どんなに日記が滞ってしまっても、何から何を書けばいいのかもうわかんなくなっちゃっても、やっぱりはずせない、食日記。
と、言うよりも、遠い旅の記憶を呼び覚ますと、真っ先に鮮明に頭に浮かんでくるのは食べ物の思い出であり、口の中は唾液でいっぱいになるのでありました。
ということで、今回はワディ・ラムのベドウィンテントに泊まったときの夕食日記。
日が落ちると一気に寒くなる、砂漠の夜。
テントの脇で焚き火をしていたアリのまわりに、暖を求めて私たちも、ひとり、またひとりと集まってきました。
暖かいオレンジ色の火に照らされて、頬も手のひらも温まり、パチパチという音を聞いていると、さて今晩の夕食は何だろう?ベドウィンディナーってどんなん何だろう?と、頭の中はすっかり楽しい疑問ばかり。
その一方で、誰も料理をしている気配がない・・・。
焚き火のまわりには全員いて、誰もどこか別の場所で料理している風でもない・・・。
うむ、これはラダックの時同様、かなり遅い時間に夕食なのかもしれない。などと思っていると、アリが焚き火を小さくし始め、あっという間に火はなくなって赤い炭が残るばかりになりました。
まだ赤い炭を脇によけ、さらにその下にあった砂をよけ始めると、下には逆さまになった大きなトレイのようなもの。そして更にそれを取り外すと、中からこんなものが登場!
焚き火の下には、ベドウィン式オーブンがあったのでした。
焚き火をしながら、実は料理もしていたなんて、すてき~!
底にも、まだゆらゆらと赤い炭が敷き詰めてあります。この網を中に入れて蓋をし、その上で焚き火をすると、砂に埋め込まれたオーブンのできあがり。
このオーブンで炭火焼にしたスパイスの効いた鶏肉と、それから丸ごとジャガイモや丸ごと玉ねぎがゴロゴロ。ホブスというアラブのパンやご飯、野菜煮込みなどと一緒にいただきました。
炭火焼オーブンですから、も~ジューシーでとってもおいしい!
そして、何と言っても美味しかったのは、とろっとろの玉ねぎでした!
玉ねぎを丸ごと、あの一番外側の茶色いパリパリの皮もついたまま、そのまま焼いただけなんですけれども。
薄暗いテントの中で食べているとき、もうすっかり黒こげになった部分を開いて、中身をスプーンですくって食べたときには、最初、芋かな?と思ったくらい。とっても柔らかいマッシュポテトのようにとろ~っとしていて、口の中に入れると、優しい自然の甘みが広がります。
もちろん、おかわり
美味しい夕食で幸せになった頃、大きなやかんでシャイ(お茶)がでてきました。
インドのチャイと違って、ミルクは入らず、茶葉と砂糖を一緒にぐらぐらと煮たお茶です。アラブではこれをシャイと呼びます。
熱いシャイのカップを手のひらで包み、アリとマハムッドが奏でるベドウィン音楽を聴きながら、砂漠の夜は更けていきました。