歌舞伎見物のお供

歌舞伎、文楽の諸作品の解説です。これ読んで見に行けば、どなたでも混乱なく見られる、はず、です。

「蘭平物狂」 らんぺい ものぐるい

2011年05月03日 | 歌舞伎
正式なタイトルは「倭仮名在原系図」 やまとがな ありわらけいず というのですが、
四段目にあたる、「蘭平(らんぺい)」という奴さんが中心になる場面しか残っていないので、
「蘭平物狂」というタイトルで上演されます。
前後の細かい設定を説明すると長いので後ろのほうでまとめて書くことにして、とりあえず上演部分の筋だけ追ってみます。

時代設定は平安初期です。清和帝のころです。
平安貴族の「在原行平(ありわらの ゆきひら)」のお屋敷が舞台です。
奴さんたちが庭そうじしながらウワサ話で状況を説明する定番のシーンがあります。

行平さまは、ちょっとした失敗で最近まで須磨(瀬戸内海に面したちょっとさびしい場所)で謹慎しており、
最近許されて戻ってきました。
しかし、須磨でいい仲になった美女、「松風(まつかぜ)」が忘れられなくてふさぎこみ、都に戻ってきたのに元気がないです。
とかいろいろウワサしています。
奥様の「水無瀬(みなせ)御前」が出てきて奴さんを叱って追い払います。

水無瀬さんは夫を心配して松風ちゃんを呼ぶことにしました。
夫のために愛人を呼び寄せるなんて、昔の貴族やお武家の奥方は器がでかすぎです。
夫婦というか、猛獣(夫)と猛獣使い(妻)みたいな印象です。
奴さんの一人、「蘭平(らんぺい)」がなかなか使える男なので、水無瀬さまの命令で松風ちゃんを迎えに行っています。

さて、行平さまが寝込んでいるので今は奥様の水無瀬さんがお屋敷の采配をいろいろやっています。
最近とある罪人を捕まえました。取り調べなくてはなりません。草履取りの「繁蔵(はんぞう)」くんが連れてきます。
繁蔵くんは蘭平の息子です。子役です。
この罪人なのですが、現行上演の部分だけですと罪状が不明です。あまり気にせずご覧ください。

罪人は、詮議(取調べ)するのが奥様だからか、なかなか口を割りません。
拷問しましょうか、と繁蔵は聞きますが、「まあちょっと待て、後でまた調べるから」との奥様の言葉です。
罪人と繁蔵は引っ込みます。
この部分は、ストーリーの後半部分にこの人物を使うので顔出しというような意味合いです。
お話がぶつ切りなのでこういう不自然な部分が出てきてしまうのはしかたありません。

蘭平が松風ちゃんと、もう一人男を連れて登場します。
じつはこの松風ちゃんはニセモノなのです。「おりく」という、水茶屋の女房です。

水茶屋というのは観光地なんかにある、お茶飲んで一服するための小さいお店ですよ。
街中にある「料理茶屋」や遊郭にある「遊女茶屋」と区別するために「水茶屋」と呼びます。
もちろん平安時代に水茶屋なんてありませんが、そこは歌舞伎なので気にせずご覧ください。

一緒にいるのは与茂作(よもさく)という、おりくさんのだんなです。って人妻かい!!
蘭平は「松風ちゃんと、その兄」ということにして二人を連れてきました。

細かいことは後でまとめて書きますが、このへんは能の「松風」という作品のオマージュになっています。
須磨に流された行平が、土地の汐汲み娘である松風と村雨というふたりの女の子と恋に落ちる内容です。
これを元にした「汐汲(しおくみ)」という歌舞伎の所作(踊りね)もあります。

さて、このお芝居では本物の松風ちゃんはお姫様のような上品な娘という設定になっています。
そして、おりくさんは庶民派なのであまり上品ではありません。
松風ちゃんのフリをするのはすごくたいへんそうです。
「あたしにはムリ、上品な会話とかできないし」みたいなやりとりがミスマッチ感が出ていて楽しいです。

松風ちゃんが来たと聞いて行平さまが登場します。優雅な平安貴族です。
行平さまは喜んで松風(おりく)ちゃんをそばに呼び、兄(夫)の与茂作を追い払います。
奥さんの水無瀬さんも気を効かせて引っ込みます。
蘭平は奴さんなので、用事があるときのためにその場に残ります。

しかし与茂作は、言われたとおり裏に行かずに、そのへんの藪に隠れます。

というところに、さっき「後で取り調べる」と言っていた罪人が逃げたとの知らせです。
お屋敷の庭は広いし門はしっかり固めてあるのでまだ敷地内にはいるようです。

考えた行平さまは、蘭平の息子の繁蔵くんを追っ手に遣わします。
繁蔵くんはまだ子供ですがしっかりしているので抜擢されたのです。
歌舞伎なので「いくらなんでも子供にはムリだろ」という突っ込みはナシでそのまま見てください。

チナミに父親の蘭平は奴さんで、繁蔵は草履取りです。
一応刀は刺していますが、どちらも下働きの身分で正式な武士ではありません。
ここで手柄を立てると武士になれます。

息子に先を越されそうな蘭平。あわてます。「ぜひ自分にその役目を」と行平に頼みますが却下されます。
蘭平は気も利くしケンカも強いのですが、ある病気があるのです。
刃を見ると乱心し、妙な挙動をするのです。そんなやつは捕り物に使えない、と行平さま。
「気違い水こぼさず、と言いますし」と食い下がる蘭平ですが、ダメです。
チナミに歌舞伎なので放送禁止用語を舞台で言いまくっても平気です。

繁蔵くんは花道を通って逃げた罪人を探しに退場します。
舞台で繁蔵を遠くから見守り、気をもむ蘭平。
先を越されるのはもちろん悔しいですが、それ以前に息子が心配でしかたないのです。

捕り物を繁蔵にまかせて、行平さまは松風(おりく)ちゃんといちゃいちゃします。
おりくさんはワケわかっていないので、やりとりがトンチンカンで楽しいです。
ここに色々楽しい場面もあるのですが、現行上演は、かなりはしょっているかと思います。

松風(おりく)ちゃんは、須磨にいたとき行平さまがあげた烏帽子と狩衣を持ってきました。それが庭に置きっぱなしです。
行平さまはこれを持って来るように蘭平に言い付けるのですが、蘭平は息子を見守るのに夢中で聞いていません。
怒った行平さまは刀を抜きます。
と、刀の刃を見た蘭平、たちまち乱心します。

ここの乱心して舞を舞う場面が面白いのと、この後の立ち回りが派手なのでこのお芝居は残っております。
「蘭平物狂(らんぺい ものぐるい)」という通称はここから取られています。

まず蘭平は「嫁入りじゃ嫁入りじゃ」とイキナリ言い出して、行平さまのものである烏帽子と狩衣を勝手に身に付けて、舞を舞います。
方向性としては、蘭平は自分が「花嫁」だと思っていて、なのに嫁入りの行列に遅れてしまい、あせっている。
しかも嫁入り衣装を着ていないので行平の狩衣をカラダに巻きつけた。というようなかんじです。
いろいろな唄の文句にあわせて舞います。庭にある松の木を結婚相手だと思い込んでいます。
全体に動きのあるコミカルな踊りですので見ていて飽きないと思います。

行平さまが刀を鞘に収めたら蘭平は気を失い、目が覚めたら何も覚えていません。
松風(おりく)ちゃんにに話を聞いてあわてて行平さまにおわびをします。
毎度のことなので行平さまはあまり怒りません。そして「奥に入って休め」と言います。

これはつまり、フリータイムですから、ほんとに休憩してもいいし、「他にプライベートでやりたいこと」があればそれをやってもいいのです。
大喜びでお礼を言って、息子の繁蔵を手伝いにいく蘭平。

再び行平さまと松風ちゃんのラブラブな場面になり。行平さまは松風(おりく)ちゃんのそばで気分よくうとうとします。
すると、松風(おりく)ちゃんの合図で、さっきから隠れていた与茂作がこっそりお座敷に上がってきて
行平さまを殺そうとするではありませんか。

しかし行平さまは気配で目覚め、難なく与茂作を取り押さえます。
折りよく戻ってきた蘭平と繁蔵。
繁蔵くんは蘭平の手助けもあってうまいこと逃げた罪人の首を討ち取りました。ご褒美に繁蔵くんは武士に取り立ててもらいます。

さっきは先を越されるのが悔しそうだった蘭平ですが、いざ息子が武士になれたとなると、自分の事のように大喜びします。
いい場面です。
この、蘭平の息子への強い愛情はこのお芝居のテーマのひとつであり、隠れた見どころでもあります。

繁蔵くんは一度退場します。蘭平は行平さまの命令で与茂作を取り調べます。
どうも、与茂作は昔、親を行平さまに殺されたと思っており、それを恨んでいるようなのです。
しかし行平さまは全く身に覚えがありません。そもそも誰かを殺した帰国がないのです。
しかし一度疑われた以上、知らんぷりするのもプライドが許しません。

あと、ここで行平さまが、今自分は盗まれた宝剣を探していてどうこう、という事を言うかもしれませんが、
最後まで見てもあまりこれ関係ないので気にしなくていいです。セリフ自体がカットかもしれません。

しかたないので行平さまは蘭平と与茂作に勝負をさせます。
与茂作が蘭平に勝って逃げられれば、それで今回は許す。負けて斬られれば、それはそれであきらめろ。という感じです。
刀を抜くと乱心する蘭平ですが、さっきも言った「気違い水こぼさず」の例えの通り、
本気で戦うような緊張感のある状態ならば大丈夫なのです。

あとは蘭平にまかせて行平さまは一度退場します。
ふたりの立ち回りがあり、やがてふたりは刀を抜いて斬り合います。

と、
蘭平は与茂作の刀を見て驚きます。そして自分の刀を与茂作に見せます。
同じ銘の入った、「天国(あまくに)」という名前のひとそろいの刀です。
ふたりは生き別れた兄弟だったのです。

ふたりの父親にあたるのは大納言だった「伴 実澄(はんの さねずみ)」という人です。
この人は大内裏(だいだいり、皇居のことです)の応天門(おうてんもん)に火を付けた罪で流罪になって死にました。
このできごとは史実です。史実だと火をつけたひとは「伴 義男(はんの よしお)」といいます。

しかしこれは小野篁(おのの たかむら)と行平との陰謀なのだ。父は無実なのだ、と蘭平は思っています。

正確には小野篁と在原行平ではビミョウに活躍年代が違うのですが、お芝居なので気にしないで進みます。

伴大納言が応天門を焼いて、バレて流罪になったのは宇治拾遺物語にも載っている有名なエピソードです。
なのでこの設定はイキナリ出て来ますが、当時のお客さんは付いていけたのです。

憎い行平さまと小野篁に仕返しするために、蘭平は奴さんになって行平の屋敷に入り込んでいろいろ画策しているのです。
前の段では、朝廷にとって大切な神宝を盗み出すことにも成功しており、今それも持っています。

というわけで、蘭平の本当の名前は「伴 義雄(はんの よしお)」といいます。
弟は「伴 義純(はんの よしずみ)」といいます。
今後はふたりで力をあわせて行平とかに仕返ししたり、政治的野心を遂げたりしよう、とふたりは約束します。
蘭平は与茂作を逃がします。

これで前半は終わりです。

ここでイキナリ、正体のわからない忍びのものがお屋敷に入ってきて、居合わせた奥さんの水無瀬さんと立ち回りになるシーンが一応あるのですが、
今出るかもしれませんが、出ないかもしれません。あまり気にしなくていいです。


・奥庭

寝殿作りのお屋敷の、奥のほうにあるプライベートな庭です。
と言っても平安貴族のお屋敷ですからひたすら広いです。

正体をあらわした蘭平はお屋敷のみなさんに追われ、戦いながら逃げています。
蘭平は強いので、敵を蹴散らして逃げるだけならあまり難しくないのですが、息子の繁蔵くんが気になるのです。
連れて逃げたい、いやせっかく武士にしてもらったんだから連れてはいかないけど、最後に一度会いたい。
その一心で、必死で我が子を呼び、探しながら延々と戦う蘭平。

ここの立ち回りは実に派手で勇壮な型が付いており、歌舞伎の中でも最高とも言えるすばらしさです。
危険度も高く、先代の松緑(辰之助)は、上演時に億単位の保険をかけたといいます。
時間もかなり長いのですが、変化に富んだスピーディーな演出なので飽きずに見られます。
逆に、疲労困憊しながら長時間必死で戦うリアリティーが伝わってきます。
ただ立ち回りを楽しむだけでなく、息子を思う父親の気持ちが伝わってくるところも、見ごたえのある点だと思います。

立ち回りが終わって、追い詰められた蘭平を、行平と、さっきの与茂作が取り囲みます。
と言っても与茂作はさっきと違ってキレイな衣装に着替えているので一瞬誰だかわからないかもしれません。
さっき「弟だ」と言ったくせに今は蘭平を追い詰める側にいる与茂作。何で!?

そして行平が蘭平に「孔雀三郎(くじゃくの さぶろう)」と呼びかけます。
これはこのお芝居のここまでの流れの中での蘭平の役名です。
つまり、前の段まで出ていた「孔雀三郎」が、奴さんの「蘭平」に化けて行平の屋敷にいた。
そして、その本名は「伴義雄」、ということです。ややこしいですが付いて行ってください。

そして、弟の「伴義純」だったはずの男は、じつは小野篁の家来、大江音人(おおえの おとんど)だったのです。
蘭平をだまして正体を見極めるために「実は弟の伴義純だ」とウソを言っていたのです。
チナミに、本物の弟は、さっき蘭平と繁蔵が首を討ったあの罪人です。ひどい!!

「盗んだ神宝を返せ、おとなしくお縄にかかれ」と言われた蘭平は、父親の恨みとか、今後の野心とかをいろいろ言います。
前の段で書いたような内容です。だいたい聞き取れれば細かいことはいいと思います。

降参する気がなさそうな蘭平ですが、ここで最強、究極の捕り手がやってきます。
息子の繁蔵くんです。
すでに行平に「近藤」の名字も与えてもらって、りっぱなお侍です。捕り縄を持って蘭平に詰め寄ります。

行平の家来なのですから息子であっても敵です。心を鬼にして立ち向かう蘭平。
震える腕、こわばる身体。
古い歌舞伎らしい大時代な演出や動きをうまく使って、親子の細やかな愛情をリアルに表現した名場面だと思います。

結局蘭平は息子への情には勝てず、降参します。
とはいえ繁蔵くんは、ずっとかわいがって育ててくれた実の父親に縄をかけることができません。ためらって泣く繁蔵くん。
蘭平はその繁蔵に、隠し持っていた神宝を渡します。

ここで「神宝」というのが具体的に何で、政治的にどんな意味を持つのかとか、考えないで下さい。

「なにか天下をひっくり返せるような大事なもの」です。てきとうです。ゲームに出てくる重要アイテムみたいなものです。
受け取った神宝を行平に渡す繁蔵くん。
これは形の上では、繁蔵くんが蘭平から「神宝」を奪いとって行平に献上したことになります。大手柄です。
この手柄で、繁蔵は、途絶えていた伴(はん)の家を再興する事を許されます。
喜ぶ蘭平。
たかが中納言の行平にそんな権限あるのか とか突っ込むのはナシです。

いろいろ野心も恨みつらみもあったけど、息子が出世して家も復活したのでもういいや、と満足した蘭平は
今までのおわびに切腹しようとするのですが、行平がそれをとめ、出家を勧めます。
出家して熊野に行く決心をする蘭平です。
これでお別れです。

「この場はこのまま 立ち別れ」 という蘭平のセリフがあって、みんなで引っ張りの見得で、
時代もののお芝居らしく、幕です。

全部出すと、蘭平はこのあと捕まっているお姫様を助け出したりして、息子と一緒に伴の家を再興するのですが、
絶対出ないので気にしなくていいです。


全段通したときのストーリーがないとわかりにくいかなと思ったのですが、書いてみたらお話通じるみたいなので割愛です。
以下細かいウンチクです。ストーリーを把握するのには必要ないですが、押さえておいて見たほうがお芝居が面白いです。

登場人物の在原行平(ありわらの ゆきひら)さまは、もちろん実在した人物で、百人一首にも歌が載っています。
チナミに実際は中納言どまりの人ですからお芝居に出てくるイメージほどえらくありません

行平よりも弟の在原業平(ありわらの なりひら)のほうが有名です。「伊勢物語」の主人公です。
このお芝居にも業平は、今出ない前半部分に出て来ます。
皇位の横取りを狙う悪人、橘副純(たちばなの ひろずみ)が、染殿の妃(そめどのの きさき)を誘拐したのを取り返しに行く役です。
お芝居全体としてはこっちが本筋です。

この系統の作品は、近松門左衛門の「井筒業平吾妻通(いづつならひら あづまのかよい)」を原型として何本かあります。
「業平もの」とカテゴライズされます。どれも上演は途絶えております。
競伊勢物語(はでくらべ いせものがたり)」という作品の一部がたまに出ます。

昔は「伊勢物語」の内容は誰でも把握していましたから、
その背後に見え隠れする歴史背景、清和帝の即位をめぐる貴族間の勢力争いや、業平と二条の妃との秘められた(秘めてません)恋なども、
お芝居を見る側に共通認識としてあったので、この題材のお芝居が面白かったのです。今は無理です。

ていうかこれらは江戸中期までの人気題材で、江戸も後期になるとあまり出ていなかったと認識しています。
その中で、このお芝居のこの場面だけが、所作や立ち回りの魅力で本筋を離れて生き残ったということです。
こういう、全体のストーリーはイマイチだけど、ある幕だけ、場面として面白いので単体で残っている、という作品は
歌舞伎ではけっこう多いです。

あと、当時(江戸時代)の在原行平についての共通認識をもう少し書きます。

1:因幡の国の守として赴任し、そのとき百人一首に入っているこの歌を詠みました。

 たち別れ 因幡の山の 峰に生ふる
 まつとし聞かば いま帰り来む

(みなさんと)たち別れて去ってしまえば(去なば)、それでお別れですが、
その「去なば(いなば)」ではないですが、この因幡の山の峰に生えている松、その松のようにみなさんが私を「待つ」ともし聞いたとしたら、
すぐさま私はここに帰って来ますよ。

みたいな意味です。
内容は単純ですが、因幡の土地にちなんだ掛詞が二ヶ所あるところがおもしろいのです(訳しにくいです)。
これは、因幡に赴任するときに都で別れを惜しんで詠んだという解説も見られますが、
赴任が終わって都に帰るときに因幡の人々に向けて詠んだ、というのが正しいと思います。

2:須磨に流されて、土地の娘である松風と村雨という姉妹と恋に落ちました。
結局行平は都に戻ったので、残された姉妹は行平を慕って悲しみました。
行平が残していった狩衣と烏帽子を浜辺の松にかけて、行平を懐かしみました。
これを題材に能の「松風」が作られました。

このふたつです。
なので、行平といえばキーワードは、松です。
これを意識して見るだけでお芝居の印象がずいぶん違います。
そこここに松が出て来ますが、全部わざとです。遊び心が伝わって来ます。
蘭平がさいごに「立ち別れ・・・」というのも、もちろん行平が詠んだ歌を意識しているのです。

さて、この殺陣の振り付けは、じつは戦後のものです。
坂東八重之助さんという方の手によるものです。
このかたは他にもいろんなお芝居の有名な立ち回りをつくってらっしゃいます。
歌舞伎は、古いようでもちゃんと時代とともに進化していってるのですね。

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2 コメント

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はじめまして (まもま)
2011-05-11 18:15:22
はじめまして。

歌舞伎座さよなら公演のDVDを図書館で見つけ、せっせと借りて見ているのですが、
「蘭平…」の筋がイマイチ分からず、ネット検索で読ませて頂きました。
(それでも、アクロバティックな捕物の迫力と、子役ちゃんの可愛らしさに見入ってしまいました。。)

「弟だって言ってたじゃん!(~_~;)」と言うところも、これで腑に落ちました。
素晴らしい解説、ありがとうございます~m(._.)m

楽しいお話 (logger)
2011-06-02 10:55:12
でした。

文章も軽妙で歌舞伎に興味を持つ人も増えるんじゃないでしょうか♪

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