陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。

「FFF Project」 Act. 9

2006-09-05 | 魔法少女リリカルなのは感想・二次創作小説

はやては袖口から覗かせた腕時計に目をやった。
金ぴかに光る高級そうな時計で、いかにもあの幼なじみの軟派男が好みそうな代物だった。文字盤をはめたガラスを指でトントンと叩いて、はやてが焦り顔になった。

「あ、こら。いかん。のんびりしとったら、こんな時間になったわ。ほな、クロノくん、悪いけどお先にな」

しゅたっ!という擬音が似合いそうな、すかさず手刀のように手をかざす、あのさよならポーズで去ろうとする。

「いっしょに、向かうんじゃないのか?」
「たぶん初等科四年のクラスは、あっちの校舎やから。先行っといて」

手早く言いおいてから、はやて一行は別の方向を目指そうとする。

「どこか寄り道していくのか?」
「まあ、そんなとこ。実はな、ついさっき連絡あってな、この近くでストライクアーツのミドル級チャンピオンが襲われたらしいわ」
「ストライクアーツって、確か格闘技の、か?」
「そ。ここ最近じわりと多発してるんやって。ほら、いま、ストライクアーツの全国大会も開かれていてあちこちでジムも開店しはじめたし、ちょっとしたブームやからな、あれ。生半可に技をかじった連中が腕試ししてるんかな。だいたい、夜の人通りの少ない時間帯が狙われるんが多いらしい。ひょっとしたら、模倣犯か、突発的な私怨の喧嘩かもしれんのやけどな」
「もしかしたら、凶悪な犯罪者が学園内に潜伏しているかもしれないと? 犯人の手がかりはないのか?」

もしそうなら、学園内に警戒態勢を敷いておかねばならない。休暇中とはいえ、個人のことにはかまけていられない。クロノの顔に緊張が走り、その声がにわかに真剣味が増した。

「それがまったく掴めんのや。被害者のひとりが言うには、覆面しとるらしい。けど、急所に一発ぶち込んで足腰立たんようにはするけど、命までは奪わんのや。被害者も記憶が錯乱しとるんか、有力な証言得られんし」
「被害者から共通点をあぶり出して攻めてみるのは?」
「負けたのが悔しゅうて、言い渋ってるみたいや。相手のことは言わんくせして、やたらと、自分がいいとこまで追いつめたのに惜しい一撃を逃しただのなんだのと言いよる。プライド高すぎるガイシャ(被害者)さんも厄介やで」
「まともに交戦したうえ、被害者側の証言が少ないというのなら、傷害保険金めあての狂言でもなさそうだな」

ふむ、とクロノは考え込んで、顎をさすった。

「犯人のそれらしき共通点が浮かんでこんというのが、まあ、しいて言うたら唯一の共通点やな。まるで正体が掴めん」

腕組みをして眉根を寄せたはやては、やはり辣腕の捜査官らしきオーラを感じさせる。
が、生まじめな顔のまま、意表を衝く言葉を投げてくるのも、はやてだ。黙り込んだままの数秒ののち、クロノは思わぬ質問を浴びせられた。

「クロノくんやったら、どつきあいに負けたら悔しいのはエイミィやろ?」
「それは、そうだな。…って、おい!いきなり、なにを言わせるんだッ?!」


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小説
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