横井克俊のブログ

2008-09-17~

子連れ再婚の法的意義

2017-04-21 22:15:29 | 民事法実務

【説例】X女は前夫と離婚し、子P(15歳)とQ(10歳)の親権者となりPQを監護してきた。この度、X女はZ男と再婚することになった。


[継親子の関係]■二宮岩波新書pp101-3

・Zから見て子PQは「配偶者Xの子=一親等の姻族」であるから、ZとPQは民法上の「親族」となる(三親等内の姻族;民法725条3号)。

・原則権利義務関係なし:もっとも、親族とはいえ直系血族でも兄弟姉妹でもないから、原則として両者は互いに扶養義務を負わない(例外が家裁に命じられたとき;民法877条2項)。また、単なる継親子にすぎないので、ZがPQの親権・監護権を持つことはないし、両者間で相続も起きない。

・XZの婚姻によってXが氏を改めても、PQの氏は当然には変動しない。PQも実親Xと同じ氏にする(=XZの戸籍に入籍する)には「子の氏の変更」が必要となるが、子連れ再婚では例外的に入籍届の提出のみで足りる(家裁許可は不要;民法791条2項、戸籍法98条1項)。後述の養子縁組と同様に、氏変更の手続も15歳以上の者は自身でおこない、15歳未満の者は親権者等がおこなう(民法791条1項・3項、戸籍法32条・31条)。

・なお、Zを被保険者とする健康保険では「保険者の三親等内の親族で前号に掲げる者以外のものであって、その被保険者と同一の世帯に属し、主としてその被保険者により生計を維持するもの」も被扶養者に含まれる(健康保険法3条7項2号)。PQがこの要件を満たせば、Zの被扶養者としてその健康保険の利用が可能。

・Zの所得税額の計算においても、PQはその「扶養親族」に該当しうる(所得税法2条1項34号)。

 

[連れ子養子の意義]

・ZとPQの間に法律上の親子関係を形成するためには、養子縁組をする必要がある。「養子縁組80,000~90,000件の3分の1程度が未成年養子と推測」されるにもかかわらず、家裁許可件数はわずか1,000件程度だから、未成年養子のほとんどが連れ子養子だと言われる。■小島p99、二宮岩波新書pp124-5

 

[連れ子養子の手続] 

・普通養子一般の規制として、15歳以上の者は自身の手で養子となることができる/15歳未満の者は親権者等による代諾縁組となる(民法797条1項、戸籍法68条)。本件では、15歳の子Pの縁組について自らが養子縁組届に署名押印する一方、10歳の子Qの縁組についてはその単独親権者X女が代諾権者として届出人となる。

・未成年養子一般の規制として、家裁許可を要するのが原則であるところ(民法798条本文)、連れ子養子の場合は、Zからみて「配偶者Xの直系卑属PQを養子とする」ものだから、例外的に許可不要(同条ただし書)。

 

[連れ子養子の効果]

・再婚父母の共同親権:養親となったZは、養子となったPQの親権者となる(民法818条2項)。本来ならば同条の帰結として「養親の親権取得=実親の親権喪失」となるべき。ところが連れ子養子(=養親Zが養子PQの実親Xと婚姻関係にある)の場合、裁判実務・戸籍実務・通説は一致して、実親X女も依然として親権を失わず、養親Z(夫)と実親X(妻)の共同親権になると解している。■新基本法コンメpp214-5

・養育費への影響についてはこちら

・養親子同氏原則:養子PQは、原則として養親Zと同じ氏を称し(民法810条)、その戸籍に入籍する(戸籍法18条3項)。この規律と夫婦同氏原則(民法750条、戸籍法16条)により、「家族全員」が同じ氏(戸籍)となる。

 

[実親と養親の離婚]

・「連れ子養子は、新夫婦(養親と実親)の共同親権に服する」という上述理解の裏返しとして、この養親Zと実親Xが離婚するにあたっては、(実父母間の離婚と同様に)いずれが単独親権者となるかを決める必要がある(協議説)。■新基本法コンメp219

・離婚する養親Zとしては、「実親Yとの離婚=養子PQとの縁組を継続し難い重大な事由(民法814条1項3号)」と主張することが考えられる。この点が本格的に争われた裁判例はないといわれる。■小島pp117-8


 

二宮周平『家族と法-個人化と多様化の中で』[2007]

戸籍実務研究会編『初任者のための戸籍実務の手引き改訂新版第五訂』[2011]

『新基本法コンメンタール親族』[2015]

小島妙子『Q&A親子の法と実務』[2016]

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