陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。

「FFF Project」 Act. 10

2006-09-05 | 魔法少女リリカルなのは感想・二次創作小説

「いやな。腕に覚えのある人間が堅く口を閉ざすっちゅーことはやで。よっぽど見くびっていた相手やないかなと思うて」
「なるほどな…。しかし、弁解させてもらうが、私は女に手を上げるような男ではないぞ、断じて、こればかりは!断じてない!」
「それは、もうじゅうぶんにわかってるって」

声を荒げたクロノを戒めるように、はやては腕立て伏せをするように両腕を屈伸させた。

「でも、まさにソコがポイントなんや」
「つまり、大の男が警戒心を抱かずに甘くみてしまうような相手か…。成人女性ならともかく、子どもだったとしたら。利用されている可能性もある…か」
「本日の発生分と過去とのつながりがあるんかは分からんから、断言できんのやけど。たいがい、なんらかの格闘技の有段者が狙われとったみたいやから、同じような猛者を想起しとったんや」
「できれば、さっきの憶測は外れていてほしいものだな。年端も行かない少年少女が犯罪に巻き込まれたと知ったら、うちの執務官殿が真っ先に嘆きそうだ」

不意にクロノの脳裏を、道案内してくれた銀髪の少女の面影がかすめた。
あの感情を押し殺しているようだが、理性までは捨てきっていないような面ざし。髪型からして、九歳の頃のフェイトに似ていなくもない。父とも慕う神のような強さをもった男の遺志を継いで強くなりたい、と思いつめていた。自分の庇護者の敵討ちで襲った…いや、まさかな…。

「ま、死人が出とるわけでもないから、今んとこ大事にはなっとらん。でも、事件の芽はちいさなうちに摘むのがベストや。今回のは貴重なサンプルになるかもしれん」

はやてが、ずい、と顔を近づけて、にやりと笑った。

「襲われたのは、今日の授業参観に行く予定やった父親や。だから、クロノくんは気にせず、参観日に出かけてほしいんや。現場の調査はこっちに任しとき」
「管理局の職位からすれば、指揮権は私のほうにあるのだがな」
「そやったっけ? クロノ提督が私に命令していいんは、リミッター解除か、お宅にお邪魔したときのお茶の種類ぐらいやと思うてたけどな。それに、次元航空部隊の筆頭たる人間が、そうやすやすと小さな芽がでたばかりの事件にいちいち付き合ってられんやろ?」
「ま、それはそうだが」
「今日が特別な日なんやから、私かて、我がままさしてもらいたいもんや」

それでごねられても困るのだが。
ほんらいなら一日休暇でケーキを囲んで団欒してもいいはずの、八神はやてに気をつかったのは、こちらなのに。この相手ときたら、自分のお祝いなんてお構いなしだ。

「そやからな、任しとき。クロノくんはクロノくんで、今日のお役目きっちり果たしたらええんや」
「しかし、それでは…」
「犯人が襲うんが、今までみたいに大人ばっかりやとは限らんやろ?」

はやてが心配しているのは、おそらく、シグナムが開いた道場の愛弟子の身の安全なのだろう。
たしかミウラという名前だったか。ザフィーラもその子のコーチをしているから、犯人とやらが
ライバルとなる子だとしたら、お手並み拝見。あわよくば、弟子に引き込む算段か。

「なるほど、そうか…。では、私はだいじな友人の娘の警備に徹するとしよう。夜のパーティーに無事に届けなきゃならんしな」
「頼むで。ま、クロノくんさえいたら百人力なんやけど、念のために聖王陛下さんの忠実な親衛隊も潜り込ませてあるしな」
「ひょっとっしたら、その彼女たちにも、それを着せているのか?」

クロノが目を丸くして指さした一張羅、その襟元を両手でつまんで、はやてはさも当然だとばかりの顔つきだった。

「当たり前やで。今日は父親変装日なんやから。捜査の基本はフェイクラブやで?」
「犯人を安心させるどころか、よけい逃げられそうな気もするな…」

その捜査の基本とやらもあの気障ったらしい友人譲りなのだろうな、とクロノは、はやての白いスーツを眺めていた。


ジャンル:
小説
この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 「FFF Project」 Act. 11 | TOP | 「FFF Project」 Act. 9 »
最近の画像もっと見る

Related Topics