横井克俊のブログ

2008-09-17~

再分配政策

2017-05-03 17:35:44 | 政治経済

[政府の再分配機能]

・家計や企業が得る所得は市場で決定されるが(当初所得)、政府はこの分配結果に介入し、誰かの所得を奪って別の誰かに与える。その結果、各家計が自由に使途を決めることができるのは、政府が介入した後の可処分所得(再分配所得)に限られる。

・政府による再分配は、取引ではなく強制力をもって経済活動の結果を変更させる活動である。この意味で、政府は市場そのものに代わる調整メカニズムとして経済活動に影響を与える。

 

[税による再分配]

・政府は徴税権に基づき、家計や企業から対価なく強制的に税を徴収する。徴税の狙い;(1)政府自身が市場で財やサービスを購入するための財源を確保する、(2)人々に特定の行動を取らせる(例;ロンドンの渋滞税)、(3)再分配を実現する。

・政府が民間の経済主体から所得を奪う方法には、税と社会保険料がある。税は一般会計で管理されるから、その使途に特段の限定はない。納税者は受益を期待できないにもかかわらず所得を奪われるという意味で、徴税の再分配効果は高い。

・相続は、個人の意思や努力が(ほとんど)反映されないので機会の不平等を生む。この財の移転に課税する相続税(それを補完する贈与税)は、機会の平等を狙っている。

・結果の不平等に介入する代表的なものが所得税である。多くの国では所得の増加に応じて税率も高くなるように設計されている(累進性)。累進的な税は再分配効果が高い。

・所得税に対し、消費税は家計が消費した額に課税する。消費税率が所得や消費の水準によらず全員一律であり、財・サービスの種類によらず一定であれば、消費金額と税額は比例的である。この点をとらえ、低所得者層は「低所得者は少ない所得から消費に回される割合が高いので、貯蓄率の高い高所得者に比べ、所得に占める消費税額の割合が高くなるという逆進性を生む」として消費税を批判するが…。

・上記の累進性/逆進性の議論は、ある時点の所得を「結果」として捉えている(現に、実際の課税も「一時点の所得」を捕捉している)。しかし、ライフサイクル・恒常所得仮説のもとでは、一時点の所得(消費・貯蓄)でなく、生涯所得を「結果」として議論すべきであろう。※さらに要勉強

 

 [社会保険による再分配]

・社会保険でも(通常は)強制加入とされるため、政府が強制的に所得を奪うという点では税と違いがない。他方、社会保険は各制度(健康保険、公的年金…)ごとの特別会計で管理され、それを財源として給付が行われる。このように、負担と受益(対価)が緩やかにリンクしている点で税と区別され、リンクが「緩やか」という点で再分配機能も持つ。

・政府による強制加入によらず、民間保険でも社会保険と同等の商品を提供することは可能である。ところが、各家計による民間保険の自発的購入に委ねた場合、必ず保険を購入しない者が登場する。このような者が保険事故に遭った場合でも、政府は一般会計から公的扶助(生活保護)を提供して救済しなければならない。このように最終的に救済義務を負う政府にとって、あらかじめ社会保険料を強制的に徴収させ、その財源(特別会計)をもって保険事故への給付をすることは、一般会計の資金節約という観点から合理的である。

・その上でもなお、「政府が社会保険を運営することはなく、民間保険へ強制加入させることで対応する」との政策も考えうる(参照、アメリカの医療保険制度)。しかし、社会保険には次のメリットがある;(1)高所得者から徴収した社会保険料の一部を低所得者への給付に使うことで、再分配を実現する。(2)同時点の個人間のみならず、世代間の再分配を実現する。例えば、戦前世代は、戦災の混乱十分な貯蓄ができなかったり、(高度成長期後から見れば)不十分な水準の貯蓄にとどまる可能性がある。戦後世代から徴収した保険料の一部を戦前世代に給付する年金に充てることで、「生まれ年による不平等」の緩和を図る。

・社会保険料が徴収される時期と、保険金の給付を受ける時期(病気になる、〇〇歳になる)にはズレがある。「保険料」と「保険金(年金)」を対応させる方法(社会保険の財政方式)としては、次の2つがある;(1)積立方式。ある世代が支払った社会保険料は政府によって積み立てられ、当該世代への将来の給付に使われる。(2)賦課方式。ある世代が支払った社会保険料は、直ちにその時点の高齢世代への給付に使われる。高齢化が進むと賦課方式は破綻する。

 

[補助金などによる再分配]

・機会の不平等への対応策;「初等教育」「公衆衛生」など。これらは、政府が供給する公共財(=正の外部効果)でもある(ミルトン・フリードマン『資本主義と自由』[原著1962、村井章子訳2008]第6章では、政府が初等教育を義務付けることの正当性が説かれる)。

・結果の不平等への対応策;「公的扶助(生活保護)」「被災者生活再建支援」「児童福祉」「母子寡婦福祉」「高齢者福祉」「障害者福祉」など。 

※岩田pp101-7では、所得再分配の手法を三区分する。(1)使途を限定しない貨幣の給付、(2)特定の財・サービスの給付、(3)政府による市場への介入(生産者保護;農家保護政策、中小企業保護政策など)。

 

[平等v.効率性]

・結果の平等を追求することは、個人の努力を抑制することで効率性を低下させ、経済活動の水準を下げてしまうおそれがある。

・岩田は、効率性の観点では再分配政策の中で「使途を限定しない貨幣による再分配」がもっともマシだと説く。『資本主義と自由』訳書pp347-52が提唱する「負の所得税(=補助金)」はこの一種である。

 

岩田規久男『「小さな政府」を問いなおす』[2006]pp85-110

☆柴田章久・宇南山卓『マクロ経済学の第一歩』[2013]pp136-55

ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 子連れ再婚の法的意義 | トップ | 国会議員はその発言に法的責... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません。