横井克俊のブログ

2008-09-17~

相続放棄の実務

2016-11-04 22:58:25 | 民事法実務

基本的な手続

(1)被相続人の死亡

(2)申述人→家裁;3か月以内に「相続開始地管轄家裁」への相続放棄申述の申立て(民法938条、家事事件手続法201条1項5項)

(3)家裁での審理(≒照会書による真意の確認) ※釜本p54、梶村ほかp435

(4)家裁;申立てから2~3週間程度で申述受理の審判=申述書への記載=効力発生(家事事件手続法201条7項) ※梶村ほかp435

(5)家裁→申述人等;通知(家事事件手続規則106条2項)

(6)申述人;相続放棄受理証明書の受領(任意)

(7)相続人や利害関係人→家裁:受理の有無の照会

 

[申述の受理の審判/申述の却下の審判]

・ここでいう「申述の受理の審判」は、申述人から相続放棄の(真意に基づく)意思表示を受領したことを公証する作用を有する。仮に受理の審判があっても、相続放棄の有効性を事後的に争うことは可能。

・反対に、相続放棄の要件を満たさない場合には、申述を却下する審判がなされる(家事事件手続法201条9項3号)。却下審判に対し、申述人は即時抗告をすることができる(同条)。主として問題になりうるのは、「熟慮期間の徒過(民法915条1項)」、「法定単純承認(民法921条)」等。

・審判ではどこまで実質的真理に踏み込むべきか。いまだ定説はないが、現在の家裁実務の傾向は「ある程度ゆるい基準で受理の審判をする/本格的な有効性判断は事後の民事訴訟に委ねる」か。

 

[効果1:基本]

・有効な相続放棄がなされると、その者(申述人)は相続開始時点から相続人でなかったことになる(民法939条)。したがって、代襲相続もおこならない(民法887条2項参照)。

・詐害行為取消権や否認権をもってしても相続放棄の効果を否定できない。

・相続税における「法定相続人」と扱われるため(相続税法15条2項)、基礎控除額や非課税財産の計算の場面では依然としてその存在が意味をもつ。これは「課税面から相続放棄を妨げない」との趣旨。

 

[効果2:死亡保険金]

・◎その者が死亡保険金の保険金受取人とされていれば、「死亡保険金=保険金受取人固有の権利=not相続財産」との理解から、相続放棄に影響されず受け取ることができる。※山下ほかp278

・◎また、保険金受取人を「相続人」とする指定は、保険事故発生時の相続人たる地位を有する者全員を受取人とする趣旨だと原則解されるので(最判昭和40・2・2民集19巻1号1頁)、やはり相続放棄した者も受取人となれる。※山下ほかp280-1

・×「死亡保険金はみなし相続財産である」との理解から、「遺贈によって相続財産の取得」と擬制されて相続税の課税を受ける(相続税法3条1項1号)。さらに、相続人でなくなるため、非課税財産の恩恵を受けられない(相続税法12条1項5号、3条1項柱書参照)。

 

[効果3:特定贈与は「遺贈」扱い]

・その者が相続時精算課税選択届出書(相続税法21条の9第2項)を提出していた場合、被相続人(特定贈与者)からの生前贈与については、遺贈により取得したものと擬制されて相続税の課税を受ける(相続税法21条の16第1項)。

・▲この効果を利用すれば、「生前に資産のみ特定贈与→死亡時に負債を相続放棄」との手順によって「資産の無償取得(相続税法上は遺贈に擬制)+負債承継なし」との目的が達成できる、と説かれる。※三木ほかp348-7、二宮p183  しかし、もともとの贈与が詐害行使取消権の対象とされるリスクはある(具体例として東京地判平成18・11・2LLI/DB判例秘書登載)。

 

釜本修「家庭裁判所が相続放棄の申述を却下できる場合」判例タイムズ1019号53頁[2000]

三木・関根・山名・占部『実務家のための税務相談(民法編)第2版』[2006]

二宮周平『家族と法』[2007]

梶村太市ほか『家族法実務講義』[2013]

山下・竹濵・洲崎・山本『保険法第3版補訂版』[2015]

ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 【超】相続税の計算【特急】 | トップ | 自動車保険の経済学 »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

民事法実務」カテゴリの最新記事

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません。