陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。

「FFF Project」 Act. 7

2006-09-05 | 魔法少女リリカルなのは感想・二次創作小説

ふたりのやりとりを側に侍るザフィーラは、まんじりともせず見守っている。
見た目は人間の四肢をもつが獣が本性である彼には、どうもクロノの貶められている男の沽券というものには縁遠いのであった。成りはガタイのいい男だが、従順な飼い犬よろしく控えているばかりである。

ふとはやては、謎めいた少女の去った方角に視線を投げた。その顔つきには、十代にして数々の難事件を解決してきた魔導師らしい険しさが浮かんでいた。

「でも、あの子、珍しい銀髪やな」
「そうだな。君のリインとおなじ。古代ベルカの関係者か…。ヴィヴィオと色は違うが、瞳が左右とも異なっていた」
「ふぅん。彼女、ザンクト・ヒルデの生徒やろ?」
「ここの中等科の所属らしい」
「名前はなんて?」
「それが、聞きそびれてね」

クロノに苦笑いが浮かぶと、はやてはやれやれといった失望顔だ。ちちち、と小猫を誘き出すような、まぬけな舌打ちをした。

「クロノくん、あかんで。可愛い子の名前と住所と、電話番号、メルアドはちゃんと押さえとかんと。ついでに、血液型と誕生日、スリーサイズ、家族構成もあったら、もうばっちりや」
「おいおい、無茶言うなよ、君じゃあるまいし」

深夜に歓楽街にたむろした未成年ならともかく、真っ昼間に学校にその制服を着た少女がいても、誰も疑いやしないだろう。職務質問なんぞしたら、かえって、こちらのほうが誘拐未遂罪で疑われるに違いない。

「提督殿、それは捜査の基本やで」
「君の場合は、公私混同していることが多いと聞くが?」
「フェイクラブとフォール・イン・ラブの違いやな、それは」

しかし、八神はやての手法はあながち否定できない。
違法なロストロギアの取引に絡み、捜査にあたった時空管理局の覆面捜査員が色じかけの作戦で、犯罪組織の手下から情報を聞き出し、首尾よく摘発に至ったというケースもあるぐらいだから。これには裏話があって、服役した犯人が出所し、スパイの捜査員と再会。かつての恋情が募って、捜査員も管理局を辞して結ばれ、どこか辺境の管理世界で生活しているという。

「ま、クロノくんの、その目立つカッコやったら、どんな女の子かて仰天して逃げてまうわな」
「そんなに目立つか?」
「周囲見渡してみ?」

初等科の校舎が近づくにつれ、この日のために集ってきた男たちが増えてきたようだ。
周囲を見渡せば、皆がみな、平凡なスーツ姿かカジュアルなジャケット、ゴルフにでも出かけるようポロシャツ姿。黒の紋付袴と白いスーツなんて、ドラマの撮影か、特別な儀式にでも出かけていくようなしゃれこんだ三人は、やはり奇異に映る。ひょっとすると、この出で立ちゆえに、周囲の父親から避けられていたのではなかろうか。

「…そ、そうか」

車で附属幼稚園に送った子どもたちが、自分と一緒に歩きたがらなかった理由も、今になって分かろうというものか。そもそも、いまどき、冠婚葬祭でもない学校行事ごときに紋付き袴で現れたら、十中八九、やくざ者と勘違いされるものだが、母の日本びいきの元凶になったもののひとつが任侠映画や時代劇だったりするから、異文化のまちがった刷り込みは恐ろしい。ちなみに、母親参観日にリンディ・ハラオウンがめかしこんだ訪問着はとくに周囲から浮くこともなかった。この世界では、下手に男が羽織袴を着たりすると、成人式の若造のような仮想大会の様相を呈してくるのである。



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