『そぞろ歩き韓国』から『四季折々』に 

東京近郊を散歩した折々の写真とたまに俳句。

読書感想210  ボーヴォワールとサルトルに狂わされた娘時代

2017-03-20 20:56:25 | 日記・エッセイ・コラム

読書感想210  ボーヴォワールとサルトルに狂わされた娘時代

著者      ビアンカ・ランブラン

生年      1921年

出身      ポーランドでユダヤ人医師の長女として誕生。2歳でフランス

へ移住。

出版年     1993年フランスで出版

        1995年日本で出版 

出版社     (株)草思社

 

☆☆感想☆☆☆

 本書はボーヴォワールとサルトルのそれぞれと愛人関係にあった女性の回顧録である。ビアンカはパリの女子高等中学校に在学中に哲学教師として赴任してきたボーヴォワールと親しくなり、彼女の愛人となる。さらにボーヴォワールの影響の下、ソルボンヌ大学で哲学を専攻し、同じく在学していたサルトルの愛弟子たちと親しくなる。そしてボーヴォワールの紹介でサルトル本人とも知り合い、サルトルに熱心に口説かれてその愛人になる。在学中に第二次世界大戦が始まり、サルトルは軍隊に召集され手紙のやりとりが続き、突然別れを告げられる。そしてボーヴォワールともやはり男性のほうがいいと言われて愛人関係を解消される。その後サルトルとの関係を打ち明けてサルトルの愛弟子の一人と結婚する。彼女はボーヴォワールとサルトルとの三角関係が対等なものと思っていて、一方的にサルトルから別れを告げられたことに衝撃を受ける。彼女は戦後ボーヴォワールとは友情を維持していたが、サルトルの死後に公表された「女たちへの手紙」やボーヴォワールの戦中日記によって、ボーヴォワールが著者に対する嫉妬や激しい性格を疎ましく思いサルトルに告げて別れさせたことを知る。ボーヴォワールに裏切られたという感情がこの著書を書く動機になっている。著者がユダヤ人であり、第二次世界大戦でどれほど苦しい思いをしているかについて、ボーヴォワールもサルトルも理解を欠いているし、厄介な人として放り出した感じだ。自分たちを楽しませる存在であるときは付き合うけれど、生死の瀬戸際にいて精神的にも不安定な状態に置かれている彼女を突き放したのだろう。結果的にそう見える。著者はドイツ占領下でユダヤ人であることを知ったうえで結婚してくれたベルナール・ランブランとその家族にとても感謝している。ユダヤ人にとって安全な場所を転々として戦争の末期にはフランスの西南部ヴェルコール山岳地帯に移る。そこでレジスタンスの戦いに参加する。戦後、著者はボーヴォワールとサルトルが自分をモデルにした小説や自叙伝を描くときに、ユダヤ人の少女であることを隠しているということに怒っている。戦前の彼らが政治に無頓着で反ユダヤ主義に無関心だったからだ。

読んでいて驚いたのは、哲学という教科が高校にもあるということと、人気の高さだ。日本の高校で哲学が専門に教えられることはないし、倫理社会の中でさわりだけ教えられた記憶がある。あまり魅力のない教科だったので、担当の教師と親しくなるということは考えられなかった。日本の文化的伝統とフランスのそれが異質だという感じがする。ボーヴォワールもサルトルも新しい考え方や生き方を見せてくれる存在として若者に人気だったのかもしれない。それから日本では三角関係で普通は悩むのが、著者は悩んでいなかったことだ。性的な放縦さもフランスでは当たり前なのか、驚くばかりだ。著者と、ボーヴォワールとサルトルの立場は、著者が命がけで現状を変えようとしたし、せざるを得ない立場だったのに対して、後者は嵐が止むのを待っている立場なので、サルトルの「社会参加」についても軽くて真実味がないと判断するにいたったのだろう。 

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1 コメント

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ベルナール・ランブラン (nishinayuu)
2017-03-22 22:15:17
ベルナール・ランブランとその家族に出会えたことは、著者にとって本当に救いでしたね。

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