横井克俊のブログ

2008-09-17~

養育費と再婚

2016-10-12 00:54:56 | 法律実務-民事

例:義務者Y男の総収入(支払金額)600万円、権利者X女の総収入150万円。権利者Xが子P(15歳)とQ(10歳)を監護する。

 

[標準算定方式]

・算定は「義務者のみで子を扶養したら子に回されるべき仮想生活費はいくらか?→その仮想生活費を父母の収入で按分」との発想。

(1)純粋に生活に充てられる「基礎収入」を算定する。給与所得者の場合、支払金額を出発点として、その34-42%を基礎収入とする(2000万円超は別)。

→Y男の基礎収入=600万円×36%=216万円

→X女の基礎収入=150万円×40%=60万円

(2)義務者の基礎収入をベースとして、仮に義務者が(現実には監護してない)子と同居していた場合、その義務者の基礎収入を当てにする仮想世帯内において子に回されるべき「子の生活費」を算定する。ここで用いられる生活費指数は、義務者本人100、0-14歳55、15-19歳90とする。以上の発想は、「養育費=生活保持義務=自己の生活を保持するのと同程度の生活を被扶養者にも保持させる義務」との理解に依る。

→P&Qに回されるべき生活費=216万円×〔90(P)+55(Q)〕/〔100(Y)+90(P)+55(Q)〕=128万円

※婚姻費用の場合は、この仮想世帯に権利者(←婚姻関係にあるため義務者の扶養を受ける)も加わる。その上で、「義務者の基礎収入+権利者の基礎収入」から「子と権利者に回されるべき生活費」を算出する。〔216万円(X)+60万円(Y)〕×〔90(P)+55(Q)+100(X)〕/〔100(Y)+90(P)+55(Q)+100(X)〕=196万円

(3)算定された「(仮想世帯における)子の生活費」を、義務者・権利者双方の基礎収入の割合で按分する。

→Yから支払われるべき養育費=128万円×〔216万円〕/〔60万円+216万円〕=年額100万円=月8.3万円

→算定表だと月額8−10万円の真ん中あたり

※婚姻費用の場合は、先の「夫婦双方の基礎収入合計から子と権利者に回されるべき生活費」から、権利者の基礎収入を控除すればよい。196万円−60万円=年額136万円=月11.3万円。算定表だと10−12万円の上あたり。

 

[義務者の再婚]

・義務者が再婚した場合、義務者はその新配偶者や新しい子も扶養する義務を負う。その場合は、(2)の仮想世帯において、新配偶者(生活費指数55)と新子(生活費指数55or90)を加える。分母が大きくなった分だけ、もともとの子に充てられる生活費も小さくなる。

→P&Qに回されるべき生活費=216万円×〔90(P)+55(Q)〕/〔100(Y)+90(P)+55(Q)+55(新配偶者)+55(新子)〕=88万円

→Yから支払われるべき養育費=88万円×〔216万円〕/〔60万円+216万円〕=年額69万円=月5.8万円

 ・新配偶者に自分の生活費をまかなうことのできるだけの収入がある場合は、新配偶者の存在を無視してよい(=生活費指数を0とみる)。例えば福岡高決平成26・6・30判タ1410号100頁[102頁]。

 

[権利者の再婚]

・権利者が再婚しても、義務者は依然として子に対する扶養義務を負う。

・しかし、権利者の新配偶者が子と養子縁組をした場合、子に対する一次的な扶養義務者は同居する養親(新配偶者)となる。その裏返しとして、権利者からは、かつての義務者(今や二次的扶養義務者)への養育費請求ができなくなる。

※なお、後掲榊原は「実務では、一般的には、協同親権者となった養親と実親が子に対して第一次的扶養義務を負い、非親権者である実親はこれに劣後する扶養義務を負担し、非親権者である実親の扶養義務がゼロになるとは限らず、事案によるとされている。養親が病身で収入がない場合など、非親権者の実親も相応の義務を果たすべきであろう」との書きぶり。これだけでは本文と同趣旨とも思われるが、「一方、子との面会交流については、縁組後も非親権者について認められうる。この点と対比しても、実親の扶養義務を0とすることは、公平を欠くと思われる」「ただし、負担する場合の計算式があるわけではな」いとも。

 

東京・大阪養育費等研究会「簡易迅速な養育費等の算定を目指して」判例タイムズ1111号285頁[2003]

岡健太郎「養育費・婚姻費用算定表の運用上の諸問題」判例タイムズ1209号4頁[2006]

岡口基一『要件事実マニュアル第5巻第4版』[2013]pp115-25 ※なんのかんの言って一番まとまってる

棚村政行編著『面会交流と養育費の実務と展望』[2013]pp105-6〔榊原富士子〕

森公任・森元みのり『簡易算定表だけでは解決できない養育費・婚姻費用算定事例集』[2015]pp152-3

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