではないから、実質的には、劣後持分からの高配当がその代わりとなる。投資家に配分される優先受益権の配当は、ダブルA並の金利に固定されるので、回収率が高ければ、劣後配当が大きくなる。必要なサービシング費用は、こうして劣後配当として、成功報酬に化けている。すなわち、アエルの債権者側からみれば、証券化の支払いが優先され、余りあれば、劣後配当で受領できる財産価値が増えるということになる。

 この500億円の証券化資産については、アエルは、過払い債権を含め債務整理や貸倒によって、証券化資産価値が目減りしたら、劣後配当に先んじて、それらの不良債権を信託の費用(デフォルト・トラップ)として認識され、配当前に控除されて、劣後配当が計算される。
債務整理、長期延滞などのデフォルト債権が減少すれば、劣後配当が増加することの意味は、例を用いて説明する。証券化金額を100億円、信託財産を130億円(30%の超過譲渡)で、常時、信託財産に発生する延滞率を5%とし、金利を29.2%とし、投資家金利を3.0%、受託者の信託報酬を年0.3%x信託財産額、バックアップ・サービサー(BUS)料年0.25%、サービサー料年100万円、デフォルト・トラップ発生率を月0.8%とすれば、信託の月収入は、
信託収入 29.2%÷12x95%x130%x100億=3.01億円
信託費用(投資家金利): 3%÷12x100億=2500万円
信託費用(信託報酬):   0.3%x130億÷12=325万円
信託費用(サービシングとBUS):  (100万+0.25%x130億)÷12=279万円
信託費用(デフォルト・トラップ) 0.8%x130億=1.04億円
合計信託費用:          1億3504万円
信託劣後配当(収入-費用合計):     1.66億円

 信託収入からデフォルト・トラップされた不良債権は、そのまま信託に放置しておいても回収されない上、債務整理で法律紛争になって、信託財産の帰属のままでは、信託委託者(証券化をする貸金業者)が信託財産にかかる処分権を行使できない。そこで、現状有姿で、委託者に戻されることになる。
 信託財産の超過担保設定額は、この場合、130%の最低必要額を維持する義務を負っているので、デフォルト・トラップされた金額に見合う金額の債権を追加信託することになる。最低担保必要額を維持できなければ、信託の優先受益権の発行から数年間、据え置きされた予定償還期日が直ちに到来することになる。こうして信託委託者には、不良債権を優良債権で差し替える義務があり、証券化信託財産は、つねに正常債権だけになるよう運用される。

こうして、アエルがサービサーを継続する限り、劣後持分収益を高めるために、回収に努力する。効率的な回収は、投資家のためのサービシングだけでなく、自己が有する権利の価値を高くするために、アエルにとって、強いインセンティブが働く。

もしサービサーが継続できないとき、第三者にサービサーが交代すれば、信託財産の貸金債権の金利は利息制限法以内に引き下げられ、また高い劣後配当を受ける動機は交代サービサーにないので、回収の質は下がり、劣後配当が相当大きな収益源となるほどの影響を受けることは明らかだ。

 

 証券化、固有資産の債権の質の差 
 アエルの不良債権は、証券化を除いた残りの390億円に組み分けされていると推察される。信託財産が年間15%の差し替えがあると考えれば、アエル固有資産390億円のうち、どれだけが未収の腐った債権あるいは和解前の債務整理債権、過払い債権となるだろうか。もちろん、固有資産390億円からも、同様な不良化債権を発生があるとすれば、上記数字を当てはめれば、890x.15=133億円が不良ということになり、不良化比率は、帳簿資産に対して、133÷390=34%にもなる。

  証券化では、契約上、有利な条件で証券化するために、譲渡適格債権基準を定め、信用の質の悪いと判断される資産を組み入れません。たとえば、借入れ社数6件以上は不適格とか、2000年当時のアエルの証券化では、全情連で負債総額230万円以上の借り手の債権は不適格だとか、過去何年間において、延滞、破産履歴があったら不適格とか、そうした条件が十余は定められているから、890億円のなかから、支払い能力が高い500億円が選び出されているということになる。したがって、残った390億円の資産は、多重債務額が大きく、借入れ件数が大きく、保証会社案件(証券化では除かれる)だったり、延滞が頻繁におこったりする債権ということになる。

  会計帳簿上、認識されている営業貸付金約390億円の内、186億円の借入金のために、300億円を譲渡担保に差し入れている。債権者説明会の説明では、担保権者は、この担保の権利行使をしようとするように見受けられた。別除権行使だ。民事再生手続きなので、事業継続にどうしても必要なものでない限り、担保権者により、手続き外での処理がなされ、第三者に任意売却処分されても異議は申し立てできないから、これは、担保権者の意思しだいだから、手続き上、再生債権者が引当財産にできない別資産と考える。

  借入金の186億円は誰からの借入かは分からない。かりに株主ローンスターからであったらどうだろう。法律上、有効に担保設定されていれば、株主が貸付をしているからといって、その権利行使を妨げることはできない。
  この300億円はどういう担保の質かはわからないが、通常金融機関取引では、担保掛目が維持されることだけが重要で、譲渡担保だから、資産の中身の質を維持することは求められていない。通常、月末時点で、全部の担保債権を洗い換えされるのが通常である。貸倒債権や債務整理案件を除き、それ以外に差し替えるための作業として、月末時で切ってチェックし、該当債権を抜き出し、超過担保掛目分の債権を総入れ替えして、差し入れており、特に、適格基準を設けていなければ、延滞が含まれたり、質がいいとは限らない。しかし貸倒と債務整理は省かれると推測される。

 したがってこの担保債権をのぞいたアエル固有資産90億円は、債務整理が終わっておらず、未和解案件か、貸倒前だったり、管理に費用がかかる有毒の凝縮倉庫ということになる。
上の計算で、いくらが不良化しているか推測できるが、90億円全額が不良の可能性がある。簡単にいえば、極端には、自分が債務整理で訴えているものの引き当て財産が自分の債権だということになる。

  借入金は、全体で231億円あり、186億円を差し引いた、過払い債権者を含む残りの45億円の債権者にとって、配当が期待できない過酷な現実となる。たぶん、過払い金債権が3%集まると想定すれば、27億円。
 クレディアでは、事業ローンも営業していて、そこからの過払い金が大きく60億円にも達し、6%以上過払い金が届出されたが、アエルでは事業ローンもなく、手続き期間も短いので、それほど大きくはならないとみられる。だとしても、過払い金債権を加えただけで、70億円以上の債権者がおり、他にも出てくれば、90億円の固有債権からだけでは、何か返済できるあてはないとみられる。

  証券化の劣後持分の価値は、投資家が弁済確保のために、信託財産全部を自らだけの利益のために任意売却してしまわないかぎり、劣後受益権配当が期待でき、再生債権者は、それを引当にできる。
他方、受託者は、信託委託者とのサービシング契約を終了して、回収事務をバックアップ・サービサー(回収事務代行業者に類似するか)に委譲する場合、第三者がサービサーになるので、年金利18%以内しか回収できなくなる。こうして、第三者任意売却処分するかBUSに交代発動すれば、どの程度、債務者から弁済が期待できるか想像できない。
 第三者サービサーは、投資家が満足することが優先的任務になるので、劣後受益権者の権利を護ることには興味が小さい。債務者が金利引きなおし請求に容易に応じるだろう。第三者サービサーが全情連に加盟しているかどうかは不明だが、またBUS自身に帰属のある財産ではなく、信託銀行が保有者である債権なので、延滞を報告する義務があるかないか、どのように処理されるかは知らされていない。
  もし投資家が信託財産を処分することを選択する場合には、信託財産価値はかなり下がるので、アエルは、サービサーと継続することになる可能性もある。証券化資産に29%の高い金利を請求できれば、再生手続きの分配率はあがり、法曹債権としての報酬も期待できるということになるからだ。


 証券化資産に生じる過払い金の扱い

 法曹介入債権は、通常、デフォルト・トラップで信託内部の月次決算で、自動的に損金処理され、現状有姿で委託者に戻されることはすでに説明した。しかし過払い金が発生してしまう場合、信託銀行が不当利得を返還する義務を負う債務者となり、債務者だった者が過払い返還請求者となる。過払い債権となることが予想される債務整理の未和解債権について、信託が一部解除され、委託者に戻される場合には、債権者の同意のない債務者の交代、債務引受行為と同様の法的結果をもたらすことになる。しかも交代する債務者は、再生手続き下にある債務超過会社であり、支払能力がない会社に譲渡されることを意味する。
 デフォルト・トラップは、信託内部の信託決算方法にかかるので、劣後配当が減額されるからといって、再生会社の財産権処分行為にあたるとはいえない。同じ経済的効果をもたらすとき、委託者がデフォルト・トラップされる金額と相当額で無価値の債権を買い取った場合、手続下で、あきらかに否認の対象になるだろう。デフォルト・トラップは、再生会社の法律行為を伴わない事前の信託合意の事務に過ぎない。
 しかし過払い金返還が予期される債権を、委託者に戻すことは、投資家利益を護ることを引き換えに、再生会社の資産を目減りする結果となり、そうした害意があるといえる。
 
 この問題は、信託財産について、BUS交代を目的に債務者対抗要件を具備しようとして、譲渡通知をだそうとするとき、急に発現する。過払い金の発生は、完済された債権では必然である。信託財産にも、信託移転されたまま、完済された債権があることはいうまでもない。債権はすでに消滅し、残高がゼロの債権なので、過去において信託譲渡されていたからといって、債務不存在であれば、譲渡(通知)の要件を満たすとはいえるか。
 とすれば、完済債権に関しては、譲渡通知が出されることがなく、移転があったことを元債務者は、それにより知る機会はない。信託に対して請求するのであれば、引当財産は十分ゆえ、満額回答を得られるが、債務超過会社であれば、収受できる金銭はなさそうだ。


 これについては、証券化の過払い債権をめぐる扱いで、別稿にて論じる。

 


 


「貸金債権を買いあさる日本振興銀行のナゼ」 週刊東洋経済2008.5.17号

2008-05-12 13:00:33 | 債権譲渡

増補2版 貸金業債権譲渡をめぐる問題に関する早稲田大学大学院法務研究科の鎌野邦樹教授の見解に関する論考の考察 

 

「貸金債権を買いあさる日本振興銀行のナゼ」~日本振興銀行が消費者金融の三和ファイナンスから債権譲渡を受けたとする「お知らせ」を送付。債務者には動揺が広がっている。はたしてその狙いは何なのか

と題される大崎明子氏の論考が、週刊東洋経済2008.5.17号34-35頁に掲載された。

貸金債権買いあさる日本振興銀行のナゼ

 http://www.toyokeizai.net/business/strategy/detail/AC/69822d7f56713c92b87b63bbc76f287e/

債務整理関係者の間では、本件債権譲渡について、記事の内容に理解できない点、疑問点があるとの声がある。ここでは雑誌論考が指摘する貸金債権譲渡の問題点のいくつかに焦点のをしぼり、法的考察をこころみる。

記事の半分は、記事という性格より、結論なき論考といったもので、貸金業債権の譲渡に法的リスク山積、その業務上リスクを指摘する とタイトルを付け直したら、わかりやすい。本来のタイトルにある内容を探してみたら、最後に疑問だとしか書いてない。

サブタイトルに、「問題多い『お知らせ』」とある。学者以外に、取材源が明らかにされていないので、問題指摘をしたのが学者以外に誰かは不詳だ。司法書士がインタヴューを受けたことは、他のサイトに書かれている程度。さて、この問題が多いという指摘には、疑問な法解釈が含まれ、銀行の違法性を問うにしても、阻却事由はいくらも出されて、争われることは推察できる。

 

1. 論者は、譲渡通知について、「専門家に確認したところ、今回の「お知らせ」には問題点が多い。」と指摘し、「形式からしてずさんなのだ。体裁は、三和Fと振興銀行の連名だが、送付の主体は譲受人の日本振興銀行。」と問題点を説明する。その指摘、説明が、前文の専門家に確認された意見によるものか、それとも論者の独自の見方かは、文中から、文脈からはあいまいにされている。
しかしながらその直後に、「早稲田大学大学院法務研究科の鎌野邦樹教授は、『民法467条の規定する債権譲渡の対抗要件は、「譲渡人が通知」するか「債務者が承諾する」ことなので、問題文書は要件を満たしていない』と指摘する。」と説明が続く。したがって、専門家のひとりの意見を確認したところ、譲渡通知が要件を満たしていないとする見解は、学者の説くところと考えてよさそうだ。
さて、鎌野教授は、要件論を考えるに、(通知の)体裁は....連名であると認識された上で、送付の主体を問題にされる。債権譲渡では、権利取得者である譲受人の通知では、債務者が信じるに足りないと場合が起こりえることから、権利得喪失関係を伝えるに、利益を失う譲渡者が通知をすることを求める。譲渡通知文は、葉書文面において連名してなされているので、葉書の送付主が銀行であるにすぎない。債権譲渡の対抗要件について、法は書面の送付主ではなく、譲渡があったのことの事実の通知行為を問題にする。ここでは、文面上、連名して通知していると解され、通知は共同して作成されたと考えられる。
そもそも送付は、使者としてなすこともできるのであって、送付主が誰かによって、譲渡通知文が明確に譲渡者を含んでおれば、債権譲渡の事実について誤解が生まれるとは考えられない。したがって、送付主が譲受人であるという事実だけをもって、債権譲渡の通知の形式が要件を満たさないとする抗弁を認めるほどにずさんとは言いがたいと考える。銀行は、この通知において、学者から指摘を受けるような不備があったとは考えられない。

 

2. 「登記事項証明書なども添付されておらず、社印のみで代表者印もない。架空請求ではないかと疑った債務者や弁護士、司法書士もいるほどだ。」との論者の説明は、論者の見解なのか、専門家の指摘かは、やはりあきらかにされていない。これも、債権譲渡の様式に関するものだが、登記事項証明書は、対抗要件具備のために、法律は特に求めていない。また債権譲渡における債務者対抗要件を議論しているところで、第三者対抗に関する要件具備を議論する必要はない。
本件で債権譲渡の登記をしているか否かは不明である。仮に登記していても、登記事項証明書で、現在事項証明だけであれば、過去に遡って譲渡があった場合に抹消されておらず、二重譲渡がないことが確認できるかは、別の問題である。
実印を押印することが求められるかについても、法は様式を規定していない。したがって、問題として指摘されるほどのことではない。誰でも文書を偽造できるような通知であれば、債務者として、譲渡の事実を信じてよいかというにすぎず、その不信は、譲受人に支払いをする際に、住所、債権の条件、譲渡額など譲渡者しか知りえない信用情報を確認をすることになるので、不安の抗弁による支払拒絶は、しづらくなるだろう。
そもそも内容証明郵便とて、E電子郵便(ネットで申込みする方法)であれば、債権譲渡を知る第三者であれば、譲渡人に代わって押印なくて出すことができるので、信じられることができるかと疑問になる。法が求める債権譲渡の通知とは、それだけの機能以上に何を期待できるか。
しかし偽造といっても、悪意の譲渡者の従業員が、使用者に無断で債務者の指名、住所、債権の条件、債権残高をデータベース上から盗み出し、譲受人と共謀してでないと偽造することはできない。譲受人が、しかも銀行である譲受人が、氏名、住所、債権額をしっている時点で、譲渡は確からしいことが分かる。

 

さて、論者は、疑わしい偽造通知というイメージをいだく恐れを指摘されたあとに続けて、「また、届いた『お知らせ』には実際の残債額を大幅に超える金額が記載されたものが多く、発送後の4月16日付で『通知書の一部訂正』が送られてくる始末。振興銀行のホームページにも同15日付けで、『お詫び』と題する文面が掲載されている。」と説明しているので、残高相違がある債権譲渡通知であるために、架空請求の疑いがあると説かれるのだろう。
事務手続き上、計算違いのミスは起こりえることであり、事務体勢の問題であったとしても、債権譲渡の問題点ではなかろう。

 

3. 「金利や遅延損害金率を低く変更する旨の記載がなされたものがあり、中には当該欄が空欄で通知されたものさえある。しかし前出の鎌野教授は、『債権譲渡においてはこうした一方的な条件変更を含むのは無効』と厳しく指摘する。」と、論者は学者の見解を取り上げられる。
本件の譲渡では、譲受ける銀行は、債権譲渡の通知に、請求金利を利息制限法以内にするという説明を付している。これは債権内容を変容させるような条件変更と性質決定ではなく、譲渡後、利息制限法を超える金利のみなし弁済の適用の主張をしないという意味にすぎない。債務者に一方的な不利益を与えるような権利侵害にあたるものではないと評価し、債権譲渡を無効にしうるほどの違法な債権内容の変更とはいえない。

 

しかしながら、「譲渡日以降の金利が利息制限法の範囲内に引き下げられるようで、一見、債務者には有利であるかに見える。」と、論者がその後で説くように、この請求金利下げは、債務者にとって、思わぬ落とし穴になりかねないし、銀行にとっては、結果的なのか、みなし弁済適用を主張しないように見せて、実は違法な請求をし続けることになりかねない。実際に、引きなおし計算しないままの譲渡を受けたローン残高を、債権額が消滅するまで、利息制限法適用金利を請求し続ければ、いつかは過払い金が発生する。銀行は、みなし弁済の主張の放棄を、見せかけながら、債務者からの抗弁がなければ、過払い金を請求し、収受し続けることができるので、事実上、みなし弁済の適用を享受できることになる。
他方、現段階で、銀行がそのような請求をするかどうかを憶測することはできない。銀行は、金利引きなおし計算しなおして、残高がゼロになったところで、請求を打ち切るよう業務することとも想定しうる。違法請求をするという前提で業務するとも考えられない。

 

この点について、金融庁の態度は明らかでない。しかしながら、譲渡時において、それ以降の請求金利さえ利息制限法の範囲内に下げれば、引きなおし計算前の債権額を基準に、それが消滅するまで請求できるとする見解を、銀行の質問に対して金融庁が回答したとは考えづらい。なぜならみなし弁済無効を主張する債務者に対しては、違法な請求だからである。銀行は、譲渡を受けた以前のグレーゾーン金利の受領について、現状の判例法理から、譲渡者がみなし弁済の主張が有効であるとの信じるにたる証拠は得られないからだ。
本件に関して鎌野教授の説く条件変更とは、そういう意味での評価であれば、誤っていないといえる。

 

しかしながら、債権譲渡の時点まで、任意弁済については特に争うことなく、債務者が引きなおし計算を主張せず、両者の間で、債権額において合意が形成されており、それが譲渡通知でも確認される。債務者は、後になり、理由のいかんを問わず、みなし弁済無効を主張するか、抗弁するにすぎない。譲渡時の債権額が引きなおし前金額といえ、違法とまではいえないので、譲渡通知において、引きなおし計算前の金額を基準にして、適用金利を利息制限法の範囲内に下げるという対応は、あとになって、遡及的に引きなおし計算して、債権額を再計算できる正当な権利がある者であることを考慮すれば、不利益変更をともなう性質のではない考える。
少なくとも、債権譲渡時において、債務者との間で、金利引きなおし前債権額を債務として存在することを確認しようとする銀行の意思まで推認することは、この事実からだけでは難しい証明ではないかと考える。

 

4. 論者はまた、「本譲渡契約についての『確認書』及び『保証委託契約証書』を別途送付させていただきますので、返送をお願いいたします」ともある。確認書や保証委託契約証書の内容次第では、返送すると、債務者は振興銀行が示した条件を新たに承諾したことになりかねない。」と説明する。債務者が勧めに応じ、保証委託契約書に合意すれば、確かに別の契約関係に入ることになる。確認書は、債権譲渡の確認書を意味しているようだが、実際には、未だ送付がなされていないようなので、記載内容について検討することができない。債権譲渡の対抗要件をすでに通知で済ませているとすれば、確認書は不要であり、債権譲渡の承諾の意味であっても、追加的債務を負担するわけではなかろう。承諾書によって、金利引きなおし前残高について債務承認、異議なき承諾を目論んでいたとしても、それを理由にして、債務者のみなし弁済無効の抗弁に対して、判例上、債権者には、争うすべがないのが実情だろう。確認書によって、そうした債務承認を強制しようとしても、説明義務違反により、錯誤無効が問われるにすぎないだろうから、法的には無益な行為ではないか。

 

5. 論者は、上記に続け、「延滞し代位弁済されると、ゴールデン商事が債権者となって現れる。」と論じる。連帯保証ゆえ、保証会社が、事前の調査なく、主債務者のみなし弁済無効の意思を確認なく、引きなおし前残高について弁済を履行し、主債務を消滅させてしまったとき、その結果として、保証会社は、弁済した金額について債務者に求償することができるか。保証会社は、グレーゾーン金利を請求し、受領されてきた貸金業債権であることを認識して、営業として保証業務をする業者であるから、金利ひきなおし計算すれば、すでに消滅している不存在の債務を弁済したとしても、自らの注意を怠った結果であり、代位できる権利はなく、求償できないと考える。債務者の主たる債務の消滅、債権不存在についての主張あるいは抗弁は、債権者だけでなく、保証人に対しても失われない。
債務者は、保証会社の給付請求に対して、請求に応じず、裁判を受けることを選択すればよい。保証会社は債権者に対して、不当利得の返還を求めることになるに過ぎない。

 

6. 論考には、取引概略図が描かれる。法的に理解ができない点がある。
図では、日本振興銀行がゴールデン商事に対して、保証委託を求めることを意味する矢印→が銀行からゴールデン商事に向けて引かれているので、銀行があたかも保証委託するかの誤解を招く。概説図は、保証に関する法律用語の基礎理解を欠いて描かれているにすぎない。図で連帯保証は、保証会社と債務者との間で成立している。

保証委託契約とは、債務者が保証会社に対して保証委託を申し出、保証会社が応諾して成立する債務者と保証会社を当事者とする一種の委任契約とみられる。債務者が支払い不能になったときに、債務者が保証会社に保証債務の履行を求めるのであって、債権者が保証会社に、債務者が債務不履行になったとき、弁済を委託する回収する保険的な技法はない。
保証委託契約が債務者に別送されていないので、本件保証の実態は不明だ。保証会社が債務者に利息制限法を越えて保証料を請求することはないと規制上容認されないことから、日本振興銀行が、債務者を保険対象にして、債務者から収受する金利のなかから保証会社に保証料を支払い、債務者の死亡、高度障害のときに、主債務の弁済という方法で保証が履行される。
しかし、銀行は、債権譲渡に伴い、債務者に保証委託を申し出を強制することはできない。そこで、債務者を被保険者として、債務者の承諾なしに、保証会社との間で損害保険契約を結び、金利の一部を保険料として支払い、保険の受益者となることは、消費者保護法の点から許されるかは、別の考量が必要だ。保険であれば、損失填補が目的であり、主債務は消滅しないと考える。保証では、主債務を保証人が弁済をして、主債務を消滅させ、保証人は免責され、求償権を取得する。保険では、債務者に定められた損失発生事由が発生したら、受取人には填補請求権が生じ、保険会社に支払い義務が生じる。保険会社には、求償権が発生することがないので、債務者に対する請求は生じない。
このような保険を債務者を被保険者としてかける場合に、譲渡される主債務にはかかわりないところでの法律関係の生成であり、債務者は、なんら経済的不利益を被ることはないように見える。
他方、そうした保険制度については、金融保険という性格から、商品についての金融庁の承認が必要か、損害保険の特殊金融機関として、業務運営上の資本上、人的、組織的条件が求められるかは、別の監督行政の問題になる。
しかし、実体は、債務者と保証会社は、連帯保証関係とあるので、委託関係は、債務者と保証会社の間で結ばれ、成立うすることに疑いがなかろう。

 

7. 取引概略図では、日本振興銀行は譲渡者に、譲り受け代金を支払うよう、銀行から三和ファイナンスに向けて矢印→がついているが、どのような代金があるか、その有無も含めて不明である。

 

以上、疑問点を考察してみた。貸金債権の債権譲渡にかかり、論考は、債務者の不安な点や銀行の品位、風評リスクから論られるようだが、銀行の営業に違法性があるとまでは、決定付けることはできない。

 

補足と結論

 

なお論考は、問題点として、債権譲渡にともない債務者のみなし弁済無効など抗弁権の切断の恐れと銀行の事務対応についての不備の懸念、ゴールデン商事なる保証会社の問題が取り上げられている。
銀行は、取材に応じず、金融庁の対応については、言及されていないことから、銀行監督機関は、違法性がなく、被害がでていなければ、様子見のようだと推測される。

はじまりの紹介文のところには、譲渡者の紹介として、
「弁護士などの間で同社は、”問題業者”で知られる。現在、業者の多くは、過払い金の請求があれば返還に応じている。だが同社は判決で支払いを命じられても応じない。対抗して、振込口座やATMを差し押さえると、「口座がカラ」「ATMに2万円しかなかった」といった事例が相次いでいる。同社自らがサービサーを務める500億円超の証券化案件については投資家への利払いが続いている。当然、債務者からの返済金を確保しているはずだ。そうしたキャッシュフローがあるのに、返還に応じていないのだ。」
とある。そして、本稿のとりあげた債権譲渡の「お知らせ」には問題点が多いに続いている。

本ブログ論考では、貸金債権の譲渡に関しては、譲渡者は、理論上、貸金業法の規正を適正に業務されていれば、特段、日常業務として、債権譲渡が問題になることはないと考えるので、論及していない。債権譲渡では、譲渡を受けた側に、完全に権利が移るので、譲受側を論じている。
他方で、債権譲渡が、将来起こりえる執行免脱を目指すものであったり、債務者の抗弁権の接続を困難にするものであれば、債務者の権利が害されることになる。債権譲渡の目的として許されるものではないが、当事者の内心の意思は証明しようがない。
債務者の法益保護は、本ブログの別の論考で論じる譲り受けた側の帳簿保存義務、取引履歴開示責任、みなし弁済無効の抗弁に対する譲受人の認識と実務対応如何となる。譲受人に悪意がなければ、譲渡前と同様の債務者の権利が保護され、銀行は、当然に起こりえる法的紛争については事前に予知、予期して、無用な紛争が起こらないよう事前の予防措置をとっていると推察する。譲受人による開示機能が保証されないような事務体勢では、抗弁権が切断されたと同じ効果をもたらし、悪意の有無にかかわらず、債務者の権利は侵害される。
それは、帳簿保存義務といった債権の付随義務の評価の問題ではない。請求権に関する本質的問題であり、貸金債権の法的性質については本ブログの他の論考にゆずる。法的にまことに奇妙な仮説で穏やかではいられないが、
引きなおし計算前に、50万円の残高があるが、引きなおして1000円の残高がありさえすれば、会計帳簿上50万円と認識される債権を50万円の請求権があるとして、債権譲渡される。しかし、譲渡後の初回払いで、1000円入金し、債務者が遡及的任意弁済無効を主張あるいは抗弁された時点で、譲受人は、それに争うことはできない。存在したはずの49.9万円は消滅した。
いえ、これは訴訟法上、存在していなかったのだ。もともと請求権は、訴訟による訴えの正当な根拠を欠き、すでに受領した給付を保持する権能も、強制力をもたない責任のない債権で、任意弁済無効の主張、抗弁により、債権は消滅してしまう。
しかも、債権の不存在は、任意弁済無効に関する債務者の意思表示にかかる形成権的な性格ではなく、任意弁済無効を前提にして過払い金が発生している状況では、第三者(租税上は)により給付の代位請求ができる権利として生成されてしまっている。
貸金業債権の債務が相続により承継されるときも、みなし弁済無効の主張、抗弁は有効となるだろう。会計処理上は認識が認められ、貸借対照表上は存在する請求権ではあるが、法的には請求権がすでに消滅してしまった不透明な権利である。
譲受人は、付随義務として帳簿保存義務を持ち出してきて、みなし弁済無効の抗弁に対して、防御することは認められないだろう。

債権譲渡にあたっては、引きなおし計算して譲渡されることが、規制上強制されることができない限り、法的紛争に発展しかねない状況を脱することはないだろう。破産法適用においても、引きなおし計算して資産価額を認識することはなされておらず、生存企業について、一般会計基準、監査の基準においても、そうした方針は取られていない。譲受けた銀行に責任があるというのではないだろう。
しかし、貸金業者が事業から廃業、撤退、営業譲渡、資産売却する上で、避けて通ることができなくなった現実的問題で、そうした状況で、債務者の権利は、どのように保護されるか、これも不透明な状況といえよう。
 


貸金業債権の債権譲渡をめぐる債権の法的性質、要件事実と譲受人の帳簿保存、取引履歴開示義務

2008-05-02 15:31:16 | 債権譲渡

増補版  グレーゾーン金利ローン、貸金業債権の債権譲渡をめぐる訴求できない債権の法的性質決定に関する疑問と譲受人の帳簿保存、取引履歴開示義務

 (増補部分: 譲渡債権に関する譲受人の帳簿保存、取引履歴開示義務)

 

本ノートは、日本振興銀行による貸金債権の債権譲渡に違法性があることを議論するものでも、違法性があったことを指摘するためのノートでもない。債務者の保護すべき法的利益の点から、譲渡がどういった態様でなされたら、債務者に不利益が発生するかについて考察し、そうした被害を予防するために何が必要であるかを検討することを目的とする。

すなわち、債権譲渡にあたり、銀行が内部あるいはおよび外部の法律実務家との検討されたであろうリスクについて、部外者が検討を試みたにすぎない。

 

債権譲渡について考えてみよう。この課題が与えられるとき、権利移転の態様と優先権の議論が盛んだが、譲渡される債権がグレーゾーン金利適用である性格と債権譲渡について考える。そこで、債権譲渡の要件事実の視点から考察してみよう。

 

I. 過払い債権が発生しているが未実現の状況の貸金債権の譲渡をめぐる争点

債権譲渡が法的に有効であるためには、債権が存在しなければならない。不存在の債権を譲渡することはできない。
債権の発生の原因は、グレーゾーン金利適用の与えられた与信枠内での随時リボルビング付きの消費貸借契約であり、それ自体は成立し、効力を生じている。他方、弁済行為については、貸金業法が求める要件が備えられれば、みなし弁済が認められたと考えられてきたが、2006年1月判例の結果、任意弁済でない限り、弁済を強制することができなくなったと考えることができる。
判例は、金銭消費貸借契約に期限の利益喪失条項が含まれれば、債権者が残債務全額の支払いを強制する結果、過払い金が発生することになり、任意弁済が有効になされたとは言いがたいという。とすれば、返済を、強制できないことになる。正確には、期限の利益喪失事由が生じ、契約上、弁済を強制できるかもしれないが、償還請求可能な任意弁済の範囲は、借入れ時に遡り、金利ひきなおし計算して残存する金額についてのみ、請求が認められることになると読み替えることは、解釈上違法とは判断されないと考える。
請求許容範囲を超える金額とは、債権の消滅にもかかわらず、任意弁済によってのみ支払われ収受される金銭である。その法的性格については、過払い金と同じ性格を持つが、後で考察してみる。

したがって、グレーゾーン利息の超過支払いにより過払い金返還請求権の発生している債権については、債務者による任意弁済無効の主張あるいは抗弁の有無にかかわらず、債権はすでに弁済により消滅している。だから、債権が不存在である以上、請求することは許されず、売買すること、譲渡することは法律上認められないので、そうした契約は無効となる。結果、債権譲渡の要件事実を満たさない。譲渡後、その事実がわかれば、債権の不存在について争いになり、反証をもって債権の存在を証明できなければ、当然に無効が認容される。

すなわこの場合、譲受人は、自己の債権に関する給付利益の保持のため、貸付発生からの取引履歴を実質的に有することなく、譲受業務に参入することは、できないことになる。銀行は、担保権行使にともなう一回限りの場合の譲渡の対応を除いて、業としてなす以上、債務者に争えない法的状況におかれる不利益を被る結果となる譲渡を進んですることはないだろう。

 

ここで、任意弁済の無効の主張あるいは抗弁にかかわらずという意味について考える。法の現実的運用場面をみるに、地方自治体の地方税、国保などの未納者の回収をはかるため、自治体や国保では、債務者のみなし弁済の無効の意思表示にかかわらず、過払い金返還請求権を有する相手方貸金業者に対して、直接請求でき、実際に差押もなされており、代位訴訟も提起しうる。不当利得返還請求権は、履歴開示さえなされれば、その事務処理の時点で金額が確定し、財産権としてすでに発生している。過払い金返還請求権は、債務者の意思にかかる形成権的性格の未発生の状態にある債権ではなく、理論上、財産権としてすでに発生していると考えることができる。

こうした法的な思考は、裁判例に見出すことができる。金利引きなおし計算前、残高が存在して、貸金業者が請求を行っているとしても、2007年半ばのいくつかの高裁判決の考えるように、業者は業者である以上、残高のないことを認識しつつ、架空請求し、受領しているのであって、違法な請求である。(注1) 
したがて、そうした債権はすでに消滅しており、債務の確認を待たずして不存在であり、譲渡の要件を満たすとは到底考えようがない。ただし消滅した債権にかかる権利・義務は、貸金業者の事業譲渡や株式移転、新設合併により、元貸主の地位が譲受人に承継されるもののは言うまでない。

 

II. 引きなおし後も残高ある貸金債権の譲渡をめぐる争点

次に、引きなおし計算しても残高があり、過払い金の発生していない債権について考える。債権は、少なくとも引きなおし計算後の金額の範囲である限り、存在しているので、その範囲での請求権が認められ、譲渡できる。それについては疑義がない。その場合、いったい譲渡債権額は、いくらなのかが、実務対応上、重大な課題となる。
譲渡契約では、譲渡債権額を引きなおし計算前の金額と表記する場合、譲渡者は、譲渡債権の性格にかかり、譲渡債権が、貸金業法24条の点から、みなし弁済無効を主張あるいは抗弁されることがありえること、その結果、譲渡債権額が減額される重大なリスクがありえることを明確に陳述しなければならないだろう。同24条がその説明まで求めているかどうかは、明らかではない。しかしながら、譲渡者は、引きなおし前金額の債権の存在を表明保証するものではないし、その金額に責任を引き受ける意思がないのであれば、債権の性質に関する本件説明は重要事項となる。また譲受人は、銀行業として、貸金債権について専門的知識を有しているものであり、かりに譲渡者による陳述がない場合にも、貸金債権の性格について、自ら明かにするよう求める注意義務から免責されることはありえないだろうとも考える。

法が契約上の説明義務を明確に求めていないのにもかかわらず、表明を求められる理由について考える。譲受人は、譲渡後、譲渡の結果として、債権を変容させることは許されず、したがって金利引きなおし後、残高ゼロになり、消滅した場合には、強制的な請求権を有しないということである。その点については、法が求めるものであり、譲受人が違法に請求して、弁済を収受した場合には、銀行業として貸金債権の残高を管理して認識いる銀行である以上、超過があることの認識のうえ、架空請求して、不当利得を食んだと推定される。

金融庁の見解がどうあろうと、貸金債権について譲渡が認められるとの意見をとろうとも、超過部分についての請求についての私法上の違法性が阻却されることにはならない。債権譲渡が、債権の譲渡であり、契約上の地位の譲渡でも、地位の承継もしないということを主張しても、法的には、譲渡債権を変質させることは許されない。債務者にとって不利益変質があれば、それにより不利益、損失など被る債務者によって争われることが予期される。債権譲渡のもたらす効果として、一部請求権に対する債務者のみなし弁済無効の抗弁権を譲渡によって切断されることは、認められない。譲渡がそのような法の潜脱に利用されることがあってはならない。

 

金融庁、財務局に求められる検査体制

譲受人の帳簿保存と契約上の取引履歴開示義務

金融庁は、見過ごせないほど多くの被害が頻発するまで、行動を起こさないだろう。営業の自由のもと、私人間の契約にまで介入することはない。契約は全体として有効でも、一部において、無効の合意を含む場合もある。当事者で予期できないリスクについて、陳述されないこともある。債権譲渡は、貸金債権といえども、貸金業法上の制約をうけるが、規制監督規制上禁止されるわけではない。したがって、今のところ、無言の対応となっている。紛争が裁判所に持ち込まれた後、どのような対応がとられるか、一過性、一回性が強い取引であれば、無言の対応となるだろう。

しかしながら、金融庁は、債権譲渡がそうした法の潜脱を目的としてなされていないことについての監督責任を負うと考える。ここで監督責任とは、厳格にとらえ、検査において、貸金業法24条に関して、債務者保護の点から備えるべき事務体勢に関する検査項目に含め、また通報により、事後的に検査する場合に、チェック項目とされるという意味である。金融庁に、監督に服す銀行に対して、事後でなく、取引の事前の注意警告義務を求められるかは疑問だ。債権譲渡は、銀行にも、憲法上保証された営業の自由の範囲の業務であり、事前の報告がない以上、結果的に違法性が発見されたとしても、金融庁に責任を追及することは困難だろう。銀行も事前に違法認識があれば、そうした取引をするに抑止が働くが、違法認識なきままなされた場合には、ノーアクションなど意見書、その他事前の意見交換をすることもないだろうから、金融庁には知る機会がない。

債権譲渡の結果、債務者は無用な不利益を負担させられることになるとは、どういう事態を想定できるだろうか。債務者は、譲受人に対して、自己の計算により、金利引きなおし計算すれば、債権が消滅していれば、それを主張するか、残債務があるとして弁済請求する銀行に対して、苦情あるいは裁判上、債務不存在を理由に抗弁を申し立てる。銀行は、債務不存在を主張されたとき、あるいは存在を争う場合、債権残高確認のため、取引履歴を開示しなければならない。取引履歴開示義務は、グレーゾーン金利適用の貸金債権特有な性格から発生し、金銭消費貸借契約上の付随義務として、2005年7月19日判例法理で確立している。(注2) 開示請求は、契約上の義務として、債務不履行があれば、裁判上、強制することができ、債務者が不利益を被れば、賠償を求めることが認められる。

したがって、債権譲渡にあたって、銀行は、元債権者の譲渡人同様、引きなおし計算されたとき、いつ残債務が消滅するかについて、営業者として認識していることが求められる。過払い金は、債務者の形成的な意思表示によって成立するものではないと考えれば、譲受人は、残高を認識できる事務体勢になければならない。しったがって、貸金の性格からして、譲渡者と同様に、貸付からの全取引履歴を有していなければ、今日現在の残高を認識できない以上、自らが管理できる態様で、取引履歴を保管していなければならない。さもなくは、いつのまにか消滅した債権について、裁判例が示すような架空な残高の違法請求をし続けることになる。

こうして、貸金債権の特質から、銀行は、貸金業法24条から、事実上譲渡者と同様の帳簿保存義務を負担することになり、かつ契約上開示義務を承継すると考える。譲渡契約により、契約上の地位を引き継がないという合意が成立していても、貸金債権についての付随義務としての開示責任は、いかなる放棄合意、免責特約があろうとも、対債務者との関係では、承継されることになる。

銀行は、譲渡者同様に、貸金債権については、引きなおし計算後の債権消滅を超過する金額を架空請求することも、強制的に請求することも、訴求することも、強制執行することも、不当な給付を正当に保持することも、許されない。債権譲渡によって、この債権の特質が、債務者の不利益、犠牲の上、変容されるとすれば、違法な営業と判断される。 

業として債権譲渡がなされるとき、そうした債務者の不利益な結果を予期できるのであれば、それに対して予防できる体勢なしでは、債権を譲り受けることは禁じられなければならないと考える。上記のいくつもの裁判例では、裁判官は、業者は債権の消滅、過払いであることを認識できる状況にありながら、違法に請求し、収受していたと考えておられる。したがって銀行は、貸金債権という性格から、債権譲渡という理由に、譲渡前の履歴を知らなかった、譲渡を受けた金額が債権額として確定していたとは主張、抗弁できない。

また実取引界において、貸金業者は 引きなおし計算後、債権が消滅した時点で、債務者にその事実を通知し、任意弁済の意思確認をすることなく、過払い金を受領している。銀行だからという理由だけで、引き直しにより消滅した事実を通知して、任意弁済を事前確認させるのは、酷である。譲渡前と同じ、譲渡者と注意義務を果たしておればよい。

債権譲渡により、予想される不利益について、現行の金融庁の監督指針は出されていない。まさか、銀行が譲渡を受けただけで、取引暦開示責任がないと抗弁したり、帳簿保存なしのまま業務するとは、だれも考えていないからだ。しかし、今後貸し金業者廃業、業務撤退に関連し、多くの債権譲渡がなされ、紛争予防対応コンプライアンスができていると期待される銀行だけが譲渡を受けるわけではない。被害が発生してからの事後的な検査だけではなく、債権譲渡によって、債務者の法的保護に値する利益を侵害してなされることがないよう、譲受人の適格者規制、事務体勢整備に関する規制も必要になると考える。制度的欠陥を悪用するケースの発生が予防できているとはいえない。

銀行が、債務者に事前の任意弁済を確認することなく、違法な請求をし、過払い金を受領し、不当利得を得ることになれば、件数に如何によっては、銀行は重大な訴訟リスクと風評リスクを負うことになる。銀行監督の点からみれば、そのとき、万一、銀行が不当利得返還する資力に欠けた場合、すなわち債務超過に陥ったとき、不当利得返還請求権は預金保険の対象にならず、預金者が不当利得の犠牲の上に救済される結果となる。債権譲渡は、思わぬ不利益を債務者に負担させることになる恐れがある。それらの点については、金融庁としても十分事前に予知できる結果である。したがって譲渡があることを知った以上は、注意をもって監督したら予防できた問題につき、任務懈怠の責めを負うといえるのではないか。

 

III. 請求不能、訴求権のない債権

金利引きなおし計算により算出される債権額を超える金額について、債権法上、請求権が認められる債権なのだろうか。正確に言い直せば、支払いを強制できるか、それとも裁判上請求が認められるのか。
許容範囲を超える金額については、債権の消滅にもかかわらず、それを認識した上での債務者の任意弁済にのみが有効であるとしたら、請求権が発生しない債権となる。結果、超過金額については、債権譲渡の要件を満たさない債権となる。
教科書的に論じれば、給付を適法に保持しうる権能もなく、強制執行して満足をえるための掴取力も、訴訟提起する訴求力も、本質的に備わっていない債権ということになる。債務者には、支払い責任を負わない債務となる。
債務者が会社であれば、貸借対照表上、超過金額については、責任のない債務だから、認識するに及ばない。責任がないのだから、契約上、債務不履行事由適用もない債権となる。債権者が会社の場合、財務諸表上、どのように表記される会計慣行だろうか。現行の一般に認められた会計原則GAAP上、金利引きなおし前の残高を認識することが、監査基準上の認められている。したがって、譲渡を受けたからといって、その性質が変容しない以上、請求権がない債権ということで、金利引きなおしにより、金利充当した弁済額を元本充当して消滅したはずの債権を認識から外すことは容認されないと考える。しかし、資産として、請求権を欠き、債務者とって契約上の責任を生じず、債務履行の強制を受けず、義務違反にならない債権である。(注3) その性格にについては、重要説明事項になるのではないかと慮るが、そういう会計方針はないとみられる。

判例は、こうした自然債務的な債務の存在を承認してしまうことになった。役にもたたない有用でない法概念を持ち出そうとするのではない。理解をしやすいように、整理上、性格決定してみたら、自然債務という範疇に入ってしまうというに過ぎない。
自然債務とは、訴えられないが、任意に履行するときは有効な弁済の効力を生じる債務(らしきもの)と定義されるという。(注4) 貸金業法と利息制限法の狭間で、最高裁がつくりだしたこの訴ええない債権という法技巧が、どのような本性なのかは、疑問が増すばかりだ。
アナロジーとなる類似の債権といえるかどうかは疑問だが、破産法適用を受け、免責された債権について、手続き終了後に破産債務者が、追加して支払える資力があって、任意に返済することもありえるという。破産法上の免責債権は、免責後は、強制執行による満足を受けることができなくなるが、破産者の任意弁済を受ける権利は認められる。破産法上の免責債権について、有力な反論があるものの、債務は消滅しておらず、責任が免除される自然債務と構成する意見が多数説といわれる。(注5) 
訴権が認められない債権も、債権ではあるとしても、債権としての主要な性格を欠いている。債権は、訴えられないものから、強制執行を受けるものまで、さまざまに存在するのだから、債権として区分されることを否定することにはならない。(注6)
実体法上、請求権なしに訴権は生じないから、こうした債権には、請求権さえ認められないのかもしれない。訴権につながらない、訴権の認められない請求権の存在があるとしたら、どのように法的性質決定したらよかろうか。
債権とは何かは、自然債務とは何かを区分するかのごとく、まるで意味のない議論をしているようにも見える。しかし性質決定しないことには、裁判上の扱いを決着することができないから、そうした不毛に見える法的分析も意味をもつことになる。いかなる形態の権利といえ、それを認めるとしても、具体的請求として訴訟物にならないのであれば、裁判上、具体的に検討することができない現象形態にすぎない。(注7)

 

結論

債権譲渡額は、債務者に対する譲渡通知を含め、金利引きなおし前の金額として容認される。しかしながら、それが債務存在の確認の意味を持っていたり、債務者のみなし弁済無効の抗弁権を奪取するものではない。

銀行は、債権譲渡により、こうした貸金債権の性格を変容させてはならず、譲渡によって、譲渡に悪意がなかろうと、結果的にも、債務者が契約上有する権利の主張や抗弁に障害事由を設けてはならない。銀行は、貸金業者と同様に、超過利息分を元本返済充当したら消滅する金額を超えて、違法に請求する場合には、自らが不当利得を得るリスクを認識しなければならない。違法に請求しないための事務手続きとしては、債務者に対して、引きなおし計算では債権が消滅していることを通知した上で、任意に支払いをするか確認を要することを意味するだろう。


(注1) 大阪高裁・平成19.7.31(平19(ネ)弟676号不当利得返還請求控訴事件、被控訴人GEコンシューマー・ファイナンス) 
札幌高裁 平18(ネ)第303号 不当利得返還等請求控訴事件(被控訴人CFJ)

(注2) 最高裁判所第三小法廷・平成17年07月19日判決(平16(受)965号過払金等請求事件) 

(注3) 債務不履行責任、契約責任法理にについては、潮見佳男「債務履行構造に関する一考察」民商90巻3,4号

(注4) 石田喜久雄「自然債務概念の有用性」民法の争点II

(注5) 山木戸克己・破産法300頁、注解破産法(下)822頁他  

(注6) 債権、請求権の性質については、奥田昌道・請求概念の生成と展開参照

(注7) 川島武宜・民法講義弟1巻序説61頁以下、同・民法解釈学の諸問題160頁以下

 

 


日本振興銀行、消費者ローン債権譲渡と保証委託 

2008-04-26 20:47:10 | 債権譲渡
新訂版  グレーゾーン金利適用の貸金債権の譲渡をめぐり、予知される法律問題に関する一考察


日本振興銀行が、中堅の貸金業者から、利息制限法による金利引きなおし計算前のグレーゾーン金利適用の貸金債権の譲渡を受けたという。債務者に譲渡通知があったということで、一部に消費者の間で混乱があり、債務整理の法律実務家の間で、大きな話題になっている。関心を呼んだ混乱の原因は、一部に残高の割増通知があったことや保証能力のない経済実質の薄い保証会社に保証委託を準備して、保証委託の申込みを依頼したことだ。

保証会社ゴールデン商事など取引概要については、以下ブログ参照。
http://yuuki.air-nifty.com/go/2008/04/post_5dc6.html
http://yuuki.air-nifty.com/go/2008/04/post_07b2.html

本件では、みなし弁済無効を主張されたら元本が消滅し、譲渡後に金利を下げる必要のあるグレーゾーン金利適用の貸金債権が譲渡されたことについて、考察する。一般の債権は、債務の存在についてなんら疑義がなく確定しており、譲渡後の金利など条件変更を伴うような性質ではないことから、貸金業債権は、そうした一般の債権の譲渡のケースとは、著しい違いがある。そこで、そうしたグレーゾーン金利の貸金債権の譲渡について、今回の振興銀行の取引を例に、違法性があるか否か、考察してみる。
裁判評価が不要な程度の明らかな違法性ある具体的要件事実が問えれば、果たして違法性があるのか。そのためには、具体的事実を明確にした上で、法的評価を与える分析を要する。


1. 債権譲渡、通知と異議なき承諾

債権が譲渡されることについては、特に問題ない。譲渡者と譲受人の合意により、譲渡が有効に成立する。譲渡原因については、法は求めていない。売買か贈与か、担保権あるいは質権の行使かは、別の議論となる。
債務者に対する対抗は、譲渡者による譲渡通知により要件が満たされる。債務者の承諾は不要だ。他の情報では、債務者が承諾書を出すことにふれられているうようだが、対抗要件具備の点から、承諾を得る目的が不明だ。譲渡通知にはに、譲渡契約についての確認書を返送するようにとの依頼があるが、対抗要件具備だけなら、なぜ確認を求めるか、疑問が生じる。それを承諾と考えることになるだろう。ただ異議なく承諾します文言が入っていた場合に、金利ひきなおし計算前の残高を承認したことになるのではないかという点について、不安があるとみられる。果たして異議なき承諾とは、残高まで含む債務存在確認を意味するか、譲渡が転々となされるのを承諾するだけか。
債務が存在すれば、それについての第三者である債務者が承諾したに過ぎず、承諾行為自体は法律行為とみなされないと位置づけられる。そうした承諾が、債務不存在を争うことができない結果となるような、第三者である債務者の権利を意図的に放棄させ、奪取するための意思表示となるとか、あるいは債務者の譲受人に対する抗弁権の意図的な切断を目的とした意思表示とまでは考えられない。467条の債務者への通知・承諾が、そうした契約的義務設定を伴う規定とはいえない。

2. はがきによる債権譲渡通知と第三者対抗問題

債権譲渡の債務者対抗要件は、通知で具備される。しかし第三者対抗要件が具備されるか。譲受人が、譲渡者には他に債権者がいないと確証があれば、特に気にするには及ばない。しかしながら、企業生活を営んでいる以上、租税債権もあり、またどのような隠れた債権者がいるともしれない。すでに他に譲渡がなされ、二重譲渡になっているかもしれない。さらに最も重要な点として、譲渡者が倒産処理申し立てをしたら、どうなるかを視野にいれて、第三者対抗要件を考えることになる。 
そこで、内容証明による確定日付け譲渡通知を送付するのが通常となる。事務手続きを簡便にするため、債権譲渡特例法にしたがい、登記をする。この場合、すでに譲渡がなされ、二重譲渡だった場合の争いも起こりうる。
今回は、登記がなされたかは不明である。貸金業法にもとづき、自己の債権について、貸し手に対して、譲渡に関する帳簿閲覧請求をされれば、明らかになる。業者が嘘の報告をする場合があるような場合には、登記を確認すればよい。
いずれにしろ、はがきでする譲渡通知だけでは、債務者に対する対抗要件具備でしかなく、譲渡者に債権者が現れたとき、その優劣について確定するものではない。
譲渡者の代表者実印のないはがきであるので、通知を受けた債務者は、それが真に譲渡者本人からのものか、確認しようがない。債権の存在を知った第三者の偽装通知の恐れがないわけではない。また譲渡通知の債務者が受領したことについて、譲渡者は確認できない。支払いについては、譲渡者にしたとしても、その支払いについて債務者は免責される。

3. 保証委託契約申込みのお知らせと契約成立以前の勧誘の説明義務違反

債権譲渡に伴い、連帯保証人をつけるため、債務者に保証委託を依頼することに、違法性がない。譲渡通知には、
「株式会社ゴールデン商事が、今後、貴殿の債務を連帯保証することになりましたので、ご確認下さい。本譲渡契約についての確認書、および保証委託契約書を別送させていただきますので、その際にはご返送をお願いいたします。」
とある。
明らかに誤導的表現を含んでいる。保証委託は、そもそも債務者が債務の弁済について保証人に委託し、保証人により事務受託するという性格であり、債権者と保証人の合意で成立するものではないと考える。債務者の委託を受けない保証が理論上ありえても、連帯保証ゆえ、債務者の知らない債権者と保証人との間の保証がありうるかは、疑問点が残る。
債務者に、申込みの依頼を債務弁済に関連して必要な作業と誤解させ、保証委託申込み誘導することが、申込みを無効、取り消すほど悪質な勧誘といえるか。その評価規範として、消費者契約法による保護規定に照らして、あるいは民法の説明義務につき、違法性があるとして、また契約締結にかかる意思形成過程の瑕疵により、無効を主張しうるか。
本件のような勧誘のケースが、消費者契約法に明確に定めがあるかどうかは定かではないので、根拠規定として十分ではなく、具体的要件が定まらないだろう。
一般法の契約の付随義務としての説明義務を求めるとき、義務違反となる主要事実は何か。ゴールデン商事が何者で、支払能力がどの程度なのかを説明する義務があるといえるか。保証委託の法の効果を説明する義務があるのか。
説明義務に関連して、証券取引法の適合性の原則を持ち出す法に疎いものがおられるが、これは証券取引ではなく、個別の契約であり、法理の適用、参考にすべき裁判例をあげられても、評価、裁判規範とはならないことは言うまでない。
そうすると、勧誘行為に結果としての債務者の表示意思の瑕疵、場合によっては、錯誤による申込みを招いた(あるいはそれを目的とした勧誘だった)と主張して、無効を主張することになるだろう。しかし意思形成に、重大な誤解を与えるような説明があったわけでも、強制があったわけでもなく、債務者が自由な意思で申し込んだと主張されるだろう。

ここで、罠に導く違法な勧誘、説明義務違反があったとして、誰の義務違反を問うのか。この場合、契約についての説明義務ではなく、契約にいたる以前の勧誘行為における説明義務という状況である。
譲渡通知は、譲渡人が債務者に対して効力が生じるが、本件では、譲受人と連名して出されている。譲渡通知では、譲渡者は譲渡の事実の通知にすぎず、それ以外の保証委託のお願いは、譲渡の内容とは関係がなく、譲渡者がかかわった取引ではないと譲渡者によって主張されるだろう。他方で、譲渡の通知以外の契約の申込み依頼については、連名でなされている以上、効果意思について、譲渡者も説明義務を負うことになるといって、説得力があるか。なぜなら譲渡者にとっては、譲渡して、権利が自らの帰属から離れた債権が、どのように弁済されようが無関係だからだ。他方、保証委託があるからこそ、譲渡が可能になったという事実があるのであれば、譲渡者は、その恩典に与っているのだり、共通利益の享受者ともいえる。しかしながら、譲受人は、保証委託申込みの結果がわかる前に、すでに帳簿上譲渡を受けており、3月21日時点で、会計上資産認識し、債務者保証委託申込みを条件にした譲渡ではないことから、譲渡者にとって、保証委託が便益をもたらしたともいえない。
保証委託が、譲渡後の債権の信用補完のための条件変更であると考えれば、譲渡者は与りしらぬこととなる。ここで、本件の譲渡通知の性質が、譲受人が、債権譲渡の通知で、別の件についてお知らせとお願いを含んだ通知書を兼ね備えたものと決定されうる。説明義務は、債権譲渡にかかる利益に関する両当事者の事実関係を調査できないかぎり、形式上、一義的には、譲受人にあるといえるだろう。したがって、債務者からの保証委託申込み問い合わせにおいて、必須でないと説明しておれば、紛争の原因は譲渡人に生じない。説明で、保証してもらうことになったと説明していれば、悪意をもって債務者の効果意思に瑕疵を与える違法ある説明をしたことになると評価されてしかるべきだろう。

4. 連帯保証

連帯保証についても、保証である以上、保証委託による形式で成立すると考えてよいだろう。しかしながら、保証委託が債務者の単なる事務の委託にとどまり、連帯的債務を負担しないのに対して、連帯保証は、連帯して債務を支払う義務を伴う。連帯債務であれば、債務者がふたりなので、債権者は、債務を証する証書に、連名して署名させ、契約当事者にするのが、通常である。
本件は、そうではない。主債務は、変質することなく、ただ譲渡されるにすぎない。その上に、第三者に委託して連帯保証をつけるというものだ。事務受託であれば、保証義務履行前に、事前求償されるか、求償権の保全が確認されない限り、保証義務履行を拒むこともないわけではない。債務者破産において、保証委託事務を一方的に終了した場合の義務解除については、無効とされる恐れがあるだろう。
連帯保証となると、保証人は事務受託を理由に逃れることは許されない。連帯保証において、債務者が数日の履行遅滞でも、保証人が支払ってしまえば、それにより主たる債務は消滅する。その結果として、保証人による(金利引きなおし前債務の)弁済による代位で、保証人には債務者に対する求償権が発生する。保証人は、金利引きなおし計算前債務の弁済しており、それについて、みなし弁済であったことを認めている(だろう)。弁済代位の求償額の範囲は、引きなおし前残高を主張される。
保証人の履行は、本来、主債務者の履行遅滞のときなど、補充的であるべきだが、連帯保証では、主債務者の信用状況の確認なしに、保証義務が履行されうる。債務者が債務整理による金利引きなおし計算して、元本の消滅を検討しているときに、保証義務履行は、引きなおし前の債務が全額消滅されてしまう効果を伴う。本来、みなし弁済無効の主張で、支払う必要のない債務を、保証人の支払いで、求償権となって、復元させることを可能にする。
このような連帯保証の履行が、債務者のみなし弁済無効と一部あるいは全部の債権の消滅を主張する権利を害意する目的でなされたと主張しても、保証人の内心の意思の証明は債務者にとって困難である。契約の定めの通りの事務の履行の結果が、そうなったに過ぎないと主張されるだろうことは予想される。
主債務が連帯保証人の弁済により消滅してしまったとき、みなし弁済の無効は誰に対して主張しうるのか。結果的に、請求権を失ってしまったのか。ここで、連帯保証人のみなし弁済についての意思を覆えさせる必要がある。しかし期待できないだろう。連帯保証人は、譲受人がどこからか「連れてきて」債務者に一方的に紹介したものであり、「知り合い」だからだ。引きなおし前債務弁済されるのを期待のうえ、弁済を代位ただろうから。しかし、ふたりが共謀であったことの証明責任の負担は、債務者にあり、相手は、共謀の事実は、どこにもない反証を繰り返すだろう。
債務者による保証委託がなく、債務者の知らないところで、譲受人と保証人とが保証料の合意をし、受領した事実が見つけられた場合に、共同して害意する意思は推認しうるか。この場合に、債権者の企てにより、保証会社が用意され代位弁済された場合であれば、考量すべき利益状況が異なる。債務者の意思に反して代位弁済された場合も同様であるが、こうした場合は、債務者が保証により受けた利益の範囲で、求償権の行使が認められうる。利益の範囲が、主債務においてみなし弁済無効を認めるのを前提にすれば、保証会社は、譲受人に対して、みなし弁済無効請求により、主たる債務の消滅を主張して、不当利得返還を求めることになるだろう。
もっとも実務的には、みなし弁済を有効として、引きなおし前債権額を弁済した保証人が、その金額に損害金と費用を加えて求償してきたとき、債務者は、引きなおし後金額とその損害金と費用だけを弁済して、それを超える金額には、支払い拒絶することになる。、それで保証人から納得が得られない場合には、債務者は、提訴されることを選択するだろうから、紛争は、保証人によって負担されることになる。

債務者のみなし弁済無効を主張する権利を切断する効果となる保証を、しかも連帯保証とすることで、求償権行使に対して保証人に対抗できなくしてしまうことができれば、そうした効果を確定的にできる法技法を悪意をもって利用することは、社会的に非難されるべき悪質な営業行為とは見られるだろうが、法的違法性を問えるほどかどうかは、疑問が残る。債務者にとって、譲渡の目的、悪意の立証は容易でない。
そうすると、疑念がもたれるのは、全体のスキームから浮び上がる法的性格は、連帯保証により、それがうまくいったら、金利引きなおし計算による債務整理の障害事由をつくるための工作ではないかということだ。保証申込みは、引きなおし計算前の債務存在確認する結果をもたらし、みなし弁済を是認する意思表示の効果を及ぼす。
しかし、そうした効果意思でありますよ、それでよければ、申込みをしてくださいとする説明義務があるのか。それが譲渡通知で、譲渡者に課される義務とは、通知の目的を超えている。譲受人におおいても、通知においては、説明義務がないと判断され、別途不明な点について、問い合わせがあれば、説明すれば足りると考える。本件では、譲渡の確認書、保証委託申込みが別送されるのだから、必要があるというのであれば、そこで説明されるべきものだろう。

5. make up 本件専ら保証事業体

保証委託の問題も連帯保証にかかる問題も、いずれも保証会社が経済実質を伴わない会社が利用されることに由来する。本来、保証能力がない団体から保証を受けても、経済的意味がないので、債務者がそうした保証人を指名する場合に、法は債権者がそれを拒むことを認める。しかし本件では、債権者である銀行が、保証会社の支払能力如何にかかわらず、保証会社を準備し、申込み委託させようとする。そこで、債務者は、債権者の見知らぬ保証会社を組み込んだ企ての目的が何か、自分の利益を害することがないか、慎重さをもって、懐疑的みることになる。
債権者が保証委託を準備し、融資の条件にすることは、金融の営業としては通常のことだ。住宅ローンでは、多くのケースで、銀行は子会社か関係会社に保証をさせ、融資の申込み条件とするので、そうした保証委託は、一般的といえる。違いは、債務者にとっては、保証会社が社会的に知られ、認知された存在であるので、不安を取引に抱かないことだ。そうした場合に、保証能力もあり、経済実質があるが、本件では、会社の財務状況についての開示はないし、外部監査法人による監査を受けているか、そうした会社情報に信頼が置けるかどうかも不安をいだかせる。
債権者がどのようにして、保証会社に経済実質を備えさせることができるかは、本ブログ別稿に譲る。
「貸金債権の譲渡価格の決定と保証会社のつくり方  追加訂正版2」
結果として、保証会社は、十分な保証料や求償権の売却処分代金で、信用リスクを保証人として引き受けるに十分な資本的基盤を備えることができる。
こうした性質の過小資本の保証会社は、2006年の貸金業懇談会において議論され、利用の禁止された保証会社の機能に類似する。貸金業債権の保証会社に対して、債務者は、自らが貸金業者から調達したグレーゾーン適用金利の借入れ金の一部を保証委託料として前払いしていたという。保証会社の経済的独立性がン否認され、保証料が金利とみなされれば、出資法を超える金利を請求していると解されることになるとして、制度利用について悪用との非難を受け、禁止されるにいたる。
保証料は、経済的に、法律的に、支配関係のない第三者保証会社に支払われており、違法性を問えないとしても、一定率の発生が予期される貸倒債権を代位弁済することで、貸金業者に還流することが当初から予定されることから、保証料を利息と解せるのではないかと疑いが生じる。しかしその件について、一部日掛け金融事案を除き、独立経済実態を有した保証会社であれば、29.2%金利営業業者では、裁判上および金融監督規制上、違法性の評価をうけたことはなかった。
そうした禁止された貸金業の保証会社に対して、本件では、受領した金利から銀行が支払うので、利息制限法金利の範囲であり、その点では同様な問題が生ぜず、制度悪用の非難を受けることはない。
他方、貸金業の保証会社との類似点は、経済的資本がない過小資本のため、保証料に依存すること。そのため、保証料を上回る貸倒損失が発生すれば、代位弁済ができないで債務超過に陥るため、貸金業債権の保証会社では、代位弁済限額を設け、受け取った保証料から所定の事務費用を差し引いた範囲に制限されたようだ。
本件が、どのような仕組みかは不明だ。保証料が足りなくて、債務者A,B,C,Dには、代位弁済がなされたが、E,Fには、資力不足で、代位弁済が履行されないというケースもありえるのか。
貸金業の保証会社は、保証会社としての経済実態がなく、審査能力を有しておらず、実際の融資保証のための審査をしておらず、そうした審査体勢を備えようともする意思がなかったという。というよりむしろ実態は貸金業者の指図で保証料を決定し、無審査のまま保証を引き受けていたと言われる。貸金業の保証会社が、本来の保証を目的というのではなく、グレーゾーンを越えて保証料を請求するための組織的特徴を持っていたので、弁護士会より強い非難を受けて、法改正に組み込まれた。
本件は、利息制限法を越える保証料の請求を目的とはしない点で、機能的性格が異なるが、保証会社といっても、ゲームセンターの関連の会社には、貸金債権についての審査能力がなく、また審査実態がないとすれば、いったい保証という装った外観の目的は何なのか。こうした保証会社の実態と目的が、債務者の利益を害することがないことは、完全に保証されなければならない。
そのように考えることが妥当であれば、規制監督に服すべき機能体と判断されることになる。こうした金融専門の保証会社は、数千、数万という多数の債務者の利益に重大な関係を有するので、銀行取引として、営業が適正であるかどうか、金融庁の監督に服すべきか疑問が残る。少なくとも、社会的混乱を事前に防止するという点からは、住宅ローン保証と同じ程度の報告、監督に従うべきという主張があっても、不思議はないだろう。

6. 裁判外債務整理の効力

以下については、詳細は不明だが、裁判外で、債務整理を行い、引きなおし計算に合意して和解の契約書を作成する場合に、延滞した場合には、引きなおし計算前の残高が復活する旨の合意の定めがあるように聞く。和解では、債務者はみなし弁済を無効を主張し、貸し手はそれを争わず、引きなおし計算で一部債務は消滅し、引きなおし計算後残高を現在存在する債務として両者互いに確認しますとまでは、説明をしないだろう。
理由はともあれ、条件交渉により、減額和解したに過ぎないとすれば、延滞が発生し、引きなおし前債務が復元する同意は、当事者の自由な意思による限り、違法ではなかろう。引きなおし後の債務の返済は、金利ゼロにより、36月分割払いの条件を得るため、そうした復元条項が相手に与えられても、不当ともいえないだろう。
今般の債権譲渡でしばしば見られる割増請求だが、単純ミス以外に、延滞に伴う債務復活に関連して発生している場合もあるだろう。延滞をした実績があるので、元の債務が復元した債権と譲受人により判断されたと考えることができる。債務が復活しないこと、債務がすでに完全に消滅し、債務不存在を争うのであれば、譲受人が債務調整に応じるのであれば、裁判外にで、応じないのであれば、訴訟を受ける権利を主張すると解することができる。


結論

本件事案の違法性を問う議論が一部メディアにもあるかに聞くが、単に勧善懲悪主義的な私こそ正しいという主張や、消費者保護運動もそれはそれでよろしかろうが、違法性を問うに十分な法的根拠、主要事実を証明できなければ、経済活動としての自由を認めざるを得ないだろう。
金融庁は、もし本件の法的違法性を問い、勧告、注意なり、場合により悪質と判断すれば処分をするのであれば、法的違法性を審理するために、事実を調査し、譲受人を聴聞し、譲渡人を参考人として調査することになるだろうう。法的違法性なく、いかがわしいというだけで、処分を課すことの権限まで議会が付託しているわけでもく、法に照らさなければ、処分はできないでしょう。自分が規則を設けることは認められていますから、事前にすればいいのでしょうけれど。
また犠牲者がでて、被害が蔓延らない状況で、行政監督機関が私的自治に介入して、予防的な措置をとることも、できないでしょう。もっとも、当事者を呼んで、事情を聞き、改めたらどうかと強制力のない方法で意見することはありえるだろう。
そういうしかるべきプロセスを踏まず処分があれば、行政に不服申し立てがなされてしまうリスクをともなう。したがって、裁判規範を考慮したうえで、法的違法性を問えるか、当事者の法律意見書、事実証明を審理することになる。
金融庁は、今回の債権譲渡をめぐる混乱について、なんらのアクションがないとき、われわれは、以下のように金融庁の態度を推測することになる。
(i) 金融庁は当該法律紛争の火種には、行政監督上の関心がないし、その必要がないと判断をしていること、
(ii) 金融庁は、銀行が関係した私的な法律紛争といえでも、個別の契約にしたがう取引にまで介入し、行政処罰に値するような違法性もなく、注意に値しないと考えること。
(iii) 保証委託については、債務者との間で将来の紛争が予期できると考えるが、行政監督上の立場から、予防的措置をとることを命ずる立場にはない。

銀行にとって、業務上、債権譲渡は日常業務だ。それが個人の債権であっても、異常な取引というわけでもないし、ニュース的価値はないだろう。金利引きなおしされないままの従来グレーゾーン金利適用債権ということに、いかなる紛争が起こるかは別としても。
銀行は、こうした取引をするにあたり、予期される法律上のリスクを勘案し、法律専門家を交えて議論し、不安があれば、法律意見書をもって考察し、あるいは金融庁による文書回答を求めるなどして、経営者は、コンプライアンス上の注意義務を問われないよう配慮していると考える。

貸金業債権の譲渡にともなう譲受人の注意義務と債務者の権利侵害

2008-04-26 20:42:35 | 債権譲渡
債権譲渡の取引全体からみた違法性の起因する問題点

本件取引の違法性を検討するにあたり、「新訂版 日本振興銀行、消費者ローン債権譲渡と保証委託」他では、銀行としての譲渡者の業務に焦点を当てている。債権は、グレーゾーン金利適用の貸金業債権といえでも、法が譲渡を禁じえるものではない。当事者間の合意で、自由に売買されることが許される。

しかし、忘れれてならない点は、貸金業の借り手、すなわち金銭を借りた消費者が、契約上あるいは法的に本来有しており、保証されなければならない権利の接続が、譲渡により切断されて害されることになってならない。債権固有の性質から生じる請求権が遮断される結果を招くようなことは、社会的に容認されないだろう。
ましてや権利の切断を目的として、取引が仕組まれ、譲受人が加担したり共同したり、結果的に権利が害される状況を放置することになったり、譲受人が債務者の権利切断を営業の手立てとして積極的に利用し、譲渡者に提案したり、自己の利益をはかるため、債権譲渡を企てることは、認められないだろう。
債務者の権利の制限、無効力化だけに限られない。譲渡によって、債務者は、譲渡によって自己の権利が害されることがあれば、譲受人に対して主張できる抗弁を失うものでもない。

貸金業債権では、すでに判例法理が確定している。銀行は、過払い判決が遡及効を伴うのは世界的に判例、立法の世界で異例だと主張することは表現の自由だろうが、社会の一員として、本件取引にかかわる以上、判例法理の確立を認識していると合理的に推定される。債務者がみなし弁済無効を主張したら、その時点で、債権はグレーゾーン金利支払い分について、消滅し、元本を超過して払いすぎていれば、過払いが生じることもあるという法的性質の債権であるとの認識を、銀行は、社会と共有している。

譲渡人の地位を承継しないで、残元本が存在する限りにおいて、譲渡を受けたという法律構成については、債務者にとって被害は生じない。しかし、ある日突然に、債務者が金利ひきなおし計算を主張してきたとき、譲り受けた体勢として、遅滞なく取引履歴の提供をおこなえなければならない。貸金業法、貸金業法施行規則は、取引履歴の帳簿保存義務期間を10年と定めている。法規制が遡及するかどうかの判断は、司法に任せるとしても、債権譲渡によって、債務者の自己情報である取引履歴の提供ができなくなったり、できなくなることが目的で、債務者の権利を害する結果を招くような取引に加担したり、企ててはならない。
銀行が、提供できる体勢を備えることが要求されるというのではない。債務者の利益を害することがなければ、苦情は発生しない。譲受人に履歴データの保管の法的な責任が、譲渡後において誰にも発生しないとすれば、法的紛争の発生が予期できる。過去の履歴データの保管や管理は、譲渡人を含め、第三者に委託するか、それを契約上の条件に債権譲渡を受ければよいことだ。金利引きなおし計算は、譲渡後の取引履歴だけではできないので、履歴データを完全に移管しない方法での譲渡では、譲渡後も、両者の協力が必要となる。
銀行は、履歴開示がなされたら、譲受者であっても、他の貸金業者の商慣習と同様に、裁判外で和解に応じ、10年分の金利引きなおし計算して、元本消滅したことに合意して、債務整理に協力することが、社会的に期待される。無論不法な請求については、訴訟を受けることを選択することもありうるだろう。
その場合、主たる債務が消滅しているのに、あるいはまだ決着がついていない時点で、保証会社に元本の消滅が予期される債権を代位弁済させてはならないし、保証会社に、命令指揮をしてはならない。
銀行と保証会社は、履歴の提供により、債権が消滅していれば、銀行の支払い請求に対して、債務者が債務消滅を理由に抗弁することのできる権利を切断するような企てを、債権譲渡に伴い計ってはならないと考える。

グレーゾーン金利適用債権といえども、貸金業債権の譲渡にともなう法的紛争が回避されるよう工夫された譲渡であれば、通常の債権譲渡と変わるものではない。

譲渡者のコンプライアンスチェック項目として、経営者、内部監査部、コンプライアンス担当部門に聞く。債務者が債務整理を求め、履歴を求めてきた場合、譲渡前の取引履歴は保有しておりませんという回答、対応法をとるとしたら、それは権利侵害にあたるか。銀行は、そうした対応がどのような結果をもたらすかということを認識して回答している。

貸金債権の譲渡価格の決定と保証会社のつくり方

2008-04-26 20:35:56 | 債権譲渡

新訂  グレーゾーン金利適用の貸金債権の譲渡価格はどのように決定されたのか
モノライン保証会社のつくり方


債権譲渡の対価がいくらかは、当事者でなければわからない。仮に、金利引きなおし前元本残高の半値で譲渡されたと仮定してみよう。金利は、引きなおし前金額に年18%÷365の日歩が発生とすれば、年利回りは、36%になる。
消費者金融債権の貸倒率が武富士、アイフルなど大手消費者金融業者では、年10%を超える程度なので、借入れ件数などで信用の質の劣る中堅業者ではそれより悪いと想定して、12%としよう。実際には、譲渡者に提供を求める過去数年分の他社借入れ件数別や借入れ総額別の貸倒実績から、損失額を推定し、交渉することになるだろう。
譲渡時に、金利引きなおしして過払い金が発生する債権は譲渡不適格とし、万一そうした債権が混在した場合には、買い主は売戻権を有し、行使するものとする。それでも、譲渡後の返済により、過払い金が発生する恐れがあり、その危険については、負担するとし、年2%と見積もるとする。2%は、完済し、債務が消滅した債権は、譲渡されないので、見積もりから、その分の過払金の過去実績を差し引く。
過払い金発生を原因として、元本償却する損失は、年12%の貸倒費用に含まれているとし、その範囲でまかなえるとしよう。
したがって、ここでは大雑把に、信用損失を年14%と見積もる。
さて、譲受人である日本振興銀行により保証会社として指名を受けた下北沢のゴールデン商事は、ゲームセンターを親会社にもち、登記上の資本金は2400万円しかなく、実際には毀損しているかもしれない。親会社のゲームセンタ-からの収益がどのくらいあるかは不明だが、本件保証だけをするためのモノライン業者と位置づけられよう。
カバーすべき期待信用損失額は、金利引きなおし前の保証額に対して、14%であり、それにより66%の確率で損失をカバーできるが、95%の確率で損失をカバーできる水準を、+2%と想定し、結果年16%の代位弁済のための準備金あるいは資本金が必要となる。
半値ベースゆえ、金利収入36%から16%を控除し、残りは20%が銀行の収入となる。したがって、引きなおし前残高に対しては、10%の金利を銀行に配分し、8%を保証料にあてることになる。
正常債権比率を90%とすれば、金利収入は、32.4%となるので、銀行の年金利収益は、16.4%ということになる。
代位弁済され、保証会社に生じた求償権は第三者に転売される。価格は、引きなおし前の5~10%と予想され、販売管理費のため、および予想以上の貸倒損失についての保証会社の利益を補う。合理的予想を超えるめったに起こらないテール・イベントによる損失が発生した場合には、保証履行不履行によって損失を確定せず、代位弁済を、支払猶予により、翌期まで先送りされればよいだろう。いずれ金利配分により、固定の収入は入ってくるし、売却処分代金で売上がたつから、猶予が不健全とはいえないだろう。
譲渡価格は、貸倒率、延滞未収金、引きなおし前に残高の存在する債権、転売価格についての過払い金の3変数の推定により、決定されることになる。
こうして、格付けシングルA並に、債務超過にはならないはずのモノライン保証会社が誕生した。保証料は、前払いされないで、毎月の金利支払いのうち、16/(36x正常債権比率)を保証料に充当される。

 

保証会社の経済的実質性と法人としての独立性

「新訂版 日本振興銀行、消費者ローン債権譲渡と保証委託」の論点5に関し、保証会社の経済的実態の有無を論じるとき、損失に耐えられる十分な資本と利益基盤を有しているかないかという点から、考察してみる。
子会社保証会社を使い、経済実態が一体として、保証料を金利とみなした日榮判決をきっかけとして、貸し手の関係会社でなく、別の法人格、異なる役員を有してさえいれば、過小資本の経済実態の乏しい保証会社を利用されれば、これまで保証料は、金利とはみなされることがなかった。
判例法理上、保証料が金利とみなされ、経済的一体性に関する経済実態テスト基準は、

独立の法人格、

別の資本、

経営支配関係がない(役員が貸金業者の役員、株主が兼任したり、その職員が派遣されている)

ことくらいだったが、規制監督目的上では、

貸し手の実質的命令指揮権(貸し手が保証料を決定したり、保証承認を実質的に命じていないか)、

業務実態がない(保証業務のための債務者の信用審査能力、審査承認引受け体勢、独自に保証引受け決定判断をしているか、貸し手の指揮によらないか)、

資金の一体管理(貸し手の指図権にもとづく)

なども考量されるとみられる。ただ行政監督による処分も、判例法理で違法性がなければ、独自判断で、処罰することもできないだろう。
ここで、法人格や資本を別にすることは法的に容易である。資本があるからといって、損失リスクを合理的にカバーできなければ、経済的独立性を維持できない。実質的に貸し手が不足する資本を、収益を与えてカバーすることになる。名目資本がいくら少なくても、利益をコントロールして、損失が発生しないよう仕組むことはできる。
本件の場合の保証会社も、利益が貸し手によって、管理監督される経営的判断能力を持たない事業体の一種といえる。
だからといって、そうした会社が法的に容認されないわけでも、違法というわけでもない。銀行は、住宅ローン保証会社で、同様の業務を営んでいる。消費者の利益を害する目的で利用されない限り、問題があるとはいえない。

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正常に支払われる債権を90%として、金利は18x90%しか回収できないとしたときの実質利回り。

 

                    引きなおし計算前元本残高比率
譲渡価格    90.0%  80.0%  70.0%  60.0%  50.0%  40.0%  30.0%
利回り       20.0%  22.5%  25.7%  30.0%  36.0%  45.0%  60.0%
実質利回り 18.0%  20.3%  23.1%  27.0%  32.4%  40.5%  54.0%
保証料      -15%   -15%  -15%   -15%   -15%  -15%   -15%
金利収入    3.0%   5.3%    8.1%  12.0%  17.4% 25.5%  39.0%


貸金債権の債権譲渡の契約日、権利移転日、締め残高、利息配分、譲渡代価の計算処理

2008-04-26 20:05:26 | 債権譲渡

グレーゾーン金利適用の貸金債権の譲渡をめぐる元利計算の事務処理上の課題

債権譲渡契約日、譲渡日、残高締め日、利息分配、金利含む代価の計算

貸金債権の債権譲渡についての金利計算上の事務処理

 

3月21日付け債権譲渡契約に基づきとあるから、この日が契約日、契約の効力が生じた期日と考えられる。
また同日、譲渡契約にもとづき、権利を移転したとある。 当事者間で権利の移転があった日と考えられる。
さらに同日、譲渡通知日とされる。

3月の金利の受領
債権譲渡日に、当事者間で経過期日分の金利を清算できれば、問題が生じない。現実には、譲渡日を過ぎて、譲渡日前の未払い金利が返済されることから、支払われた金利受領をめぐって事務的な注意を要することになる。
譲渡債権の金利の分配については、譲渡契約にしたがうことになるが、特に定めがない限り、権利移転日前日までの金利支払い分、経過した日数の未払いの金利は、譲渡者が権利を有し、譲渡日以降は、譲受人の権利となる。
この点については、譲渡契約当事者間の関心で、債務者にとっては、無関係な事項に見えるが、適用金利の問題やそれにより元本返済額が変わることからも、確認を要する点である。
3月30日に、2万円を入金したとしよう。前回の支払日を2月末日とし、その時点での借入れ残高を50万円とし、次回支払いまで延滞が発生していないとする。
3月21日からは、金利年18%でなければならない。
譲渡者が受け取る金利は、29.2%÷ 365 x20x 50万円=8,000円
譲受人の受け取る金利は、18%÷ 365 x10 x50万=2,465円
利息支払い合計 10,465円
元本支払い     9,535円

こうして、譲渡人は、譲渡日以前に未払い金が発生しており、譲渡日以降で、譲受人が受領する以前に、譲渡人に対して支払われた元利金支払いについて、計算処理しなければならない。しかし譲渡日以降の支払いについて、譲渡人が受領する場合もあれば、譲受人が受領する場合もあり、煩雑な事務が予想される。
ここで債権の移転と権利関係は、譲渡日を基準に決定されるが、金利を含む譲渡代金は、経過期間に対する未払い金が発生しているので、確定できない。それは、譲渡後数ヶ月間、そのまま支払いがない場合も想定されるから、さらに複雑な状況を想定して、計算処理事項を定めることになる。
たとえば、4月1日約定支払い日の支払いについて遅滞し、5月10日に支払いがあった場合に、前回支払日を3月1日としたとき、未払い経過日数は、71日となるケースを考える。上記の例で支払い額のうち、20日分は29.2%の適用金利で計算した金利が譲渡者の権利となるから、譲渡者による経過利息受領放棄合意がない限り、弁済を受領した譲受者から譲渡者に返還されなければならない。
譲渡の混乱期でもあり、延滞は発生しておらず、延滞損害金が発生していないとすれば、残った支払いのうち、上記例であれば、12,000円であるが、51日分の利息支払い相当額12,575円を先に配分することになる。このとは、利息不足が発生していることになり、18%x1.46倍の遅延損害金が翌支払期日まで発生することになる。
譲渡日前の金利を差し引いた残金を譲受人に引き渡せばよいのか。その場合には、残額の全部について、譲受人が譲渡後に、延滞損害金、利息、元本の順に支払いを受けたことになる。上記例で、譲渡日前に一部元本支払いがあったとすれば、元本残高計算上、現実的対応が難しくなる。さらに、100万円以下の場合には、18%金利にして、それを超えれば15%の金利を適用するので、支払いのタイミングによっては、さらに計算処理が煩雑なケースが予想され、完全にプログラミングされなければ、不照合な計算結果となる。

そこで、混乱がおきないように、4月の払いは免除し、譲渡者への支払いは5月からとするという指示があったのだろうが、債務者の責めにきすべき事由がなく、譲渡者による不都合で、上記のように延滞損害金の発生の恐れが生じないことを確認されなければならない。3月20日より前に支払いがあり、3月21日以降支払いがなく 4月20日までに支払いをする場合に、いずれが受領しようが、金利配分の計算方法により、残元本額が変動してしまう。

さて、譲渡の債権残高はいつの時点の残高をいうのだろうか。ATM入金が終了する3月20日営業締め残高と考えられるが、定かではない。それに関連して、3月20日16時の譲渡者への銀行振込み分については、3月21日支払い分になるだろう。3月20日消印の現金書留郵便の処理はどうか。3月20日の債務者宅での夕刻以降の回収金や前日事務処理の遅れによる締め後の扱いは、前日処理することができるだろう。

こうした支払額の事務処理について、譲渡通知は、その目的をことにするので、そこに記載される必要はないが、二度手間を省くため、別添として、計算処理方法を知らせるべきだろう。譲渡日以降、適用金利が変更されること、グレーゾーン金利での未収金利があることなどから、事後のトラブルを避けるためにも、事務上の注意を必要とする。