スウェーデンの今
スウェーデンに13年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員。ヨーテボリ大学経済学部でも講師として勤務




スウェーデンの通貨であるクローナがここ数週間で急落している。

例えば、対日本円で見てみよう。
下のグラフは、1クローナ=??円というレートの、今年の初めから先週までの推移を示したグラフだが、これまで安定的に(若干、円安ぎみに)推移してきたレートが、10週間くらい前から急激に円高傾向に推移している。


実はクローナの為替相場の下落は、に対してだけでなく、ドルに対しても、ユーロに対しても言える。

ということは、スウェーデンの経済が何か大きな構造的問題を抱えており、例えばアイスランド経済のようになりかねない、ということ?

幸い、真相はそうではない。

国際的な金融危機を受けて、世界の金融市場が大きく変動している中、これまで世界各国の国債や社債、株式など様々な金融資産に投資してきた人々が、リスクを減らすために、なるべく安定的で“大きな市場”で取引される資産に投資先を変更しているためのようだ。

世界経済が安定的に推移している間は、世界中の様々な資産に投資を分けることがリスクの分散につながる。しかし、嵐が吹いている間は、小さな国の市場は「波」に弱く、資産価格が乱高下を繰り返しかねない。投資による収益も大きく上下し、ポートフォリオのボラティリティー(volatility)が高まることになる。こういうときは、小さな「船」に乗っているよりも大きな「船」に乗り替えたほうが、リスクを最小限に抑えることができる。そこで投資家は、これまでスウェーデンのような比較的小さな経済の資産(国債・社債・株式等)に投資をしていた部分を、アメリカや日本、ユーロ圏など、大きな経済の資産に移しているのである。その結果として、スウェーデン・クローナが売られ、ドルや円、ユーロなどの通貨が盛んに買われている

もちろん、現在の金融危機で大きな打撃を受けているのはアメリカであるから、アメリカ経済もいくら規模が大きいとはいえ、リスクが伴う。同様に、アメリカの金融危機の余波を大きく受けているヨーロッパ経済も、独・仏・英を初めとして銀行救済が大規模になされるなど、先行きが不透明だ。だから、規模が大きいヨーロッパ経済にもリスクが伴う。

その結果として、ドル・円・ユーロなどの「大きな通貨」の中でも日本円に人気が集中している、と言えるのだと思う。そのために、日本円はドルに対してもユーロに対しても急激に強くなっているようなのだ。

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下のグラフは、5つの通貨対スウェーデン・クローナの為替レートの推移を示したものだ。上に示した日本円のグラフとは逆で、下のグラフはそれぞれの通貨がスウェーデン・クローナに対してどれだけ高いか・安いかを、2008年の年初めの水準を1として、それ以降の推移を示している。そのため、1を上回っていれば、その通貨がスウェーデン・クローナに対して強くなっていることを示し、1を下回っていれば、逆に弱くなっていることを示している。


これを見れば分かるように、円・ドル・ユーロはともにスウェーデン・クローナに対して強くなっているのが分かる。(ユーロはDKK(デンマーク・クローナ)に隠れている。) なかでも、日本円がずば抜けて強くなっている

一方、NOK(ノルウェー・クローナ)は、スウェーデン・クローナに対して弱くなっているのがわかる。ノルウェーは、スウェーデンよりもさらに小さい国。だから、為替レートもスウェーデンよりさらに大きな影響を受けているのだろう。(原油に対する需要の減退、という要因もあると思う)

では、スウェーデンよりも小さいデンマークのDKKが、なぜユーロと一緒に強くなっているのか? 答えは簡単。デンマークの金融政策目標は、ユーロとの為替相場を一定に保つことであるため、為替レートを政策的にユーロに追随させているのだろう。

(それに対し、スウェーデンの金融政策目標は、インフレ・ターゲット(2%±1%)

いずれにしろ、短期的な変動に過ぎないかなと思う。(それとも、私の根拠のない勝手な期待?)


コメント ( 8 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
Unknown (kzkyano)
2008-10-20 08:31:10
はじめまして。この記事で最近のクローナ急落に関して少し理解出来た気がします。経済には疎いものでして…。素人的には底がどこか気になります。
 
 
 
円高 (Moder)
2008-10-21 08:21:06
初めまして。
日本ではわからないスウェーデンの最新のニュース、毎回興味深く読ませていただいています。
留学中の子供に送金するにあたり、この一週間のクローナの急落には驚かされました。スウェーデンの経済状態はどうなんだろう?と心配でした。
円高は嬉しいのですが、学費から医療費までお世話になっていることを思えば、喜んでばかりはいられません。


 
 
 
Unknown (Yoshi)
2008-10-21 08:34:49
kzkyanoさん、Moderさん

コメントありがとうございます。
欧米の金融危機が一段落するまで、しばらくこの傾向が続くのではないかと思います。私もこの機に円をクローナに替えておきたいと思っています。

スウェーデン経済にとっては、クローナ安は一般に輸出産業の国際競争力の向上になるので、景気回復を幾分早めてくれるでしょう。
 
 
 
円って、、、 (sugar high)
2008-10-22 01:47:05
こんにちは、
今日初めて記事を拝見させていただきました。スウェーデンの時事について詳しく書かれていてとても勉強になります。

ところで現在の金融危機の際に円に人気が集まっているのは本当だと思うんですけど、日本経済はアメリカ経済と連動している側面があると思いますし、トヨタなどの輸出も伸び悩むなど実体経済にも悪影響が出てきているように思えるのですが、それでも評価が高いのはなぜなんでしょうか。やはりそれ以前に銀行の資金が比較的潤沢であることが大きいんでしょうか。

コメントが遅いのですが、もしよろしければ教えてください。
 
 
 
Unknown (里の猫)
2008-10-22 03:24:23
なるほど。
最近円が高くなってきたのはどうしてかな、と思っていました。日本は未だ底力があるのでしょうか。何時も分かりやすい情報をありがとうございます。
 
 
 
Unknown (Yoshi)
2008-10-28 07:34:02
Sugar highさん、里の猫さん

>日本経済はアメリカ経済と連動している側面があると思いますし、トヨタなどの輸出も伸び悩むなど実体経済にも悪影響が出てきているように思えるのですが、それでも評価が高いのはなぜなんでしょうか。

>日本は未だ底力があるのでしょうか。

今日(10月27日)の記事の終りに少し触れましたが、現在の円高は、日本の実体経済の強さを反映したもの、というよりも、リスク管理のために世界中の投資家がポートフォリオの調整を行っているためだと思います。

日本の輸出産業がとてもかわいそうでなりません。
 
 
 
米ドル (マリオ)
2008-10-31 18:42:06
こんばんは。いつも情報満載なYoshiさんのブログ楽しみに読んでいるマリオです。早速ですが、本日はまた少し円高になってしまいましたね。米在住の身としてはとても複雑です。ところで、最近アメリカが新しい貨幣、Ameroという貨幣を作るという噂を耳にしました。そしてそれをドルの代わりにカナダ、メキシコ、アメリカで共通の貨幣にすると。。様々な情報が溢れかえっていて何を信じていいか解りません。ちなみに情報源は、こちらです。(http://video.google.com/videoplay?docid=1954933468700958565&hl=es)それと(http://d.hatena.ne.jp/hourou-33/20070824/1188267826

Yoshiさんはどう思われますか?

ついつい、情報に踊らされ冷静さを失いそうになります。。。ふぅ。


 
 
 
Unknown (Yoshi)
2008-11-04 09:31:00
面白い情報をありがとうございます。

いや、私には何とも答えられません。

おそらくかなり高い確率でデマではないかと思うのですが、CNNなどが伝えているのであれば、そのような動きがあるのかもしれません。実現しない可能性が高いと思いますが。
 
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