陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。

「FFF Project」 Act. 8

2006-09-05 | 魔法少女リリカルなのは感想・二次創作小説

「ま、ええやないの。そない気ぃ落とさんときや。おなじく目立つモンどうし仲良く行こや」
「それより、はやてたちもこっちの授業参観に行くのか?」

さっきから同じ方向に進んでいるのでとっくに承知とばかりに思っていた。はやては、クロノの今さらな質問に一笑した。

「そやで。FFFプロジェクト、ついに始動や!」
「FFFプロジェクト? なんだ、それは?」
「FFFは、Free Father Foundation の略や。訳したら、お気楽お父さん団体。創設者は私。恵まれない子どもに愛の手をさしのべる紳士協定や。どや、素敵やろ?」

はやてが得意げに自分の浅い胸を張ってみせ、えへん、と咳払いした。

「いつのまに、そんなものができあがってたんだ? 聞いてないぞ」
「発起人は私やないけどな。クロノくんも、今から入会てことやな。そんで、ま、こっちのザフィーラは私の連れ」

馬の手綱が引かれるように、ネクタイを引っ張られたザフィーラは、首を締め付けられて苦しげな顔つきだ。はやての手が離れたと同時に、鎖骨の窪みに手をやったザフィーラをとがめ立てて、

「ちょ、ザフィーラ! あかんやん。せっかくのネクタイ歪んでるやんか」

いま引っ張って、よけいに歪めたのはどこのどいつだ、というクロノの横目は無視。

「主はやて、これはあまり気持ちのいいものではないのです」
「あかん、あかんで。きっちりしとかな。ヴィヴィオが期待しとるんやから。ほら貸してみ」

はやては隣の男の首に顔を寄せて、ネクタイをていねいに締めなおしてやっていた。
「すまない」とつぶやきながら、顎を上げつつ、ちらりちらりと視線を下にこぼすザフィーラが、なんともおかしく、クロノは側でおかしさを堪えていた。

「へぇ、なかなかうまいもんだな」

手際よく結んでいくはやての手つきに、クロノは感心の声をあげた。

「そやろ? 着せるのも脱がせるのもうまいんやで、私」
「真っ昼間から、そういう笑えない冗談はよせよ」
「ははは。でも、ほんまのことやで。本局の青い制服と、陸士部隊でのらくだ色の制服で、ネクタイなんか慣れっこなんやけど。シグナムはともかく、ヴィータはあんまり結ぶの得意でなくてな。いつも結びなおしてあげるんやで」

それは、あの甘えんぼな鉄槌の騎士がわざと緩めているんじゃないだろうか、とクロノには思えた。思ったところで口にはしない。嬉しそうに口もとが綻んでいる、はやても承知の助なのだろう。

「ほい、ザフィーラ。できたで」の声とともに、肩をぽんと叩かれた隣の狼男もどき。
はやての手元にあわせるべく、ギロチン台に首を乗せるような、ぎこちない前屈みになっていたザフィーラは、解放されてほっとしたようだ。

「主はやて、かたじけない。感謝いたします」
「ザフィーラは制服ないから、苦手やもんな。ま、ちょいガマンしてや、今日一日だけの辛抱やからな?」

指を一本立てて、ウインクひとつ。陽気な主のしぐさに、ザフィーラは静かな笑みで応じている。主が待てと命じれば、目前の皿の中身が干乾びても、銅像のように動かないのだろうな、この犬は。俺なんて、たまの休日に帰宅したら、お子様たちに馬扱いされたりするのに。クロノは男同士の気安さで同情したくなる。

「しかし、そのスーツはどこかで見たことがあるが、まさか?」
「ご想像どおりや。ロッサに借りたもんなんや。ザフィーラのはちょっと大きめに仕立てなおしたんやけど、私のは中学生くらいんときのお下がりでな」
「あいつ、昔っからこんな馬鹿に派手なスーツが私服だったのか…」

クロノが呆れたという表情をしてみせた。
ロッサとは、聖王教会の騎士カリム・グラシアの義弟で、時空管理局本局所属の査察官ヴェロッサ・アコースの愛称。クロノとはむろん勝手知ったる間柄。管理局内の派閥や役職に縛られてしまうクロノと違って、風来坊が評判のヴェロッサは軽薄な外見とは裏腹に、なかなか頼りになる相手でもある。古代ベルカ式の魔法術式の使い手であるよしみもあって、レアスキル持ちで孤立しがちなはやてにとっては実にいい兄貴分であり、お互い料理好きも高じてか、仲間を集めて競作のスイーツをふるまったりする。高町なのはとユーノ・スクライアとはまた違った友情があるのだが、はやての場合、どんな人間ともさらっと付き合ってしまえるタイプなので、親しくなりすぎても誰も囃し立てる者などいないわけで。異性に限っていえば、フェイトがどちらかといえば年下に慕われるのに比して、はやては年輩者に受けがいい。

なるほど、三日前に聖王教会に立ち寄ったはやては、スーツケースを抱えていた。ヴェロッサから借りた衣装を持ち帰っていたのだろう。男が袖を通した衣装を抵抗なく着れるというのも、はやてらしいというべきか。

だが、しかしである。
元の気障ったらしい持ち主はともかく、このふたり、やはりなんとも似つかわしくないというのが本音。

ザフィーラのほうは、尾をズボンの中に収めてあるのか腰回りが妙にだぼついていて、チャップリンズボンみたいに膨らんでいる。しかも、犬耳を隠すために、へんてこなカツラを被ってさえいた。



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