地遊人

日常のことごと、出来事を、気ままに書き記していく。
62歳からの自己整理・自己満足策とボケ防止挑戦プログ。

信濃毎日新聞のコラム「斜面」より

2017年05月27日 | 【15】雑感

斜面

印象的な記者会見といえば山一証券社長だった野沢正平さんが目に浮かぶ。「社員は悪くありませんから」。気骨ある信州人の絶叫に胸が熱くなった。一昨日、安倍政権に反旗を翻した前川喜平・前文科省事務次官も衝撃度では劣るまい

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首相の親友が進める獣医学部の新設計画に「総理の意向」は働いたのか。4カ月前まで当事者だった官僚トップの証言である。仕えた大臣が存在を否定する文書を「なかったことにできない。確実に存在した」と言い切った。よほどの覚悟が要ったろう

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前次官をここまで突き動かしたのは何か。公正・公平を欠くと思いながらも官邸の意向に押し切られたふがいなさ、悔悟の念もうかがえる。過去にも「あったものをないと歴史をゆがめるのは国民のためにならない」と証言を改めた元官僚がいた。松本市出身の故吉野文六さんだ

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沖縄返還をめぐる日米密約で外務省の当事者だった。機密漏えい事件の時も退官後も存在を否定し続けたが、米国でサイン入り文書が公開され認めている。佐藤優著「私が最も尊敬する外交官」にある。「国益のため」は役人のうその決まり文句という

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前次官が「行政がゆがめられた」と言う学部新設は「私益」と見られても仕方あるまい。それでも官僚は人事権を握る官邸の意向に唯々諾々と従うばかり。政府・自民は再調査も証人喚問も拒否し押し切る構えだ。国民にうそをつく国家は滅びる―。佐藤さんが指摘する歴史の法則である。


(5月27日)

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