よもやま画帖

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土曜日のデジャヴ①~シベールの日曜日~

2012-12-20 09:56:03 | 本・映画・舞台・イベント

 

総合・教育どっちだったのかは覚えていないけど、
とにかくNHK土曜日の午後に古い映画が放映されていて、
半ドンで帰って来た父(時には姉も)と一緒に見ていた時期がありました。

この枠で見た中でよく覚えているのが、
 
「ヘッドライト」「その男ゾルバ」「ゴジラ」
(もしかしたら、「大魔神」もこの枠だったのかも⇒【未確認】)

そして、ひときわ印象に残っていたのが、「シベールの日曜日」。

これが《午前10時の映画祭》で上映されると聞いて、日比谷まで出かけました。

この作品をスクリーンで鑑賞するのは初めて。



カメラワークが考え抜かれていて、初冬からクリスマスの移ろいが
モノクロの諧調の美しさ・デリケートさを生かしながら切り取られている。

面会に行き二人で歩く時の俯瞰~教会の尖塔の風見鶏までの移動、
水面の波紋、冬空を背景にした木立、駅の光景の移り変わり、
その中でくっきりと浮き上がるフランソワーズのふわふわした白い帽子と襟巻。

(ピエールに会えず仮病で寝ていた時、襟巻は黒い。)

ピエールが出入りするカルロスのアトリエに等伯風の墨絵の屏風があったり、
かごの中に飼われているのが文鳥だったり。
この辺は、今だから気付く点。

不安定だったピエールがフランソワーズに出逢って
少しずつ落ち着きを取り戻すのに対して、
反比例するように動揺、疑心に囚われるマドレーヌ。
カルロスの説得と二人の逢瀬を覗き見ながら一度は納得しても、
暗い予感と不安が拭い切れずかけた電話が一気に悲劇を招き寄せる。

過激な、過剰な描き方はしないけれど、この辺の畳み掛け方・緊張感。

初めてTVで見たのが、多分小学生ぐらいの頃。
当時はわかっていないまま(特に大人側の事情や途惑いは。無理でしょう、それ)
見ていたはずなのだけど、
その時の方が後半~終盤の追いつめられる感触は、ヒリヒリと感じた。

二人で迎える秘密のクリスマスの幸福感に満ちたシーンから徐々に歯車が狂い出し、
ラストの悲劇になだれ込んでいくコントラストが、子ども心に強烈だったんだろうと思う。 

娘を寄宿校に置き去りにする父、少女との逢瀬を冷酷に決めつけるカルロスの妻の偏狭さ、

心を病むピエールへの無理解・偏見を疑いもしない人々。

今の私には大人の身勝手さ・狡さが他人事に思えない分、またさらに二人の無垢さが痛々しい。

当時のファッションというには、ひどくきちきち・びっちりとしたフランソワーズのコートの着方に
周囲から大切にされていない彼女の境遇をつい垣間見てしまう。

 

《 使用画材/カラーインク、パステル 》


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