スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

EUの新しい温暖化対策目標 - 訂正と追加

2008-03-09 19:24:23 | スウェーデン・その他の環境政策
EUが今年1月に新しい温暖化対策プログラムを発表したことを、このブログでもお伝えしたけれど、どうやら間違いがあった。
20、20、20・・・ 。EUの新しい温暖化対策 (2008-01-26)

2020年までにEU全体で温暖化ガスの排出量を20%減、というのは、1990年比ではなく2005年比のようだ。(この点は、メディアでも情報が錯綜していたようだ)

さらに、この大枠の中でスウェーデンに課せられた2020年までに17%減、という目標も1990年比ではなく2005年比になる。そのため、1990年比での削減目標はこの数字よりもさらに大きくなる。

つまり、スウェーデンは2005年段階で1990年と比べて7.1%の削減を達成してきた。EUの課した新たな目標は、2005年レベルから17%減なので、1990年比では22.9%減になる。(計算が間違っていたら指摘してください。スウェーデンの新聞の中には、7.1%+17%=24.1%という単純計算をしているものもあったけど、これは明らかに誤りですよね)


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スウェーデンの「温暖化対策準備委員会」では、2020年までに1990年比で38%の削減を行っていくことが国独自の目標として定められることになった。(うち8%分は国外における削減)

EUが課している22.9%減よりもさらに厳しい目標をなぜ自らに課そうとするのか?

それは、おそらく温暖化問題が急を要するという認識が、政策決定者や一般市民の間で幅広く共有されているためであろうし、経済と温暖化対策が両立できうることを先進各国に示したいという、よい意味での「メンツ」があるのだろう。それから、環境技術を国内でさらに発展させて、この部門での国際競争力を高めたいという狙いもあるだろう。

先日、スウェーデンの環境省で政策秘書をやっている昔の同級生とストックホルムで食事をしたけれど、彼が言うには

「2009年のコペンハーゲン会議において排出抑制に向けた合意が世界レベルで達せられるなら、EUは20%減という目標を30%減へとさらに厳しくする用意があるが、そうなった場合に、EU加盟国各国にどう分担させるかはまだ決まっていない。スウェーデンとしては、今よりもさらに厳しい削減目標がEUから課せられてもいいように、独自の取り組みをしておきたいと考えている」

という狙いもあるようだ。

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6 コメント

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私はこう理解しました (小澤)
2008-03-11 18:39:59
yoshiさん、こんにちわ!

この件について、私も1月24日の朝日新聞を手がかりに、1月30日にEUの考えを紹介しました。
私の理解は、yoshiさんの最初の記事と今回の修正記事のハイブリッドのようになっています。

http://blog.goo.ne.jp/backcast2007/e/621ee050f900a2a2dcb5456c875c2b4e

ところで、別件です。

 私は数年前からなぜか突然、日本のマスメディアに頻繁に登場しはじめた「低炭素社会」という用語に違和感を持っています。
 
 その具体例を、福田首相の国会での演説に見ることができます。福田首相が安倍前首相を引き継ぎ、2007年10月1日に行った所信表明演説では、「これからの環境を考えた社会への転換」と題する部分で、4回も登場した「持続可能社会」が、3か月後の2008年1月18日に行った施政方針演説では、「持続可能社会」という言葉はすべてなくなり、代わって4回「低炭素社会」という言葉が出てくるのです。

 「低炭素社会」という言葉は平成19年版環境白書に初めて不十分な形で登場したものです。私はこの言葉は数年前に英国から輸入したのではないかと思っています。

 そこで、お尋ねなのですが、スウェーデンのマスメディア(新聞、雑誌、ラジオ、TVなど)でも、あるいは政府の気候変動政策関連文書などで、「低炭素社会」というような言葉が使われているのかどうか、あるいは最近使われ出しているのかどうか、yoshiさんの大雑把な印象をお聞かせいただきたいのです。

EUの、あるいはスウェーデンの気候変動政策に関連するニュースや記事の中で。たとえば、よく見かける
(見かけるようになった)、ほとんど見かけない、見たことがないというようなレベルの印象でよいのですが。
Unknown (Yoshi)
2008-03-13 04:01:28
>私の理解は、yoshiさんの最初の記事と今回の修正記事のハイブリッドのようになっています。

なるほど、モヤモヤしたものがこれでパーと晴れましたよ。わかりやすい記事ですね。残念ながら、スウェーデンの新聞でここまで分かりやすく書いたものは目にしませんでした。

「低炭素社会」という言葉は、ぜんぜん知りませんでした。英語であれば「low carbon society」とでもなるんでしょうか? とすれば、スウェーデン語だと「la'gkoldioxidssamha:lle」とでもなるんでしょうが、それに近いような言葉も含めて使われていません。

やはり「Ha'llbart samha:lle」(持続可能な社会)や「Ha'llbar utveckling」(持続可能な発展)が使われていると思います。
Unknown (Yoshi)
2008-03-13 04:02:23
書き忘れましたが、私も違和感を感じます。あまりにテクニカルで何が言いたいのか分かりませんよね。
Unknown (ayako)
2008-03-13 06:33:36
こんにちは。こちらではご無沙汰してます。ときどきお邪魔してたのですがなかなか中身を消化しきれなくて(笑)。

低炭素社会、おっしゃるようにLow Carbon Society(LCS)のことで、イギリスとかでも使われています。日本では国立環境研究所が「脱温暖化2050プロジェクト」の目標としてこの用語を使っているので浸透しちゃったんじゃないかなと、個人的には思っています。http://2050.nies.go.jp/index_j.html

私もこの言葉には違和感を感じています。張り合うわけじゃないですが(笑)、うちの職場でも似たような検討をする委員会を設置していて、ここでは「二酸化炭素排出の削減も重要だけど、それだけでは持続的発展は実現しない」という前提のもとで話を進めていますよ。
低炭素社会:予想通りのコメントが (小澤)
2008-03-13 08:04:04
yoshiさん、

予想通りのコメントというか、私がひそかに期待していた通りのコメントをいただきありがとうございます。いや、期待以上のコメントです。改めて、調査などしない、この直感的なコメントこそ私が求めていたもので、大満足です。ご関心と時間があれば、私の次のブログをどうぞ。

http://blog.goo.ne.jp/backcast2007/e/fc347c536023ff0893757f3bd34b604b(07-10-25)

http://blog.goo.ne.jp/backcast2007/e/ca7d9f93f970a7af5fd17fd9da0dfc09(08-01-19)

ayakoさん、

はじめまして。
「低炭素社会」という言葉に違和感を持つ方がはやりいらっしゃるのですね。ayakoさんがおっしゃる「うちの職場」というのは、日本にあるのですか、それともスウェーデン、あるいはその他の外国に?
よろしかったら、上の二つのブログ記事を覗いてみてください。
Unknown (ayako)
2008-03-14 08:03:41
小澤さん、
はじめまして。
「うちの職場」は、日本にあります。
ブログ拝見しました。
他人のブログを乗っ取って?お話するのもなんですので、小澤さんのブログに直接コメントさせていただきます。

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