中村典子先生(京都市芸術大学音楽学部准教授・作曲家)作・音楽の
モノオペラ『時の輪(Time's Ring 』
で、よし笛トゥッティが葦笛を演奏する。
トゥッティが吹く笛を一般的によし笛と呼んでいるが、同じ楽器でも能管、篠笛と肩を並べて葦笛と呼べば、格が上がったような気がする。
近く、三井寺の庫裡のひとつで古庭園が美しい「元・正厳坊」で催される
「森本英希フルート・ライブ」
に賛助出演して、葦笛で演奏する。
モノオペラ、いわば”ひとり芝居”。
左義長の火祭りが行われる琵琶湖畔の村での、小学生の女の子、藤実と琵琶湖をわたってきた風の少年のほのかな愛の物語。
~◇~
どーっ、風とともに少年がきて笛を吹く。ヒィーヒャー。
藤実のランリュックの鈴がチリンとなった。
藤実の手に真珠があった。少年がくれたのだ。
どうーっ、風が吹いた。少年の姿はそこになかった。もうじきお祭り。笛の練習たけなわ。
ヒー ヒロヒロヒロヒー ロー
ロー ロフロフロフロー ルー
ルー ルムルムルムルーゴー
藤実は少年の姿を見つけるが、いつの間にか見失う。
藤実はふで箱に入れていた真珠をにぎりしめ、小テストをがんばる。
祭りの朝。 ミソラーソーミー ミソラーソ ラーソーミー
みんなの笛の中に少年がいる。 ヒー ヒロヒロヒロヒー ロー
左義長はすんだ。
藤実は、あさの光に向かってお祈りした。「いつか出あえる日まで」
ときの輪がきらりと光り空のそこから風がふきわたった。
ときの輪に吹く風が空のすべてを集めて、みずうみをわたり、お宮に吹く。
かおるフジのふさを風がゆらした。
ときの輪の向こうの朝の空に、小さな星がひとつ光っていた。=完=
(以上、梗概)
~◇~
「1本の線を多声にひらく ”ヘテロホニックな音楽” をこころみる」のだという。
「曲のラストはロングトーンを吹ききるまで伸ばしテ(ドローン)次の音へ。その音を吹ききって、元の音へ」
幸いにも、今春、京都芸大へ進学したよし笛トゥッティの泉佳穂さんがいる。
中村先生は、彼女と連絡を取り合って、よし笛を聞きながら、新たに設計図を書き直すのだという。
よし笛トゥッティは、中村典子先生作曲の『川のほとりのこもりうた』『光』『抱容』『かしの木のうた』と『ときのわ』を演奏する。
「森本英希フルート・ライブ」は、後編へつづく。