陽出る処の書紀

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映画「灰とダイヤモンド」

2016-10-11 | 映画──SF・アクション・戦争
ポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ監督(2016年10月9日逝去)の1958年の映画「灰とダイヤモンド」は、ポーランド民主化の歴史を語る上で重要な作品。
「世代」「地下水道」に続く、レジスタンス三部作のひとつとされている。

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1945年5月8日のポーランド、ワルシャワ。
かつてロシアに亡命していた共産主義の党地区委員長シュツーカの暗殺に巻き込まれて、誤って住民が犠牲になった。
ドイツが降伏し、街は戦勝祝賀ムードで湧いていた。難を逃れたシュツカの宿泊したホテルの隣室には、彼を付け狙うレジスタンスの青年マチェークがいた。
戦時中はドイツ軍と戦ったマチェークは、同志アンドルゼイとともに、戦後の解放後、ロシアの後ろ盾で政権をとった党の反対派組織に属している。
その黒幕である少佐の命を受け、アンドルゼイとマチェークは、かつて戦死した仲間の弔いのためにシュツカの暗殺を誓う。だが、バーのウェイトレス、クリスチナと恋仲になったマチェクは、一時は平凡な生活を夢見るが、けっきょく暗殺を決行してしまう。

タイトルの「灰とダイヤモンド」は、マチェクとクリスチナが逢い引きした教会の廃墟の墓碑に刻まれた詩句「燃え尽きた灰の底に、ダイヤモンドがひそむことを」から引用されている。
この言葉が象徴したかのように、物語の終わり目には生き残るものと消え去る、燃え尽きるものとの運命が明確に二分されていく。
特にラスト保安隊に撃たれて、ゴミ山のなかで倒れていくマチェクの姿は鮮烈だ。灰になったのは、暗殺者とそのターゲットであり、それは共産主義の死とその闘争の終焉を表している。マチェークというのは、その昔、ジェームス・ディーンが演じたような無目的に人生を楽しみ暴力に快楽を見出すような不良青年で、けっきょく新しい権力者に利用されてしまったにすぎない。
いっぽう、反党派として活躍していたシュツカの息子や、亡き妻の姉である大佐婦人は亡霊のように生き残っていた。実行犯から逃れたアンドルゼイは、ワルシャワを発った。

マチェクが恋人に語るサングラスについてのひと言は、アンジェイ・ワイダ監督のワルシャワ蜂起時のポーランドに対するロシアの非道を訴えた「地下水道」をほのめかしているものと思われる。
多分に政治的なプロパガンダに満ちた映画だが、じつは平和への希求も籠められている。青年が射殺した紳士を抱きかかえた後ろで、祝賀花火がいっせいに揚がるシーンが、それだ。

原作はイェジ・アンジェイェフスキの1946年の同名小説。
当時の共産主義体制を配慮してか、映画とは逆に、シュツーカが正義感のある主人公として描かれているふしがある。


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アンジェイ・ワイダ監督からの手紙;震災特別寄稿・日本の友人たちへ(47ニュース)

(2009年8月4日に書いたレヴュー記事を加筆修正で再掲載)

灰とダイヤモンド(1959) - goo 映画
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