花紅柳緑~院長のブログ

京都府京田辺市、谷村医院の院長です。 日常診療を通じて感じたこと、四季折々の健康情報、趣味の活動を御報告いたします。

写真詩集『ぼくらは簡単なことばで出来ている』

2017-07-08 | アート・文化


『ぼくらは簡単なことばで出来ている~旅する柴犬まめのポラロイド写真詩集~』(写真・西真知子, ことば・村上美香, パルコ, 2008)は小さな写真詩集である。「ぼくにはなにもない。」の独白から始まり、四丁目から石畳、街角、草原、海、花園や雪原と移りゆく、様々な風景の中を<柴犬まめ>の逍遥が続く。最後の頁をめくった後に、いまも終わりのない旅路の何処かに佇んでいるのだと思わせる余韻がある。

世の趨勢は、超高精細の解像度、広色域化の色再現や西洋医学領域における拡大内視鏡しかり、あくなきデジタル映像や画像の追求である。だがこのポラロイド写真詩集にはフォーカスを合わせない写真やセピア色の写真が溢れている。そして一枚一枚の写真に添えられた短詞は、登場人物ならぬ登場犬<柴犬まめ>の心中の言葉と見ても、またそうでなくても良いのだろう。むしろその風景自体がはからずも漏らした吐息の様な言葉が紡がれている。確かに詩集なのだが、あなたも当然そう感じるはずとにじり寄って来るポエムのようなぬめりはない。明日からの心の糧となる、御尤と申し上げるしかない熱い箴言を畳みかけるのでもない。言うならば、固まる手前で敢えて硬化剤を減らし、その後の化成を受取り手に託した慎ましい写真詩集である。


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