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長浜~安土~彦根に持参した「謎解き散歩滋賀県」は手軽で読みやすいがテーマ別の掘り下げを

2017年07月01日 | 斜読

book444 滋賀県謎解き散歩 中井均編著 新人物文庫 2013
 2017年6月に2泊3日で長浜~安土~近江八幡~彦根などを訪ねた。図書館で何冊か目を通し、大きさ、軽さ、読みやすさからこの本を持参した。謎解き散歩はほぼ全国を網羅したシリーズになっているが読むのは初めてである。滋賀県は14人の識者が分担し、80近い謎解きをおおむね2~3頁ごとに解説している。謎は1章~7章に分けてあり、興味を引くようなタイトルがつけられている。
 たとえば、第1章 滋賀県ってどんなとこ?では、県民性-「近江商人」=「滋賀県の県民性」は本当か?/ランキング-自然景観、建造物から歴史・考古、伝統工芸品の分野まで/グルメ・郷土料理-自然と歴史と人々の想いに育まれた伝統の味/文化財-全国第4位を占める国宝・重要文化財/有名人-滋賀県の特色が「芳香」する、一流の人/文学-古来より詩情を湧出させる「近江」という「舞台」/景勝地-「近江八景」とは/企業-近江商人の哲学・理念がいまも息づく活動/日本仏教の源流となった比叡山/甲賀流忍術ってどんな忍術?、について説いている。
 1章を読むと、滋賀県というより近江にこだわり、古くから歴史文化が花開き、傑出した人物が多いと主張していることに気づく。これは最終章まで続く基本姿勢のようだ。どの県も自慢話に偏るのは致し方ないが、近江の人は気位が高いようだ。
 第2章は歴史編である。
 日本最大と最小の銅鐸が滋賀県から発掘された!/鴨稲荷山古墳の被葬者は誰か?/渡来人が活躍した近江国!/大津が日本の首都になった?/近江国に日本最大級の大仏が建立された?/と並び、佐々木氏の出自、六角征伐、浅井長政、賤ヶ岳の戦い、将軍上洛専用の城、朝鮮通信使、芭蕉の墓、桜田門外の変、大津事件が解説される。
 謎解きであるから、謎めいた事がらが選ばれたのであろうが、近江国の通史とか略史とかを挿入し、加えてどの謎がどのあたりで起きているのか理解しやすいように地図も加えてくれると県外からの訪問者にはより親しみがわいてくると思う。
 第3章は人物編で、紫式部、大谷善継、石田三成、浅井三姉妹、小堀遠州、藤堂高虎、中江藤樹、海北友松、井伊直弼、伊藤忠兵衛に関する謎が説かれている。しかし、あまりにもよく知られ、様々に取り上げられている人物ばかりなので、だいたいのことは既知であるし、異説も多いから、謎解きには向いていないように思える。
 第4章は城郭編である。有名な城郭が多い滋賀県/現存天守ばかりではない! 彦根城の魅力とは?/空前絶後の城、安土城の魅力とは?/日本最大級の山城、観音寺城の魅力とは?/落城の歴史を持つ小谷城の魅力とは?/山城にもかかわらず近世城郭の縄張り?玄蕃尾城の魅力とは/国境警備の城、鎌刃城の魅力とは?、以下、甲賀軍の城館、坂本城・大津城、膳所城、長浜城、上平寺城の謎が紹介されている。
 しかし、その多くは現存しない。遺構を巡るには日数が必要で、今回の滋賀の旅では長浜城歴史博物館、安土城天守・信長の館、彦根城を見学しただけである。県外訪問者からは見学しやすい城の謎解きを期待したい。
 第5章は琵琶湖編である。琵琶湖の誕生は竹生島訪問の船中で紹介があり参考になった。琵琶湖疎水も京都では何度も見ているが、滋賀県側の謎が説かれていて理解が深まった。しかし、魚、魚食文化、寿司のルーツなどは、ホテルやレストランでは味わうことができなかった。謎解きに取り上げられるものは特殊なのかも知れない。
 第6章は滋賀県トリビア編だが、竹生島以外は訪ねる時間的ゆとりもなかったし、目を通した限りでは、筆者には申し訳ないが、ほかを差し置いても出かけたいという興味を覚えなかった。それぞれの好事家には有益なのかも知れない。
 第7章は民俗編で、神輿が登場する祭のルーツは日吉大社の山王祭にある/さまざまな特色が人々を魅了する近江の曳山祭/滋賀県には墓のないムラがあるって本当?/琵琶湖から水田に水を引く知恵とは?/重要文化的景観の指定第1号となった近江八幡の水郷景観/江戸時代に造られた水道が現在も使われている/仏が各集落に来てくれる行事とは/近江に「大将軍」と呼ばれる神様が多くまつられているのはなぜ/日野町名産の日野菜が全国に普及したわけとは/「オコナイ」って何のこと?、が紹介されている。
 民俗はいまも行われているため、なるほど!と感じた謎は少なくなかった。が、「なるほど」以上に関心が高まることはなかった。
 総じて、肩の凝らない、気楽に滋賀県を理解するには手頃な本だが、幅広く謎を網羅したため散漫になってしまったと思う。シリーズだから滋賀県だけ内容を変えるわけにはいかないので、ぜひ、もう少しテーマを絞り込んだ近江散歩などの発刊を期待したい。

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