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国際出願法を見てみよう(11-1)

2016-08-23 21:21:37 | 条約
 こんばんは。国際出願法11条は、PCT34条補正です。
 このあたりから入り組んできますね。PCT及びPCT規則との兼ね合いが難しくなってきます。

 出願人は、国際予備審査報告が作成される前に、所定の方法で及び所定の期間内に、請求の範囲、明細書及び図面について補正をする権利を有する。この補正は、出願時における国際出願の開示の範囲を超えてしてはならない(PCT34条(2)(b))。

(条文)
(国際予備審査の請求に伴う補正)
第11条 国際予備審査の請求をした出願人は、経済産業省令で定める期間内に限り、当該請求に係る国際出願の出願時における明細書、請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において、明細書、請求の範囲又は図面について補正をすることができる。

【国際出願法第11条の内容及び関連施行規則】
 国際出願法第10条は、いわずと知れたPCT34条補正のことです。国際予備審査請求をした場合には、所定の期間内に明細書等について補正をすることができます。逐条解説には以下のように趣旨が述べられています。

◆逐条解説国願法11条『出願人が国際調査報告をみて、あるいは13条により新規性等がないとの審査官の見解をみて、明細書等について補正を行い、これらの否定的判断を回避するためになされるものである。この補正が出願時における国際出願の開示の範囲を超えてはならない(すなわち、出願時における明細書等に記載した事項の範囲内に限られる)ことは当然である。』

 ここで、経済産業省令で定める期間については、具体的には国願法施規55条に規定があります。

(国際予備審査の請求に伴う補正の期間)
国願法施行規則第55条 法第11条の経済産業省令で定める期間は、次に掲げるいずれかの期間とする。
① 国際予備審査の請求をした時から国際予備審査報告の作成が開始されるまでの期間
② 審査官が、法第13条の規定により期間を指定して答弁書を提出する機会を与えた場合における当該指定した期間
③ 審査官が、出願人の請求により期間を指定して補正書を提出する機会を与えた場合における当該指定した期間

 34条補正ができるのは、具体的には、1号:国際予備審査請求時から国際予備審査報告作成までの期間、2号:答弁書提出期間、3号:出願人の請求により補正書提出機会を与えた場合のその期間ということになります。

【PCT及びPCT規則との関係】
 国際出願法施行規則だけでは何とも言えないので、PCT規則にて根拠を明らかにしておかないと。

 34条補正は、「国際調査報告が作成される前に」とPCT34条(2)(b)に規定されているところ、PCT規則66.1(b)にて、
 1.国際予備審査請求書の提出の時、
 2.PCT66.4の2の規定に従うことを条件として国際予備審査報告が作成されるまでの間、
に34条補正をすることができると規定しています。

 その一方で、PCT規則66.4の2には、書面による見解又は国際予備審査報告の作成を開始した後に補正書等を受理した場合には、それらを考慮しないということになっています。この規定によれば、国際予備審査機関が国際予備審査請求後にすぐに書面の見解を作成し始めてしまった場合には、34条補正が考慮されないかのように読めてしまい矛盾を感じますが、国際予備審査機関は、書面による見解又は国際予備審査報告を作成する前の段階で、いくつかの34条補正の機会を出願人に与えているので、このPCT規則66.4の2の規定は、それらの与えられた時期を過ぎた場合の話ということになります。

 さて、国際出願法施行規則に規定されているPCT34条補正ができる時期というのはPCT規則ではどのように規定されているでしょうか。

(1)国際出願法施行規則第55条1号 国際予備審査の請求をした時から国際予備審査報告の作成が開始されるまでの期間
 →これはPCT34条及び上述したPCT規則66.1(b)に基づくものですね。

(2)国際出願法施行規則第55条2号 審査官が、法第13条の規定により期間を指定して答弁書を提出する機会を与えた場合における当該指定した期間、その他経済産業省令で定めるときに、その旨及びその理由を通知して答弁書提出期間を与えた場合の答弁書提出期間
→国際出願法第13条というのは、「答弁書の提出」ということで、新規性、進歩性、産業条の利用可能性がないとき、PCT35条(2)の意見を述べる必要があるとき、国願法施行規則61条の事由があるときを挙げています。この国際出願法施行規則61条もPCT規則との兼ね合いで理解しておきたいところですね。→ここを追求しましょう。

(3)国際出願法施行規則第44条第3号 審査官が、出願人の請求により期間を指定して補正書を提出する機会を与えた場合における当該指定した期間
→出願人の請求により国際予備審査期間が補正の機会を与えることはPCT規則66.4(b)に規定されています。


・・・うーん。このあたりまでくると、だんだん複雑になってきますね。
このあたりの話を解きほぐしていくことにしましょう。
頑張りましょう。

というわけで今日は簡単ですが、ここまで。
国際予備審査の手続の流れが、PCT攻略の最大のポイントになりますよ。

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国際出願法を見てみよう(10)

2016-08-22 20:35:11 | 条約
 週末は更新ができませんでしたー。すみません。3日ぶりです。
 日本人選手の大活躍が嬉しかったオリンピックも終わり、さて、国際予備審査です。

 PCT第2章に規定する国際予備審査に関しては、国際出願法は、日本国が管轄国際予備審査機関となる場合の出願人との間の手続に関して、「第4章 国際予備審査」として第10条から第15条まで規定しています。対応する施行規則は国願法施規51条から第70条まででです。
 何度も述べていますが、国際出願法は、特許庁と日本国民等との間の手続を規定しているので、国際調査のところで19条補正は登場しません。19条補正は国際事務局に提出しますので、国際出願法としては、それはPCTに任せているので私は知ったこっちゃないという感じですね。

1.国際予備審査の概要
 国際予備審査制度は、請求の範囲に記載されている発明が新規性を有するもの、進歩性を有するもの(自明のものではないもの)及び産業上の利用可能性を有するものと認められるかどうかの問題についての予備的なかつ拘束力のない見解を示すことを目的とする制度です(33条(1))。
 本制度は、国際調査より一歩進んだ特許性の見解を国際予備審査機関が示す制度であり、国際調査報告が先行技術文献が列記されているに過ぎないのに対し、出願人は、国際予備審査制度を利用することにより、各国での特許性の判断をより容易にする資料である国際予備審査報告が得られ、各国特許庁は、国際予備審査報告により国内における審査が容易になるというメリットがあるとされてきました。

 国際予備審査制度は留保可能な制度であり(64条(1))、いずれに国も、第2章の規定に拘束されないことを宣言することができ(64条(1)(a))、宣言を行った国は、第2章の規定及び規則中同章の規定に対応する規定に拘束されないということになってはいます(64条(1)(b))。が、現在、PCT第2章を留保している国はないので、現実的にはこの点は考慮する必要はありません。また、国際出願は、出願人の国際予備審査の請求により、国際予備審査の対象とするという制度なので(31条(1))、利用するか否かは出願人の意思によります。その点で、任意の制度であるといえます。

 ただ、現在は、近年のPCTリフォームによって、従来、国際予備審査で行われていた特許性の判断が国際調査機関によって行われ、国際調査機関による見解書(43の2.1)が作成されることになったことに伴い、国際予備審査の利用価値はそれほど高いものではなくなってしまいました。そのため、国際予備審査制度の利用度は落ちているとのことですが、それでも、国際予備審査請求をすることにより以下のメリットが得られる。

【国際予備審査制度を利用するメリット】
① 国際予備審査請求をすることにより、国際段階でのPCT34条補正の機会が得られ、請求の範囲のみならず明細書及び図面についても国際段階の補正ができる。
② 国際調査機関の見解書の内容が国際予備審査機関からの第1回目の見解とみなされる扱いになっているので、国際予備審査請求をしておけば国際段階にて国際調査機関の見解に対する「抗弁」ができる。
③ 国際調査機関の見解書が否定的な内容であった場合、その状態で国内審査に移行する状態よりは、上記抗弁の内容や、その抗弁や34条補正が反映された国際予備審査報告が特許性を肯定するものであれば、その内容が各国国内審査において考慮してもらえる期待が持てる。
④ 平成26年7月1日以降は、国際予備審査請求があった場合にはトップアップサーチの対象となる。

 ということで一応メリットはあります。日本国特許庁に国際予備審査をしてもらうには請求が必要です。というわけで国願法10条の出番です。

2.国際予備審査請求書

 国際予備審査は出願人による国際予備審査の請求により、国際予備審査の対象となる(PCT31条(1))

(条文)
(国際予備審査の請求)
第10条
 第4条第1項若しくは第3項又は第5条第2項の規定による認定を受けた国際出願の出願人は、経済産業省令で定める期間内に、その国際出願について、特許庁長官に条約第33条に規定する国際予備審査(以下「国際予備審査」という。)の請求をすることができる。ただし、出願人が条約第31条(2)の規定により国際予備審査の請求をすることができることとされている者以外の者である場合その他経済産業省令で定める場合は、この限りでない。
2 前項の請求をしようとする者は、経済産業省令で定める事項を日本語又は経済産業省令で定める外国語により記載した請求書を、特許庁長官に提出しなければならない。

【PCT及びPCT規則との関係】
 国際出願法第10条第1項は、PCT31条(2)(a)に対応しています。PCT31条(2)(a)は、出願人がPCT第2章に拘束される締約国の居住者又は国民である場合にであって、国際出願をした場合には国際予備審査の請求をすることができる旨規定しています。
 国際予備審査請求をすることができる期間はPCT規則54の2.1(a)に規定されています。
 また、PCT規則54.2は、国際予備審査の請求をする出願人(2人以上ある場合には少なくとも1人の出願人)が第2章の規定に拘束される締約国の居住者又は出願人であり、かつ、第2章の規定に拘束される締約国の受理官庁(又はその国のために行動する受理官庁)に国際出願をした場合には、国際予備審査の請求をすることができる旨規定しています。

 国際出願法第10条第2項は、PCT31条(3)に対応しています。PCT31条(3)には、「国際予備審査の請求は、国際出願とは別個に行う。この請求書には、所定の事項を記載するものとし、この請求書は、所定の言語及び形式で作成する。」と規定されています。

【国際出願法第10条の内容】
 本条第1項は、特許庁長官により国際出願日の認定を受けた国際出願の出願人は、特許庁長官に、国際予備審査の請求をすることができる旨を規定しています。本条の対象となる国際予備審査請求の対象となる国際出願については、法8条1項で述べたのと同様に、日本国特許庁を受理官庁として国際出願日が認定された国際出願に限られています。
 国際予備審査請求は、経済産業省令で定める場合にはできないことになっていて、この点、国願法施規51条には、指定国がすべてPCT第2章に拘束される国でなければ国際予備審査請求をすることができない旨規定されているのですが、現状は、上記したように、PCT第2章を留保している国はないので空振りです。

 また、国際予備審査請求をすることができる省令期間としては、国願法施規51条の2第1項にて、国際調査報告(報告を作成しない旨の通知を含む)及び国際調査機関の見解書の送付の日から3月又は優先日から1年10月(22箇月)以内に限られる旨が規定されています。そして、当該期間内に請求がされなかった場合には、国際予備審査請求は行われなかったものとみなし、その旨が出願人に通知されることになっています(同条2項)。これは上記したPCT規則54の2.1に基づいています。
 従来は請求書に選択国の表示が必要だったのですが、現在は、いわゆる全選択なので(PCT規則53.7)、選択国の記載は不要です。このためPCT31条(4)(a)、(4)(b)も空振りで、何ら意味のない規定となってしまっています。

 注意したいのは、国願法施行規則52条6号の「条約第19条(1)又は第11条の規定による補正がある場合は、その旨」という内容が請求書記載事項として規定されているところ。これはPCT規則53.9の補正に関する記述のことです。
 本条第2項は請求書の詳細は経済産業省令で定める旨の規定です。具体的には、請求書の記載事項は国願法施規52条に、請求書の言語は日本語又は英語である旨が同52条の2に、請求書の様式は同53条に従うことになります。


【国際予備審査請求書に不備がある場合】
 さて、PCTにおいては、国際予備審査請求書の欠陥がある場合の取扱いは、国際出願日の認定における補充と同じような扱いとなっています。具体的には、PCT規則60に規定があります。国際予備審査請求書に不備がある場合は、国際出願と同様に補充を求めて(PCT規則60.1(a))、補充がされた場合には、請求書が国際出願を特定することができることを条件として、請求の日に受理されたものとみなし、それ以外の場合(補充により初めて国際出願が特定できるようになった場合)には、補充の受理の日が請求書受理とみなされます(PCT規則60.1(b))また、補充がされなかった場合には、請求には行われなかったものとみなされます(PCT規則60.1(c))
 このPCT規則60.1(b)では、「請求書が国際出願を特定することができることを条件として」というフレーズが具体的にどういう意味なのかは必ずしも明らかではないのですが、国際出願法は施行規則でその内容を具体的に規定しているので、国際出願法施行規則の方がわかりやすいです。

 ただし、国際出願法では請求書に不備がある場合の扱いが多少複雑なんです。まず、請求書に不備がある場合の取扱いは、PCTの条文に規定がないので、国際出願法の条文としては規定されていなくて、政令に委ねられているというわけです(国願法14条、国際出願法施行令第1条)。

◆逐条解説国願法14条『国際出願について不備がある場合の手続等については、4条2項の補完命令、6条の補正命令等本法においても規定を設けているが、国際予備審査の請求の不備については、国際予備審査は出願人の請求が必要とされ、また留保可能ないわば傍系の手続と考えられ、さらにはその手続の不備の場合について、条約に規定がないこともあり、その手続及び効果について政令に委ねることとした。』

 具体的には、国際予備審査請求書に不備がある場合には、国願法施令1条により、補完命令か(施令1条1項)、補正命令(施令1条2項)となるのですが、これについては、国願法14条のところで説明することにしましょう。

 では、今日はこれで。

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国際出願法を見てみよう(9)

2016-08-19 18:11:11 | 条約
 今日は9条ですね。
 昨日、言い忘れましたが、国願法8条については、条約(PCT)としての短答の出題は大変多いのです。が、国願法をターゲットにした問題は、平成一桁の年にはたびたび出題されていましたが、平成9年〔27〕1で国願法施行規則44条が出題されて以来、途絶えています。(とはいえ、条約(PCT及びPCT規則)の知識があればできる問題でしたが。)
 国願法から1問という形で今後の短答式試験も出題され続けるとしたら、このあたりからも再び出てくることになりそうです。

 さて、9条は簡単です。

(条文)
(文献の写しの請求)
第9条 出願人は、その国際出願に係る国際調査報告にその国際出願と関連する技術に関する文献の記載があるときは、特許庁長官に対し、経済産業省令で定める期間内に、その文献の写しの送付を請求することができる。

国願法施行規則第49条(文献の写しの請求の期間)
 法第9条の経済産業省令で定める期間は、当該国際調査報告に係る国際出願の国際出願日から7年とする。


 国際出願法第9条は、PCT20条(3)及びPCT規則44.3に基づいて規定されています。国際調査報告に列記された文献の送付請求については、国際調査機関(特許庁長官)に対し行い、国際出願日から7年間できるということですね。それだけです。終わり。

 簡単でしたね。ただ、この条文は、国際予備審査で準用されているのですが、準用のしかたがPCTと国際出願法とでは異なっています。それはまた、国際予備審査のところで。

 (とはいえ、国際出願についての国際調査は、現実にはほとんどの場合、国際予備審査と同一の機関であるところの国際調査機関が行っているので、準用のしかたがどうであれ、あまり関係はないのですが。)

 国願法8条は、弁理士試験では条約(PCT及びPCT規則)として、何度も出題されているところですので、国際出願法としてのこの条文自体の知識はあまり必要ないでしょう。PCTのとおりですから。
 国際出願法としては、平成26年〔57〕(ニ)で出ましたね。それ以前は昭和57年まで遡らないと出題されたことはないですが、最近ふたたび短答式試験の問題にも再登場してきたというところか。

 では。






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国際出願法を見てみよう(8-3)

2016-08-18 18:12:34 | 条約
今日は8条のラストです。8条4項と5項。

(条文)
■第8条第4項
 特許庁長官は、国際出願が条約第17条(3)(a)の発明の単一性の要件を満たしていないときは、出願人に対し、相当の期間を指定して、次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める金額に請求の範囲に記載されている発明の数から一を減じて得た数を乗じて得た金額の範囲内において政令で定める金額の手数料を追加して納付すべきことを命じなければならない。
① 明細書及び請求の範囲が日本語で作成されている場合  10万5000円
② 明細書及び請求の範囲が第3条第1項の経済産業省令で定める外国語で作成されている場合  16万8000円
■第8条第5項
 審査官は、前項の規定により手数料を追加して納付すべきことを命じられた出願人が同項の規定により指定された期間内にその命じられた金額の手数料を追加して納付しないときは、経済産業省令で定めるところにより、その国際出願を手数料の納付があつた発明に係る部分とその他の発明に係る部分とに区分し、手数料の納付があつた発明に係る部分については当該発明に係る部分についてした国際調査の結果を、その他の発明に係る部分についてはその旨を、国際調査報告に記載するものとする。

■国願法施行令第2条第6項
 法第8条第4項の政令で定める金額は、次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める金額に請求の範囲に記載されている発明の数から一を減じて得た数を乗じて得た金額とする。
① 法第8条第4項第1号に掲げる場合 6万円
② 法第8条第4項第2号に掲げる場合 12万6000円

【PCT及びPCT規則との関係】
 国際出願法第8条第4項及び第5項は、PCT17条(3)(a)に対応しています。これもPCTでは大変よく出題されます。
 PCT17条(3)(a)は、国際出願が発明の単一性を満たしていない場合には相当の期間を指定して、追加手数料の支払を求め、請求の範囲に最初に記載された発明及び追加手数料が支払われた発明について国際調査報告を作成する旨規定しています。(支払われなかった発明については調査報告を作成しません。)
 追加手数料の支払を求める期間は、国願法施行規則には規定はないですが、命じた日から1月です(PCT規則40.1)。
 これに対し、出願人は、手数料を追加して納付するとともに、異議を申し立てることができます(PCT規則40.2(c)、国願法施規44条)。
 発明の単一性についてはPCT規則13に要件が規定されており、国願法施規13条に対応規定があります。偶然にも同じ番号ですね。本当に偶然なのであろうか?
 ここでは、一の発明又は単一の一般的発明概念を形成するように連関している一群の発明とされており、特許法施行規則25条の8と変わりはないですね。PCTに合わせて国内法を整備したのですからあたりまえですね。

【法8条第4項及び第5項の内容】
 法8条4項に定める追加手数料については、平成23年改正より、上限を法律で定め、その範囲内で政令で定めることとしています。具体的には国願法施行令第2条6項で具体的な額を定めています。
 法8条5項は、4項の命令に従わずに手数料を追加して納付しない場合においては、国際出願を手数料の納付があった発明に係る部分とその他の発明に係る部分に区分し、手数料の納付があつた発明に係る部分については、その部分についての国際調査の結果を、その他の発明に係る部分についてはその旨を、国際調査報告に記載する旨規定しています。なお、追加手数料の納付については、PCT17条(3)(a)に基づいて、発明の記載の順序に従って手数料が納付されたものとみなされることになっています(国願法施規46条)。

【国際調査の手続全体の概略】
ここで、そもそも国際調査はどのように進行するのかを確認しておきましょう。
(特許庁「PCT国際調査及び国際予備審査ハンドブック」より)

国際出願の調査用写しの受領(国願法施規39条)

国際調査開始にあたっての検討
 ・書誌的事項の確認
  ・明細書等の補充や引用補充があった場合には要注意
  ・優先権主張の補充等があった場合には要注意
 ・国際調査の除外対象の検討(国願法8条2項、3項)

中間指令に関する検討
 ・単一性違反があった場合には追加手数料支払命令(国願法8条4項)
 ・明らかな誤りの訂正請求命令(PCT規則91.1(h)、国願法施規77条)・・・あまりない
 ・使用してはならない表現等に関する通知(自発的に訂正するよう示唆)(PCT規則9.2)・・・あまりない
 ・配列表の提出命令(PCT規則13の3.1、国願法施規50条の3第5項、7項)

国際調査における調査対象の決定(追加手数料が支払われたか否かによる)

先行技術調査

国際調査報告及び国際調査機関の見解書作成(国願法8条1項、国願法施規40条、40条の2)

国際事務局と出願人への送付(国願法施規41条、PCT18条(2)、PCT規則44.1)

【国際調査の手続の内容】
 もう少し補足しておきますね。

1.国願法施行規則によれば、まず、特許庁長官は、調査用写しを受領したときは、その旨及びその受領した年月日を出願人に通知しなければならないと規定されています(国願法施規39条)。
 この規定は特許庁長官が受領することとその旨を出願人に通知することについて規定していますが、調査用写しは誰が作成し誰が送付するのかについては言及されていなません。その点については出願人との間の手続ではないため、当然に、国願法及び国願法施規には規定がなく、PCT及びPCT規則に基づく手続となるわけですね。
 国際出願がされた場合には、受理官庁としての日本国特許庁は調査用写しを作成する(PCT12条(1)、PCT規則21.1(a))。そして、それを受理官庁は国際事務居へ記録原本を送付する日と同日に国際調査機関に送付する(PCT規則23.1(a))。
 そして、それを冒頭述べたとおり、特許庁長官が受領する(国願法施規39条)。
 →何のことはないですね。自分で送って自分が受け取るってことですね。変なの。


 国際調査機関としての日本国特許庁は、出願人だけでなく、国際事務局と受理官庁にも受領の事実と日付を速やかに通知する(PCT規則25.1)。ただし、国際調査機関と受理官庁が同一の場合は通知しない(規則25.1)
 →一人で何やってんだかということになるからである。

2.特許庁長官は審査官に先行技術調査を行わせて国際調査報告を作成させることになっていますが(国願法8条1項)、その際、審査官に以下の仕事もさせる。国際調査の手続についてはPCT及びPCT規則にも、当然、対応する内容の規定があります。この手続の流れの項目は、PCTとして短答頻出です。

(1)法8条3項の対象が国際調査を要しないものか否かの判断をしてもらい、該当する場合には国際調査報告を作成しない旨の決定をしてもらう(国願法8条2項、3項、PCT17条(2))。
(2)発明の単一性の判断をしてもらい、単一性がない場合は追加手数料の支払を求める(国願法8条4項、5項、PCT17条(3)(a)、PCT規則40)。これに対して出願人は追加手数料異議の申立てをすることができる(国願法施規44条、PCT規則40.2(c))。その場合は特許庁長官は3名の審査官を新たに指定して(国願法施規45条1項)、合議制でその異議の判断をさせる(国願法施規45条の2)。
(3)発明の名称が不適切だった場合に発明の名称を考えてもらう(国願法施規48条、PCT規則37)。
(4)要約書に不備がある場合には要約書を作成してもらう(国願法施規47条、PCT規則38)。
 →この仕事は国内出願の場合は特許庁長官がやっていたのに・・・って感じですかね。
 出願人は、作成された要約書に文句がある場合にはそれを修正したり意見を言えたりする(国願法施規47条3項、PCT規則38.3)
 →文句言うくらいなら初めから自分でやれよって感じですかね。

(5)国際調査機関の見解書を作成してもらう(国願法施規40条の2、PCT規則43の2)。
 最後に特許庁長官は、国際調査報告と国際調査機関の見解書を作成した場合には、国際事務局に送付すると同時に出願人にも送付する(国願法施規41条、PCT規則44)。
 →なんとここだけは国際出願法なのに、国際事務局に送付するという特許庁と国際事務局との間の手続が出てくるのであった。。。
 いやいや、これは「国際事務局に送付すると同時に」と規定しているだけで、出願人への送付の時期を言っているだけですよ~。

 と、ま、こんな感じです。

 なお、国際出願法には規定はないですが、国際調査報告の作成期限は、以下のとおりです。

PCT規則 第42規則 国際調査のための期間
42.1 国際調査のための期間
国際調査報告又は第17条(2)(a)の宣言を作成するための期間は、国際調査機関による調査用写しの受領から3箇月の期間又は優先日から9箇月の期間のうちいずれか遅く満了する期間とする。


 今日はここまでということで。
 

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明日から日常に戻ります。

2016-08-17 18:39:23 | つぶやき
さあ、お盆休みも終わりですね。
オリンピックも終盤になってきましたが、選手の方々の頑張りには心打たれますね。

吉田ゼミも明日から日常に戻ります。
頑張っていきましょう。

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国際出願法を見てみよう(8-2)

2016-08-17 18:27:41 | 条約
 今日は国願法8条2項及び3項ですね。すみませんが、今日はあっさりいきます。PCTの規定とほぼ同じ。

(条文)
第8条第2項
 審査官は、国際出願がその全部の請求の範囲につき次の各号の一に該当するときは、前項の規定にかかわらず、国際調査報告を作成しない旨の決定をしなければならない。
① 国際調査をすることを要しないものとして経済産業省令で定める事項を内容とするものであるとき。
② 明細書、請求の範囲若しくは図面に必要な事項が記載されておらず、又はその記載が著しく不明確であるため、これらの書類に基づいて有効な国際調査をすることができないとき。

第8条第3項
 審査官は、国際出願がその一部の請求の範囲につき前項各号の一に該当するときは、その旨及び当該一部の請求の範囲以外の請求の範囲のみについてした国際調査の結果を、国際調査報告に記載するものとする。


【PCT及びPCT規則との対応】
 国際出願法第8条第2項はPCT17条(2)(a)に、同条3項はPCT17条(2)(b)と対応する規定です。実質的には意味は同じですが、表現が少し違っていますね。このあたりは国際出願法ではなくて、PCT17条として、弁理士試験・短答式試験の出題頻度がかなり高いです。

・PCTでは「国際調査機関は、・・・その旨を宣言するものとし、・・・出願人及び国際事務局に対し国際調査報告を作成しない旨を通知する。」
・国際出願法では「審査官は、・・・国際調査報告を作成しない旨の決定をしなければならない。」
 ここでも、国際出願法では審査官による「決定」となっています。「決定」は行政処分だから行政不服審査法による不服申立てが・・・などと考えてはいけないことは以前にも述べました。

【国際調査をすることを要しないものの対比(PCT規則39、国願法施規42条)】
 さて、PCT規則39には国際調査をすることを要しないものとして挙がっているものの国願法施行規則には挙がっていないものがあったりします。
 PCT規則39.1(ii)と(iv)に該当する内容が国願法施規42条には規定がない点に注意しておきましょう。
 とはいえ、この規則については、短答式試験を30年前まで遡って過去問を検討しても、国願法を含めて平成12年に1問出題されたのみであり、出題頻度はとても低いです。

 が、だからもう出ませんよ、とはいえないところが近年の短答の怖いところではあります。

 以下、国願法施規42条と、PCT規則39を並べておきます。

(国際調査を要しない国際出願の内容)
第42条 法第8条第2項第1号の国際調査を要しないものとして経済産業省令で定める事項は、次に掲げる事項とする。
① 科学及び数学の理論
② 事業活動、純粋に精神的な行為の遂行又は遊戯に関する計画、法則又は方法
③ 情報の単なる提示
④ コンピューター・プログラム(国内出願において先行技術の調査を行うものを除く。)


PCT規則 第39規則 第17条(2)(a)(i)に規定する国際出願の対象
39.1 定義
 国際調査機関は、国際出願の対象の全部又は一部が次のいずれかである場合には、当該国際出願の全部又は一部について調査をすることを要しない。
(i) 科学及び数学の理論
(ii) 植物及び動物の品種又は植物及び動物の生産の本質的に生物学的な方法。ただし、微生物学的方法及び微生物学的方法による生産物については、この限りでない。
(iii) 事業活動、純粋に精神的な行為の遂行又は遊戯に関する計画、法則又は方法
(iv) 手術又は治療による人体又は動物の体の処置方法及び人体又は動物の体の診断方法
(v) 情報の単なる提示
(vi) コンピューター・プログラムのうち国際調査機関が当該プログラムについて先行技術を調査する態勢にある範囲外のもの

 違いを認識しておきましょうね。

 今日はあっさりでした。
 ではまた。


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国際出願法を見てみよう(8-1)

2016-08-16 17:26:49 | 条約
こんばんは~。国際調査機関の吉田です。(うそです。)
ちなみに昨日までの受理官庁は隣にいる本田さんでした。隣の本田さんが国際出願の調査用写しを私に手渡してくるところからが私の出番というわけです。
ちなみに本気にしないで下さい。

さて、今日は国際出願法第8条を見てみましょう。
PCTではかなりのボリュームのある国際調査のところが、国際出願法では第8条と第9条だけで終わりですか。簡単ですね。いや。どうかな。

国願法施行規則にも目を配りながら、
(8-1)8条1項
(8-2)8条2項と3項
(8-3)8条4項と5項
の三部構成です。今日は第8条第1項だけです。ただ、今回は意外な展開を見せます・・・。

(条文)
第8条第1項
 特許庁長官は、第4条第1項若しくは第3項又は第5条第2項の規定による認定をした国際出願(条約に規定する他の国際調査機関が条約第15条に規定する国際調査(以下「国際調査」という。)をするものを除く。この章及び次章において同じ。)につき、審査官に条約第18条(1)に規定する国際調査報告(以下「国際調査報告」という。)を作成させなければならない。

【PCT及びPCT規則との関係】
 まずは国際調査のPCTにおける前提を示す必要がありますね。

 国際出願はすべて国際調査の対象とされています(PCT15条(1))。国際調査は、関連のある先行技術を発見することを目的としており(PCT15条(2))、国際調査機関が国際調査を行うことになっています(PCT16条(1))。
 日本国特許庁は、国際調査機関の最小限の要件(規則36)を満たしており、国際調査機関として総会により選定されています(PCT16条(3))。日本国特許庁は、日本国民等による国際出願の管轄受理官庁として、日本国特許庁を管轄国際調査機関として特定しています(PCT16条(2)、PCT規則35.1)。
 管轄国際調査機関である日本国特許庁は、対象となる国際出願の請求の範囲に基づいて国際調査を行い(PCT15条(3))、可能な限り多くの関連のある先行技術を発見するよう努めるものとし、いかなる場合も規則に定める資料(最小限資料(規則34))を調査することになります(15条(4))。そして、対象となる国際出願について国際調査報告を作成しなければなりません(18条)。

 以上が前提です。そして・・・

【法8条1項の内容】
 国際出願法第8条1項は、国際出願法の規定によって国際出願日が認定された国際出願については、特許庁長官は審査官に国際調査報告を作成させなければならない旨規定しています。
 たったこれだけなのですが、軽く考えないようにして下さい。

 よく見てくださいね。本規定は、あくまでも法8条が適用されるのは法4条1項、同条3項、法5条2項の規定によって国際出願日の認定がされた国際出願のみということになっていますから、外国を受理官庁として提出された国際出願について日本国特許庁が国際調査機関となったとしても、その国際出願は本条の対象にはなりません。この点については下で述べます。

 また、法8条1項にはかっこ書があり、「(条約に規定する他の国際調査機関が条約第15条に規定する国際調査(以下「国際調査」という。)をするものを除く。この章及び次章において同じ。)」とあるので、他の国際調査機関が国際調査をするものも本条の対象にはなりません。
 このかっこ書は、昭和60年10月にわが国に英語でされた国際出願については、ヨーロッパ特許庁も管轄国際調査機関(及び管轄国際予備審査機関)として特定されたことに基づきこのように改正されたものです(施規11条の3も参照)。
 ただし、ヨーロッパ特許庁が国際調査機関及び国際予備審査機関となるのは、特許庁に提出された国際出願のうち英語で作成された国際出願に限られています(平成2年10月30日特許庁告示5号)。

 さらに、『次章において同じと規定されていることから、他の国際調査機関が国際調査をする国際出願については、特許庁長官に国際予備審査の請求をすることはできない。(逐条解説国願法8条1項)』ことにも注意しましょう。これは、ヨーロッパ特許庁と国際事務局との取り決めにより(PCT16条(3)(b))、ヨーロッパ特許庁が国際調査を行った国際出願はヨーロッパ特許庁が国際予備審査を管轄することになっていることに基づきます(後藤「国際出願と優先権」発明協会 昭和61年 112頁参照)。
 このような2以上の国際調査機関による管轄もPCT規則35によって認められています。従来は、日本国特許庁を受理官庁とした場合、英語によるものは年間200件までをヨーロッパ特許庁が管轄し、それを超えた場合と日本語によるものは日本国特許庁が管轄するようにしていました(現在は英語によるものはいずれかを選択できます。)。このような取扱いもまたPCT規則35.2(a)(ii)により許容されています。
 なお、平成28年4月1日からは、シンガポール知的財産庁(IPOS:Intellectual Property Office of Singapore)も、日本国特許庁を受理官庁とする英語による国際出願について、管轄国際調査機関(及び管轄国際予備審査機関)となっていますので(平成28年3月1日特許庁告示4号) 、管轄受理官庁は、日本国民等にとっては3つになっていますよ。

【外国に居住する外国人がした国際出願についての国際調査機関としての日本国特許庁】
 ところで、上で少し述べましたが、国際出願法第21条により、日本国特許庁は、特定の外国国民が自国を受理官庁として提出した日本語又は英語の国際出願についても国際調査機関としての役割を担っています。国際貢献のためですね。ですが、当該出願人である外国国民と国際調査機関としての日本国特許庁との間の手続についてはPCT及びPCT規則の定めるところであり、国際出願法が定める領域ではないのです。
 この点は、法8条1項の国際調査の対象を「第4条第1項若しくは第3項又は第5条第2項の規定による認定をした国際出願」と規定して、わが国特許庁により国際出願日の認定がされた国際出願のみが法8条の対象となっていることからも明らかというわけですね。

 この点について具体的な現状を補足すると、韓国を受理官庁とする日本語又は英語で出願されるものと、米国、アセアンの加盟国8カ国(フィリピン、タイ、ベトナム、シンガポール、インドネシア、マレーシア、ブルネイ、ラオス)を受理官庁とする英語による国際出願については、わが国が国際調査を行うことができることになっています(出願人が日本国特許庁を国際調査機関として選択した場合)。

 したがって、これらの場合、当該外国国民が国際調査機関としての日本国特許庁との間で手続をする場合には、適用される法文はPCT及びPCT規則であり、国際出願法ではありません。なので、もし我々がこれらの人々の代理人になったとしたら、特許庁に対する手続とはいえ、PCT及びPCT規則を直接適用することになるので適用される条文を間違えないようにしましょう(ただ、国際出願法はそもそもPCT及びPCT規則に基づく法律なので、実質的に国際出願法から外れる手続となるわけではないですけどね。)。

 なお、その話の前提として、そもそも、国際出願法が定める領域ではない手続に関して日本の弁理士が代理人になれるのか否か、国際出願法の適用がない国内居住者ではない外国人は、日本国内の代理人なしで特許庁に直接手続をしてもよいのか(在外者ですが)、等、代理人に関しては、法16条の解説をするときに詳細を述べることにします。

 国際出願法は、対外的には条約の枠を超えることができません。国際出願法は国内法ですが、国内法の解釈の枠外にある場合と国内法を適用してよい場合とがあります。
 条約(PCT)、国際出願法、国内法とがいったりきたりするところなので、頭を使わないといけないですね。

 なお、逐条解説には、審査官が国際調査を行うことにした理由が述べられています。「特許出願の審査に似ているから。」「特許庁長官が内部の職員に国際調査をさせることをPCTは禁止していないから。」だそうです。
 また、審査官に関して適用される条文は以下のとおりです。

■国願法第19条2項 特許法第47条第2項の規定は、国際調査及び国際予備審査に準用する。
■特許法第47条第2項 審査官の資格は政令で定める。→特許法施行令第4条
■国願法施行令第4条(審査官の資格) 特許法施行令第4条の規定は、国際調査及び国際予備審査に係る審査官の資格に準用する。
◆逐条解説国願法8条1項引用
『国際調査は、関連のある先行技術を発見することを目的とするものであり(PCT15条(2))、特許法上の出願審査における先行技術の調査に類似するものであること、PCTは国際調査機関である特許庁長官がその内部の職員に国際調査報告を作成させることを禁止していないことから、特許庁長官が審査官に国際調査報告を作成させることとしたものである。』

今日はここまで。

 ところでシンガポール知的財産庁も日本国民等がした国際出願について、管轄国際調査機関として選択できるようになっていたことは知っていましたか?
 以下のURLも見てみてください。

https://www.jpo.go.jp/torikumi/hiroba/ipos.htm
「日本国特許庁とシンガポール知的財産庁(IPOS)の間で昨年8月に合意した「官民連携型の審査能力向上プログラム」に基づき、日本国特許庁は、2016年4月1日以降に日本国特許庁を受理官庁としてなされた英語によるPCT国際出願について、出願人がIPOS をISA 及びIPEAとして選択することを可能とします。」(2016年3月1日特許庁HP)

 ではでは。

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国際出願法を見てみよう(7)

2016-08-15 18:21:16 | 条約
 今日は7条です。

(条文)
(取り下げられたものとみなす旨の決定)
第7条 特許庁長官は、国際出願が次の各号のいずれかに該当するときは、その国際出願が取り下げられたものとみなす旨の決定をしなければならない。
① 前条の規定により手続の補正をすべきことを命じられた者が同条の規定により指定された期間内に手続の補正をしなかつたとき。
② 第18条第2項(同項の表3の項に掲げる部分を除く。)の規定により納付すべき手数料が経済産業省令で定める期間内に納付されなかつたとき。
③ 第4条第1項若しくは第3項又は第5条第2項の規定による認定をした国際出願につき、経済産業省令で定める期間内に、当該国際出願が第4条第1項各号のいずれかに該当することを発見したとき。

【PCTとの対応】
 法7条1号はPCT14条(1)(b)、同条2号はPCT14条(3)(a)、同条3号はPCT14条(4)にそれぞれ対応しています。
 なお、PCT14条(3)(a)は、PCTにおいて指定国の指定と指定手数料を必要としていた頃から存在する条文であり、全指定となり指定手数料が廃止された現在においては、「いずれの指定国についても第4条(2)にいう所定の手数料が」の箇所は空振りとなっています。同様に指定手数料が一部の国について支払われていない場合に指定の取下げを擬制するPCT14条(3)(b)も現在では適用の余地はありません。
 適用の余地のない条文はどんどん削って欲しいのですが、PCTは条文に手をつけずに規則だけで制度を改革していこうとするので、しかたがありません。母屋がどんどん古く寂れていく感じです。

 なお、PCT第27規則にて、PCT14条(3)(a)の「第3条(4)(iv)にいう所定の手数料」とPCT14条(3)(b)の「第4条(2)にいう所定の手数料」の定義を設けていますけど、この規定は、従来、国際出願手数料が、基本手数料と指定手数料とに分かれていた時代に、第4条(2)にいう手数料を指定手数料と規定していたものをこのように修正して、条文との乖離を吸収しようとしているに過ぎません。全く気にする必要のない条文で、単に体裁を整えているにすぎません。試験にも絶対に出ません。

【法7条の内容】
 国際出願法第7条は、1号では、前条の補正命令に応じなかった場合、2号では、手数料を納付しなかった場合、3号では、国際出願日を認定した国際出願について、国際出願日認定要件違反を発見した場合を規定しており、各号に該当する場合には国際出願の取下げを擬制する旨を規定しています。具体的には以下のとおりです。
 特許法と異なり、「取り下げられたものとみなす。」というだけではなく、「取り下げられたものとみなす旨の決定をしなければならない。」ということになっており、特許庁長官による決定ということになっています。「決定」だから行政処分ゆえ、不服申し立てができ・・・ません。条約に基づくものですから。

 ここで、法7条各号は、それぞれ定められている期間が異なる点に注意したいところです。
 法7条1号は、法6条各号の補正命令に対し、補正命令から2箇月以内に応じなかった場合に該当することになります(PCT規則26.1、26.2)。
 そして、PCT規則26.2の期間内に補充が提出された場合には、受理官庁は補充された国際出願が取り下げられたものとみなすべきであるかどうかを決定することになります(PCT規則26.5本文)。ただし、PCT第11規則に定める様式上の要件が国際公開が適度に均一なものであるために必要な程度にまで満たされている場合には取り下げられたものとみなさないことになっています(PCT規則26.5ただし書)。


 法7条2号は、手数料納付の補正命令の日から1月以内に(施規32条)、納付しなった場合に該当することになります。国際予備審査の手数料について規定している箇所を除き、法18条2項の手数料の納付が必要であるところ、国際出願が特許庁に到達した日から1月以内に納付しなかった場合には、手数料納付が命じられることになっています(施規31条の2)。
 PCTにおける国際出願の手数料の根拠は、第14規則の送付手数料、第15規則の国際出願手数料、第16規則の調査手数料ですね。これもPCTでときどき出題されています。
 これらの手数料は、国際出願の受理の日から1箇月以内に支払うものとされており(PCT規則14.1(c)、15.3、16.1(f))、期限内に支払われていない場合には、受理官庁は、求めの日から1箇月以内に支払うよう求めることになっています(PCT規則16の2.1(a))。

 法7条3号は、国際出願日が認定された後、国際出願日から4月以内に(施規33条)、国際出願日認定要件に違反することを特許庁長官が発見した時に該当することになります。この規定は短答式試験では非常によく出題されるので注意しておきたいところですね。
 ただし、法7条3号の場合は、特許庁長官は、法第7条第3号に該当するものとして国際出願が取り下げられたものとみなす旨の決定をしようとするときは、あらかじめその旨及び理由を出願人に通知しなければならず(施規35条2項)、出願人は、通知を受けたときは、通知の日から2月以内に、特許庁長官に対し、抗弁書を提出することができることになっています(施規35条3項)。この取扱いはPCT規則29.4に基づくものです。

【その後の手続】
 そして、特許庁長官は、国際出願が取り下げられたものとみなす旨の決定をしたときは、その旨を出願人に通知しなければならない(施規35条1項)。PCT上の根拠は、PCT規則第29規則にあります。取下擬制となった場合には手数料が一部返還されます(施規35条の2)。手数料の返還については、PCT規則15.4、16.2に根拠となる規定があります。

【PCT上の扱い】
 国際段階としては、国際出願が取下擬制となった場合には、PCT24条(1)(ii)により、各指定国において国内出願の取下げと同一の効果をもって消滅することになります。
 ただし、各指定国においてはPCT25条の検査の対象となります。検査については、もし日本での権利化を目指すなら、特184条の20を使ってみなし特許出願での挑戦ということになりますね。

 そうすると指定官庁日本対受理官庁日本の対決ということになります。

 指定官庁としての特許庁が、受理官庁としての特許庁の判断に瑕疵があると判断したりしたら、それはもう大ニュース。
 指定官庁と受理官庁がとても仲が悪く、これ以上、とても一緒にやっていけそうもないと思ったりすると、一部のメンバーが解散を希望したりすることになってしまうかもしれませんね。いや、それはありません。

 ではまた。
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国際出願法を見てみよう(6)

2016-08-14 17:50:23 | 条約
 今日は国際出願法6条を見てみましょう。

(条文)
(補正命令)
第6条 特許庁長官は、国際出願が次の各号の一に該当するときは、相当の期間を指定して、書面により手続の補正をすべきことを命じなければならない。
① 願書が日本語又は第3条第1項の経済産業省令で定める外国語で作成されていないとき。
② 発明の名称の記載がないとき。
③ 図面(図面の中の説明に限る。)及び要約書が明細書及び請求の範囲と同一の言語で作成されていないとき。
④ 要約書が含まれていないとき。
⑤ 第16条第3項の規定又は第19条第1項前段において準用する特許法(昭和34年法律第121号)第7条第1項から第3項までの規定(第19条第1項後段の政令でこれらの規定の特例を定めたときは、当該特例に係る当該政令の規定)に違反しているとき。
⑥ 経済産業省令で定める方式に違反しているとき。


 国際出願法第6条は、PCT14条(1)(a)及びPCT14条(1)(b)前段に基づき、国際出願の欠陥の点検及び欠陥がある場合の補充についての規定ですね。具体的には法6条各号に該当するときは、特許庁長官による補正命令となる。これに応じない場合には取下擬制となる(7条1号)。
ということです。

 弁理士試験の短答式試験では、「発明の名称がないとき」と「要約書が含まれていないとき。」がよく出題され、さらに、国際出願法独自マターとしては法6条5号に該当する場合についてよく問われていますよ。なお、特許庁の説明会資料によれば、「発明の名称がないとき」に限らず、国願法施規17条様式8備考4(PCT規則5.1(a))にある「明細書には、願書に記載されている発明の名称を冒頭に表示する」に反するような場合も補正命令となっているようです。

 ま、要は、法6条6号に基づき、国願法施規様式備考で規定するような様式違反の場合は補正命令の対象ということのようですので、規定からだけ見れば方式チェックはわりとうるさそうな感じを受けますね。ただ、PCT規則によれば、国際公開が適度に均一なものであるために必要な程度に満たされているか否かのみ点検することになっており(PCT規則26.3)、PCT規則の第11規則の要件がその程度に満たされている場合は、補充の求めを発出することを要しないとされているので(PCT規則26.3の2)、日本国特許庁は厳しいかもしれないのですが、わりと甘い受理官庁も世の中にはありそうです。
 ただし、特許庁が厳しくしようが甘くしようが、これらの補正命令は、第4条の補完命令と異なり国際出願日の繰り下げにはならないので、補正命令があれば、単に対応すればよいだけですけどね。

 以下は、PCT規則26.3とPCT規則26.3の2の規定の内容です。

PCT規則26.3 第14条(1)(a)(v)に規定する様式上の要件の点検
(a) 受理官庁は、国際出願が国際公開の言語で行われた場合には、次のことを行う。
(i) 国際出願について、第11規則に定める様式上の要件が、国際公開が適度に均一なものであるために必要な程度にまで満たされているかいないかのみを点検すること。((ii)以下略)
26.3の2 第11規則の規定に基づく欠陥の補充の第14条(1)に規定する求め
 受理官庁は、第11規則に定める様式上の要件が、26.3の規定によつて必要とされる程度にまで満たされている場合には、同規則の規定に基づく欠陥の補充をするよう第14条(1)(b)に規定する求めを発出することを要しない。


 さて、法6条で定める「相当の期間」は国願法施行規則で規定していません。が、PCT規則26.1及び26.2に規定があり、さらに、PCT規則26.1には、意見を述べる機会を出願人に与える旨規定しています。そしてなぜかその点について(意見を述べる機会)だけは国願法施規30条の2に対応する規定があります。
 なお、PCT規則26.2には、指定した期間は、決定が行われる前はいつでも、受理官庁が延長することができる旨も規定されているのですが、これについては対応する国願法施規はないようです。が、PCT規則にある以上は、受理官庁としての特許庁が延長することは自由です。

 以下は、PCT規則26.1と26.2の規定の内容です。

PCT規則26.1 第14条(1)(b)の規定に基づく補充の求め
 受理官庁は、第14条(1)(b)に規定する補充の求めを、できる限り速やかに発出する。この場合において、国際出願の受理の時から1箇月以内に行うことが望ましい。当該求めにおいて、当該受理官庁は、出願人に対し、26.2に規定する期間内に、必要とされる補充書を提出するよう求め、かつ、意見を述べる機会を出願人に与える。
PCT規則26.2 補充のための期間
 26.1に規定する期間は、補充の求めの日から2箇月とする。指定した期間は、決定が行われる前はいつでも、受理官庁が延長することができる。


 もう少し法6条を見てみると、PCT14条(1)(a)と国際出願法第6条各号は必ずしも対応がとられていないことがわかります。
 特に、法6条5号は、PCT14条(1)(a)に基づくものではなく、PCT27条(7)による、当該受理官庁に対して出願人を代理する資格を有する代理人によつて出願人が代理されるという要件に関する限り、国内法令を適用することができる旨の規定を受けて、法16条3項と準特7条1項から3項に違反する場合に補正令名の対象としているものです。

 この場合の補正命令は、PCT14条(1)(a)に基づくものではないため、この場合の指定期間については、補充の求めの日から2箇月というPCT規則26.2の規定が直接適用されるものではないわけですが、その他に何らかの国内規定はないことから、求めの日から2箇月ということで把握してよさそうです。(逐条解説も法6条5号についての指定期間について特に他の規定と区別して言及することをしていません。さらに特許庁説明会資料も当然のように2月としています。)

 結構、国際出願法の条文を見ると、「これはPCTの規定そのもの」と一瞬思ったりするのですが、細かく見るとちょっと違っていたりして、その違いが短答式試験で出題されていたりすることがわかりますよ。

 では。
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国際出願法を見てみよう(5)

2016-08-13 18:11:35 | 条約
 さて、国願法5条です。国願法からPCTを眺めてみるといろいろなことに気づきますね。弁理士試験・短答式試験の条約へのアプローチ(ただ、PCT限定ですが)としても有効に思います。

条文
(同前)
第5条 特許庁長官は、国際出願において、その国際出願に含まれていない図面についての記載がされているときは、その旨を出願人に通知しなければならない。
2 特許庁長官は、前項の規定による通知を受けた者が経済産業省令で定める期間内に同項の記載に係る図面を提出したときは、その図面の到達の日を国際出願日として認定しなければならない。


 この条文はPCT14条(2)そのものです。短答式試験の本試では、国際出願に含まれていない図面にについての記載がされている場合にその旨を通知し、その通知を受けてから2箇月以内に図面を提出した場合には、「図面の到達の日」が国際出願日となることを問う問題がよく出ます。
 また、図面を提出しなかった場合には、図面は提出されなかったものとして扱われることになります。この点は、国際出願が取り下げられたものとみなされるわけではない点が、昔の本試では何回か問われましたが、最近でも平成26年に問われています。PCTとしての出題でもその旨の出題が多いです。この条文も国際出願法だけおさえておけばよさそうですね。

 ただし、この規定は不足図面があった場合の取扱いのPCTの規定に基づく場合を規定しているのみで、従来は、国際出願日が繰り下げる唯一の場合とされていましたが、現在では、PCT規則レベル(国際出願法施行規則レベル)では現在はさらに別の要素が加わっていて、条文だけでは心もとない状況になっています。現在では従来からのものを含めて以下のような場面があります。

1.明細書又は請求の範囲が全く含まれていない場合
2.明細書又は請求の範囲の一部が欠落している場合
3.(明細書等で言及はあるが)図面が全く含まれていない場合
4.(明細書等で言及はあるが)図面の一部が欠落している場合

 本条(すなわちPCT14条(2))は、上記のうち3と4の場合の規定です。また、上記1の場合は国際出願日認定要件が満たされていないため補完命令になることは先日述べました(言語が日本語又は英語でない場合にも補完命令でしたね)。
 現在は、図面の全部又は一部欠落の取扱いを規定する法5条における注意喚起にとどまらず、さらに上記2の明細書又は請求の範囲の一部欠落の場合を含めて、明細書又は図面の一部がない場合と、図面の全部又は一部がない場合を同列に扱っています。
 規則レベルでは、欠落部分の補充(PCT規則20.5(a)(i))又は引用補充(PCT規則20.5(a)(ii))を求めることになっています(施規29条の6第1項)。出願書類を提出した日から2月以内の自発補完も可能である(施規29条の7、PCT規則20.5(b)、20.7(a)(ii))

 一方で、国願法17条には、国際出願日認定要件違反の場合の手続補完命令や、本条の国際出願に含まれていない図面がある旨の通知前に出願人が自発的に提出した場合には、命令や通知を受けたことにより執った手続とみなす旨の規定があり、施行規則72条には、そのような自発的な補完や提出は、出願書類を提出した日から2箇月以内にした自発手続のみ有効である旨の規定があります。これらは上述のPCT規則と意味的には同じです。法17条は法4条2項と法5条1項にしか対応していない点では、規則によって補完されているといえるでしょう(つまり、法律の条文がなくても、PCT規則及び国願法施行規則がより広範な範囲をカバーしている状態にあるという感じです)。

 ただ、これらの点については、平成27年改正法特38条の2第9項及び特許法施行規則27条の9で特許出願日の認定手続に全く同じ規定ができたことで、国際出願の場合や特許出願の場合とでは扱いに差がなくなったことから、理解がかなり容易になったといえますね。1個の知識で3倍使えますね。

 ではまた。
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国際出願法を見てみよう(4)

2016-08-11 17:55:55 | 条約
 国際出願法4条の規定は以下のとおりです。

条文
(国際出願日の認定等)
第4条 特許庁長官は、国際出願が次の各号のいずれかに該当する場合を除き、国際出願が特許庁に到達した日を国際出願日として認定しなければならない。
① 出願人が第2条に規定する要件を満たしていないとき。
② 前条第2項第1号に掲げる事項の記載がないとき。
③ 出願人の氏名若しくは名称の記載がなく、又はその記載が出願人を特定できる程度に明確でないと認められるとき。
④ 明細書又は請求の範囲が含まれていないとき。
⑤ 明細書及び請求の範囲が日本語又は前条第1項の経済産業省令で定める外国語で作成されていないとき。
2 特許庁長官は、国際出願が前項各号のいずれかに該当するときは、相当の期間を指定して、書面により手続の補完をすべきことを命じなければならない。
3 特許庁長官は、前項の規定により手続の補完をすべきことを命じられた者が同項の規定により指定された期間内に手続の補完をしたときは、手続の補完に係る書面の到達の日を国際出願日として認定しなければならない。


 これはPCTでは最もポピュラーな「国際出願日の認定要件」の話になります。PCT11条(1)、PCT11条(2)(a)、PCT11条(2)(b)が対応する規定ということになりますね。条文は以下のとおりです。
 
PCT第11条 国際出願日及び国際出願の効果
(1) 受理官庁は、次の要件が受理の時に満たされていることを確認することを条件として、国際出願の受理の日を国際出願日として認める。
 (i) 出願人が、当該受理官庁に国際出願をする資格を住所又は国籍上の理由により明らかに欠いている者でないこと。
 (ii) 国際出願が所定の言語で作成されていること。
 (iii) 国際出願に少なくとも次のものが含まれていること。
  (a) 国際出願をする意思の表示
  (b) 少なくとも1の締約国の指定
  (c) 出願人の氏名又は名称の所定の表示
  (d) 明細書であると外見上認められる部分
  (e) 請求の範囲であると外見上認められる部分

 短答試験に最もよく出るのは、PCT11条も同じですが、国際出願日には発信主義が適用されず、到達主義となっている点です。この点は国願法では「到達した日」、PCT11条は、「受理の日」という表現の違いがあるものの、同じことを規定しています。
 また、これらに瑕疵があると、日本国特許庁からは手続補完命令が発せられ、応じた場合には、補完書提出日が国際出願日となります。この点は、平成27年改正後の特許法38条の2と同じ扱いになったので、話はより簡単になりました。
 ちなみに補完命令に応じないとどうなるかについては、国願法は施行規則25条で、「国際出願として取り扱われない旨の通知」が着ます。PCT規則20.4(i)に基づく取扱いとなります。
 なお、一部欠落については国願法施規29条の6から29条の10にその取扱いが規定されていますが、これらはPLTに基づいて改正された特許法38条の4と同じ扱いになりますので、理解が非常に容易になりました。

 さて、それ以外の条文レベルでこの国願法4条とPCT11条の規定とは若干違っている箇所があります。その違っている点とその根拠を確認しておきましょう。


相違点1. PCT11条(1)(ii)は単に「所定の言語で作成されていないこと」と規定されているのみなのですが、法4条1項5号では、明細書及び請求の範囲が日本語又は省令で定める言語(英語)でない場合には、国際出願日が認定されず、手続補完命令となる旨が規定されている点が異なります。つまり国願法の方がより詳しい内容になっています。この場合の補完命令に対しては、出願人は日本語による翻訳文を提出しなければならないことになっています。

 →この取扱いは、PCT11条(1)(ii)に関しては、PCT規則20.1(c)により、明細書及び請求の範囲が受理官庁が認める言語で作成されていれば、要件を満たすことになっていることに基づいています。
 →明細書と請求の範囲だけが問題なので、願書の言語が日本語又は英語でも国際出願日認定要件に違反することにはなりません。

相違点2.PCT11条(1)(iii)(b)には指定国の記載が求められていますが、国願法にはありません。

 →この相違は、法3条で述べたように、平成15年の一部改正により、国際出願の願書の記載要件である国の指定が削除されたことに伴い、2号から指定国の記載の要件を削除したことに基づきます。

相違点3.PCT11条(1)(iii)(c)は、単に「出願人の氏名又は名称の所定の表示」と規定されているのみですが、法4条1項3号では、「出願人の氏名若しくは名称の記載がなく、又はその記載が出願人を特定できる程度に明確でないと認められるとき。」と規定されている点が異なっています。

 →この取扱いは、PCT規則20.1(b)において「出願人の氏名若しくは名称の記載が、誤つて綴られている場合、そのすべての名が記載されていない場合又は法人にあつてはその名称の記載が略称で若しくは不完全に行われている場合であつても、出願人の氏名又は名称の記載は、当該出願人の同一性を確認することができるように行われているときは、第11条(1)(iii)(c)の規定の適用上、十分なものとする。」とされていることを、国願法では、4条1項3号で明文化したことに基づくものです。

 PCT11条よりも、PCT規則の内容を取り込んでいる国願法の法が少し詳しくなっていますが、その詳しい内容にまで短答の試験は及んでいますので、国際出願日認定要件については、国願法でおさえておく方がよいと思います。
 例えば、『「出願人を特定できる程度に出願人の氏名又は名称が明確に記載されていること」は国際出願日認定要件に該当する。』という選択枝は、PCTの条文だけからはなんともいえませんが、国願法4条1項3号で明らかに「正しい」ということになります。PCT規則20.1(b)の知識がなくても正解を明らかに出すことができますね。昭和の時代にはこのような問題が国願法として出題されていましたね。

 ではまた。



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国際出願法を見てみよう(3)

2016-08-10 15:36:01 | 条約
 ちょっと間があいてしまいましたが、国願法3条を見てみましょう。

条文

第3条(願書等)
 国際出願をしようとする者は、日本語又は経済産業省令で定める外国語で作成した願書、明細書、請求の範囲、必要な図面及び要約書を特許庁長官に提出しなければならない。
2 願書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
① 当該出願を条約に従つて処理すべき旨の申立て
② 出願人の氏名又は名称並びにその国籍及び住所又は居所(出願人が2人以上ある場合にあつては、日本国民等である出願人のうち少なくとも1人の国籍及び住所又は居所)
③ 発明の名称
④ 前各号に掲げるもののほか、経済産業省令で定める事項
3 明細書、請求の範囲、図面及び要約書に記載すべき事項その他これらの書類に関し必要な事項は、経済産業省令で定める。

 条文は以上のとおりです。国願法3条は、PCT3条、4条に基づいて規定されており、法3条1項は、国際出願の要素と国際出願の言語、2項は願書の記載事項、3項では、書類の記載内容について省令に委任する旨を規定していますね。

 法2条は、日本を受理官庁とする国際出願の「主体的要件」を定めていましたが、法3条は、日本を受理官庁として日本国民等が国際出願をするにあたり、「言語」と「国際出願に必要な要素」を規定し、さらに、「願書の記載事項」及び国際出願の要素である「明細書、請求の範囲、図面及び要約書」に関しては必要な事項は省令に委任する旨規定しているというわけです。
 ま、このあたりは、別に何の問題もないのですが、国際出願法はPCT及びPCT規則に基づいて規定されているわけですが、PCTの規定と違うところがあるので、その違いの詳細を把握しておきましょう。


1.PCT4条(1)(ii)の「締約国の指定の規定」が、国願法3条には存在しない!

→これはご存知の方が多いと思いますが、平成15年改正からのPCTの劇的な改革に基づいています。それ以前は、国際出願をするにあたり、PCT4条(1)(ii)にあるとおり指定国をいちいち指定して国際出願をしていたのですが、この「PCTリフォーム」により規則で制度を改革していこうという流れから、条約の条文はそのままに規則でどんどん制度を変えていくことにしたのです。
 その結果、願書の提出はすべての締約国の指定を意味する旨の規則を設けることにして(PCT規則4.9)、願書にいちいち指定国を書かなくてもよくなりました。PCTの条約は条文がそのまま残っているのですが、「国を指定する」という概念自体は条約の条文にありならが、規則で願書を提出すればすべての締約国を指定したということにする、というわけです。
 国内法としては、実際に願書に指定国を書く必要はなくなったので、願書の必須記載事項から「締約国の指定」は削除する改正がおこなわれました。その結果、この点についてはPCTの条約の条文と、国際出願法では齟齬を生じています(が、そのあたりのことで問題が生ずるというわけではないです。)

2.PCT4条(1)(iii)では、単に「出願人及び、該当する場合には、代理人の氏名又は名称並びにこれらの者に関するその他の所定の事項」となっているのに、国願法3条2項2号では「出願人の氏名又は名称並びにその国籍及び住所又は居所(出願人が2人以上ある場合にあつては、日本国民等である出願人のうち少なくとも1人の国籍及び住所又は居所)」というように規定されており、一致していない!

→国願法3条2項2号では「国籍及び住所又は居所」が願書記載事項となっていますが、PCT4条の規定には「国籍及び住所又は居所」が願書記載事項になっていないのは、国籍及び住所又は居所は、「その他の所定の事項」ということで規則4.5で記載の義務付けがされています。
→さらに国願法の場合は、「2人以上の場合は、日本国民等である出願人のうちの少なくとも1人の国籍及び住所又は居所」というかっこ書がついていますが、これは、PCT規則26.2の2(b)で、国際出願の欠陥に関しては、少なくとも1人の記載があればよいということになったので、国願法ではこれを取り込んで願書記載事項としたものです。

 国際出願法の規定とPCT及びPCT規則の規定は整合がとれていなければならないはずなので、違いがあると困りますね。上記の違いは実質的な違いにはなっていなので、その旨を根拠とともに確認しました。
 PCTでは規則マターでも、国願法では法律マターになっているようなところは、PCT規則のレベルでも正確に把握しておく必要がありますね。
 ではでは。

 
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国際出願法を見てみよう(2)

2016-08-04 22:27:32 | 条約
 今日は国際出願法第2条を見てみましょう。

【条文】
第2条(国際出願)
 日本国民又は日本国内に住所若しくは居所(法人にあつては、営業所)を有する外国人(以下「日本国民等」という。)は、特許庁長官に条約第2条(ⅶ)の国際出願(以下「国際出願」という。)をすることができる。日本国民等と日本国民等以外の者が共同して国際出願をするときも、同様とする。

 まあ、この条文は、管轄受理官庁としてわが国特許庁に国際出願をする場合の主体的要件を規定しています。PCT9条(出願人)、PCT10条(受理官庁)、規則18(出願人)、規則19(管轄受理官庁)の各規定に基づくものですね。このあたりは単発の知識で十分なので簡単です。
 本規定は、具体的には、特許庁長官に国際出願をすることができるのは、日本国民又は国内居住外国人であると規定しており、「日本国民」なので、外国に居住する日本国民であっても、法2条の適用を受けることができます。

 ちなみに、今年の短答の問題はここから出ましたね。
【問題】 日本国内に住所又は居所(法人にあっては、営業所)を有しない外国人と日本国民が共同して国際出願をする場合、日本国民が代表者であるか又は筆頭出願人でなければ、特許庁長官に対し国際出願することは認められない。

→解答としては、代表者であるか又は筆頭出願人でなければ・・・認められない、ということはないので誤りということになります。H28〔条約06〕(イ)の問題でした。「代表者であるか又は筆頭出願人でなければ」のような限定はどこにもないので、何のためにこのような限定をつけているのか不思議に思う人がいるかもしれませんが、これを解くカギは、以下の青本の記載ということになるでしょう。

青本国願法2条『なお、本法律制定時、2人以上の出願人がある場合について、日本国民等が出願人の代表者であるか、又は筆頭出願人でなければ、特許庁長官に対し国際出願することは認められず、その条件はPCT規則19.2に規定されていたことから、本条後段において、日本国民等と日本国民等以外の者が共同して国際出願ができる場合として、「日本国民等を代表者とするときその他経済産業省令で定める要件に該当する」場合を規定していたが、PCT規則19.2が前述のような規定に改正されたことに伴い、平成15年の一部改正において、これを整理したものである。』

 さかのぼること16年前には以下の問題が出題されています。
【問題】 国際出願を日本国においてすることができるのは日本国民又は日本国内に住所若しくは居所(法人にあっては営業所)を有する外国人(以下「日本国民等」という。)であるが、日本国民等以外の者であってこの条約の締約国に住所又は居所を有する者は、日本国民等を代表者としない場合であっても、日本国民等と共同して国際出願を日本国においてすることができる。

→日本国民等を代表者としない場合であっても、という限定がある点が今年の問題とそっくりですね。出題当時は、「代表者としない場合であっても、筆頭出願人とすればできる」という方向性で考える問題だったものが、今では、今年の問題と変わるところはないですね。
 改正前の条文の条件を入れておいて、改正後の条文で解かせるという問題は、よく見られる手法ですね。

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国際出願法を見てみよう(1)

2016-08-03 17:54:09 | 条約
 近年の弁理士試験は、短答式試験において条約が10問出題されることになっていますね。
 特許居力条約(PCT)は、今は規則までカバーしておかないと話にならない状況になっているため、準備の仕方がかなり難しい上、ここ数年は国際出願法から1問出題されている現状にあります。PCTが4問、国際出願法から1問、特許法第9章から1問という内訳ですね。
 国際出願法の出題数は少ないですが、PCTがまず基本にあるため、国際出願法はその付録のような位置づけで勉強せざるを得ないので、PCTが全然できていない状況ではとても国際出願法まではとても手が回らないのではないでしょうか。
 そこで、吉田ゼミのブログでは、国際出願法をちょっと見てしまおうと思います。ちなみに国際出願制度の趣旨は平成28年の論文試験でも出題されていました。

 それではまず国際出願法1条
【条文】第1条(趣旨)
 この法律は、1970年6月19日にワシントンで作成された特許協力条約(以下「条約」という。)に基づく国際出願、国際調査及び国際予備審査に関し、特許庁と出願人との間における手続を定めるものとする。

 この1条に書いてあるとおり、国際出願法は、日本国特許庁と出願人との間における手続を定めています。
 具体的には、出願人が、受理官庁、国際調査機関、国際予備審査機関としての特許庁へ行う手続や、逆に、受理官庁、国際調査機関、国際予備審査機関としての特許庁が出願人に対して行う手続は、この法律に基づいてなされることになります。だからその範囲ではPCTをカバーしていると考えてよいです。
 逆に、国際出願法は、国際事務局や他の国の特許庁についての手続は一切規定していなません。例えば、日本国民等が国際事務局やヨーロッパ特許庁へ手続をするような場合について、国際事務局やヨーロッパ特許庁からの出願人への手続は、国際出願法では規定されていません。それらはすべて、PCTの規定に基づいて行われることになるわけですね。
 また、日本国特許庁と国際事務局との間の手続や、国際事務局が行う国際公開、指定官庁や選択官庁等への書類の送達等についても、すべてPCTの規定に基づいて行われることになっているので、国際出願法では何ら言及がありません。
 さらに、国際出願をして受理官庁として日本国特許庁が国際出願日を認定したとしても、その認定による条約上の効果や、指定国や選択国における効果も国際出願法は何ら定めはなく、日本が指定国、選択国になる場合には、指定国、選択国としての特許庁に対しては、国内法である特許法第9章に従って手続をすることになるという、みなさんも良く知っているところにつながるわけです。

 そんなところから、こんな問題があります。
 
(1)二人以上の出願人が受理官庁としての国際事務局(以下、「RO/IB」という。)に国際出願をする場合、出願人全員が日本の国民である場合であっても、国際出願をする手続きに関しては「特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律」は適用されない。

【解答】○ 簡単ですね。国際事務局との間の手続になりますからね。H16〔41〕4の問題でした。

(2)国際出願法は、出願人と特許庁、国際事務局と特許庁との手続を規定している。

【解答】× これも簡単ですね。国際事務局と特許庁の間の手続は、国際出願法では規定していません。PCTの規定に基づきますね。これはH04〔31〕1の問題でした。

 これ以外にも「国際出願法上の特許庁は、特許協力条約に規定する受理官庁、国際調査機関及び国際予備審査機関である。」とか、「国際出願法は、その規定に従って国際出願日が認定された国際出願の各指定国における効果については定めていない。」などのような問題が平成元年に出題されていたりしています。法1条から出題されるというのは面白いですね。

 今日はこれで。

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平成28年度弁理士試験論文式試験問題と論点

2016-07-04 15:05:17 | 2016論文試験
特許庁HPに昨日の論文試験の問題と論点が掲載されましたね。
論文試験を受験された方、お疲れさまでした。
口述試験が残っているのでもうひと頑張りですね。

平成28年度弁理士試験論文式筆記試験(必須科目)問題及び論点(特許庁HP)
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