l'esquisse

アート鑑賞の感想を中心に、日々思ったことをつらつらと。

所蔵水彩・素描展―松方コレクションとその後

2010-05-23 | アート鑑賞
国立西洋美術館 新館2階[版画素描展示室] 2010年2月23日(火)-5月30日(日)



チラシを入手した時からとても気になっていた企画展示。版画素描という展示作品の性格上、照明を落とされたあのシンとした小さな展示室に足を踏み入れるのは毎回楽しみだけれど、今回も期待にたがわず密度の濃い作品が並んでいた。

『舟にて』 (1900-06) ポール・セザンヌ



水分をたっぷり含ませた筆がサラサラと、縦に横にと紙の上をすばやく動き、緑と群青の帯を織りなしていく。身をかがめて作業する人々の姿は風景の中に溶け込んでしまいそうなほどおぼろげだけれど、観た瞬間、何とも言えずセザンヌ。

『背中を拭く女』 (1888-92頃) エドガー・ドガ



とても完成度の高いパステル画。力を込めて背中を拭く右手(こすっているところが赤くなってしまっている)に体を支える左手、と力強いポーズを取る女性の後ろ姿だが、描き込むドガの筆触も力強い。ドガの指先の力がダイレクトに伝わってくるようです。この、描き手の生々しい指の動きを感じ取れることが、素描や水彩画、パステル画などの魅力。

『聖なる象』 (1885頃) ギュスターヴ・モロー



魔法にかかったようにじっと立ちつくしてしまった。この絵には何かが漂っている。優美に舞う天女たちの翼がふわりふわりと妖気をこちらに送ってくるのか、じっとこちらを見る象の眼がこっそり呪文を投げかけているのか。このえも言われぬ美しさに、モローの魅力を再認識。

『漁船』 (20世紀初頭) ポール・シニャック



こちらに向かって停泊する漁船、水面にゆらめく反映、空にたなびく雲。きっとあっという間にスケッチしてしまうのでしょうね。淡い色合いも素敵。

『青い胴着の女』 (1920) パブロ・ピカソ



キャッチャーミットのようなごっつい手が凄いけれど、袖のふわりとしたブラウスの感じが好きでした。

他にもピエール・ピュヴィ・シャヴァンヌ『トレヴーの肖像』(1895)にドキリとしたり、ピーダ・イルステズ『縫い物をするイーダ』(1889年頃)を観て2008年のハンマースホイ展を懐かしく思ったり。

全部で38点の作品が並ぶ本展示は、フランク・ブラングィン展に合わせて今度の日曜日、5月30日(日)までです。





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2 コメント

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こんにちは (巻貝)
2010-05-29 15:56:47
アトリアの細密画講座で一日目にお隣で、名刺を頂いた者です。
せっかく教えて頂いたのになかなかPCに触れられず、すっかり遅くなってしまい失礼しました!

松方コレクションは見たかったのですがスケジュールが合わず残念だったので、こちらでこうして拝見できて嬉しいです^^

また改めてメールさせて頂きますね。では~
ご訪問ありがとうございます (YC)
2010-05-29 18:26:52
☆巻貝さん

こんにちは。

その節はお世話になり、ありがとうございました。

今更ですが、あの講座のことも記事に残しておこうと下書き中です。
自分の駄作はとても載せる気になりませんが、巻貝さんの
素晴らしい作品を写メで撮らせて頂けばよかったと後悔してます。

ところでこの水彩・素描展、多様な作品が並んで見応えがありました。
西美所蔵作品ですので、また近い将来機会があるといいですね!

このところまた気温の寒暖差がありますので、くれぐれもご自愛下さい。

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