陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。

神無月の巫女精察─かそけきロボット、愛に準ずべし─(九)

2015-10-10 | 神無月の巫女感想・二次創作小説


ロボットアニメとしての「神無月の巫女」を各話ごとに再考するレヴュー。今回はその二回目です。
前回をご覧になられただけでおわかりのように、ロボットという巨大な力は千歌音にとっては、自分を悩ますものでしかありません。千歌音が願うことは、一刻も早くアメノムラクモを出現させ、ソウマに頼りきりにならずに姫子を守ってみせること。しかし、その焦燥感からくるこころの闇わだをオロチ衆随一の策士に衝かれてしまうことに。


第五話:夜闇を越えて
ロボット戦としては前半部の大きな山場を迎える回。ここまで無双だったソウマロボ。しかし、実の兄がやむなく行った忌まわしくも哀しい過去を想いだしたソウマは、その虚を衝かれて、はじめて苦い敗北を喫してしまいます。ソウマの戦闘力につき嫉妬に駆られていた千歌音は、ロボットを持ちながらも姫子を無傷で帰せなかったことをなじり、ソウマはソウマで剣神アメノムラクモ復活の未完成を持ち出して反論。まあ、前半部であっさりアメノムラクモが登場したりすれば、最終回のカタルシスもへったくれもないのですが。ふたつのロボットがソウマと千歌音の対立軸にあることがわかります。そして、ソウマは姫子の陽の巫女パワーに支えられて、苦闘の果てにツバサにようやく勝利。ソウマロボとツバサ機は兄弟機のためか似たデザイン。ツバサがこのソウマ戦以後は戦意消失したのは、姫子の巫女パワーに懐柔されたソウマと似たような現象が起こったのでしょうか。いっぽうで、こののち、ソウマがオロチの呪いに肉体を蝕まれていくのは、ツバサが背負ってくれていた兄弟の闇のわけまえが、ソウマに戻ってきたとも考えられますね。にしても、ロボット同士のコクピットがつながって、ついには兄弟が素手で殴り合いになってしまうという。オダジョー主演の某仮面ライダーの最終回を思わせます(ネタが古すぎます)。なぜ、こういう表現にしたかは、すでに第五回の考察で結論が出ています。神は人の縁を結ぶ。いいことも、悪いことも。そして神たるロボットは、人の愛憎をとりもつ「磁場」として機能する。けっして、ロボットのバトル描写をないがしろにするためではないのだ、と。

千歌音は姫子のその愛が着実にソウマを強力にさせるいっぽうで、巫女が果たすべき責務には発揮されないことを悲しんだのかもしれません。さらにいえば、ソウマが姫子のトラウマ(髪に触れること)を解消させていたことも知ることに。実はこちらのほうが、千歌音にとっては大きな痛手。なぜって、敵と戦えないまでも、恐怖におびえた姫子をなぐさめる役だけは自分に残されていると、からくも信じ切っていたはずなのですから。その最後の砦まで、もはや失いつつある。アメノムラクモは、千歌音がほんらい得られるはずの能力なのに、どうもがいても得られない、という劣等感をよりひきだすがために存在しています。すがたを現さずとも巫女を苦しめるとは、なんという罪な女神様でしょうかね(苦笑)


第六話:日溜まりの君
ロボット戦がない、安らぎのひととき。姫子と千歌音の出逢いにスポットが当たる回ですね。秘めたる想いを抱えた千歌音ちゃんの懊悩がモノローグで、胸に突き刺さるほどわかってしまう。前回のソウマの言葉が念頭にあったのか、千歌音はアメノムラクモ復活を急いでしまい、姫子のコンディションもかんがみずに、儀式で無理強いをしてしまいます。世界を守る巫女に付与された万能の剣でありながら、じつは巫女ふたりの関係を断ち切ってしまう剣。アメノムラクモにはそんな謂いがあります。
髪留めを隠してしまう、姫子に初対面の髪型を結ばせるなどから、姫子とのささやかな想い出にすがろうとする千歌音の切なさに、胸が詰まります。千歌音が姫子にアピールできるものが、もはやそれしかないという…。姫子はその想い出の重さにいまだ気づいてはいないのですが。同時に、恋に溺れ過ぎて理性を見失っていく危うさや、相手が自分の理想であってほしいという驕慢さをも感じざるをえない。けっして美しいだけのシーンではありません。


第七話:恋獄に降る雨
シスターミヤコの教会に囚われてしまった千歌音。ちなみにこの教会、じつはミヤコの機体が擬態した幻影でした。巫女の儀式がうまく行かないので、千歌音ちゃんが、ふとイエス様にでも祈りを捧げたくなったのかどうか、独り告解をしようとしたのか、さだかではありません。ちなみに、このシスターは学園に雇われている教師なので、(アニメではわかりにくいですが)姫宮さんちの関係者みたいですね。原作では、直接、千歌音が交渉する場面があります。
アメノムラクモを復活させ、オロチ封印を果たしたところで、陽の巫女、月の巫女としての絆が薄れ、ただの友人に戻ってしまうだけ。言葉たくみにミヤコに誘惑されて、千歌音はおおいに動揺してしまいます。参謀二の首が千歌音に心理戦(視聴者大サービス的な(笑))を強いるいっぽうで、ソウマと連れ立った姫子には、ギロチにくわえ、ネココ、コロナ、レーコの三人娘が立ちはだかります。しかし、姫子の巫女パワーの援助を受けたソウマに向かうところ敵無しで、あっさり返り討ちに。コロナ、レーコの機体は初出動のように思えますが、コロナの愛機・通称ファイナルステージは、ドラマCDの五・五話で既出だったりします。
ミヤコの姦計をからくも退けた千歌音が見たのは、ロボットの上でのソウマと姫子の熱愛の瞬間。この構図によって、さらには姫子自身からの何の気なしの告白によって、千歌音が求めて得られない能力とけっして届くはずのない願いを、いやというほど思い知らされてしまいます。しかし、ロボットにこういう使い道があってよいものでしょうかね。ロボットの掌ひとつに乗っている少年少女は、第三話の左右の手に隔てられた姫子と千歌音と対になっているのです。


第八話:銀月の嵐
佳境に向かって話が急展開していきます。不意に姫子によそよしくなって、身辺整理をはじめてしまう千歌音。前回まではあんなにモノローグがあったのに、千歌音のこころのなかは急に閉じられてしまいました。彼女がなにを決意したのか、なにを思ってのゆえか、視聴者も、そして姫子も知る由がありません。二周目にじっくり観たら、わかりますので少々お待ちを。オロチの闇に堕ち、陽の巫女服に身を包み、千歌音がおこなった不徳の暴挙。駆けつけたソウマを矢襖にして完膚無きまで叩きのめし、さらにはソウマの愛機まで強奪。とても皮肉なことに、千歌音は姫子を守るはずだった力=ロボットを、姫子を絶望させるために入手してしまったのです。
ここでおもしろいのは、千歌音がわざわざロボットで放心状態の姫子を拾い上げていることですね。一話の学園破壊時でも、三話の海辺での奇襲でも、さらには七話の夜のシーンでも成し遂げられなかった夢を、千歌音はついに果たしたのです。ソウマにわざわざ見せつけるために。そして、ここで注目しておきたいことは、千歌音はソウマを滅ぼすためにはロボットの力を頼ってはいないということ。千歌音は十一話で、ソウマを「邪魔なお伴」扱いしていますから、ほんとうに姫子にひとりで来てほしかったのならば、ソウマをロボットで再起不能になるぐらい痛めつけておいてもよかったはずなのですね。それを敢えてしなかったのは、姫子の戻る場所のためにソウマを生かしておきたかったからです。さらに言えば、そもそも千歌音にはロボットで姫子やソウマと戦う意思が、からきし、なかったということです。

では、なぜ、ソウマロボは千歌音に奪われねばならなかったのでしょうか。
その答えには二通りの見解があります。ひとつはロボットアニメの王道にのっとって、主人公の大いなる成長の前の障害、あるいは喪失をもうけるため。さらに、もうひとつありますが、これについては本稿の最後に述べるといたしましょう。



神無月の巫女精察─かそけきロボット、愛に準ずべし─(目次)
アニメ「神無月の巫女」を、百合作品ではなく、あくまでロボット作品として考察してみよう、という企画。お蔵入りになった記事の在庫一掃セールです。

【アニメ「神無月の巫女」レヴュー一覧】



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