陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。

映画「さよなら。いつかわかること」

2012-06-14 | 社会派・人生映画
2007年のアメリカ映画「さよなら。いつかわかること」(原題:Grace Is Gone)は、とても単純な筋書きであまりお金もかけていない現代ドラマなのですが、泣いてしまいます。格別、あざとい演出もない、耳に残る台詞があるわけでもない、ラストも見えているのに涙を誘われずにはいられない静かな趣きのある物語です。

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ふたりの娘と暮らしながらホームセンターに勤めるスタンリー・フィリップスは、女性軍曹であった妻がイラクで戦死したことを知ります。訃報を告げるべきなのですが、子どもたちを前にして何も言い出せない。

スタンリーは姉妹を連れ出して、あてもなく放浪の旅に出ます。
働いているとはいえ、妻のいない留守を預かっていた夫と、母のいない寂しさにも慣れていてしっかり者の子どもたち。しかし、いつか帰ってくると信じていた母親の死に向き合わなきゃいけないのは残酷です。なによりスタンリー自身に、悲しみを受けとめる心の手筈が整っていない。

妹のドーンは無邪気ですが、姉のハイディはうすうす父が隠し事をしているに勘づいているようです。それでも、言い出せない。
ハイディは米軍の中東への派兵が世間で非難されていることを知っているが故に、なおさら傷つくのが怖いのです。事実を知るスタンリーの弟や、学校の先生など周囲が気をつかって事実を伏せているがために、なおさらその状況に甘えてしまうスタンリーを、はたして責められるでしょうか。

愛国心に燃えて入隊したスタンリーが、妻だけを残して除隊せねばならかったという負い目。その父の苦しみをひそかにたぐり寄せつつも、真っ正面から問いただせはしないハイディ。
口やかましかった父も、反抗的だった娘も互いに歩み寄っていきます。真実を知らせるには、誰にも介入されずに父子の距離を縮める時間が必要だったんですね。

スタンリーが電話に縋るシーンなど居たたまれない気持ちにさせられますが、この部分がハイディに直感をもたらすからくりとなっていて、88分と短い作品ながらも
親子の愛情をひしひしと感じさせてくれる良作です。

愛する人が亡くなると、車に乗り込んで家から飛び出したくなる気持ちってわかりますね。
生前の想い出がいっぱいつまった場所にとどまりたくない。涙を流さずに昨日と変わらない日常を平然と送ることに耐えられなくなるからです。

主演はジョン・キューザック。
監督はジェームズ・C・ストラウス。
音楽をクリント・イーストウッドが担当しています。

ファミリードラマに見せかけながらも、戦死した妻がいっさい出てこない異色の反戦映画でもあります。

(2011年2月28日)

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