「格差社会」「ニート・フリーター問題」という言葉が国会の質疑で飛び交い、マスコミでこの言葉が登場しない日はないといっていい状況になっているが、これらの言葉がこれほどまでに注目されるようになったのは、つい最近のことであろう。
少なくともマスコミで、「格差」が言われ始めたのは、ライブドアに強制捜査が入った前後のことだと思う。それまでは、「勝ち組」「負け組」などという言葉や、「セーフティーネット」、「フリーター問題」などがいわれる程度だった。
ここに一冊の本がある。千葉大の雨宮昭彦助教授〔著〕の『帝政期ドイツの新中間層』(東京大学出版会・2000年)という本である。近現代のドイツ史とえば、「ナチス」(NSDAP)であるが、このナチスが台頭した原因は、第一次世界大戦と第二次世界大戦を挟む時代のワイマール期に、世界恐慌に際して「プロレタリアート」に転落することを恐れた「新中間層」がナチスの支持基盤になったからだという俗説(というか通説)がある。この説に対して、雨宮氏は「新中間層」が形成され始めた第二帝政期(1872年〜1918年)にまで遡って、「新中間層」を分析し、ナチス台頭と「新中間層」との構造的な関係を検討したのである。これは、主に、失業手当や生活保護などの給付行政と新中間層に関する分析であり、ダイレクトに新中間層の問題とナチス台頭とを結びつけているわけではないが、非常に重要なテーマであるとこにはかわりはなく、ドイツ近現代史の分析において最もホットなテーマであるともいえる。
この「新中間層」分析に代表されるように、「階層」問題は経済の歴史分析においては重要な位置を占める。それは、現在の状況を分析する際にも、重要な視座を与えるものとなっているからでもある。
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ところで、「新中間層」とはなにか?
2006年10月8日現在のwikipediaには次のように記述されている。
この記述には、正確でない部分も含まれると思うが、ひとまずはこれに基づくとしよう。ただ、緑でハイライトした箇所に「資本主義が発達すればするほど、中産階級が台頭する」とあるが、「中産階級」と「中間層」(とくに、新中間層)は必ずしも同じとはいえないのではないかということだけは指摘しておく。また、一つ付け加えるならば、「新中間層」(ホワイトカラー)の中には、例えばコンビニや百貨店などの「店員」も含まれる。
じつは、現在いわれている「格差拡大」というのは、この「新中間層」の間で「格差」が拡大しているということなのである。具体的には、「新中間層」がエリート社員、ヒラの「正社員」、「派遣社員」、「アルバイト」などに階層分解している、ということである。これは、一連の規制緩和によって生じた階層化なのであるが、マルクスのいうとおりになったという事でもある。つまり、「資本主義が発達すればするほど貧富の差が拡大し、階級分化が進む」ということなのであり、今の日本ではまるでマルクスの予言が当たったかのような様相を呈し始めている。(そりゃないだろ、とお思いの方は『資本論』のまんなかへんにある「労賃」の章を読んでみるといい。びっくりするから。)
しかし、例えば「偽装請負」などで、文字通り「搾取」されている、いわゆる「ブルーカラー」(要するに労働者の階層)などとは違って、新中間層は「中間階級」に位置しているという意識が強い、という傾向があるといわれている。また、ブルーカラーの労働者などとは違って、なかなか労組や社会主義・社民主義的な政党にシンパシーを感じにくいという傾向を持つ、といわれる。「下層」に位置する給与しか受け取っていないにも関わらず、である。すると、「中間階級」に属しているにもかかわらず、上位の新中間層よりも低い水準の生活を余儀なくされるわけだから、当然、下位の新中間層は不満を募らせることになるのである。
社会の「大衆消費社会化」がアメリカの次に始まった戦前のドイツでは、「新中間層の下降化」がナチスへの支持に結びついた。といわれている。
社会の「大衆消費社会化」が極度に発達した現代の日本では、「新中間層の下降化」はどのように作用しているのであろうか?
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少なくともマスコミで、「格差」が言われ始めたのは、ライブドアに強制捜査が入った前後のことだと思う。それまでは、「勝ち組」「負け組」などという言葉や、「セーフティーネット」、「フリーター問題」などがいわれる程度だった。
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ここに一冊の本がある。千葉大の雨宮昭彦助教授〔著〕の『帝政期ドイツの新中間層』(東京大学出版会・2000年)という本である。近現代のドイツ史とえば、「ナチス」(NSDAP)であるが、このナチスが台頭した原因は、第一次世界大戦と第二次世界大戦を挟む時代のワイマール期に、世界恐慌に際して「プロレタリアート」に転落することを恐れた「新中間層」がナチスの支持基盤になったからだという俗説(というか通説)がある。この説に対して、雨宮氏は「新中間層」が形成され始めた第二帝政期(1872年〜1918年)にまで遡って、「新中間層」を分析し、ナチス台頭と「新中間層」との構造的な関係を検討したのである。これは、主に、失業手当や生活保護などの給付行政と新中間層に関する分析であり、ダイレクトに新中間層の問題とナチス台頭とを結びつけているわけではないが、非常に重要なテーマであるとこにはかわりはなく、ドイツ近現代史の分析において最もホットなテーマであるともいえる。
この「新中間層」分析に代表されるように、「階層」問題は経済の歴史分析においては重要な位置を占める。それは、現在の状況を分析する際にも、重要な視座を与えるものとなっているからでもある。
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ところで、「新中間層」とはなにか?
2006年10月8日現在のwikipediaには次のように記述されている。
新中間層(しんちゅうかんそう)とは、賃金労働者でありながら、肉体労働に従事せず、頭脳労働に従事する者を指す。サラリーマン、ホワイトカラー等とも呼ぶ。
19世紀半ばから後半にかけてのカール・マルクスの予言では、資本主義が発達すればするほど貧富の差が拡大し、階級分化が進むと考えられた。 しかし、19世紀末のドイツ社会民主党の論客・エドゥアルト・ベルンシュタインは修正主義理論を発表し、資本主義が発達すればするほど、中産階級が台頭するものと予言した。
地球上で社会主義政権が誕生した地域は、例外なく植民地・従属国であり、先進国革命が実現した例がないことを考えると、ベルンシュタインの予言が正しかったように思える。植民地・従属国革命は、小作人と大地主・外国資本の対決だった。マルクスは、資本主義の自浄能力に気付いていなかった。
日本における新中間層は、大正時代に成立した。1930年代には、かなりの厚みを増していたが、第二次世界大戦で壊滅し、新中間層の確立は高度経済成長期の1960年代を待たなければならなかった。
台湾や韓国では、新中間層を育成することで、赤化統一を防止した。とは言え、バブルがはじけた今、日本の新中間層にはかつてのような輝きはない。没落中産階級はファシズムの温床になる、とのマルクス主義からの忠告に耳を傾けなければならない。
なお、社会学の立場では、新中間層に対応する階層は自作農や商店主などの旧中間層である。2004年から2005年現在の日本の政治状況では、都市部の新中間層が民主党を支持し、農村部の旧中間層が自由民主党を支持しているとも考えられる。しかし、旧中間層が僅かとは言え生産手段を私有しているのに対し、新中間層は生産手段を私有している資本に雇用されている点に注目しなければならない。
この記述には、正確でない部分も含まれると思うが、ひとまずはこれに基づくとしよう。ただ、緑でハイライトした箇所に「資本主義が発達すればするほど、中産階級が台頭する」とあるが、「中産階級」と「中間層」(とくに、新中間層)は必ずしも同じとはいえないのではないかということだけは指摘しておく。また、一つ付け加えるならば、「新中間層」(ホワイトカラー)の中には、例えばコンビニや百貨店などの「店員」も含まれる。
じつは、現在いわれている「格差拡大」というのは、この「新中間層」の間で「格差」が拡大しているということなのである。具体的には、「新中間層」がエリート社員、ヒラの「正社員」、「派遣社員」、「アルバイト」などに階層分解している、ということである。これは、一連の規制緩和によって生じた階層化なのであるが、マルクスのいうとおりになったという事でもある。つまり、「資本主義が発達すればするほど貧富の差が拡大し、階級分化が進む」ということなのであり、今の日本ではまるでマルクスの予言が当たったかのような様相を呈し始めている。(そりゃないだろ、とお思いの方は『資本論』のまんなかへんにある「労賃」の章を読んでみるといい。びっくりするから。)
しかし、例えば「偽装請負」などで、文字通り「搾取」されている、いわゆる「ブルーカラー」(要するに労働者の階層)などとは違って、新中間層は「中間階級」に位置しているという意識が強い、という傾向があるといわれている。また、ブルーカラーの労働者などとは違って、なかなか労組や社会主義・社民主義的な政党にシンパシーを感じにくいという傾向を持つ、といわれる。「下層」に位置する給与しか受け取っていないにも関わらず、である。すると、「中間階級」に属しているにもかかわらず、上位の新中間層よりも低い水準の生活を余儀なくされるわけだから、当然、下位の新中間層は不満を募らせることになるのである。
社会の「大衆消費社会化」がアメリカの次に始まった戦前のドイツでは、「新中間層の下降化」がナチスへの支持に結びついた。といわれている。
社会の「大衆消費社会化」が極度に発達した現代の日本では、「新中間層の下降化」はどのように作用しているのであろうか?
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共産党の公式イデオロギーに捕われない自由な考察に感銘しました。
なかなか定量的な検討をするのが難しい分野ですが、興味深いです。
地方の中間層が民主党に流れたという分析も一部ありましたが、小川さんはいかがお考えですか?
ブルーカラーとホワイトカラーの「きちんとした」違いは理解していません。ご存じならご教示下さい。よろしくお願いいたします。
なお、当該エントリ中では、社会史上のカテゴリである「新中間層」と「ホワイトカラー」とを同じものとして記述しています。
まあ、「階層」を論じるときによくありがちな混乱だとは思いますけど、ブルーカラー、つまり「ガテン系」の職種といった場合、制服を着用する職種を指し、技術職も含める場合もあるので、必ずしも「ブルーカラー」=労働者ではない、といったところでしょうか?
このエントリでは、技術職=ブルーカラーという構図も最近では崩れてきていると思うので、あまりブルーカラーとホワイトカラーの区別を厳密に意識して書いていません。論旨にも問題ないと思いますので。どうでしょうか?