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現代女性作家8人が新たな解釈をした「グリムの森へ」は子どものころ読んだグリム童話と五十歩百歩

2016年10月29日 | 斜読

book428「グリムの森へ」 高松・松本ほか 小学館文庫 2015 /2016.10読 
グリム童話は子どものころに何度も読んだが、子ども向けにアレンジされた童話集は同じような内容だったから、いつの間にかグリム童話を卒業した気分になっていった。
 2012年ごろドイツの旅をイメージし、予習にいくつかドイツを話題にした本を読んだ。その一冊が桐生操著b310「本当は恐ろしいグリム童話Ⅰ・Ⅱ」である。
 恐ろしさは童話集からも気づかされた。たとえば、赤ずきんちゃんでは、おばあさんと孫娘が狼に食べられてしまい、気づいた猟師が狼の腹を切り開いて二人を助ける展開である。狼などの猛獣に襲われて人がけがしたり命を落とすことは聞いたことがあるが、食べられてしまう、腹を切り開いて助け出される、というのは想像するとすさまじいと思う。
 ヘンゼルとグレーテルでは、食べるものがないので母親が兄妹の二人を森に捨ててしまう、森でお菓子の家を見つけた兄妹は魔女に食べられようとするが、隙を見て妹が魔女をかまどで焼き殺す展開で、子捨て+人食い+人殺しの場面が盛り込まれている。
 桐生氏は初版に戻って検証し、恐ろしいというより残酷さ、横暴さ、破廉恥さを赤裸々に紹介していて、改めて、当時のドイツの社会、風潮、発想を垣間見させられた。
 
 2016年10月に東ドイツ・ロマネスクのツアーに参加することが決まり、東ドイツとロマネスクに関する本を探した。ロマネスクは一冊読み終えたあと、東ドイツに関する本として皆川博子著の「総統の子ら」などを見つけた。
 この本は、ヒトラー・ユーゲントがテーマで、読み出があるし、今回の旅からはかけ離れている。もう少し気楽に、短い時間でも読めそうな本を探したら、皆川博子氏も加わっている「グリムの森へ」を見つけた。
 裏表紙の内容紹介では、8名の日本の現代女性作家が11編のグリム童話を原書に基づいて再話するユニークな一冊と書かれていた。
 童話は短編だから、空いた時間に読めるし、現代女性作家が原書に基づきながら新たな解釈を試みるのだろうと、期待して旅の友に持参した。
 8名による11編は以下の通り。
高村薫 ブレーメンの音楽隊
松本侑子 カエルの王様、そして忠臣ハインリッヒ
阿川佐和子 いばら姫
大庭みな子 ラプンツェル
津島侑子 めっけ鳥
松本侑子 兄さんと妹
中沢けい 赤ずきんちゃん
中沢けい つぐみひげの王様
大庭みな子 ヘンゼルとグレーテル
木崎さと子 星の銀貨
皆川博子 青髭
上田萬年 おほかみ
エッセイ 橋本孝 野口芳子 岩井方男 阿部謹也

 結論からいえば、期待を外された。11編はこれまで読んだグリム童話とさほど変わらなかった・・改めて読まなくても良かった・・。
 選ばれた11編も特別な脈絡は見られなかった・・たとえば、当時のドイツ、あるいはヨーロッパでは飢饉による食糧不足の場合、子捨て、姥捨てが当たり前だったので、子捨ての童話、姥捨ての童話を収録、次いで、当時、魔女の存在が信じられたので魔女に関する童話を収録し、機転で魔女の力を封じ込める展開を収録など、編集に工夫が欲しかった・・。
 さらには、桐生著の恐ろしいグリム童話ほどではなくてもいいが、こうした童話が生まれた背景、あるいはグリムたちがこの童話集に込めた思いなどにも触れて欲しかった。
 結局数編読んだだけでスーツケースの中にしまい込んだ。帰国後、返却日が近づいたので一気に読み終えた。
 新たな収穫は上田萬年の「おほかみ」で、1889年=明治22年、赤ずきんちゃんを下敷きにした日本の子ども向けの童話である。
 明治のころ、グリム童話を知った人々が日本の子ども向けの説話として書き換えたのであろう。明治維新後、欧米の先進文化を吸収しようとする意気込みが感じられる。
 その一方で、ラフカディオ・ハーン=小泉八雲は、「怪談」で知られるように日本各地に伝承される伝説、幽霊話を収録して小泉流に再話している。
 文化交流が進み、それぞれ国に伝承される民話、伝説を通して国民性、文化の違いを理解しようとする気運の高まりであろう。
 やはり、改めてグリム童話を取り上げるのだから、現代的な視点から編纂されべきだったのではないだろうか。
 もちろん、忘れかけていたグリム童話を改めて読みたい方には、子どものころの思い出とともにグリムの森を楽しむことができる。
 

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