ヨダログ

囲碁棋士 依田紀基のブログ

筋の根本原理筋場理論

2012-03-17 | 日記
約一年ぶりの投稿です。

自分でいうのもなんですが、碁の歴史を変えるほどの大発見である筋の根本原理である「筋場理論」を発見しました。

この理論で碁の筋と言われるもののほとんどが説明できると言って良いでしょう。

筋の善悪だけで言えば、何百という形を作っても未だに例外をみつけることができません。

こんな明白で単純なことが、プロ棋士制度ができて400年の歴史を持つ我が国でなぜ誰も言わなかったのか不思議なくらいです。

ただ、僕もアマの人に言葉にして教えようとしなければ一生気が付かなかったと思います。

自分では感覚でわかっていることなので、自分が碁に勝つためだけなら、あえて言葉にする必要がなかったからです。

ただ多少の心配もあります。それはこの理論が世の中に広まって、囲碁ファン全員がわかってしまうと、ザル碁を打つ人がいなくなってしまうからです。

これって囲碁界にとっていいことなんだろうか?と思ってしまい、なんだか少しさびしいような気もしますが、

でも今思えば35年前、小学5年の頃、本に書いてあった手筋を見た瞬間に手筋のなんたるかを感覚的に理解し、

東京に出てきてプロ棋士になり、古今の膨大な量のプロ棋士の打ち筋を手割で解明して研究し、

2年前から囲碁塾を開いてアマチュアに碁を教えることもするようになったのも、全ては天のお導きのような気がするのです。

昨日NECカップの前夜祭が行われて、ホテルオークラに行きました。

ホテルの一室に日本棋院関係者の控室があり、トップ棋士が10人ほど集まっていました。

僕以外にこの理論を知っている人がいるかどうか、筋を言葉で説明できるかどうか確かめるために、

筋の道理を身に着けているトップ棋士たちにこういう質問をしました。

「中央にきりちがいの形があったと想像してください。きりちがい一方ノビよと格言では教えていますね。ではどうして、あたりをかけるのが筋的言ってに良くない手なのか、人に説明するとしたらどう言いますか?」と聞きました。

「なんか良い答えがあるの?」とT先生。

「僕にそんな難しいことを聞くんですか?」とY君。

S先生は、「アタリをかけたらきりが残るからでしょ。依田君もわかっているんでしょ?依田君も教えるのに苦労しているんだね」と心配してくださいます。

そこでY君が、「じゃ、きりが残るからなぜ悪いのか?と聞かれたらどう答えていいのかわからない」と言います。

そこで時間になり懇親会場に移動しました。そこでトップ棋士たちに「実は答えがあるんです。」と言って、筋場理論を話してみました。碁盤がなくても理論家のMさんはすぐに理解して、「感動した」と言ってくれました。

きりちがいの形でアタリをかけるのが筋として良くない理由は、アタリをかけて逃げたときに、アタリをかけた石が逃げた石のアキ三角ができる場所に来ているからです。

「きりちがい一方のびよ」の格言通り、お互いが打てば、風車のような形になりますが、その形からどこに打てばアキ三角ができるか確かめたら簡単です。

アキ三角に打つ手が石の働きが悪いことは、ある程度碁をしっている人なら誰でもわかるでしょう。打つなら一間飛びなどに打つでしょう。

ということは、この相手にアキ三角にできる場所に打つ手も筋的に言えば、筋の悪い手と言えます。筋的に言えばケイマに打つべきです。

僕はこのアキ三角のできる場所を「筋場」と名付けることにしました。相手の石をこの場所に持ってくるように打つことが筋であるという意味からです。

筋場は石が2つ以上並んだ瞬間に存在します。1子だけでは存在しません。

筋場を言葉で定義すれば、「2つ以上石が並んだ、相手の石がない側の1路横」ということになります。

手筋を定義すれば、「利き筋を手順よく利用して、相手の石を筋場に持って来て石の働きをよくする打ち方、あるいは自分の石が筋場にこない、そういう形を目指す打ち方」ということになります。

これで多くの手筋の説明がつくはずです。例えば「ケイマのつけこし切るべからず」

という格言を聞いたことのある人も多いでしょう。実際はケイマのつけこしは切るほうが良いことのほうが多いと思います。

僕の考えではこの格言には前置きがあるのです。それは「筋場に打たされる場合は」ということです。

つまり、「筋場に打たされる場合はケイマのつけこしは切ってはならない、筋場に相手の石を持ってくるように打つのが筋である」というのがこの格言の真意だと僕は思います。

プロ棋士は、膨大な時間を修練して言葉で認識していなくても、感覚、あるいは魂のレベルでこのことをわかっています。

要約すれば、プロ棋士とは、相手の石をいかに筋場に持っていくかということを年中考えている人種と言えましょう。

それができれば、石が働くので勝てるからです。少なくとも僕はそうです。自分のルーツがわかったという感じです。

もちろん、碁には筋場に打つ筋の悪い手がいい手になることもありますが、筋はよくない手と言えます。なお、二線や一線、死活や攻め合いに例外が多いのは、形があまり関係がないことが多いためと思われます。

この記事をはてなブックマークに追加