タイムトラベル・イン・葦の原

誰も知らない小さな湿地があります。こびとなら、遠慮なく訪れることができるでしょう。

どんぐり坊や、オトゴ浜へいく~昼寝を邪魔されたヨシノハラボーズ~

2011年05月24日 | 日本の重要湿地

ある晴れた日、どんぐり坊やは転がった。コロコロコロコロ転がって、山のふもとを流れる吉井川にぽちゃん!
いったい、どこまで流されるのか・・・

山からずいぶん遠くまでやってきて、さすがに川もどんぐり坊やを岸にあげてくれた。でも、いったい、ここはどこ?
どんぐり坊やは、長いことぼーっと立っていた。そのときね、話しかける声がした。振り向くと、そこにはカシャカシャとハサミをふるカニがいた。

実は、どんぐり坊やがカニを見るのは、これが生まれて初めてだったんだ。どんぐり坊やは、どうしたと思う?
なんと、そのカニに向かってぷんぷんと怒りだしたんだよ。
「何だ?おまえのその格好?おまえ、その形、間違ってるぞ。そのチョキチョキしているもの、とれよ。そんな形じゃないはずだぞ!おまえみたいなカシャカシャしたやつは・・・」

大きなギザギザしたノコギリか、ごつい強そうな金槌みたいなのをつけるものなんだ。それに、おまえ、その色はなんだよ。赤すぎるよ。いけないんだぞ、そんな違う形は間違ってるぞ!」そういわれたカニは、呆気にとられて黙ってどんぐり坊やを見て目をぱちくり。
そのとき、また、別の声が話しかけてきましたよ。「何やってんだぁ。おまえ、誰だ?」

振り向くと、そこにはまたまたどんぐり坊やが初めてみるトビハゼくんです。そしてね、またまたどんぐり坊やは大きな声で怒りだしたの。
「いけないんだ、いけないんだ~、そんな違う形はだめなんだぞ。」そういって、トビハゼのほっぺたをツンツンとつついて怒り続けます。
「ほらな、こんな風に冷たくて、つるんとした感じの奴は、もっと長くないとだめなんだ。クネクネと地面の上をはって、木とかに巻き付かないといけないんだ。そして、じっとしているときはグルグルと巻いているものなんだ。もし長くないなら、もっと高く、遠くまで飛べる足がないとだめなんだ。喉のところをぷくぷくさせて、音を出せないとだめなんだ。おまえは間違ってる~!!」どんぐり坊やが、誰と間違えたか、みなさんはわかりますよね?

今までに、どんぐり坊やが見たことがある冷たくてツルンとしたものは、ヘビとカエルしかいなかったの。
「間違ってる」と言われたカニとトビハゼは、はじめは「そうか。間違っていたか・・・どうしたらいいかな・・・」なんて考え込んでいたんだけど
ふと、トビハゼがどんぐり坊やをじっとみて言いました。「間違っているのはおまえなんじゃないか?」

それを聞いて、カニもじーっとどんぐり坊やを睨みつけ、つついたり、叩いてみたりして、うんうん、と頷いて言ったの。
「本当だ。こいつが間違ってる。どこか違うと思ったんだよ。正しいのは、こっちだよ。」そういって、ちょうどそこを通りかかったカタツムリみたいな貝を指差しました。

な、正しいのはこっち。おまえ、間違ってるぞ!・・・さぁ、この後がもう大変な騒ぎになりました。

「なんだよ、ぼくは間違ってないぞ、おまえはなんで茶色なのに角も槍もないんだ?」「おまえこそ、そのハサミ、だいたい、大きさが違うぞ、ほーら間違ってるじゃないか!」「おまえ、魚だったよな、なら、なんでここにいるんだよ!」もう、しっちゃかめっちゃかで、カニもトビハゼを間違っていると言い出すし、誰も彼も、自分以外をみんな間違っている、と言い出したから、本当に大変な騒ぎになったのです。そのとき、「う・る・さ・い・ぞぉー~~」と、それはそれは恐ろしい音がみんなの下からごおーんという響きといっしょにしたのです。

たちまち、みんなは、シーン。・・・「う・る・さ・い・ぞ・・・~」地面が、怒りのあまり、ぶるぶると揺れています。その震えときたら、
ものすごーく怒っていることが伝わってくる震えなのです。

こんなに怒っているのは誰?どんぐり坊やがきくと、トビハゼもカニも口を揃えていいました。ヨシノハラボーズさ。おまえ、そんなことも知らないのかよ。
ヨシノハラボーズ?小刻みに揺れているヨシノハラボーズの上で、その名前をきいたどんぐり坊や、どういう訳か可笑しくて可笑しくて笑い出してしまいました。
「しーっ!」トビハゼもカニも慌ててどんぐり坊やを押さえつけます。「静かにしていないと、揺れを止めてくれないよ。暴れだす前に、頼むから静かにしてくれよ」「しーっ!」「わかった、わかった・・・でも、くすぐったいんだよ、この、下が揺れると、ぐふっ、うひ、」「しーっ!!」一生懸命我慢したんだけど、ついにどんぐり坊やはくすぐったさに我慢できなくなったのです。うきゃきゃきゃ・・・その間も、ずーっとヨシノハラボーズは怒りのあまりブルブルと震えています。おまけに、地響きといっしょに大きな声で「う・る・さ・い・ぞ~」と唸り続けているのです。それなのに、どんぐり坊やは笑いが止まらなくて、お腹がよじれそうです。

笑っているどんぐり坊やを見ているうちに、しまいには、トビハゼもカニもゲラゲラと笑い出してしまいました。「た、頼むから、笑いを止めてくれ~、おまえが笑うと、笑いが止まらない~」「この、揺れが止まらないと、笑いが止まらない~」「笑いを止めないと揺れが止まらない~」歌を歌うみたいに言い合っているうちに、それも可笑しくて、笑い声は大きくなるばかり。

ヨシノハラボーズは、相変わらずぶりぶりと怒ったまま、ついに立ち上がって吉井川の中を歩いて山の方に向かって歩き始めました。怒ってのっしのっしと歩くヨシノハラボーズとその上で馬鹿みたいに笑い転げるどんぐり坊やたちを鳥たちが不思議そうに見送ります。

怒り疲れて、歩き疲れたヨシノハラボーズは、笑い疲れたどんぐり坊やを山に下ろしました。
この後、どんぐり坊やの話をきいて、冒険好きのどんぐりがいくつも転がってきたんだってさ。




「どんぐり坊や」 準備中

2011年04月28日 | 日本の重要湿地

ぶつぶつと、台詞を作りながら、ただいま、紙芝居の絵を描いています・・・

葦の原のこびと 28

2011年02月26日 | 日本の重要湿地

長い夢の最後に葦の原の空を飛ぶ夢をみた。

やっぱり、どんどん落ちていく・・・

うわぁ・・・

長い長い夢だったな。

葦の原のこびと 27

2011年02月24日 | 日本の重要湿地

光が溢れる夏。

ほらほら

ひょうきんもの

トビハゼくんのお出ましだ。

葦の原のこびと 26

2011年02月23日 | 日本の重要湿地

少しくらい暖かい日があったとしても、きみ達はそう易々とは戻らないんだよね。

近所でコチドリさんたちが

夫婦で

卵を温め始めるころから

みんなも、葦の原の緑色もおとなしくはしていられなくなる。