冬桃ブログ

長野の旅その1 長距離バスと元ホームレス

 災害発生時からイベント、シンポジウム、会食などほとんどの予定が
キャンセルになったが、2月25日にみなと博物館で開催されることに
なっていた名誉船長さん達相手の講演は、予定通り開催された。 
 なんとか無事に終え、懇親会の席に……という時、佐藤謙一郎さんから
電話が入っているのに気づいた。
 私は政治にうとくて、現政治家も元政治家も付き合いがないのだが、
佐藤さんだけは別。元・衆議院議員である。

 知り合ったのは彼がまだ議員だった頃。最初は奥さんの久美子さんと
の付き合いだったが、最近は謙一郎さんと会うことの方が多くなった。
 気さくで穏やか。ユーモアの感覚もあり、政治家だった人にありがちな
わざとらしい丁寧さやその裏返しのような傲慢さがみじんもない。
 東大─NHK記者─政治家と世の中のエリートコースを歩んできた人だが
えらぶったところもまったくなく、政治家をやめたいまは、有機野菜を
自分で配達している。日本を真の農業国に、安全な食品の国に、という
主張と実践は一貫して変わらない。
 私と同い年。団塊世代のトップだ。

 懇親会は乾杯だけ付き合わせていただき、きゅうきょ佐藤さんと会った。
 被災者受け入れプロジェクトの立ち上げのため、彼はここ数日長野へ行っていた。
 その話も聞きたかったし。

 「これから一ヶ月か二ヶ月、アパートかウィークリー・マンション
でも見つけて長野で暮らすことにしたんだよ」
 と、会うなり佐藤さんは言った。

 長野県は阿部知事が被災者23000人を受け入れると発表した。
 しかし具体的にどんな方法でそれを実現するかはまだ何も決まってない。
 佐藤さんは阿倍知事と旧知の仲だし、農業関係のことで何度も
長野へ足を運ぶうち、志を同じくする仲間もできた……というわけで、
被災者受け入れの組織を立ち上げることになったのだという。

 「月曜日の朝、発足の会議があるから日曜日に長野入りするんだけど
一緒に来ない? どういうことになるか、あなたにとっても興味深い
ことだと思うよ」

 いきなりのお誘いではあったが、情緒不安定のまま家に閉じこもってる
よりいいかもしれないと思った。この事態に、自分が何もできないという
無力感に打ちのめされていたさなかでもあるし。

 翌々日、横浜駅で佐藤さんと待ち合わせて新宿へ。
 「安いから、僕はいつもこれなんだよ」
 という佐藤さんに合わせて長野まで高速バス。
 同行者がもうひとりいた。田上等さん。
 発売中の「文藝春秋」に「同志菅直人よ 私はホームレスに堕ちた」
というルポルタージュが載っているが、その「ホームレス」が田上さんだ。
 佐藤さんは田上さんに横浜の大通公園でばったり会ったという。
 旧知の仲だし、なんとかこのプロジェクトに参加させることで
田上さんを再起させたいというのが、佐藤さんの考えだ。
 中肉中背で温厚そうな人。明日、61歳の誕生日を迎えるという。

 さて私は長距離バス初体験。長野まで約四時間かかるそうだが
私は車と船で本を読むことができない。確実に酔う。
 神経質な方だから、都合良く居眠りすることもできない。
 古いポータブルCDプレーヤーがあったことを思い出し、それと
落語のCDを四枚持参した。
 おかげでなんとか退屈せずに済んだ。

 三時少し前に新宿を出て、夕闇が降りる頃、長野着。
 私は駅前のホテルで、佐藤さんと田上さんは別の
もうちょっと質素なホテル。
 佐藤さんの友人で郷土史を研究している小林さんという青年が
来てくれて、四人で食事。
 さすがに夜は冷える。

(続く)

 、

                    
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