l'esquisse

アート鑑賞の感想を中心に、日々思ったことをつらつらと。

レオナルドのライオン

2009-07-04 | アートその他
7月4日付のイギリスの「The Independent」紙のオンライン・ニュースに、レオナルド・ダ・ヴィンチが考案した機械仕掛けのライオンが500年の時を経て再現され、フランスのクロ・リュセ城でこの夏公開されるとのニュースが載っていた。

ご存知の通り、フランス国王フランソワ1世に招かれ、レオナルドが人生最後の3年間を送ったのが、フランスのアンボワーズにあるクロ・リュセ城(Château du Clos Lucé)。レオナルドゆかりの場所として観光客もたくさん訪れるのだろうな、などと思いながら記事を読み進んで驚いた。なんとお城は現在レオナルド・ダ・ヴィンチ・パークになっていて、今後はレオナルドのみならず、シェークスピアやマキアヴェッリなど他のルネッサンス期の文化人たちの展示も加えたテーマ・パークにしていく予定だそうである。

確かに昨今は貴族の生活も厳しく、城を手放したり、館の中を有料で公開したり、中にはイングランドのロングリートのように敷地をサファリ・パークにしてしまった例もある。そこまで無茶ではないにせよ、この城の寝室で、死の床にあるレオナルドを抱き寄せるフランソワ1世の姿を描いたアングルの『レオナルドの死』のイメージをそのままに感じることなどもはや無理なのだろうか。実際行ったことがないので、悪い方に想像してしまっているのかもしれないが。

いずれにせよ、そのクロ・リュセ城にて「レオナルドとフランス」展が今週から来年の1月31日まで開催され、冒頭のライオンも目玉の一つとして出展されるらしい。ちなみにヴェネツィアのアカデミア美術館から今まで門外不出だった、レオナルドがこの城で描いたスケッチ4点も、この展覧会のために貸し出されるそうだ。

この際だから、ライオンについても触れておく。レオナルドは少なくとも3体のライオンを設計しているらしく(フランソワ1世の先王ルイ12世に献上された1体目は歩けなかったが、フランソワ1世に捧げられた2体目は歩いたり頭を動かしたりできた可能性があるらしい)、今回はレオナルドがフランスに移った後の1517年に設計した3体目のライオンの稿本を元にイタリア人の自動装置デザイナー、レナート・ボアレット氏が初めて再現化したもの。体長180cm以上、体高120cm以上と本物のライオンの大きさに近く、歩くのみならず頭を動かし、尻尾を振り、口を開けて牙を見せる仕掛けになっているという。

しかし、レオナルドのライオンの設計に関して残っている稿本は基礎的な部分ばかりで、肝心の動作させる仕掛けの設計については何も残っておらず、ボアレット氏は時計のメカニズムなどレオナルドが残した他の考案品の設計図などを見ながら研究。レオナルドならこうしただろうという氏の見解の元、今回のライオンが出来上がったらしい。そもそもライオンは、このお城の”プレジデント”であるフランソワ・セ・ブリ(François Saint Bris)氏が注文制作したもので、氏はレオナルドのことを「16世紀のジョージ・ルーカス」などと表現している。

ライオンの写真が載っていたので、リンクを貼っておく。なんだか外見はチープな感じがしないでもないが、実際のレオナルドのライオンはどのように仕上がっていたのだろう。何かの動物の毛皮とかを貼りつけたのだろうか。中の仕掛けのみならず、気になるところである。

写真では見えないが、ライオンの体の右側に設置されている大きなクランク(鉛筆削りの取っ手のような、回転軸の端につけられた柄、あるいは往復運動を回転運動に変える装置)を巻き上げることによって動くらしい。展覧会を観に来た入場者がリクエストする度にクロ・リュセ城の雑用係が呼ばれ、柄を回してくれるそうだ。一度完全に巻き上げれば、ライオンは10歩ほど歩き、先ほども書いた通り尻尾を振り、首を動かして牙を見せてくれる、らしい。果たしてどれほど集客があるのやら。


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