10兆円規模の「復興国債」発行へに関する話。
この話が出るや、NHKラジオで朝6時台に放送されているビジネス展望や、サンデーモーニングの出演者が、
『こんなことは断じて許されない!』
『日本の国債価格を暴落させ、国際的信用をなくすつもりか!』
として、断固反対の姿勢を取り、かつ長々と反論していた。
がしかし、それに代わる対案というのは残念ながら聞かれなかった。
そして、内閣では与謝野大臣が、与党も岡田幹事長が反対の姿勢を取っている様子であり、どうやら実現は困難な情勢となっている。
中央銀行が国債をそのまま引き受けた例は、日刊ゲンダイによると、アフリカの後発途上国で国家経済が破綻したときに限られているみたい。
ということは、本当の意味で、これは「禁じ手」であることは間違いない。
もっとも、今回の震災における復興のための国家予算を、果たしてどれだけはじき出すかによって情勢は変わってくると思うけど。
思えば、阪神淡路大震災が発生した2年後、橋本龍太郎首相は、消費税率を3%から5%へと引き上げた。そして、「財政規律路線」を打ち出したのも橋本首相からである。
しかし、消費税率を引き上げた一方で、法人税率引き下げ、所得税軽減も同時に打ち出されたことで、税収が一気に減ってしまった。橋本首相は後年、
『財務官僚にだまされた』
と後述していたそうだが、財政再建どころか、財政悪化を導いた元凶とさえ言われるようになってしまい、1998年の参議院選挙で惨敗した責任を取って総理総裁を辞任した。
ところで、こんな話もある。
空き菅などの財務族が恐れているように、本当に日本の国債は弾けるか?(阿修羅)
小生は、現在の国債保有比率で一般に言われている、海外資本による保有比率が5%程度であること。もうひとつは、円建てによる債権であることから、少なくともEUにおけるソブリンリスク的な危険度は小さいと考えている。
国債の信用問題…などと濡れ手に泡の金融業界のドブねずみは言うが、既に原発問題で日本は信用を失っている。東日本大震災以降の超円高阻止で、タブーと見られていた国際協調介入が実現したのも、日本がこういう状況にあることを鑑みてのことである。従って、このタイミングでの、日銀引き受けベースでの復興国債発行も緊急時の政策と受け止められ、せいぜいプアーブラザースみたいな格付け会社系が形式的にちょっと弄る程度で、市場は折込済みな筈である。
一番いけないのが、以前の小泉以降の自民党そして空き菅がやったような、小出しによる度重なる修正である。一発で、大きめに確保する。100兆円でも良い。
現時点で、直接被害で25~30兆円と言われているが、風評被害や関東圏それから関西圏での自粛による副作用を含めた全産業のロスは、平気で2~3倍はいっている。
直接被害の救済だけではなく、日本全体の経済復興も含めた対応が必要とされる。
何度も言うように増税はもう無理だ。リーマンショック以降の経済縮小と停滞、そして減給に増税で、普通の国民はもう余裕はない。ただでさえ、現在は自粛ムードが重なり、生活必需品以外は需要がない。
こちらの話のほうが、思うに理のある話だと思うのだが。
だから私も、日銀が10兆円規模の国債引受については肯定的に論じた。なぜならば、復興だけの話をとってみても、とても10兆円程度のレベルで収まるような話じゃないからだ。
これに加えて、原発にかかる問題についても、とても東電だけで対処できる問題ではないから、当然のことながら、国家がそれ相当に引き当てせねばなるまい。
となると、ひょっとすると、今回の大震災を復興するためにかかる金額というのは、下手をすると100兆円を超えるレベルになるかもしれない。つまり、年間国家予算をも超えるレベルなのだ。
にもかかわらず、乗数効果が極めて低く、かつ即効性に乏しい増税では、とてもじゃないが対処など無理。やはり、まずはドカンと国家がカネを出す姿勢を示したほうがいい。
まずは金融機関を中心に、国債を引き受けてもらうことが重要。ま、今の日本の金融機関であれば、それはある程度までは可能だろう。
しかし、100兆にもならんとするかもしれない額が見込まれるとなると、やはり金融機関だけでは限度がある。となると、禁じ手である日銀国債引受、という案も、当然のことながら視野に入れざるを得ない、ということ。
そうしたことをせずして、税を中心とした復興策を目指したところで、必ず行き詰る。で、カネが足りなくなるから、結局は国債を小出しに発行するか、はたまた外国から借金をするしかなくなってしまう。しかしこのようなシナリオのほうが、実は日本の信用度を著しく落とす結果となってしまうのは明白。
ま、政府も日銀も、早晩中に決断を迫られているが、戦後最大の国家危機であると同時に、戦後最大の経済復興のチャンスという考えをもってほしい気がする。