陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

仕事が速くて丁寧な人はどこでも重宝される

2017-12-09 | 仕事・雇用・会社・労働衛生

就職市場は未曽有の売り手市場。
2017年の大卒内定率は75パーセント超。過去最高記録を達成。高卒者でも70パーセントに迫る勢い。複数の内定をもらいながら、決めかねてまだ就職活動を続ける学生。そして、すこしでも優秀な学生に内定辞退されない様に、あの手この手で歓待する企業。まるでバブルの頃が戻ったようですね。日本は新卒一括採用で教育するシステム。新卒で大企業に入れないと、生涯賃金は低いまま。中小企業ならば中途採用はありますが、30歳を過ぎたら、ある程度のスキルと学歴がないと門前払いされます。その転職にしても、最初に入った会社が大事。ですから、すこしでも待遇のいい職場を探す気持ち、わかります。

就職氷河期世代の人間が言うと嫌味に聞こえるかもしれませんが、ひとこと釘を刺しておきますね。
好景気の時に大量採用された人材ほど、あっさり解雇されやすくなります。いま、バブル期採用組の40代半ば以降から50代くらいの人で離職せざるを得ない人も少なからずいます。社内で責任ある管理職になれなかったり、出向で経験値を積んでほしいのに拒否したり。さらには、親や配偶者など家族の介護・看護や子育てで離職せざるを得なかったりもします。政府や介護育児休業法を改正して離職を防ごうとしていますが、家庭と仕事とのバランスがとれず心が折れてしまう人もいます。いちど仕事を失ったら、よほどのキャリアがない限り、再就職するのは困難です。とくに中年になると難しいです。記憶力や瞬発力も落ちていますし、進化の激しいITスキルについていくのが大変ですから。

私の知り合いの農家さんにも、大手製薬会社勤務だったのに40代後半で退職し、農業を手伝っている人もいます。親の事業を継いで代表者として堅実な経営をしている、30歳前半だけどすでに若手育成をしている人もいれば、ただどこにも就職先がないので仕方なく家事手伝いという人までさまざまです。なかには、漫画家や作家志望なので、親に食わせてもらっているという人も。

人間が生きていくうえで、仕事選びは大切な要素です。
自分の所属先のネームバリューや職種のきらびやかさに甘えてはいけない。あなたの仕事の価値は、他人が決めるもの。どんな仕事をしているか、よりも、どういう働きぶりで人に感動や利益を与えるか、のほうが大事です。会社の知名度や業界の華やかさがあっても、それはあなたが築いたものではありませんよね? 相手の満足度よりも、自己満足度が高い場合、仕事能力に対して自己利益が高すぎる場合、その仕事は将来なくなる公算が大きいと考えていた方がよいでしょう。既得権益に守られていた業界の人間はあぐらをかかないほうがいいですね。

先日、庭木の剪定をある男性にお願いしました。
40代のその男性は隣家の剪定にかねてから来ていた人で、私の家族と顔見知りでした。田舎は素性のしれない人を家に入れるのを嫌います。私が直接面会したところ、この男性は応対が丁寧で打ち合わせもきちんとできる人でした。また、自分の技術を過剰にアピールすることもないですが、樹の素人であるわれわれの質問には適切に答えてくれます。

その人の仕事ぶりは、彼が行った樹の姿が証明していました。
枝や葉が痛まない様に切り口を考えつつも、かなり仕事が速いのです。また高所にも難なく上っています。自分で塀の上にのぼって剪定していた私は怖くて仕方がなかったので、感心しました。

なんだ、ただの職人仕事じゃないか。とホワイトカラーで事務仕事をされている方は思ったかもしれませんね。私だって、去年までは、庭木の剪定ぐらい、いいノコギリを使えば自分でできると思い込んでいました。しかし、やはり無理でした。時間をかけたわりには、見栄えがよくなかったのです。しかも、どうしても、素人では伐るのが無理な高さの樹もありましたし。

実は、この人、本職は公務関係。この剪定の副業は25年ぐらいやっているそう。
お金に困って思いつきではじめたものではないことは、その仕事の成果をみればわかります。口コミで広まったせいか人気があるそうで、私も連絡を取ってから日程を調整するのに苦労しました。

「マルチキャリア考」という記事にも書きましたが、最近は人手不足で一人の人が二重三重に仕事をもっていてもおかしくはないですが、不安定なアルバイトの仕事を掛け持ちしている人と、本業がきちんとあって、その休日にお仕事をお願いできる人だったら、多分多くの人は後者を選ぶと思います。きちんとした会社員であれば、労災や健康保険もついていますし、適度に休みをとって作業を進めてくれるし、組織内で必要最小限のコミュニケーションが取れますから、仕事の段取りがとりやすいのです。お客様本位の意識がありますから、相手が若手であろうと自分の都合などで振り回したりはしません。仕事の適正価格を知っていますから、無体な金額を吹っかけてくることもないでしょう。

この庭木の剪定は、以前、親戚の高齢者かシルバー人材に依頼していたのですが、不満がありました。まず、コミュニケーションがきちんととれない人は、好き勝手に伐ってしまう。また自分の過去の仕事がどうたらとか、自分にはこんな人脈があるのだとか、どうでもいい自慢話をして時間稼ぎをしようとします。仕事の成果でなく、時間給制ですから、このような仕事をされると、二度と依頼したくないですね。監視していないと、すぐさぼります。

家のリフォームをしようと思い立ち、知人の紹介で、何人も工事業者さんとお会いしましたが、やはり相性というのはありますね。技術をもっていても、プライドが高い人は扱いに困ります。自分の言い値を押し通そうとする人、こちらの要望を聞かずに勝手に作業をしてあとで請求する人、時間帯を考えずに連絡を寄越す、スケジュール管理を怠って予定をころころ変える人などは、いい仕事をしてくれません。違法性が高いので付き合いきれませんね。

今回、仕事をお願いするにあたり、私たち家族が苦労したことは、剪定中の事故をおこさないことでした。梯子の側に落ちた枝や幹などはすぐ撤去し、チェンソーを使う場合は雨に注意し、休憩時間にお茶菓子も用意しています。暗くなると身体が冷えて手元が危なっかしくなるので、適度に声をかけます。お金を払ってやるのだから言うことをきけ、では能力のある人は逃げてしまいますよね。雇用者に不信感を抱かれる使用者の多くは、仕事の効率を求めるあまり、無理な働かせかたをさせます。人の動かし方が下手な人は、いい経営者になれません。多くの労働者から怨みを買い、人が離れていきます。しまいには、誰も手伝ってくれなくなって、不本意な人材を見合わない高い賃金で雇わざるを得ないでしょう。

いい仕事をしていただくのはこちらの希望ですが、小さなお子さんがいるお父さんを無事に家に帰らせることがなによりも大事です。今回、ここが働きやすいと思われたら、次回、我が家を優先してくれる可能性もあります。やはり、どんな仕事であっても相性は大事ですよね。剪定仕事は毎年必ず発生するかはわかりませんが、家のプライバシーが見えますので、やはり信頼のできる方を確保しておく必要があります。

有名な近江商人の言葉に「三方よし」というのがあります。
あなたが働くことで、もしくは、働かないことで、誰かが犠牲になっていないのか、考えてみる必要があります。ここでいう「働く」とは、賃金労働のみならず、家事や公共の福祉に関わるような作業も含みます。名のある会社に勤めているから、自分は偉い! 家の前の掃除なんてやるのは恥ずかしいと思っていませんか? サラリーマンの旦那さん、そのお子さんがた、家事を担ってくれる奥さん・お母さんに感謝していますか? 配偶者の給料が少ないから豊かな暮らしができないと愚痴るまえに、自分のお金の使い方を見直してみませんか? 働き手(労働者)も雇い手(使用者)も、その仕事の貰い手(消費者)も、またその家族も、誰もが幸せになるような仕事について、考えてみたいものですね。

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