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囲碁棋士 依田紀基のブログ

幻庵

2017-01-19 | 日記

百田尚樹さんの時代囲碁小説「幻庵」読みました。当時の棋士たちを詳細に書いてます。

 

面白いだけでなく、碁の歴史資料としても一級だと思います。当時の棋士間の人間関係もよくわかりました。

 

本を読んで初めてわかったことがたくさんありました。

 

例えば、17歳の服部立徹が28歳の丈和に先相先の白番で勝ったあとの先番で、

 

必勝の碁を一手のミスで落とした碁を幻庵因碩は後に今川義元の油断に例えてますが、

 

丈和についてもこの碁を負けられない事情があったと、かつて勉強した碁の本で読んだことはありましたが、

 

この本読んで理由がわかり、なるほどと思いましたね。

 

もしこの碁に立徹が勝っていたら碁の歴史も変わっていたかもしれませんね。

 

丈和が国技観光という本の中に幻庵に一線を八本這わせて勝った碁をのせています。幻庵は気を悪くしたと伝えられてます。

このことは本の中でも書かれています。

 

僕はこの有名な碁を並べて以前から思っていたのですが、丈和にとって最後の八本目は這わせる意味はない手なのです。

 

ここを白から打つはずはないし、劫立てにも使えるからです。よく、アマの方に「先手だから打つ」という人がいますが、

 

先手だからというのは理由になりません。なにも打たなければ先手ですから。

 

だから僕は碁を指導するときに、「先手だから打つ」という癖を直すだけでも上達しますよ、と言ってます。

 

先手だから打つというのは一種の病気のようなもので、こういう習慣を持っている人の碁はダメ詰まりになります。

 

プロは意味のない手は打ちません。それは骨の髄まで叩き込まれていることです。それなのになぜ丈和は打ったのか?

 

この理由は一つしかありません。丈和は一線を八本這わせたこの形を棋譜に残したかったからです。感じ悪い!

 

この一手見ただけでも幻庵と丈和の関係が想像できますよね。

ある意味、この盤上では意味のない手を丈和が打ったことによってこの棋譜の歴史的価値が上がったと言えるかもしれません。

 

こういうことを想像したりするのも古碁を勉強する楽しみでもあります。

 

名人碁所をめぐる盤外の駆け引きも役者が揃っていて面白い。

 

しまいには中国に渡ろうとして密航を企てるのですが、途中嵐に会ってお金を海に落として一文無しになります。

 

スケールの桁が違う。囲碁史上最高に面白い人だったでしょうね。

 

 

そして棋士にとって究極ともいえる「何のために碁を打つのか?」と問いかけてきます。

 

僕はこの本読んで色々なことを思い出したり想像したり考えさせられて楽しかったし、2日で上下巻一気に読んでしまいました。

 

 

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