陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。

映画「ひまわり」

2017-08-08 | 映画──SF・アクション・戦争
時期が時期なので、戦争に関する映画のお話ばかりで恐縮です。
今回は、1970年公開の、イタリア・フランス・ソ連の合作映画「ひまわり」(原題: I Girasoli )
ラジオで映画音楽の特集なんかがありますと、必ず流れるのがこの映画のテーマソング。あの音楽が流れただけで、脳内再生されてしまう花畑。今年はとくによく耳にするのですが、なぜなんでしょう。主演俳優や監督の記念周年というわけでもなさそうですが。2011年にデジタルリマスター版が公開された、後世に残したい名作映画ですね。過去のレヴューを一部加筆修正して再掲載しています。

愛し合うふたりが戦争によって生き別れになってしまい、その後再会するというのはラブストーリーの王道ですね。記憶を失っても最後に結ばれるのが、「心の旅路」、そして残念な結果に終わるのが「哀愁」。映画「ひまわり」もまた、そんな戦争に弄ばれたある愛を描いています。

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第二次大戦中のナポリ。
少々気性の激しいジョバンナと、陽気な性格のアントニオはおしどり夫婦だった。その夫は極寒のロシア戦線に出征したまま、その後数年間消息不明。
スターリンの死後、西側との行き来が緩やかになったソ連へ、ジョバンナは旅立つ。さんざん探しあぐねた末、生きていると信じていた夫を見つけた。
しかし、アントニオにはすでにロシア人の妻と娘、三人の幸せな家庭を築いていた。
ジョバンナはアントニオの裏切りを悲しむあまり、列車に飛び乗って帰国してしまう…。

アントニオは凍死寸前だったところをロシア人の妻に救われたのですが、記憶がすぐ戻ったところからも完全な記憶喪失ではなかったのかも。
ジョバンナへの愛をよみがえらせたアントニオは、急きょ、ジョバンナのところに駆けつけますが、すでに遅し。彼女はもう、かつての夫と幸せな日々を取り戻す道をみずから断っていました。
前半はひどく気の荒いヒステリックな女性に思えるのですが、彼女の選択は、たぶん相手のロシア人女性を思いやってこそ。ロシア人として生きていくしかなかったというアントニオの立場も、中国残留孤児問題とおなじで同情の余地はあります。

タイトルは、冒頭とジョバンナがソ連へ旅立つ列車の車窓から眺めたひまわり畑から。画面いっぱいに広がる、大輪の黄金の花は圧巻。ひと夏の暑さのなかだけで燃え上がるように咲き、そして季節が冷えれば無残に散っていくその花は、まさしくこのふたりの愛情の行く先を暗示しています。太陽が昇れば、かならず追いかける健気な花。列車のシーンでかならず挿入されるもの悲しい音楽は、聞いているうちに涙を誘われずにはいられません。

夫を健気に待つ気丈そうだが脆い女性を演じたのは、ソフィア・ローレン。
ラテン系の色男だった戦中とはうってかわって戦後はおとなしい男になったふたつの性格のアントニオをみごと演じ分けているのが、マルチェロ・マストロヤンニ。
監督は、ヴィットリオ・デ・シーカ。

うろ覚えなんですが、学生時代にビデオ視聴したルーブル美術館コレクションを紹介したドキュメンタリー番組で、マストロヤンニと奥様のカトリーヌ・ド・ヌーブだったのか忘れましたが、見目良き男女がガイド役でした。ギリシア・ローマの傑作彫刻の横に並んでいても見劣りしない容姿と洗練された物腰、うっとりしたものです。肌が粟だつような、荘厳な音楽もよかった。美術上の人体表現は、やはりそのお国柄や人種が出てしまうものかな、と思わないでもありませんね。異国の方々にとりましては、現代の日本のアニメの造形のほうがクール!なんでしょうけれど。

ひまわり(1970) - goo 映画

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