陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。

「FFF Project」 Act. 6

2006-09-05 | 魔法少女リリカルなのは感想・二次創作小説

前方の二人組、とくに左側の人物は早くはやくおいでませ、とさかんに手招きしているのがわかる。
よくよく考えれば、これから向かう先はこの道案内の少女にはほんらい縁のない場所なのだ。とすれば、あの二人の用があるのはどうやら自分らしい。

銀髪の少女は、それを悟ってか軽く会釈して、

「この道をまっすぐいけば、初等科の校舎にたどり着きます。用は果たしましたので、わたしはこの辺で失礼します」

こちらのお礼を待つのももどかしく、彼女は踵を返して来た道を戻りはじめた。
うら若い案内人のなにがしか哀しみを押し殺したような表情がちらついた。追いかけてせめて名前だけでも、聞けばよかったか、という後悔のまえに、少女の背中はずんずん遠くなった。クロノの気がかりは、自分の名をせかせかと大きく呼ぶ声の、あの仰々しさにすっかりと消されてしまった。

「クロノくんやろ?! おおーい、こっちやで!こっちこっち!」

声の調子になんとはなしに覚えはあるが、その風体に当てはない小柄な優男が、おおきく手を振っている。
ダブついた上下の白いスーツに、白いシルクハットに、サングラス。その男の隣にいる大柄な男も、筋骨逞しそうなからだを窮屈そうに、似たような白い装いでまとめている。
二人して連れ立っていると、マフィアのチビ親分がでくのぼうの用心棒を従えているようなおかしさがあった。

近づいてきた背の低い「男」がサングラスを半ばずらすと、海いろの爽やかに澄んだ瞳が覗いた。
十年経っても衰えぬその瞳の輝きには、こんな極道ないでたちよりも、いっそ、この学園に通う女生徒の制服のほうが、はるかに似つかわしかろうて。十年で背がうんと伸びた義妹のフェイトや高町なのはに比べると、八神はやては正式に管理局入りした十代はじめから、陸士部隊の制服のサイズをひとつしか大きくしていない。パーティーなどでドレスアップすると見違えるほど、大人びて見えることはあるが。

所属が異なるものの、はやてとは仕事先でも、プライベートでもよく鉢合わせする。数日前に戦艦アースラ保存会法人の設立の話し合いに同席したし、三日前には聖王教会のカリムとお茶会に呼ばれたら、帰る間際のはやてを見かけたのだった。

「はやてとザフィーラか? なんておかしな恰好しているんだ」

まるで仮装パーティーのようだと、間近に頭のてっぺんから靴の先まで眺めおろして、クロノはせせら笑いをした。お互い扶養家族も抱えるもういい歳なのに、会えば初対面のときのような十代の気分に戻ってしまう。八神はやては、部下がいなければ、管理局内でも平気でくん付けで呼んでくる。

「クロノくんこそ、なんやアレやなぁ、茶会か寄席でも行くんか?」
「私が選んだんじゃないぞ。母さんの希望なんだ」

むっとして思わず応じてしまったもの、妻子までいる大の男が、いまだ母親の服装の趣味につきあっていることをばらすのも、恥ずかしいこと。言ってしまってからクロノは、らしくなく顔を紅くした。

「すごい似合おうとるで。うん、ごっつうえぇお父さんぶりや」

勘のいいはやては、理由をなんとなく察していたようだ。情報ソースは、やはりあの義妹経由か。
「よせよ、照れるじゃないか」と、首の後ろに手をあてがって、クロノは薄く微笑んでみせた。

「ほんま、ほんま。紋付袴でピシっとキメて、さっそくガールハントやなんて、なかなか抜け目ないわ」
「おいおい、誤解するなよ! 今の女の子はここまでの道案内を頼んだだけだ」
「お子さんの授業参観そっちのけで、天下の戦艦クラウディアの艦長が女子中学生と逢引か。こりゃ、おもしろいスキャンダルやな。エイミィがどない思うやろ~」
「おい、はやて。面白がるなよ!ひとの家庭をかき回すのはやめてくれ」

けらけらと笑い声をたてる八神はやてに、クロノは本気で目を三角にして睨みつけた。
フェイトちゃんと血は繋がっていないのに、生まじめだからいじるとおもしろい兄妹だ、とはやてはつくづく思う。ちなみに母のリンディ元提督は、この手の冗談をさらりと流すタイプなので、クロノの一本気は父譲りなのだろう。

ジャンル:
小説
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